ビジット・ジャパン・キャンペーンは、2003年に始まった訪日外国人観光客の誘致を目的としたプロモーション事業です。
これにより、訪日外国人観光客数や消費額は年々増加し、2019年には訪日外国人観光客数は3,188万人、消費額は4.8兆円とそれぞれ過去最高を記録しました。
今回は、ビジット・ジャパン・キャンペーンの内容、これまでの成果、今後の方針、事例について解説します。
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ビジット・ジャパン・キャンペーンとは
ビジット・ジャパン・キャンペーン(Visit JAPAN Campaign)とは、国土交通省が中心となり、官民一体で行っている訪日外国人旅行者への観光プロモーション活動です。
2003年の観光立国宣言によって始動したこのキャンペーンには、「訪日外国人が増えて、国内の消費額が増える」という期待が寄せられています。世界20か国を対象に情報収集を重ね、訪日観光の振興につなげていくねらいです。
訪日外国人観光客増加をねらうキャンペーン
ビジット・ジャパン・キャンペーンは、2003年に開始しました。当時の首相、小泉純一郎氏が「2010年に訪日外国人を1,000万人にする」という観光立国宣言をし、「ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部」を設立しています。
キャンペーンでは、訪日外客数とその消費額の増加をねらって、海外に向けた日本文化のアピールや地方への訪日外国人の呼び込みを行っています。
事業の対象市場としては、世界20か国が中心となっています。
具体的には、韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、ロシア、イタリア、スペインです。
これらの市場の最新動向やニーズを収集・分析し、関係各所に提供することで、本事業を含む国の観光政策立案に役立てていくとしています。
ビジット・ジャパン・キャンペーン、その具体策とは?
政府は、本キャンペーンにおいて、以下の具体策を中心に、日本文化や訪日旅行をアピールしています。
- 現地消費者向けに情報発信
- 戦略的な訪日プロモーション
- 各地域との連携
大きく分けると、海外への「認知度向上」と「誘客」という2つの面からアプローチしているともいえます。ここでは、3つの戦略についてそれぞれ解説していきます。
1. 現地消費者向けに情報発信:海外メディアを通して日本を宣伝
現地消費者向け事業では、海外の各メディアを通して日本をアピールしています。今後日本を訪れる可能性がある潜在的訪日観光客に向けて、現地の新聞、旅行雑誌、フリーペーパー、旅行サイトから情報を発信します。
実際には、現地のメディアを日本の観光地へ招待し、魅力を伝えたうえで、記事や番組を作成してもらう流れになっています。海外メディアが実際に日本の観光地を体験し、自国で発信することで、外国人の目線から日本をの魅力や注目点を潜在顧客に伝えることができると期待できます。
2. 戦略的な訪日プロモーション:海外旅行会社、公館と連携
JNTO(日本政府観光局)の海外事務所では、海外の旅行博への出展も行っています。そこでは、世界各国の旅行会社に日本旅行をアピールしたり、海外の旅行会社を日本へ招待したりしています。
海外旅行会社が日本を訪れて視察する際には、日本の地方公共団体等との受入調整、旅行会社とのマッチングも実施しているとのことです。
日本を観光した海外スタッフがツアー商品を作れば、訪日観光客にとってより充実した内容になるとの見込みがあります。
また、旅行会社のような民間企業に留まらず、公館も連携の一部に入ります。海外にある日本の大使館や領事館も、イベントを通して日本文化や訪日旅行をアピールしているのです。
たとえば、モンゴルでは「ポップカルチャーフェスティバル」を開催しました。このイベントでは、在モンゴル日本国大使館が現地にある日系旅行会社などの民間企業と連携して、訪日旅行に興味のあるモンゴルで日本のアニメやマンガの魅力を広めています。
3. 各地域との連携:訪日外国人の地方誘客を加速させる
訪日旅行客増加を狙うには、地方への誘客も見逃せません。そのために、地域観光資源を活用したプロモーション事業も運営しています。
各地域について精通している地方運輸局が携わることで、その地域の観光資源を効率的に発信することができます。
この事業における実施例については、熊本県の阿蘇くじゅう公園への海外メディア海外メディア招致、徳島県の農家民宿体験への海外旅行会社招致などがあります。
訪日プロモーション事業、2つの事例を紹介
外国人に日本の魅力を知ってもらうためには、プロモーションが必須となります。
外国人目線での発信の大切さについては先に紹介しましたが、日本が発信する際には多言語表示や視覚的なわかりやすさも重要になってきます。
ここでは、JNTOの取り組みとトリップアドバイザーの取り組みを紹介します。
1. JNTOのウェブサイトでの情報発信
一つ目のプロモーション事業例は、JNTO(日本政府観光局)のウェブサイトでの情報発信です。全世界に日本の観光情報を発信するべく、9カ国の言語で情報を発信しています。
観光情報は全国500以上の観光地の情報を掲載しているため、より多くの国へ向けてたくさんの日本の情報を発信できます。また、海外事務所のローカルサイトからも情報発信をしているため、偏りがちな日本だけの視点ではなく、様々な現地の視点を取り入れることが可能です。
管轄市場の言語での訪日基本情報や管轄市場向けの情報提供を見ること や、観光地の画像をダウンロード することもできます。
2. トリップアドバイザーが「欧州における広告宣伝事業」を展開
二つ目のプロモーション事業例は、トリップアドバイザーが2015年に展開した「欧州における広告宣伝事業」です。訪日に関する興味を拡大してもらうことを目的に、トリップアドバイザーの独自のデータを基にした各国のユーザーの興味に合わせた日本の情報を載せている特設ページを開設するなどの工夫がなされていました。
また、トリップアドバイザーを閲覧するユーザーのなかで、訪日に興味を持つ可能性が高いユーザーに対してバナー広告を表示し、3種類の特設サイトに誘導するということも行なっていました。
月間約3億人が訪問するというトリップアドバイザー最大のメリットを活かし、観光庁と連携しながら欧州の訪日旅行者の日本への旅行を促進しました。
ビジット・ジャパン・キャンペーンの成果
2003年に始まったビジット・ジャパン・キャンペーンは、確実に成果を上げています。新型コロナウイルス感染症の影響により、「2020年の訪日観光客数4,000万人」こそ達成はかなわなかったものの、2018年までの推移では訪日観光客数は順調に増加を続けています。
ビジット・ジャパン・キャンペーンは3年ごとにプロモーション政策を打ち出しており、東京五輪が予定されていた2020年も方針が表明されていました。
ここでは、キャンペーンの成果と2020年に打ち出されることが予定されていた方針について紹介します。
キャンペーンは成功した?成果を解説
ビジット・ジャパン・キャンペーンの当初の目標であった「2010年に訪日観光客を1,000万人にする」という目標には届きませんでしたが、2013年には当初の目標だった1,000万人を達成することができました。2011年の震災などが影響し訪日観光客数は落ち込むこともありましたが、復興が進むにつれて、訪日外国人観光客の数も回復し「2020年までに2,000万人」という目標も2016年に達成しました。
その後も着々と訪日観光客数は増え続けています。
また、訪日外国人の消費額も、2015年の3兆4,771億円 から2017年は4兆4,162億円 まで増加するなど、消費の面での成果も出ています。
![▲[観光庁:訪日外国人旅行者数の現状] ▲[観光庁:訪日外国人旅行者数の現状]](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/3394/main_image2.png?auto=format)
![▲[観光庁:訪日外国人旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移] ▲[観光庁:訪日外国人旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移]](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/3393/main_image1a.png?auto=format)
東京五輪開催年、2020年の方針は?
2020年は、東京五輪開催が予定されていました。そのため、訪日外国人観光客がさらに増加することが見込まれていたのです。(新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、東京五輪は2021年夏へと開催が延期されています)
ビジット・ジャパン・キャンペーンでは、2018年度よりプロモーション方針を3カ年に変更し、高まりつつある日本への注目を最大限に活用しようと活動しています。
当初、2020年の目標は、訪日外国人旅行者数4,000万人、訪日外国人旅行消費額を8兆円にすることを掲げており、これを達成させるためには、世界中の市場からの誘致を実現していく必要があるとされていました。
現在は訪日観光客の約8割がアジアが占めていますが、今後インバウンド効果の成長が見込まれる欧州や他の地域からの訪日観光客の誘致も課題視されています。その対策に、政府はさまざま策を打ち出しました。
実際には、訪日旅行の認知度が高いアジア市場と認知度の低い欧米豪市場の違いを考慮して、ターゲット別に課題・対応策を定め、プロモーションの戦略性を向上させることや、 近年急速に技術の発達しているデジタルマーケティングを活用することで、ビッグデータ分析を通じた市場動向の把握とプロモーションの高度化を目指すことなどが挙げられます。
訪日旅行消費額をさらに拡大するために、高所得者層誘客や長期滞在者誘客にターゲットを絞ったプロモーションも重要になってくるということです。
このように、2020に向けて多くの方針が表されていたのです。
※新型コロナウイルスのパンデミックを受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。
ビジット・ジャパン・キャンペーンのさらなる成果に期待
訪日外国人観光客の増加をはかるべく、世界中へ向けてプロモーション活動を行うビジット・ジャパン・キャンペーンでは国・地方公共団体・民間が共同でさまざまな活動に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症によってインバウンド業界は大きな打撃を受けましたが、収束後の訪日観光回復にあたっては、ビジット・ジャパン・キャンペーンはさらに注目されるでしょう。
日本のインバウンド事業に大きな役割を果たすビジット・ジャパン・キャンペーンの活動に今後どのような新しい取り組みがなされていくのか、その内容は在住者である日本人にとっても興味をそそられるものであると考えられます。
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<参照>
JNTO:ビジット・ジャパン事業
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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