京都のオーバーツーリズム・観光公害問題 | 海外事例・解決のためのインバウンド対策とは?

京都のオーバーツーリズム・観光公害問題 | 海外事例・解決のためのインバウンド対策とは?

2018年10月16日に発表されたJNTOの『訪日外客数(2018年9月推計値)』によると、2018年9月の訪日外国人は2013年1月以来、5年8カ月ぶりに前年度月比を下回りました。しかしこれは台風21号と北海道胆振東部地震の影響による一時的な現象とみられ、今後も訪日外国人観光客の数は増え続けると思われます。

訪日数が増え続ける中で顕在化しているのが観光公害『オーバーツーリズム』です。ある地域で観光客が増加することにより、そこに定住する住民が日常生活を送りづらくなるという現象です。今回は観光公害が大きな問題となりつつある京都を例に考えてみましょう。

「観光客は帰れ!」人口の倍近い外国人観光客が訪れるスペインで強まる観光客排斥の動き:近年の海外旅行ブームから多発する「観光公害」

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京都を巻き込む「インバウンド狂騒曲」の実態

京都が体験している観光公害『オーバーツーリズム』とはどのようなものでしょうか?Twitterのツイートでは、外国人観光客の多さをつぶやくものが目立ちます。

特に悪感情はなくとも「外国人多いな、圧倒される」というタイプのツイートが多いようです。

しかし、中には京都を観光する外国人の多さは度を越していると感じる人もいるようです。

こうした状況の中で、お店の対応も悪くなっていくと心配する声もあります。

「いけず」とは、単なる意地悪というよりは、京都の文化で「愛想よくしてるけど、心はなかなか許さない」というようなニュアンスを持ちますが、この「愛想よさ」すら捨てて邪険な接客が増えているという心配です。訪日外国人の爆発的な増加が、京都の文化すら変えてしまう可能性は否定できません。

「観光公害」とは何か?京都の夜桜ライトアップ中止に見る実際の観光公害事例

近年日本を訪れる訪日外国人の数は急増していますが、その中でも、京都を訪れる訪日外国人の伸びは他県に比べても圧倒的です。平成27年度の京都観光総合調査によると、平成27年1月〜12月に京都を訪れた外国人の年間外国人宿泊客数は初めて300万人の大台を突破し、過去最高となる316万人を記録 しました。これは 対前年比+約73%(+133万人)の増加 となり、訪日外国人観光客1974万人のうち、約6.2人に1人が京都に宿泊していた ことになります。こうした状況は観光収入という面ではありがたいのは...

観光公害がエスカレートした海外事例

観光公害がエスカレートした海外の観光地では、次のようなことが起きています。

  • 地元の文化の変容(スペイン・イビザ島)
  • 地元住民による観光客への攻撃(スペイン・バルセロナ、マヨルカ)
  • 地元住民の流出(スペイン・バルセロナ、イタリア・ベニス)
  • 環境破壊(タイ・ピピレイ島、フィリピン・ボラカイ島)

上記の観光地ではいずれも観光客が増えすぎたことによるデメリットがメリットを上回る状況が続いたといえます。

京都の観光公害『オーバーツーリズム』を数字から見ると

今度は京都の観光公害を『平成29年 京都観光総合調査結果【概要】』を使って数字から見てみましょう。

平成29年 京都観光総合調査結果【概要】より抜粋

平成29年 京都観光総合調査結果【概要】より抜粋

京都市の発表したデータによると、京都における訪日外国人数は以下のようになっています。

【1日あたり何人ぐらいの訪日外国人が京都に宿泊するのか?】

  • 延べ人数 721万人 (対前年比14.2%増、89.8万人増)
  • 721万人÷365日=約2万人/1日あたり

京都に宿泊している外国人数は1日あたり2万人となっています。日帰り旅行客や、統計に入っていない違法民泊への宿泊は含めていません。

平成30年10月現在の京都市の推計人口が約147万人ですから、人口の1%強にあたる訪日外国人が、京都で毎日寝泊まりしている計算です。普通に考えれば、訪日外国人宿泊により夜間人口が1%も増え、日中人口がそれ以上に急増すれば、街としてのインフラはどこかの時点で限界を迎えます

訪日外国人の観光消費額はどれぐらいなのか?】

  • 観光消費額 1兆1,268億円(2017年値)
  • 京都市民1人当たりの年間消費支出額 145.5万円
  • 1兆1,268億円÷145.5万円=観光消費額は京都市民 77.5万人分の年間消費支出に相当

京都市民77.5万人の年間消費支出が創出されている現状を分かりやすく考えると、平成30年10月現在の京都市の推計人口が約147万人ですから、京都市民の半分近い人口が京都市内で消費者として上乗せされたということです。

しかし、訪日外国人が経済的にこれほどの貢献をしているにも関わらず、ありがたがられないという原因はこの大きな収入が市民には「再分配されない」という現実があります。

「観光公害」をもたらす受入れ自治体の「無策」

観光は世界経済において第三位の輸出産業という認識がされつつあります。観光産業の規模は世界的にみると自動車産業の規模よりも巨大になりつつあるのです。

世界各国で巻き起こっている観光公害の事例を見ると、一部の観光従事者が地元で暮らす住民の「住環境」である街や自然を「観光資源」として勝手に切り売りしつつ、その利益を還元しないという一貫した構図が見受けられます。

街の文化や自然を誰かが私物化することは許されないはずですが、観光に関しては資源の公益性が問われずに野放しになっているのです。こうした状況について、世界各国で議論と対策が取られつつあります。

インバウンドにおける自治体の責任観光誘致と共に、その利益の再配分にあるという考え方もメジャーとなりつつあるようです。

デービッド・アトキンソン氏「少子高齢化の日本では『移民』より『訪日観光』を促進すべき」…その理由とは?

2018年7月4日、「ヒト・モノ動きの未来塾」の勉強会が行われました。講師として登壇したのは株式会社小西美術工藝社代表取締役、デービッド・アトキンソン氏です。「ヒト・モノ動きの未来塾」は運輸・観光領域の再定義、基幹産業化するために必要となる取組について、様々な企業⼈・個⼈・官庁関係者が専⾨分野を越え議論を深め交流しようと立ち上げられたものです。デービッド・アトキンソン氏は最新作『新・生産性立国論』をはじめ多数の著作を持ち、グローバルな視点から日本のインバウンド業界への提言を続けています。数...

まとめ:いまインバウンド業界に求められるのは観光産業に従事しない一般市民への思いやり

少子高齢化の日本においてインバウンド産業を否定することはもはや現実的ではありません。世界中で議論が巻き起こっている「サステイナブルで公益性の高い観光地づくり」に各自治体が本気で取り組む必要がありそうです。

世界遺産を失う恐れ?劣化が止まらない厳島神社 倒壊寸前に:背景には訪日客の身勝手な行動が… そろそろ本気で考えなければならない「観光公害」

以前の記事でもご紹介したように、JTBの資料によると、2018年の訪日外国人観光客数は 3,200万人 に達することが予測されています。2020年の東京オリンピック。パラリンピック開催時に 4,000万人 の訪日外国人観光客誘致を目指す日本では、ここ数年訪日外国人観光客数は順調に伸び続けています。こうした状況の中、大きな問題となっているのが 観光客のマナー違反などを指す「観光公害」。 世界遺産に登録される広島県廿日市市に位置する世界遺産・厳島神社でも近年「観光公害」が深刻化しているようです...

そろそろ本気で考えなければならない『観光公害』 京都 増えすぎた訪日客による混雑解消のため、市バスの1日乗車券が値上げへ

今年3月に、京都を訪れる訪日外国人観光客のマナーが悪化したことが問題で京都の祇園の夜桜のライトアップが中止になったという話題がありました。最近はこのような形で増えすぎた訪日外国人観光客による弊害、つまり 「観光公害」 がときおり報告されるようになってきましたが、今度は京都市の市バスが混雑しすぎて乗れないという問題が発生しています。インバウンド受け入れ環境整備の資料を無料でダウンロードする「翻訳・多言語化」の資料を無料でダウンロードする「多言語サイト制作」の資料を無料でダウンロードする「多言...

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<参考>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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