オーストリアは、マリア・テレジアゆかりのシェーンブルン宮殿があるウィーン、モーツァルトの生まれ故郷のザルツブルクを擁する古くからの観光の国です。同国を案内するガイドには国家資格が義務付けられています。
今年、日本では通訳案内士法が改正され、誰でもガイド業務をすることができることになりました。オーストリアと日本のガイドの違いはどのようなものなのでしょうか。ウィーン在住のオーストリア公認ガイド、高崎守弘氏に、お話を伺いました。
改正通訳案内士法施行、無資格で有償の観光ガイド可能に
改正通訳案内士法が2018年1月4日に施行されました。これは2020年に訪日外国人旅行者を4,000万人とする政府の目標に向かって進められている規制緩和のひとつです。通訳案内士法の改正後は、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、今までの通訳案内士と呼ばれていた人は「全国通訳案内士」となりました。これによって、今までは有資格者でなければできなかった訪日外国人へのガイド行為が、資格を持たずとも報酬を得て行えるようになります。今回の記事では、通訳案内士法が改正された背景や、改正によって注目される訪...
インバウンド対策なにから始めたら良いかわからない?
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日本とオーストリアを比較
日本の人口は約1億3千万人、対してオーストリアは約880万人です。オーストリアは日本に比べてかなり小ぶりな国だといえます。
しかしながら、外国人訪問者数でみますと、2017年の統計で日本は28,691,000人、オーストリアは29,460,000人です。国の規模を考えると、オーストリアが、どれだけ多くの外国人の訪問を受け入れているかお分かりいただけるでしょう。
それは、オーストリアの国を挙げた観光への取り組みの結果です。

オーストリア公認ガイド(国家資格)になるためには
オーストリア公認ガイドになるには、2年に1回の割合で行われる試験の前に、2年間、ガイド養成学校に行く必要があります。州によって試験の頻度は異なり、めったにガイドを補充しないブルゲンランド州は10年に1度しか試験がありません。
ガイド養成学校の授業や試験は、すべてドイツ語で行われます。めでたく試験をパスしたあと、ガイド登録をして、ガイド業務ができるようになります。
ガイド試験「筆記試験、口頭試問、実地試験」
ガイド試験は大まかにわけて三つです。すなわち、筆記試験、口頭試問、実地試験です。
筆記には、オーストリア国家の法律、また簿記も含まれており、口頭試問ではそれぞれの分野のスペシャリストが試験官を務めます。例えば、地質学や美術史などでは、地元の大学の教授が担当することが多いのです。
そして、日本の全国通訳案内士試験にはない実地試験があります。これは、実際にバスでのガイディングをチェックされるというものです。

観光案内にベストなルーティングを考えることも仕事
実地試験では、実際にバスのマイクを持って観光案内をします。座席には、数人の試験官が同乗していて、渋滞の場合の対処方法などもあわせ、すべての動作がチェックされます。
当日、「どこからどこまで行ってください」という試験問題が出されます。すばやくベストなルートを考えて、バスのドライバーに指示をだし、該当区間で有名な観光場所が含まれている場合は、かならずそこを通るようにします。なお、この実地試験の際のガイディングはドイツ語で行われます。

日本語の試験はオプション
ガイド養成学校を卒業し、試験もパスすると、まずはドイツ語の公認ガイドとなります。その後、オプションとして各言語の試験を受けます。
日本語の試験もあり、試験内容はオーストリアと日本との関わりについてなどについて問う試験が、口頭で行われます。この時、ようやく日本語の試験となり、この試験をパスすると日本語のオーストリア公認ガイドとなるわけです。
闇ガイドの取り締まりで逮捕者も
このように厳しい試験をパスしたオーストリア公認ガイドは、法律で守られています。
免許なしに外国人がガイド業務を行ってはならないと刑法で定められています。違反者は、逮捕され、罰金支払いの上、7年間、もしくはそれ以上EUに入国禁止という厳しい措置がとられます。実際に逮捕者も出ており、日本人で逮捕された者も複数います。
オーストリアは国をあげて観光事業を行っている
訪日外国人は、海外旅行をよくする層が多く、日本以外でも観光ガイドを雇うことも多いでしょう。それは、日本のガイドが他国のガイドと比べられているということで、旅行業界関係者は考えておくべきでしょう。
観光国としてのオーストリアに学ぶところは大いにあります。オーストリア公認ガイドは、資格取得までに困難を極めますが、その分、オーストリア国家が守ってくれます。日本の全国通訳案内士の処遇には、まだ考えるべき余地があるでしょう。
インバウンド対策なにから始めたら良いかわからない?
「インバウンドコンサル」を資料で詳しくみてみる 「調査・リサーチ」を資料で詳しくみてみる 「インバウンドデータ」を資料で詳しくみてみる 「インバウンド研修」を資料で詳しくみてみる<参考>
- ウィーン観光情報 ※ここからオーストリア公認ガイド手配依頼も可能
- オーストリア政府観光局
- ウィーン市ガイド協会(英語)
- 世界各国・地域への外国人訪問者数(JNTO)
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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