宿泊施設不足の解決や新たな需要の創出などのポジティブな側面に加え、近隣住民とのトラブル、違法な業者の存在といった問題を懸念する声も多い民泊。かねてから平成29年(2017年)中に行うとされていた、その新法案の閣議決定、国会提出が3月中に実現する見込みです。いよいよ日本でも、本格的に民泊が解禁されることになります。
今回はすでに明らかになっている民泊新法案の大枠に加え、今後、課題として浮き彫りになっていくであろう違法な民泊業者の問題についてご紹介します。
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日本における民泊のこれまで
まずは民泊のこれまでの動向について確認していきましょう。
訪日外国人観光客数は年々、右肩上がりに増加し、2020年東京オリンピック・パラリンピックが迫っているなか、宿泊施設不足が心配されていることなどから、平成28年(2016年)4月、民泊は旅館業法の枠内で一部解禁。スポーツ合宿所や民宿、カプセルホテルなどに該当する「簡易宿所」として、扱われることになりました。
それに合わせて、宿泊者数が10人未満の場合、33平方メートル以上とされる客室延床面積の制限を、宿泊者1人当たり面積3.3平方メートルに変更する、玄関帳場(いわゆるフロント)の設置を義務付けないなどの規制緩和が行なわれています。しかし、その許可要件は依然として厳しく、許可を取らずに営業を行う民泊業者が現れていると言われています。このような違法営業は「ヤミ民泊」と呼ばれることもあります。
その一方で、国家戦略特別区域法に基づき、旅行業法の特例が設けられた「民泊特区」も東京、大阪などに現れています。該当の自治体では「民泊条例」が制定されていますが、それぞれが微妙に異なり、地域事情に合わせた運営が目指されています。
新法案で、ついに民泊が解禁!
今回の新法案は、かねてより「民泊の全国的な解禁」と評されていたもの。日本における民泊の浸透、運用形態などに大きな影響を与えるため、その動向に注目が集まっていました。
まだ、法案の内容が確定しているわけではありませんが、以下のような内容になるようです。
民泊新法案の内容
民泊新法の対象となる事業者は宿泊施設を提供する「住宅宿泊事業者」、運営代行を行う「住宅宿泊管理業者」、民泊仲介を行う(Aribnbなどが代表例)「住宅宿泊仲介業者」の3種類。いずれの営業にも免許や届け出が必要とされています。
すべての事業者にとって、影響が大きいであろう宿泊施設の制限に関しては、以下の通りとなっています
- 1年間の営業日数には、180日間の制限が設けられており、約半年間は営業できないことになります
- 定められた床面積の遵守や衛生、安全対策、訪日外国人観光客向けに外国語での説明などを行う必要があります
- 周辺地域への配慮として、届出した住居に標識を掲示する必要が。また、地域住民からの苦情、問い合わせに対応することもルール化されます
- 部屋数が管理できる数量を超える場合などは、「住宅宿泊管理業者」に委託する必要があります
営業日数の制限があるため、民泊に特化した施設を用意するのはコスト的に厳しいのではないでしょうか。このため、民泊営業ができない半年間をマンスリーマンションとして利用して稼働率をあげようとするアイディアなどが現れているようです。
また、旅館業法の方に規制緩和を行い、民泊新法に則った民泊事業者と、旅館業法に則った宿泊事業者のバランスを取ろうとする動きもあるようです。実現したら、ホテルや旅館として営業を行ううえで必要な各種制限がゆるまり、宿泊業に乗り出しやすくなる見込み。この場合、民泊新法の枠組みを利用する必要がなくなるかもしれません。
違法業者が3割という現状
民泊に関して特に懸念されているのは、違法業者の存在。平成29年(2017年)3月1日、厚生労働省はその実態調査の結果を発表。民泊仲介サイトに登録されている全国の民泊施設15,127件のうち、無許可で営業を行っているのは約30%の4,624件にのぼることが明らかになりました。
そもそも正確な住所が詳細に記載されている物件がほとんど無く、「物件特定不可・調査中」とされる施設が半分以上。確実に営業許可を取得していることが確認できた物件はわずか16.5%しかなかったとしています。民泊新法案の登場により、このような現状が改善されることが期待されます。
まとめ:民泊新法案で、違法業者問題が解決できるのか……?
民泊の全国解禁に乗り出す民泊新法案が、いよいよ国会提出される見込みです。宿泊施設解消に向けた民泊の普及が期待されると同時に、ヤミ民泊の規制に関しても注目すべきでしょう。
厚生労働省の調査によれば、約3割の施設が違法に運営されている実態があります。残念ながら、民泊は一部で不健全な形で広まってしまっているというのも真実でしょう。実効性のある制度の構築が期待されます。
<参考>
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