「ほぼ東京」茨城空港が中国人に選ばれるワケとは:経済成長中”西安”つなぐ定期便が就航開始

公開日:2019年10月31日

近年、訪日外国人の数は増加を続け、2018年には3,000万人を突破しました。延べ人数にして、出国日本人数の約1.5倍の人が日本を訪れているといます。

京都や東京など人気観光地への集中が著しく、増えすぎた外国人観光客で日常生活で不便を強いられたり、マナーの周知が間に合わなかったことにより想定外の事態に出くわしたりといった、観光公害も大きな問題になっています。

訪日外国人の入国の玄関口としては成田空港と関西空港がツートップで飛び抜けていますが、こうした点からも人気スポットへの観光客集中の理由がうかがえます。

オーバーツーリズムを解消するためには、地方への誘客が重要になってきます。国土交通省は2016年に、地方空港のゲートウェイ機能強化とLCC就航促進を含めた2030年までの「観光ビジョン」を発表しました。

今回は、LCCが就航し、利用客増加のための積極的な取り組みを展開する茨城空港を焦点にして、地方空港のインバウド成長の可能性について考えます。


茨城空港とは?開港と歩み:国際線は上海線が充実、台北便も

茨城空港は、2010年3月11日に開港しました。元々は航空自衛隊の管理であった「百里飛行場」を民間共用化する形で営業を開始します。

茨城県東部の小美玉市にあり、水戸市やつくば市から30~40分程度でアクセス可能です。

開港当時からスカイマークが就航し、国際線ではアシアナ航空(韓国)によるソウル便が就航していました(現在は運休中)。

2010年7月に春秋航空(中国)の上海チャーター便が就航し、2012年に定期便化されました。

さらに、2015年に中国南方航空(中国)が、2016年には中国国際空港(中国)とVエア(台湾・現在は運行停止)が就航するなど路線を拡大し、最近では2018年にタイガーエア台湾(台湾)の定期便が就航開始しています。

2017年7月には国土交通省に「訪日誘客支援空港(拡大支援型)」に指定されました。

▲[上海浦東空港には水曜以外毎日就航している]:公式サイトより
▲[上海浦東空港には水曜以外毎日就航している]:公式サイトより

茨城空港独自の強みとは?

茨城空港は開港前に、アシアナ航空以外の就航がない場合は空港ターミナルビルの年収が年間最大1億円の赤字になることを発表しました。

そのため、建設の反対をする意見も多くありましたが、2018年には最多の年間76万人が利用するまでに躍進しています。

北関東における空の玄関口となると同時に、東京からの利便性の高いアクセスを整備することで、首都圏の3番目の空港として存在感を高めているようです。

東京方面のアクセスは、関東鉄道による高速バスが東京駅と茨城空港を結んでおり、下りの所要時間が定刻で1時間40分、上りの所要時間が定刻で2時間半となっています。

空港利用者は片道500円でこの高速バスを利用することができます。

車での利用については、3000台以上が駐車できる大型の平面駐車場があります。利用料は無料で、利用日数によって課金されることもありません。

さらに茨城空港の強みは、地上2階建ての地方空港だからこそチェックインなどの動線が短く、分かりやすいことです。

ローコストキャリア(LCC)の誘致を積極的に実施し、空の旅を「安く」、「近くから」、「気軽に」楽しめるようにすることをコンセプトにしています。

LCC「春秋航空」乗客の口コミは?中国人が選ぶ理由

茨城空港に就航している「春秋航空」はLCCです。水曜日を除く毎日、上海と茨城を結ぶ便が飛んでいます。

10月27日からは西安線の就航を開始しています。兵馬俑といった見どころのある西安は日本人旅行者の関心を惹きつけており、今後一定の利用者も見込まれていると考えられます。

同時に期待できるのが中国からの訪日観光客の増加です。西安は中国でも現在経済水準を上げている都市の一つであり、今後沿海部のように日本旅行に対する需要の高まりも予測されます。こうした地域へのプロモーションにより、より大きな成功も期待できます。

LCCの最大のメリットは安価であることです。離発着の遅延やサービスレベルの低さなどの問題も存在しますが、「中国へ一万円以下で行ける」という事実は、やはり中国や海外に興味がある日本人を惹きつけるでしょう。

安かろう悪かろうのイメージを抱かれがちなLCCですが、実際に乗ってみると快適に空の旅を楽しむことができたという搭乗客も少なくないようです。

SNSなどの投稿を見ると、機内は中国人の搭乗客が多くなっています。中国の航空会社が出資する春秋航空は中国人にとっても馴染みがあり、なおかつ安いとあって利用のハードルは低いと考えられます。

中国人にとって「ほぼ東京」の茨城、

ではなぜ、中国人観光客は茨城県を訪れるのでしょうか。茨城空港の公式サイト内では、茨城空港を「羽田、成田に次ぐ第三の首都圏空港」と紹介しており、「ほぼ東京」とみなされていると考えられます。

また春秋航空の中国人向けのサイト内での空港名表示は「茨城(近東京)」となっており、東京へアクセスする場所の一つと見なしていることがわかります。

羽田や成田と単純比較すると移動時間は長いですが、リムジンバスなどアクセスが整備されていることや、入国審査等にかかる時間が短いことを加味すれば茨城空港へと降り立つことはそこまでデメリットではないようです。

同じく10月27日に春秋航空が西安線を就航する佐賀空港は、春秋航空中国人向けサイト内で「佐賀(近福岡)」と表示されています。

2016年には佐賀県が、佐賀空港の愛称を「有明佐賀空港」から「九州佐賀国際空港」に変更しています。中国人にとって佐賀は、風景が美しく、温泉や伝統工芸といったあこがれの日本の要素が詰まった地域です。

今後は、「ほぼ東京」として利用される茨城空港について、訪日した中国人観光客により茨城の魅力が広められていく可能性も期待できるでしょう。観光客まかせではなく、積極的な施策が口コミ行動を後押しすると考えられ、今後の関係各所の取り組みが期待されます。

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都道府県単位の枠を超えた考え方で地方空港を有効に活かす

日本人が東京を訪れるときに、茨城空港を利用することは少ないかもしれません。東京には羽田空港があり、千葉には日本一の国際空港である成田空港があって、自ずと目的地に最も近い空港を利用するでしょう。

一方、中国人から見たとき、その距離の違いは大差がないのかもしれません。中国人にとっては茨城も東京も関東一帯であることに変わりなく、茨城空港は東京へのルートの選択肢を広げる有益な空港の一つです。

地方空港を所在都市の玄関口としてだけでなく、もっと広範囲な括りでとらえることは、地方への誘客を促進し地方創生を達成する足がかりになるかもしれません。


<参照>

https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/190116_monthly.pdf

https://honichi.com/data/immigration/

https://honichi.com/ranking/touristattraction/

https://www.mlit.go.jp/common/001175634.pdf

http://www.ibaraki-airport.net/more/performance.html

https://www.news-postseven.com/archives/20190204_862339.html

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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