「クールジャパン」とは2010年ごろから政府により打ち出された概念で、日本の内閣府「クールジャパン戦略のねらい」によれば「外国人がクールととらえる日本の魅力」を意味します。
ブランド戦略「クールジャパン戦略」政策は、こうした外国人が「クール」と感じる日本の魅力をてこに、海外からの需要を喚起することを目的にしています。
クールジャパン戦略の推進のために、事業者に支援を行う「クールジャパン機構」が存在します。正式名称は株式会社海外需要開拓支援機構ですが、「クールジャパン機構」という名によって知られています。日本の魅力ある商品・サービスの海外需要開拓に関連する支援・促進を目指して、 2013年11月に設立されました。
2018年11月の資料によれば、これまで機構からの総投資は30件約630億円に上ります。今月初頭にも、スマホ向けアプリゲームを開発・運営しているベンチャー企業に対し、最大10億円の出資を決定したことが報じられており、海外から見た「格好良い日本商品」を広めていく積極的な取り組みが目立ちます。
この記事ではクールジャパン機構について詳しく解説していきます。
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クールジャパン機構の役割:日本の魅力を海外に伝える活動への投資
ここではそもそもクールジャパン機構とは何か?について解説していきます。
クールジャパン機構は正式名称を「株式会社 海外需要開拓支援機構」と言います。平成25年に成立した「株式会社海外需要開拓支援機構法」に基づく組織で、官民ファンドとしての性格を持ちます。
クールジャパン機構の活動目的は、「日本の魅力」を事業化することで、海外需要を獲得することです。事業化対象の領域は「メディア・コンテンツ」、「食・サービス」「ファッション・ライフスタイル」「インバウンド」など幅広い領域に渡っています。
幅広い事業領域に対して、リスクマネーの供給、支援を行い、海外需要および日本国内への取り込み=インバウンドにつなげて、経済成長の原動力にすることが大きな目的です。
支援基準
クールジャパン機構が支援する事業を決める上での主な基準は3つあります。
- 政治的意義
- 収益性
- 波及効果 の三つです。以下、順に解説していきます。
①政治的意義があるかどうか。事業が海外需要を開拓し、国としての日本のイメージアップにつながるのか?や地域経済によい影響をもたらすのかどうか?が検討されます。
②収益性が確保されるかどうか。事業者の経営面もチェックされます。事業者の経営体制が適正であるかどうか?や他の民間事業者から資金調達をしているかどうか?がチェックされます。当然、事業として出口戦略が見えているのかについても基準となります。
③波及効果があるかどうか。ここでは機構が支援した事業者を起点に様々な企業や業種を横断的に連携する流れが作れるかどうかが審査の対象になります。事業者が海外市場へ最初に飛び込み、海外消費者に訴求する足がかりになれるかどうかをチェックしていると言えるでしょう。
これら三つの基準を踏まえて投資が行われるかどうかが決定されます。投資実行後は、案件ごとに適切な進捗管理指標(KPI)を設定して、運用する方針を採っています。
投資の基本方針
上であげた基準に合致する事業の中でも、特に「B to C」「海外展開」「波及効果」にフォーカスした投資を行うのが基本方針になっています。
アウトバウンド向け、インバウンド向け、国内向けとバランスよく投資を行うことで、結果としてグローバルシナジーの創出を目指していくことが掲げられています。
クールジャパンが関与するプロジェクト、3つの事例
続いて、クールジャパン機構がこれまでに出資してきた3つのプロジェクトを紹介します。1. 日本を知ることができる日本発のコンテンツ
2015年にクールジャパン機構から出資を受けたのが「WAKUWAKU JAPAN 株式会社」です。日本で日々放送されているあらゆるジャンルのテレビ番組を海外向けに24時間365日、提供している会社です。2015年3月クールジャパン機構はこの事業に44億円の出資をしました。 この事業の背景には海外の人が日本に親しみを持っている一方で、日本のコンテンツが海外の人に届けられていないという課題がありました。
クールジャパン機構は日本の魅力の発信を通じて、多くの波及効果が期待できるという観点から「WAKUWAKU JAPAN」に投資を決定しました。
2. 日本のアニメからクリエイターの育成へ
教育分野で初めてクールジャパン機構から出資を受けたのが「KADOKAWA Contents Academy」です。「KADOKAWA Contents Academy」は日本のアニメや漫画が好きな海外の若者にコンテンツ作りを学べる機会を提供しています。若者が日本や海外で活躍できるチャンスを作り、日本のコンテンツ業界をよりグローバルな形で発展させていくことをビジョンとして持っています。
3. 失敗例…アメリカでの日本茶普及
クールジャパン機構の支援には失敗例もあります。アメリカでの取り組み、「グリーンティーワールドホールディングス」です。「グリーンティーワールドホールディングス」はアメリカで日本茶カフェ事業を展開する企業グループです。クールジャパン機構は本事業者に出資をしていましたが、2018年9月11日付でグリーンティーワールドホールディングスはクールジャパン機構を提訴しました。
この提訴の理由は、クールジャパン機構が一方的に運営会社を清算しようとしたからと言われています。 クールジャパン機構が過度に事業者に介入したことによって反発が生まれた結果と考えられます。
COOL JAPAN PARK について
「COOL JAPAN PARK」とは2019年2月23日にオープンした劇場です。民間13社とクールジャパン機構が連携したプロジェクトで、最新のクールジャパン機構の事業です。この施設では何が鑑賞できる?
「COOL JAPAN PARK」は2019年2月に大阪に開業した劇場型の施設です。新時代のエンターテイメントの発信拠点として期待されています。「COOL JAPAN PARK」はクールジャパン機構によって運営されており、大阪城公園の自然と一体化した劇場にはは大・中・小の異なる三つのホールが備えられています。
本劇場では訪日外国人を始めとした多くの人々に日本の魅力を知ってもらうためのプログラムが数多く上演されています。
「COOL JAPAN PARK」が位置する大阪城公園では、2015年の4月からパークマネジメント事業による魅力創出への取り組みを行っており、多くの来園者で賑わっていました。「COOL JAPAN PARK」を開設することで、大阪は今まで以上に日本のコンテンツ産業の中心都市になっていくと考えられます。
クールジャパン機構の支援が、インバウンド市場開拓を後押し
クールジャパン機構とは日本の魅力を発信し、海外需要を喚起するための事業に対して積極的な支援を行っています。3つの支援基準は、政治的意義、収益性の確保、波及効果があるかどうかです。上で示したような大規模な投資が可能であるというのがクールジャパン機構が持つ強みと考えられます。
クールジャパン機構は実際に劇場を構えるなど独自の事業にも乗り出しておりインバウンド事業を進める上で無視できない存在となっていることは確かです。
事業を海外展開したいけれども資金不足の場合やプロモーションがうまくいかないなどの場合、クールジャパン機構に対して支援を求めることも一つの手段として考えれます。
しかし一方、クールジャパンによる投資の失敗例もあります。事業者としてはクールジャパン機構との関係性を適切な形で構築することが大切でしょう。
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