日本のカジノを楽しみたい訪日客 わずか7%:そもそも訪日客は日本でカジノを求めていない?改めて考え直す統合型リゾート(IR)とインバウンド市場の関係性

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昨年話題となっていた カジノ法案(IR推進法) ですが、成立が来年の通常国会に先送りされる見通しです。2017年9月28日の臨時国会冒頭で安倍首相が衆議院を解散する方針を表明したことが主な理由です。

多くの訪日外国人観光客の誘致につながる ことから、インバウンド業界でも注目されていたカジノ法案(IR推進法)。そもそもどのような法案だったのでしょうか。

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カジノ法案(IR推進法)とは:統合型リゾートの整備並びに観光を通じた地域活性化が目的

世間では、一般的にカジノ法案(統合型リゾート整備推進法)と呼ばれていますが、正式名称は 「特定複合観光施設区域の整備の推奨に関する法律案要綱」 です。

統合型リゾートはIR(Integrated Resorts)とも略されます。統合型リゾート(IR)は、カジノだけではなく飲食店・大型ショッピングモールなどさまざまな施設があわさった場所 です。

カジノ法案(統合型リゾート整備推進法)は、文字のごとく 統合型リゾートを日本国内に整備していくための法案 です。

インバウンド市場とも深い関係があるカジノ法案(IR法案):カジノで多くのインバウンド誘致を期待

そもそもカジノ法案(統合型リゾート整備推進法)は、「観光客による地域の活性化」 を目的としています。

例えば、マカオやシンガポールなどでは、近年に統合型リゾート(IR)が国際的な観光スポットとして多くの外国人観光客を集めており、 統合型リゾート(IR)によって国の財政事情が潤っています。現在、訪日外国人観光客を誘致するプロジェクトの一つとして、日本国内でも統合型リゾートを設置しようとしていますが、今の日本の法制度では 統合型リゾート(IR)の目玉であるカジノが違法 とされているため、統合型リゾート(IR)の推進のためには カジノの合法化が大前提 とされています。

そこで必要となってくるのがカジノ法案(統合型リゾート整備推進法)の成立です。国内では賛否両論ありますが、インバウンド業界においては、今以上に訪日外国人観光客を増やすことができる施策として期待が高まっています。

しかし、実際に、多くの訪日外国人観光客は日本の統合型リゾート(IR)でカジノを楽しみたいのでしょうか。 株式会社日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年度版)」では、訪日外国人観光客カジノ利用意向調査に関して意外な事実が発見できます。

そもそも訪日客は日本で統合型リゾート(IR)やカジノを楽しみたいのだろうか

訪日客の統合型リゾート(IR)利用意向 関心度は意外にも二極化:イギリス人ではわずか39%が行きたいと回答

「日本にIR施設ができたら訪れてみたいですか?」との質問に「是非行きたい」「機会があれば言ってみたい」と回答した外国人観光客の割合:株式会社日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年度版)」5ページ目より引用

「日本にIR施設ができたら訪れてみたいですか?」との質問に「是非行きたい」「機会があれば言ってみたい」と回答した外国人観光客の割合:株式会社日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年度版)」5ページ目より引用

同資料では、アジア・欧米豪圏の海外旅行経験者を対象としたインターネットによるアンケート調査を今年6月~7月にかけて行っています。「統合型リゾート(IR)が日本にできたら行ってみたいですか?」との質問に対して、「是非行きたい」「機会があれば行ってみたい」と回答した人の割合は上記のグラフの通りです。

中国・タイ・マレーシア・インドネシア出身の人の間では、80%近くの人々が訪日時の統合型リゾート(IR)の利用に関してポジティブな反応を示しています。 一方、韓国(48%)、台湾(53%)、香港(51%)、オーストラリア(45%)、イギリス(39%)、フランス(42%)のように 多くの訪日主要国の間では、日本国内の統合型リゾート(IR)にそこまで強い関心を示していない ことがわかります。

訪日時の統合型リゾート(IR)の利用意向は、国ごとに二極化しており、 日本国内での統合型リゾート(IR)の整備は少なくとも 大多数のインバウンドによる需要を汲み取ったものではない ということができるでしょう。

加えてカジノに対する興味はとても低い結果に…カジノに行ってみたいと回答した外国人観光客は全体の7%

IRのどの施設に訪れてみたいですか?との質問に対する外国人観光客の回答:株式会社日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年度版)」5ページ目より引用

IRのどの施設に訪れてみたいですか?との質問に対する外国人観光客の回答:株式会社日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年度版)」5ページ目より引用

加えて、統合型リゾート(IR)内でもカジノに対する利用意向は外国人観光客の間で高くない ことも併せて把握できます。

先ほどの資料では、調査対象者に「統合型リゾート(IR)のどの施設に行ってみたいですか?」との質問をしています。それぞれの施設に関して、利用してみたいと回答した人の割合を国別に表したものが上記の表です。

カジノは統合型リゾート(IR)の中で利用してみたい施設としてもっとも低い位置にランクイン しており、日本でカジノを利用してみたいと回答した人は 全体の7%を占めるのみ となっています。

対照的に統合型リゾート(IR)内で ショッピングモールやホテル、アミューズメント施設、温泉などを利用したいと答えた人は、約40%を占めており、 訪日外国人観光客は日本において統合型リゾート(IR)に足を運ぶなら、カジノ以外を楽しみたい と考えていることが把握できます。

そもそも訪日客は日本でカジノを求めていない?!日本ならではの統合型リゾート(IR)の整備が求められる

統合型リゾート(IR)に対する訪日外国人観光客の利用意向は、国ごとに二極化しています。利用したいと考えている国もあることは確かですが、カジノに対するインバウンド需要は、そもそも大きくないようです。

そもそもアジアでカジノを楽しみたいのであれば、すでに冒頭でご紹介したマカオやシンガポールに足を運ぶ外国人観光客がほとんどでしょう。

もしインバウンド向けに統合型リゾート(IR)を整備していくのであれば、カジノ等の収益を求めすぎるよりも、統合型リゾート(IR)全体として魅力のある整備をしていくことが重要 だと考えられます。

まとめ:カジノ一辺倒の統合型リゾート(IR)の整備には要注意?!訪日客の求めるものはそれ以外の部分なのかも

成立が来年の通常国会に先送りされるカジノ法案(IR推進法)。統合型リゾート(IR)の整備並びにカジノの合法化は、多くのインバウンド誘致につながることから注目されています。

しかし、実際には統合型リゾート(IR)に対する訪日外国人観光客の利用意向は、国ごとに二極化しており、日本でカジノを楽しみたいと考えている外国人観光客はそもそも多くない ようです。

マカオやシンガポールなど有名なカジノ施設が多いアジアに位置する日本においては、カジノ一辺倒の統合型リゾート(IR)ではなく、インバウンド需要を汲み取った独自の統合型リゾート(IR)を整備していく必要があるのかもしれません。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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