香港で抗議デモが激化、しかしマカオが静観を決め込む2つの理由

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香港では、逃亡犯条例の改正に端を発した、市民のデモ活動が連日繰り広げられています。

警察側、デモ側、双方の激しい動きがSNSや地上波を通じて日本にも衝撃を与えています。

香港の治安悪化を誰もが心配する中、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月4日、事の発端となった改正を正式に撤回すると発表しました。こうした発表を経てなお、香港の騒ぎが終息を迎える様子は一行にありません。

実は中国には香港同様、特別行政区として香港のすぐそばに存在するマカオがあります。しかし、香港の騒ぎに対し、マカオでは抗議行動も香港を支持するような動きも報告されていません。なぜなのでしょうか。

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香港とマカオ、一国二制度と2つの地域がたどった歴史

香港マカオはどちらも中国広東省に接した海沿いの土地に位置しています。香港の大きさは東京都の半分程度、マカオの大きさは世田谷区の半分程度とどちらも非常に小さい面積です。

中間人民共和国の特別行政区という位置づけの2地域では、中国大陸で用いられる「簡体字」ではなく、台湾同様の「繁体字」が公共の場で用いられています。両方とも、通貨の単位や法律もそれぞれ違うため、一見すると香港やマカオは別の国のように見えます。

香港とマカオでは「一国二制度」という高度な自治が認められています。これは香港とマカオのたどった歴史が発端となっています。香港は1842年、マカオは1887年にそれぞれ当時の清朝からイギリスとポルトガルに割譲されました。その後のイギリスとポルトガルによる統治は100年以上続き、香港は1997年、マカオは1999年にそれぞれ中華人民共和国に返還されました。

返還後、香港やマカオと中華人民共和国では法律をはじめとする諸々の制度が異なることから、混乱を避けるために一国二制度が実施されました。例えば香港では、北京や上海、またその他では利用できないインターネットサービスGoogleFacebookなど)にアクセスが可能です。

このような香港とマカオの自治体制を、中国政府は返還後50年に限り認める方針をとっています。香港は2047年、マカオは2049年まで一国二制度に基づいた自治が行えるとしています。

香港のデモに静観を決め込むマカオ、その本当の理由とは

香港では逃亡犯条例の改正案撤回を求め抗議行動が毎日のように行われていますが、マカオでも抗議行動が発生したというニュースは入ってきません。

香港のことなのでマカオには関係がないからとも理由付けることはできますが、両者共に一国二制度の下での自由を維持しているため、マカオの市民が香港の現状に関心を持たないとは考えられません。それでは一体なぜ、マカオでは香港のような抗議行動が発生しないのでしょうか。

カジノに依存した経済で、治安の悪化は命取りに

まず、マカオは面積が小さいことからその経済やインフラをほぼ全て中国大陸に依存しています。マカオ一帯全てが観光地と言っても過言ではないほどにマカオは観光で成り立っており、中心部にはカジノを目玉とするホテルが立ち並び富裕層の観光客が集まっています。

そんなマカオで一度治安を悪化させるようなことがあれば、観光客の足が遠のくことで市民全員の生活が脅かされることが容易に想像できるため、マカオ人は大規模な抗議行動の実施を避けているという見方があります。

中華人民共和国政府との距離の近さ

マカオは一国二制度の下で、中華人民共和国とは別の行政を敷いているとはいえ、基本的には中華人民共和国政府の方針が強く反映されています。

ポルトガル支配下であった1966年、中華民国を支持する市民と中華人民共和国を支持する市民との間で衝突が起きています。これを契機にマカオは大混乱に陥り、その後ポルトガル側は行政に中国共産党の関係者を受け入れるようになりました。

現在のマカオでも、選挙の際には親中派の人間でなければ立候補できないという暗黙の了解があります。

8月にはマカオでも抗議行動を行おうとした団体が警察に届出を提出したとの話もあります。この届出は却下されただけではなく、関係した7名が逮捕されたといいます。

更に街中の警備が強化され、100人以上の警察官が通行人に職務質問を実施するなど、徹底した体制でマカオでの抗議行動の芽を摘む姿勢があったそうです。このような状況では、マカオ人が声を上げて香港に協力することは難しいでしょう。

香港の平和復興を待つ間、インバウンド業界にできること

抗議活動が事実上封じられているとも見れるマカオですが、FacebookInstagramTwitterといったSNSを通じた表現には規制が入っていないようで、香港を支持する意見も見られます。

香港では逃亡犯条例の改正が撤回された今でも、抗議団体の提示した「五大要求」のうち残り4つを受け入れるよう求める声が相次ぎ、今後も新たな大規模集会などが開かれる可能性が懸念されています。

インバウンド市場では、香港からの訪日外客数は市場4位であり、日本のインバウンド市場への影響も避けらないと見られています。こうした損失をどのようにリカバーしていくのかの判断が、今日本のインバウンド業界に求められていると言えるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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