医療ツーリズム(メディカルツーリズム)とは?注目を集める背景・日本の現状・メリット・問題点・事例

公開日:2019年05月14日

医療ツーリズム(メディカルツーリズム)」は、医療を受けることを目的に海外へ渡航する、医療と観光を組み合わせた旅行のことです。

近年、この医療ツーリズムは訪日旅行の一形態として、中東などアジア圏からの観光客が日本を訪れる動機として注目を集めています。

しかし、日本は現状、海外に比べて医療ツーリズム対策が遅れていると言わざるをえません。そこで、この記事では、実際に医療ツーリズム向けのインバウンド事例や導入のメリット、効果を解説します。

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医療ツーリズム(メディカルツーリズム)とは?

医療ツーリズム(メディカルツーリズム)は、「医療観光」とも呼ばれており、他国の高度で発展した治療や検診を受けるために渡航すること、または渡航してくることです。

医療ツーリズムという言葉が商業主義を連想させるとして「国際医療交流」「医療渡航支援」という言葉を使う場合もあります。

対象は、健診や美容形成手術、臓器移植、再生医療など多岐にわたります。

メディカルツーリズムとは

メディカルツーリズムとは、医療サービスの利用を目的に海外を訪れることです。観光と医療サービスをセットにした海外旅行も含まれます。医療分野のサービスでは安心と安全が重要視されており、加えて国内の医療技術の高さから、日本のインバウンド業界では非常にポテンシャルの高い分野と目されています。特に中国では、日本の医療技術の高さ、がん発症者の生存率の高さに注目が集まっています。中国国内のある報道によれば、中国でがんを発症してから5年後の生存率は31%です。一方日本の国立がん研究センターの統計では、08...

医療ツーリズムが注目される理由

治療目的の場合、同伴者が一緒に滞在し周辺観光をする事例や、医療ツーリズムを受け入れている施設は英語が通じるため、旅行中にケガや病気になった旅行者が訪れることがあるといった理由から、インバウンド対策としても非常に注目されています

日本で医療を受ける外国人は待ち時間の短縮や高い医療技術、病院の衛生環境、質の高いスタッフの対応などを求めて日本にやってきます。

環境整備や広報等のインバウンド対策が必要

医療ツーリズム」で集客を行おうとした場合は、安心して医療サービスを受けられるように病院や周辺施設での外国語対応、同伴者長期滞在のための施設確保、医療水準の引き上げなど環境整備はもちろん、海外への情報発信や営業といった広報活動などのインバウンド対策を行う必要があります。

そのため、1つの病院だけで行う、施設だけで行うというよりは、病院や周辺施設、自治体などが協力して取り組む必要があります。

医療ツーリズムが日本経済を支える?注目の理由・医療ビザ・経済効果・課題

日本は世界中から見ても、医療のレベルが高く高度な治療を受けることができる国の一つです。 そんな日本を代表する産業の一つである医療が、 観光業界のインバウンド対策として注目されています。より高度な治療を受けるために海外を訪れることを「医療ツーリズム」と呼びます。日本ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、「メディカルツーリズム」とも呼ばれ、世界では一つの産業として確立されています。昨年ごろから日本のインバウンド観光業界でもムーブメントとして認識されるようになった一方で、どちらかと言えば中...

医療ツーリズムの課題、日本は対策が遅れている?

では日本の医療ツーリズム対策の現状について説明します。

患者の安全性や医療水準、院内の改善活動などを総合的に評価した国際医療機関評価機構JCI(Joint Commission International)認証というものがあります。世界で最も厳しい基準をもつ医療施設評価基準と言われており、医療ツーリズム先を決める際の基準にもされています。

日本は現状、このJCI認証の医療機関が29施設、それに比べ中国は110施設、タイは66施設(2019年4月時点)と他のアジア諸国に比べて少ないという問題点があり、海外に比べて医療ツーリズム対策が遅れていると言わざるをえません。

医療ツーリズム向けのインバウンド対策を行うメリット・問題点

では医療ツーリズム向けのインバウンド対策を行うことはどのようなメリットがあるのでしょうか。医療ツーリズム対策を行うメリットとしては、「医療ツーリスト」の観光消費額の高さや、医療機関の設備や技術向上が挙げられます。

メリット1:医療ツーリストの観光消費額の高さ

医療ツーリズムで訪れる観光客は、ビザの取得、同伴者を伴う長期滞在、観光も行うといったことや、海外で治療を受られるほど金銭的に余裕のある層が訪れるため、観光消費額が非常に高いです。そのため一般向けのインバウンド対策よりも高い効果を得られる可能性があります。

また、外国からの患者の場合、健診も治療も健康保険を使わずすべて実費で診療費を支払うため、日本人の3倍ほどの金額を支払ってもらえます。

メリット2:医療機関の設備・技術向上

病院側も得た収入を医療機器への投資、人件費に回したり、多くの症例を扱ったりといったことで医療技術の向上が期待できます。それが結果的に地元の人に還元される、技術や設備が向上することで更に医療ツーリストが増加するといった好循環が期待できます。

一方、問題点も:国内医療の崩壊を防ぐ必要

ただし、医療ツーリズムの発展には問題点もあります。

日本医師会は、医療ツーリズムが日本国内の医療制度を崩壊させるのではないかと懸念しています。

外国からの渡航者が日本人患者より高額となる治療を求めた場合、外国人患者を受け入れた方が病院の利益は大きくなります。よって、病院が利益優先で際限なく医療ツーリズムを取り入れれば、日本人患者の治療がおろそかになってしまうのではないか、と心配されているわけです。

日本医師会は、こうした点を踏まえて医療ツーリズムに関する明確なガイドラインを作る必要があると提唱しています。

事例:医療ツーリズム向けのインバウンド対策

では実際に医療ツーリズム向けのインバウンド対策としてどのような事例があるのでしょうか。

「あいち医療ツーリズム研究会」「国立医療研究センター病院国際感染症センター」の事例を紹介します。

1.あいち医療ツーリズム研究会

あいち医療ツーリズム研究会」は、検診から治療までを同一のコーディネーターがサポートをするといったサービスを展開したり、医療展覧会や中国向けのSNS「WeChat」などを利用してPRを行うなどインバウンド対策を行っています。

ターゲットとしている中国人の富裕層は、中国で問題になっている医師不足による待ち時間の長さや、検査単体での判断が無い日本で、少ない待ち時間で高品質な医療を受けられれるというメリットを求めていると分析し対策を立てています。

医療ツーリズムといえば愛知」を目指しています。

2.独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター

独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター」はFacebookを活用し、SNS・ソーシャルでの発信に力を入れています。スタッフの活動や感染症に関する感度の高い情報を積極的に発信することで医療技術が高いということを示して集客を行っています。

タイ、中国とコロナ禍でのメディカルツーリズム開始

タイの経済活動再開を実施するため、経済を統括するソムキット副首相は7月からの外国人旅行者の受け入れ再開の検討を指示しました。タイ政府は新型コロナウイルス対策での入国規制を7月1日から緩和し、メディカルツーリズムで約3万人の入国を14日間の検疫隔離などを条件に認めました。

タイのメディカルツーリズムは、民間系医療機関によるメディカルツーリズム発祥国とされ、ホスピタリティの高さや安価な医療費などで定評があります。また世界的に有名な観光資源が豊富にあり、有名リゾートや歴史的な文化遺産など、医療後の観光も楽しめることも人気の理由の一つです。

コロナ禍での収入源として、メディカルツーリストの入国数に期待が寄せられています。

中国企業タイが「メディカルツーリズム」で世界100兆円規模に挑む:ウィズコロナ時代の突破口となるか

1990年代以降、グローバル化の進行により世界中で国境を越えた人の動きが活性化し、インバウンド市場は拡大しています。その中でも世界におけるメディカルツーリズムの経済規模は拡大を続けており、その市場規模は1,000億ドル、日本円で100兆円以上ともいわれています。メディカルツーリズムとは医療観光や医療ツーリズムともいわれ病気の治療や手術、検診など医療目的のための他国への旅行を意味します。外貨獲得のためにもメディカルツーリズムは重要視されていますが、現状では日本は東南アジアに遅れを取っています...

医療ツーリズムはインバウンド誘致に高い効果が望める

医療ツーリズムについて」「医療ツーリズムの現状、事例」「医療ツーリズムのメリット」について紹介してきました。

医療ツーリズムは、医療を受ける本人だけでなく同伴者も長期滞在する傾向があり、また地域の医療水準の向上にも貢献するためメリットが大きいのが特徴です。

最初に対策をするまでのコストや労力が大きいということがありますが、効果が出始めれば高いインバウンド効果が期待できます。

ただし、国内の医療が崩壊するようなことは避けなければいけません。ガイドラインを策定するなどして、日本人患者の治療と医療ツーリズムによる利益とを両立させていく必要があるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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