イスラム教徒(ムスリム)は日本人には馴染みのない習慣や宗教的な儀礼を持つことで知られています。特に女性には差別や服装などの厳しい戒律が課せられていると思われがちですが、実際はそうでもありません。
今回は、ムスリム対応の政府方針やムスリム女性の特徴や文化、インバウンド対策について解説していきます。独特の文化を理解した上で、ムスリムへのインバウンド対応に活かしていくとよいでしょう。
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訪日ムスリム(イスラム教徒)旅行者対応に必要なことは?
まず訪日ムスリム旅行者に対して必要な施策について解説していきます。訪日旅行者の中におけるムスリムの存在感は、その日本にはない文化の影響もあって年々増してきています。ここでは政府主導で制定されたムスリム対応のためのアクションプランを紹介します。
「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」
「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」とは観光庁主導で2018年5月に取りまとめられたムスリムに対する具体的な施策のことです。
ムスリムを多数抱える国々からの訪日旅行客が増加していることを背景に、多様な宗教的・文化的習慣を持っている人々が安心して日本旅行ができるための環境整備を行うことを主な目的にしています。
現在ムスリム人口は世界人口の23%と言われ、今後その割合は増加し、世界最大の宗教になると言われています。ムスリム旅行者は今後の成長余地が大きいと見込まれていることもアクションプラン策定の大きな要因になったとみられます。
「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」内容は?
ではこのアクションプランの具体的な内容を紹介していきます。ムスリムには日本人には馴染みのない文化を持っています。1日5回の礼拝やハラールフードはその代表でしょう。本アクションプランではそのムスリム独特の文化を受け入れる環境整備に大きな重点が置かれています。
一つ目が受け入れ環境整備に向けた知識啓発です。セミナーなどを通じてインバウンド事業者に向けにムスリムを受け入れるために必要な知識の提供を支援します。
二つ目が食事環境の整備です。ムスリムは口にしてよい食材が戒律で厳格に定められているため、飲食店等にハラールフードを用いたレシピ開発支援を行うことも。
三つ目が礼拝環境の整備です。ムスリムには1日5回の礼拝を行うことが定められています。旅行中は礼拝はマストではありませんが、熱心なムスリムは旅行中でも礼拝をします。そのため常設礼拝室の整備のほか、施設内の空いているスペースの一時提供や近隣のモスクや礼拝対応のある施設の案内等、礼拝環境の整備を進めるものです。
四つ目がムスリム旅行者への情報提供です。訪日ムスリムに対してムスリム対応の飲食店や礼拝設備などの情報を告知する取り組みを進めるとしています。
このような政府主導で策定されたアクションプランは、個々の事業者が参考にできる点も多いので参考にしてみてください。
世界人口の「4人に1人がイスラム教徒」となった今、訪日ムスリム旅行者を無視するわけにはいかない…そのための具体的なインバウンド対策とは?
近年、日本を訪れるムスリムの訪日外国人が増えていますが、観光庁をはじめとする各省庁では訪日ムスリム旅行者向けの具体的な施策を取りまとめ、「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」を策定しています。 これは今後日本におけるムスリム対応を推進するための具体策を取りまとめたもので、今後政府はこのプランに基づいた取り組みを進めていくとしています。 [blogcard url=”https://honichi.com/news/2017/12/20/musliminbound/...
ムスリム女性の地域による戒律の違い・対応する際の注意事項
ムスリム全体の受け入れについて確認してきましたが、ここではムスリムの女性により焦点を当てて解説をしていきます。一口にムスリム女性と言っても、その文化や習慣は出身地によって様々。地域によってムスリム女性も様相が違うことを理解してください。
中東と東南アジアでかなり違いがある
ムスリム女性にはムスリム男性よりも厳しい戒律が課せられています。しかし実際には戒律の厳しさは出身地域によってまちまち。一般的にはインドネシアなど東南アジアのムスリム女性の方が中東の人たちよりも服装や化粧の面で自由な生活を送っているといわれています。
ファッション・化粧など
ムスリム女性は基本的に肌を他人に見せることは禁じられています。そのため長袖とロングスカートが基本です。特に目立つのが頭を隠すのに用いる「ヒジャブ」と言われる布。
近年ではインドネシアを中心に服装がカジュアル化し、ヒジャブを用いたファッションを楽しむ人々も増えています。
化粧に関しても地域によって違い、中東の人たちは夫の前だけで化粧をする一方、東南アジアでは外出する際も化粧をします。化粧は濃いめの人が多いようです。
異性間のスキンシップは禁止
ムスリムは男性女性を問わず挨拶の際、握手をします。しかし、人によっては(特に女性)異性とは握手をしない人もいます。挨拶以上のスキンシップは家族以外の人とは禁止されています。気軽にムスリムとスキンシップをとることは控えた方がいいでしょう。
ムスリム女性へ向けたインバウンド対策とは?
上記ではムスリム女性に課せられた戒律や文化習慣について解説してきました。それを踏まえ、ここではムスリム女性にはどのようなインバウンド対策が取れるのかを解説していきます。
1. 設備等の対策
ムスリム女性に対する設備面での対策をご紹介しましょう。ムスリム女性は人前で肌を露出することができません。そのため温泉などの入浴施設では個人風呂や水着着用での入浴を認めることが必要です。
加えて異性間のスキンシップができないため、急病時の診察は女医に頼むことが望ましいです。日本では長袖の販売期間が限定されているため、年中肌の露出を抑える衣服を扱うスカーフ専門店などはムスリム女性にとって好まれる傾向にあります。
また日本には「ヒジャブ」を着用する女性が利用できる美容院がないのも問題です。ムスリム女性は髪を家族以外の男性には見せません。そのためムスリム女性は、女性専用の美容院へのニーズが高いのです。
着物をフックにムスリム観光客を誘致せよ!ヒジャブ×着物のトータルコーディネートでムスリムインバウンドを誘致した事例
2019年2月より京都の着物レンタル夢館では、訪日ムスリム観光客をターゲットに、着物に似合う和柄を取り入れたヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭や身体を覆うスカーフ)のレンタルを開始しました。近年のムスリム女性ファッションの多様化をふまえ、京都と横浜のムスリムフレンドリーな着物レンタルショップのサービスについて、インバウンドのムスリム受け入れ対応例の1つとして見ていきましょう。 [com_category_dl_btn name="調査・リサーチ(総合)" slug="research"] ...
2. 接客の対策
接客面でもムスリム女性には特別の気遣いが必要な場面があります。先述のようにムスリム女性は異性間でのスキンシップが禁止されています。
そのためムスリム女性に対して男性店員が釣銭を渡す時など女性客の肌に触れることがあってはなりません。ムスリム女性に対しては女性が対応した方が安心といえます。
これらに加えて、もちろんハラールフードや礼拝設備の充実は必要です。
ムスリムフレンドリーとは/ハラル認証・ローカルハラルとの違い
ムスリムフレンドリーとは、ハラル認証を受けることが何らかの理由で難しい場合に、できる範囲でイスラム教徒に対する配慮のある製品や施設やサービスを提供することや商品を意味します。 ハラル認証とは各認定機関により定めされた基準に合致していることで取得のできる免許のようなものです。 一方で、ハラル認定には国際的な基準が存在しない、認証を行う団体が国内で乱立しているなどの問題が発生しています。ハラル認証とは別に「ムスリムフレンドリー」「ローカルハラル」といった基準も存在します。 それぞれの...
日本流のおもてなしも文化によっては失礼に当たります。これは異文化交流の難しい点です。相手の立場や習慣を理解した臨機応変な対応が求められています。
まとめ:ムスリム女性に向けたインバウンド対策を
ムスリム教徒は、日本人には理解しがたいほど生活の中に宗教的な習慣が根付いています。だからこそ、ムスリムが安心して旅行できるようにするには環境整備が不可欠。
政府主導による大きなアクションも必要ですが、一つ一つの事業者がムスリムに対して理解を深めることも重要です。とりわけ厳しい戒律があるムスリム女性には、丁寧で細やかな気遣いが求められます。
訪日旅行者が増え続ける昨今。インバウンド事業者としては外国人に対して自社をプロモーションし、売り上げにつなげたいところです。
しかし、ただ闇雲に広告を打てばよいものではありません。それぞれの外国人が持つ文化などを理解した上で、環境を整備することもまた必要なのではないでしょうか。
これまで紹介したようなムスリム女性の特徴と対策方法を知った上で、日本流の本物の「おもてなし」を実現してみてはいかがでしょうか。
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