メディカルツーリズムとは | 注目の理由、医療ビザ、メリット・デメリットを解説

公開日:2019年05月20日

メディカルツーリズムとは、医療サービスの利用を目的に海外を訪れることです。観光と医療サービスをセットにした海外旅行も含まれます。

医療分野のサービスでは安心と安全が重要視されており、加えて国内の医療技術の高さから、日本のインバウンド業界では非常にポテンシャルの高い分野と目されています。

特に中国では、日本の医療技術の高さ、がん発症者の生存率の高さに注目が集まっています。

中国国内のある報道によれば、中国でがんを発症してから5年後の生存率は31%です。一方日本の国立がん研究センターの統計では、08~10年にがんと診断された人の5年後生存率は67.9%であり、比較すると倍以上の違いがあります。また、都市部の晩婚化を受け、卵子凍結といった生殖補助医療にも中国人の患者の姿が見られるようになってきました。

こうした需要を取り込み、医療機関の仲介や関連する翻訳サービスなどを提供する業者も増えています。先述の報道によれば仲介価格は200万~1,000万円超インバウンド市場でも桁違いの価格帯となっています。

本編では、従来ならばお金で買えないはずの「健康」が市場に参入し成立するメディカルツーリズムについて解説します。


メディカルツーリズムとは?

まずインバウンド業界で徐々に存在感を高めているメディカルツーリズムについての基本情報をまとめます。

メディカルツーリズムの基本

メディカルツーリズムとは日本語で観光医療と訳され、自らの居住地域よりも医療水準が高い地域へと治療や検診、診察を受けるために旅行し、医療を受けることを意味します。

メディカルツーリズムが注目されているのはなぜ?

現在、メディカルツーリズムが注目されている背景には主に3つの理由があります。

一つ目は、メディカルツーリズムには大きな市場が見込まれている点です。2020年にはメディカルツーリズムのために日本を訪れる人は42.5万人、市場規模は5,507億円、経済効果は2,823億円と推定されています。

二つ目は、中国人が日本の医療に注目している点です。中国人はその訪日外客数、消費額において、インバウンド市場で非常に大きな存在感を持っています。

加えて中国で安心できる医療サービスを受けることは難しく、日本の高い医療技術やスタッフの対応のよさは相対的に大きな魅力に映ります。中国人の訪日旅行市場でメディカルツーリズムが拡大すればするほど、日本には大きな経済的恩恵がもたらされます。

中国の経済成長や中国人の消費傾向から、中国人は日本のメディカルツーリズム市場において大きな潜在力を持っていると言えます。

三つ目には医療滞在ビザの発給挙げられます。日本国政府は、条件を満たす訪日客に対し、医療滞在ビザ(後述)を発給しています。政府が後押ししていることから、今後の発展が見込まれる領域だと言えるでしょう。

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医療滞在査証(医療ビザ)とは?

日本国政府は、2011年に医療ビザの発給を開始しました。医療ビザの発給は、医療機関における治療だけでなく、人間ドックや健康診断などを含めた幅広い目的に対して行われています。有効期限は必要に応じ3年、滞在期間は最大6ヶ月です。

メディカルツーリズムのメリットとデメリット

こうしてビザの発給という形で日本政府も推進しているメディカルツーリズムですが、そのメリットとデメリットにはどのようなものが考えられるでしょうか。

メディカルツーリズムの渡航目的とは

他国で医療を受けるメディカルツーリズムの主な渡航目的は、より良い品質の医療を受けることです。自国では解決できない医療上の問題を解決することが目的の場合も少なくありません。

以下3つのパターンが主に考えられます。

  1. 自国には無い高度な医療を受けるため。臓器の移植やがん治療など。美容整形や歯科治療といった審美目的の場合もある。
  2. 自国よりも安価な医療を受けるためです。アメリカでは多くの人が保険に未加入のため、国内での治療には高額の治療費がかかります。そのため海外での安価な治療が推奨される場合があります。
  3. 医療を受けるまでの待ち時間を短縮するため。イギリスやカナダでは治療を受けるまでの時間がかかるとされ、「待ち時間の解消」を目的に海外に渡航する場合があります。

このようにメディカルツーリズムは自国の医療制度の欠点を乗り越える手段にもなっています。

メディカルツーリズムは医療業界の活性化につながる?

メディカルツーリズムにはどのようなメリットとして「医療業界の活性化」が考えられます。メディカルツーリズムで訪日する患者を獲得するために、激しい競争に晒されることになります。

こうした市場競争は世界を相手に行うことになり、日本の医療業界のさらなる発展がもたらされるのではないかと考えられています。

一方で、安心安全な医療へのアクセスは日本においては国民の基本的な権利です。離島や限界集落といった地方だけでなく、都会でも医師不足が報道される中、こうした旅行客向けの医療サービス提供が進めば、ますます基本的な医療サービスの提供が滞ることも懸念されます。

メディカルツーリズムが増えることで日本への経済効果も増大

医療産業の活性化に加えて、メディカルツーリズムによる地方医療の活性化、他の産業の活性化など経済全体が活性化することも期待されています。

医療ツーリズム・メディカルツーリズムとは?インバウンドで注目の理由・メリット・国内事例

「医療ツーリズム(メディカルツーリズム)」は、簡単に説明すると医療を受けるために海外へ渡航する、渡航してくることです。近年、この医療ツーリズムはインバウンド観光の形態として注目されています。医療ツーリズム(メディカルツーリズム)は日本のインバウンド観光のみならず、中東などアジア圏からの観光客が日本を含むアジアの国に訪れる旅行動機として注目を集めています。台湾の衛生福利部がこのほど発表した統計によれば、2018年に医療ツーリズムで台湾を訪れた外国人は延べ41万4,000人と過去最高を更新しま...


メディカルツーリズムの日本の現状は?

続いてメディカルツーリズムにおける日本での具体的な取り組みを紹介していきます。活性化する日本のメディカルツーリズムですが、課題もあります。

メディカルツーリズムにおいて日本が抱える課題

メディカルツーリズムによる弊害も指摘されています。旅行者としての患者を優先することで、居住者の医療サービスへのアクセスが制限を受けるのではないかという点です。

海外からの渡航者が高度な医療を求めてきており、その治療代金は高額になります。病院がより大きな利益を求めメディカルツーリズムの患者ばかりを診察し、居住者である一般の患者の診療が後回しになってしまうこともないとは言い切れません。こうした事態は忌避すべきであるとの声もあります。

メディカルツーリズムに対する国内の動向は?

現在、日本におけるメディカルツーリズムの推進では、中国やロシアの富裕層をターゲットにした取り組みが行われています。内閣府、経済産業省、厚生労働省を中心に、多くの官庁が一つの産業としてのメディカルツーリズム確立のための動きがあります。

同時に、医療従事者や医療事務における多言語対応、海外医療機関との情報共有、治療費送金と決済対応などの課題が見えてきています。医療行為には専門用語や本人の意思確認といった通常のインバウンド対応よりもより正確な判断が必要とされるシーンも多くあり、特に外国語対応においては慎重さが求められます。

ただし前節でみてきたような国内からの医療サービスアクセスに障害が出るのではといった懸念の声もあります。世界各国との激しい競争に負けず、日本へのメディカルツーリズムを世界において確立させていくには、対患者、また対国内にある課題や不安の解決に丁寧に取り組んでいくことが必要でしょう。

インバウンド推進に向け一般社団法人MEJの活動支援を促進

一般社団法人Medical Excellence JAPAN(MEJ)は、日本の医療の国際展開の推進を担う中核的な組織として、2011年に設立されました。政府や医療界、医療産業界などと相互協力をしながら、国際医療協力を推進しています。

また2016年、愛知県は「あいち医療ツーリズム研究会」を立ち上げました。県内の病院と行政がタッグを組み、本格的にメディカルツーリズムを受け入れる方針を打ち出しています。同研究会では地域医療に影響を及ぼさない範囲でのメディカルツーリズムを実施や、メディカルツーリズムで得た実績を地域医療の活性化や医療技術の向上につなげることを目標に掲げています。

メディカルツーリズムの今後

メディカルツーリズムは、海外ではすでに一つの産業として確立しています。また、日本が持つ高い医療技術は世界の富裕層から注目を集めています。

お金に変えられない価値を持つのが「健康」ですが、現代ではお金によってより良いコンディションを保つことが可能になってきています。また世界中で、富裕層が自分の健康促進にお金をかけるのは昔からよく見られた事象です。

インバウンド市場では、毎年訪日外客数の過去最高更新が報じられています。訪日外客数が増えれば増えるほど、世界での日本の印象はより強まっていくと考えられます。こうした中で日本におけるメディカルツーリズム市場が成長すれば、日本経済にとっても躍進のチャンスとなるでしょう。今後も政府の取り組みや関連組織の動向に注目が集まります。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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