観光庁は、さまざまな日本食を楽しみたい訪日外国人のニーズに応えるべく、旅館以外で食事をとる「泊食分離」を推進しています。
しかし観光庁の方針とは裏腹に、現場レベルでは実施率や実施意欲が停滞しています。
この記事では、「泊食分離」の意味・効果・観光庁による推進・現場の実情について詳しく見ていきます。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
「泊食分離」とは:名前の通り“宿泊”と”食事”を分けること
観光庁は昨年8月に「泊食分離」を推進していくという方針を明らかにしています。この「泊食分離」とは、観光客の「宿泊」に関しては旅館で、主に「夕食」に関しては近隣の飲食店を利用してもらう、「宿泊」と「食事」を分けた滞在スタイルを指します。宿泊方法として「素泊まり」「翌日の朝食のみ付プラン」というとわかりやすいでしょうか。
訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的なインバウンドプロモーションの資料を無料でダウンロードする
- 「インバウンド動画プロモーション」の資料を無料でダウンロードする
- 「インフルエンサープロモーション」の資料を無料でダウンロードする
- 「SNSプロモーション」の資料を無料でダウンロードする
- 「インバウンドメディア」の資料を無料でダウンロードする
なぜ観光庁は「泊食分離」を推進する?:訪日外国人のニーズが背景に
観光庁が推進する「泊食分離」の狙いは、日本で長期滞在をする訪日外国人からの「旅館の料理はいつも似たようなもので飽きる」「料理の値段が含まれる宿泊プランは料金が高い」などといった声に対応するためです。
また、こうした声に応えて旅館で料理を提供しない「泊食分離」を進めれば、滞在時にいろいろな食を楽しめる機会が増えること、そもそもの宿泊料が安くなることから、訪日時に旅館を宿泊先に選ぶ訪日外国人が増加するとされており、平成30年1月時点での客室稼働率は32.7%と低迷する旅館の客室稼働率が上がるということも観光庁では「泊食分離」の効果として期待しているようです。
インバウンド誘致に出遅れる旅館 いますぐやるべき6つのインバウンド対策とは?
訪日外国人が日本宿泊の際に選ぶ宿泊施設にはホテル、旅館、Airbnbなど民泊がありますが、こうした宿泊施設の中で一般的に良く選ばれるのがホテル、そして近年急激に伸びているのが民泊です。一方、実は昔ながらの旅館はインバウンドの取り込みに苦戦が続いています。 訪日外国人の宿泊先として旅館が選ばれにくい理由はいくつかありますが、インバウンドを見据えてすぐに改善出来る点、ビジネスモデルに関係するためすぐには変えられないが、インバウンドを見据えると改善が必要な点があります。詳しく見ていきましょう。目...
訪日外国人は日本滞在中に様々な日本食を楽しみたい
日本人の感覚からすると、旅館というのは1泊2日もしくは2泊3日程度で利用するもので、素晴らしい景色、温泉、美味しい料理が楽しめる場所という認識が一般的でしょう。
しかし、日本で長期滞在をする訪日外国人にとっては、旅館はあくまでも「伝統的な日本の宿泊施設」という認識です。そのため、日本の伝統を感じられる宿泊施設として旅館での体験は楽しみつつも、10日も続けて旅館の食事を食べたいと考えている訪日外国人は少数派です。
観光庁が発表している「訪日外国人の消費動向調査」を見ても、訪日外国人にとって一番の楽しみは「日本食を食べること」だという結果が出ており、訪日外国人は日本滞在中には日本の伝統的な料理だけでなく、ラーメン、寿司、お好み焼きなど、様々な食を楽しみたいと考えているのです。
訪日外国人観光客の人気「日本食」は「ラーメン」「肉料理」、なぜ満足度が高いのか?
訪日外国人観光客の約7割が「日本食」を楽しみに、日本に旅行で来日します。日本を代表する日本食といえば「寿司」を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし観光庁「訪日外国人消費動向調査」によると、意外にも「肉料理」と「ラーメン」の人気が高いことがわかりました。この記事では、訪日外国人観光客に人気の日本食と、なぜ人気となったのかをご紹介します。インバウンド市場や各国の訪日外国人に関する調査やもっと詳しいインバウンドデータ知るには?訪日ラボがまとめた「インバウンドデータレポート」を詳しく見てみる「調査...
「泊食分離」で期待される効果と実際の効果
今回のアンケートでは、「泊食分離」を実施したきっかけ、期待していること、そしてその効果についても回答を得ています。
この回答によると観光協会、DMO、旅館などで「泊食分離」に関して期待していることは
- 選択肢の拡大による顧客の確保
- 人手不足の解消
- 地域の活性化
- 連泊宿泊者への対応
などで、実際に「泊食分離」を実施したことによる効果としては
- 観光協会・温泉組合等は「顧客満足度が向上した」という回答が最多
- 宿泊施設では「人手不足が解消した」という回答が最多
でした。
まだまだ少ない「泊食分離」の実施率&実施意欲
しかし「泊食分離」自体を実施しているとする観光協会、DMO、旅館などは少なく、実に74.7%の観光協会・温泉組合等、66.2%の宿泊施設が「実施していない」と回答。「泊食分離」に取り組みたいかとの質問に対しては、観光協会・温泉組合等の39.8%が「どちらでもない」、10.5%が「どちらかと言えば取り組みたくない」、12.9%が「取り組みたくない」と回答。宿泊施設に関しては31.9%が「どちらでもない」、18.5%が「どちらかと言えば取り組みたくない」、23.6%が「取り組みたくない」と回答しています。
「泊食分離」を進めたい観光庁、しかし現場では意識のズレが存在
訪日外国人の満足度向上、旅館自体の稼働率を高めるようと観光庁が進めている「泊食分離」ですが、アンケート結果からは、現場では「泊食分離」が必要で今後取り組もうと考えているわけでもなさそうだということが伺えます。
これは観光庁が発表している「泊食分離を進めれば訪日外国人のニーズを満たすため、予約が増えて稼働率が高まる」というロジックの裏づけが弱いこと、必ずしも全てのケースでそれが当てはまるわけではないためでしょう。
そもそも「泊食分離」のアイディアとしては、旅館が本来持っていた「食事」という機能を、旅館付近にある飲食店、料亭などにアウトソースすると考えることが出来ますが、
- 旅館の立地が山奥で周辺に飲食店がない
- もしくはこうした飲食店があったとしても営業時間が短い(夜9時で閉店など)
- 訪日外国人目線で魅力がない(外国語での対応が出来ない)
などのケースでは、旅館で食事が出来なくなってしまうと単純に不便なだけです。
22時以降出歩く訪日客激減:夜遊びできず 食後すぐホテルへ…ナイトタイムエコノミーの発掘が急がれる結果に 大阪「外国人夜間動向調査」で
訪日外国人が日本で感じる不満点の1つに 「夜間のエンターテインメントが充実していない」 というものがあります。これに対し、実際に現時点で 訪日外国人は夜間にどのような行動をしているのか? といった調査を大阪観光局 マーケティング室が行っています。この大阪観光局が行っている「外国人夜間動向調査」から訪日外国人の夜間の行動を探ってみましょう。なお今回の分析にはJapan Connected‐free Wi-Fiを利用したユーザーが利用を許諾した情報のログデータとなり、分析対象となっているログは...
また、仮に「泊食分離」を進めるにしても、料理を出さなくなることで旅館側の客単価は下がり、その落ち込んだ分の売上の補填が出来るほどに予約が入るのか、さらにプラスを生み出すほどの訪日外国人の宿泊予約が増えるのか?というと、そこに明確な回答は出来ないのが実際です。
また、完全予約制であるために人数分の食事を確実に用意出来る旅館と異なり、町にある飲食店の場合は団体客の対応がスペース的に難しい、禁煙席の用意が難しい、ベジタリアンや宗教ごとの細かい料理へのリクエストに対応しづらいといった問題もあります。
これでは「たばこの“ある”オリンピック」…原則屋内禁煙のはずの健康増進法改正案が「骨抜き」状態で閣議決定:日本の受動喫煙対策は進むのか?
政府は3月9日、たばこの受動喫煙対策をさらに厳しくする 健康増進法改正案 を閣議決定しました。日本でもたばこの受動喫煙は問題とされてきましたが、近年特に注目が集まるようになった背景には 2020年に開催を控えた東京オリンピック・パラリンピック があります。国際オリンピック委員会(IOC)は1988年から選手村や競技場を禁煙とし、「たばこのないオリンピック」の実現を目指してきました。また、2010年にはWHO(世界保健機関)と開催都市も原則的に屋内禁煙とする方針となりました。こうした背景を受...
飲食店でのインバウンド対策で必須知識!訪日外国人に多い「ベジタリアン」とは?
飲食店が訪日外国人観光客を接客する場合、別の記事でご説明したそれぞれの国ごとの食習慣・マナーの違いのほか、嗜好や宗教によって「食べることが出来ないもの」「食べてはいけないもの」「食べたくないもの」があることに注意が必要です。この記事では訪日外国人観光客の嗜好によって気をつけるべきポイントとして、海外では多い「ベジタリアン」についてご紹介します。 目次ベジタリアンとは?ベジタリアンの種類ビーガン/ピュアベジタリアン(純粋菜食主義者)ダイエタリー・ビーガンフルータリアンラクト・ベジタリアン(乳...
今さら聞けないインバウンド基礎知識『ハラルフード』とは?対策や事例から学ぶムスリム対応
「ハラルフードってなに?」これに即答できますか?また、どのように答えるでしょうか?インバウンド担当者の方でも「ハラルフードとは?」と聞かれて具体的に答えることが出来る人は、いまだ多くないでしょう。今後インバウンドにおいては、ムスリム系訪日外国人の対応が重要になってきます。今回の記事ではインバウンド担当者なら知っておきたい「ハラルフード」の基礎と事例を解説していきます。インバウンド受け入れ環境整備の資料を無料でダウンロードする「翻訳・多言語化」の資料を無料でダウンロードする「多言語サイト制作...
「泊食分離」は地域ぐるみで推進する事が必要
今まで述べて来たように「泊食分離」は宿泊施設、飲食店、観光地をそれぞれ分断して考えてしまうと、どこかでマイナス点が見てくるものです。しかし、これを地域ぐるみで進める事が出来れば地域全体の活性化に繋がる1つの手段になると考えることも出来ます。
今回のアンケートでは「泊食分離」におけるメリットとして「顧客満足度が向上した」、「地域が活性化した」、「人手不足が解消した」、「コストが削減できた」といった声も聞かれています。
これについては、宿泊施設のみが「泊食分離」に対応する形で食事なしの宿泊プランを設けるのではなく、周辺の飲食店、観光協会、DMOを巻き込んだ宿泊プラン、観光プランの確率、地域起こしのためのご当地メニューの開発、多言語での接客対応を習得するためのインバウンド研修の受講など、観光産業に属する共同体として対応していく必要が求められるでしょう。
最近インバウンドで良く耳にするDMOって何?そもそもDMOとは何なのか、なぜ日本のインバウンドにもDMOが必要なのかを解説
インバウンドビジネスに関わる皆さんも、最近DMOという言葉を耳にする機会が多いのではないでしょうか?でも「そもそもDMOが何なのかわからない。」という方もいるかと思います。そんな方に向けてDMOとは何なのか?日本でのDMOについて解説していきます。目次DMOとは何か?DMOの目的インバウンドにおけるDMO:日本版DMOがなぜ必要なのか?インバウンドで日本版DMOが必要な理由その1:関係者の巻き込みが不十分インバウンドで日本版DMOが必要な理由その2:データの収集・分析が不十分インバウンドで...
訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的なインバウンドプロモーションの資料を無料でダウンロードする
「インバウンド動画プロモーション」の資料を無料でダウンロードする
「インフルエンサープロモーション」の資料を無料でダウンロードする
<参考>
2025年最新版!インバウンド×デジタルマーケティング戦略【訪日ラボトレンドLIVE スペシャルver.】
2024年も残りわずかとなりました。来年2025年は大阪・関西万博が開催されるほか、中国市場の回復などもあり、今年以上の盛り上がりが予想されています。2025年に向けて、訪日旅行者へ向けたマーケティング戦略を強化していきたいと考えている事業者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、株式会社movが毎月開催している「訪日ラボトレンドLIVE」をスペシャルver.としてお届け。今こそ知っておきたい「インバウンド×デジタルマーケティング戦略」を徹底解説します!
<本セミナーのポイント>
- 観光・インバウンドに詳しい専門家3名が登壇!
- 2025年に向けた「インバウンド×デジタルマーケティング」の戦略や施策について、「深掘り」した情報を「いち早く」「無料で」学べる!
-
質疑応答の時間もご用意。インバウンドに関する疑問・お悩みについて、専門家から直接「ヒント」を得られる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→2025年最新版!インバウンド×デジタルマーケティング戦略【訪日ラボトレンドLIVE スペシャルver.】
【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!