京都の町家に迫る存亡の危機、中国人富裕層の土地買い占めの光と闇「むしろ買われたい」観光地も

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日本は外国人投資家にとって不動産投資先として人気があり、中国香港台湾シンガポールなどのアジア圏からの土地の買い占めが盛んになっています。特に京都は歴史ある寺社仏閣や伝統的な京町屋の街並が大きな魅力です。

外国人投資家による不動産の買い占めによって、町家の取り壊し・新しいホテルなどの建設が盛んに行われています。その結果、京都らしい伝統的な街並みを失いつつあるという事態に見舞われています。

今回は外国資本の流入によって京都で起こっている問題、そしてその一方で得られる恩恵の両方の側面について考察します。


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町家を買い占める中国人、人気の理由、今後の傾向は?

日本は外国人投資家にとって不動産投資先として人気があります。多くは中国香港台湾シンガポールといったアジア圏の投資家ですが、中国人が特に多く、京都の町家を買い占める投資家も中国富裕層が中心となっています。中国人投資家は購入した不動産を主にホテルなどの宿泊施設へと建て替え、ビジネスチャンスに繋げています。

そもそもなぜ日本の不動産は外国人投資家に人気があるのでしょうか。中国人投資家を中心に日本が不動産投資先として選ばれる理由は複数ありますが、大きく3つの魅力があると言えます。

1. 割安感

1つ目の理由は、投資家にとって日本の不動産は割安に感じられるということです。日本で積極的に不動産投資を行っている中国人の場合、北京など自国の大都市の不動産価格は東京を凌ぐ価格となっているため、日本の不動産が手頃に感じられるようです。また、日本は海外の不動産と比較して不動産購入に要する税金や金利が低く、利回りが高いという特徴があります。

2. 永久的な所有が可能

2つ目は永久所有による安定性です。日本は一度不動産を購入すると永久所有権を得られることが大きなメリットとなっています。社会情勢や不動産市場も安定しているため、長期的な視点で見た時に資産保全に適しているほか、ビジネスとしても利益を生みやすいことが外国人投資家にとって魅力的なポイントとなっています。

3. 外国人への規制がない

3つ目の理由は不動産購入の際に外国人を対象とした規制がないことです。海外の多くの国では、外国人による不動産購入に何らかの規制が設けられていたり、そもそも不動産所有を認めてないという国もあります。一方日本は、外国人であっても日本人と同条件で購入が可能で、不動産購入のハードルが低いというメリットがあります。

2020年の東京五輪に向けまだまだブームは続く

外国人投資家にとって日本の不動産は魅力的であり不動産投資が加速していますが、そのブームまだまだは続くと予想されます。2020年に東京オリンピックが開催され、同年には訪日外国人観光客数も4,000万人達成を見越しており、今後も観光地としての期待値がますます高まっていくことが予想されます。

東京など都市部はもちろんですが、近年訪日外国人観光客数が急増している京都も一層多くの入込数が見込まれるため、投資家としてはビジネスの機会として見逃せません。

北海道を筆頭に外国人による買収が進む

外国人による不動産の買い占めが進む代表的な場所として、北海道ニセコが挙げられます。ニセコスキーリゾートを中心として、周辺にホテルコンドミニアムなどの宿泊施設の建設ラッシュが続いています。

エリア一帯の開発を進めているのは日本資本ではなく、ほとんどが外国資本です。活発な開発によって世界中から観光客が押し寄せ、地価・物価も軒並み上昇を続けています。

外国資本の流入によって京都で起こっていること

不動産投資先として人気のある日本において、京都では外国資本の流入が早いスピードで進んでいます。町家などの不動産の再開発が活発に行われていることで、京都の伝統的な景観が損なわれることなどが危惧されています。ここからは現在京都でどんな問題が起こっているのか、そしてその一方でどのような恩恵が享受できるのかという、2つの側面を見ていきます。

再開発で壊れゆく京都の町並み

京都市が公表するホテル旅館簡易宿所の許可施設数の推移によると、2014年に1,002施設だったのが、2017年には2,866施設になり、急激なスピードで増加していることがわかります。

観光客の増加に伴い宿泊施設の充足が図られていますが、その裏では京都の町家が次々と取り壊され、宿泊施設に建て替えられているという現状があります。もちろんこれには日本の資本も入っていますが、外国人投資家達によっても町家が買い占められ、益々加速する状況を生んでいます。

2018年のNHK取材によると、中国投資会社「蛮子投資集団」の投資家が、京都の町家一角をまとめて購入し、「蛮子花間小路」という名前で再開発を進めるという計画があることが発表されています。 このように1軒単位ではなく、十数軒が連なる通りをまるごと買い占めるような動きもあります。

今後も予想される訪日外国人観光客の増加や2020年の東京オリンピック開催も後押しとなり、この流れはまだまだ続くと予想されます。

地価上昇で住民生活を圧迫

観光客数が増加して不動産投資も活発になれば、それに伴い地価が上昇します。そして地価の上昇に伴い固定資産税が増加し、周辺の家賃も上昇することで、住民生活を圧迫する結果に繋がってしまいます。実際に外国資本による開発が進む北海道ニセコでは地価の上昇が著しく、スーパーや飲食店など物価も高騰する結果となり、ニセコよりも地価や物価の安い札幌などに移る住む人も出てきています。

一方で、インバウンド市場にもたらす恩恵も

外国人投資家による不動産の買い占めはネガティブな文脈で語られることが往々にしてありますが、その一方で外国資本の流入によって利益や新たな可能性が生まれるというポジティブな側面もあります。

空き家化する町家の対処を担う

長い歴史を持つ町家は、その日本情緒溢れる伝統的な佇まいが魅力です。しかしその古さ故に保存に苦慮するという側面も持っています。当然保存のためには維持費・固定資産税など様々な費用がかかる上に、所有者も高齢化が進んでおり、町家を維持することが難しい状況に陥っています。

そのため多くの町家が空き家のまま放置され、老朽が進んでボロボロになっているケースも珍しくありません。また、町家を解体して空き地と化してしまった場所もあります。

このような状況のところに外国資本が入ることによって、多くの町家が解体されて宿泊施設観光施設などに生まれ変わっています。投資家としては収益を生み出すための手段ではありますが、地域や行政にとっては手付かずの町家の対処の一端を担う役割も果たています。

雇用創出や利益をもたらす

中国人投資家などによる不動産買い占めにあったとしても、それらが観光・宿泊施設として開発されれば必然的にそこには仕事や利益が生まれます。

まず施設を運営するための働き手が必要となることで、地元での雇用創出に繋がります。また、観光・宿泊施設が新たに開発されることで観光客や宿泊客の数が増え、それと同時に地域に落ちるお金も増えて利益を生み出すという効果もあります。

もちろん再開発はこういったケースばかりではなく、個人の住宅として利用する目的であったり、マンションとして再開発して家賃収入を得る目的であったり、地域にとって必ずしも恩恵をもたらすとは限りません。それでも再開発によって得られるものがあることは見過ごせないポイントです。

京都の街並みを残しつつインバウンド観光の活性化を図る

外国資本の流入によって失われる景観がある一方、それによって守られるものがあるという利点もあります。重要なポイントは、これらのバランスを取って開発が進められるべきだということです。

京都は日本らしい伝統と文化が色濃く残る場所であり、訪日外国人観光客にとってもその美しい街並みを歩くことが一つの目的となっています。そのため潤沢な資金を持つ外国資本の流入によって京都らしさが壊される方向ではなく、伝統的な街並みを残す方向で宿泊施設観光施設などの再開発が行われるべきです。

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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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