現在四国では、四国遍路の世界遺産登録に向けた活動として、インバウンド対策を強化しています。
最近の調査では遍路客が直近10年で約4割減少したと指摘された一方で、インバウンドの遍路客は増加傾向にあります。今回は、四国遍路の現状をふまえ、インバウンド誘客促進に向けた取り組みについて解説します。
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四国遍路の遍路客の減少率は平均40%
江戸時代に確立したとされる88か所の札所を巡る「お遍路さん」は、四国の原風景ともいわれています。1953年に伊予鉄道が「バスによる巡礼」を始めたことから、団体バスによるお遍路さんが普及し、その後も四国内の道路整備が進むにつれて、マイカーによる巡礼が増加していきました。
一方で、バブル崩壊をきっかけに遍路客の数は減少の一途を辿っています。太龍寺ロープウェイの乗客は、2001年度をピークにして、ここ20年で4割の減少となりました。
四国経済連合会と四国の4つの地方銀行による遍路客の受け入れ態勢に関する調査報告書によると、アンケートに回答した36か所の札所すべてが「10年前に比べ遍路客が減った」と回答し、その減少率は平均38%となりました。
遍路客の減少による地域の過疎化などが懸念されるなか、起死回生の手段として注目されたのが、インバウンド誘客です。四国遍路の志度寺では、2018年に訪日外国人の参拝者が初めて1,000人を超えました。長期休暇を利用し余裕のある日程で、四国遍路を楽しむインバウンドは着実に増加しているといえます。
インバウンドの遍路客の受け入れ態勢
インバウンドの遍路客の増加にともない、四国遍路では受け入れ態勢の強化に取り組んでいます。その対策の例として、宿泊施設の多言語化と札所の寺院におけるお賽銭のQR決済導入について紹介します。
1. 宿泊施設の多言語化
遍路客の減少にともない、88か所の札所の周辺にある旅館は2016年時点で1997年の3分の2まで減ったほか、寺院が営む宿坊もほぼ半減しました。一方でビジネスホテルが20年で6割増加し、廃校や空き家を改装した遍路宿も誕生しており、遍路客のニーズの多様化が見受けられます。
2002年に運営を開始した「ふれあいの里さかもと」は、廃校となった小学校を活用した宿泊施設です。地域住民が運営しており、利用者の6割が遍路客であることから、交流人口の拡大による地域活性化が期待されます。
2018年時点で利用者は直近10年で2割減少した一方で、訪日外国人観光客の利用は5倍に増加しました。インバウンド対応として、2019年から携帯型の自動翻訳機を導入したほか、簡単な英会話カードも作成し、おもてなしの準備を進めています。
23番札所と24番札所の間に位置する「お宿・キッチンみつ佳」は、築50年ほどの空き家を改装したゲストハウスです。訪日外国人観光客の歩き遍路も多く訪れるため、スタッフは英語対応が可能で、公式サイトも英語で併記し、多言語対応を進めています。
香川を愛するカナダ人が「お遍路」の誤解を解く!「多言語対応」と「宿泊施設対策」で世界の「歩き巡礼」ブーム取り込みなるか
2019年10月、高松市在住のカナダ人男性が英語で四国遍路を紹介する書籍を出版しました。四国霊場88か所を歩いた体験を自らの視点で記しており、「お遍路」の認知拡大のきっかけにもなりそうです。こうした世界中の「歩き巡礼」ブームの現状や各巡礼路での受け入れ態勢を参考に、訪日観光客の間で注目が高まっている「お遍路」の現状と課題について解説します。目次外国人が「お遍路」の本を発売お遍路は外国人に人気なのか?世界的な「歩き巡礼」ブーム1. サンティアゴ巡礼(Camino de Santiago)2....
2. お賽銭のQRコード決済導入は四国遍路にも!?
徳島県阿南市の22番札所である平等寺では、2018年からお賽銭のQRコード決済端末の導入を開始しました。寺院におけるお賽銭のQRコード決済は、日光の二荒山神社などの人気観光地でも導入されており、新しいインバウンド対策として注目されているものです。
国内をはじめ訪日外国人観光客の間でもキャッシュレス決済が普及していることを受け、平等寺ではQR決済の導入に踏み切りました。
「面白い取り組みだ」といった声があがるとともに、「信仰心をないがしろにしている」といった批判があるのも事実で、住職は「早いうちに議論を起こしたかった」と述べています。
欧米人観光客の誘致強化へ
NPO法人「遍路とおもてなしのネットワーク」によると、2018年に歩きや自転車によって遍路を達成したインバウンド416人のうち、最も多かったのがフランス人(66人)、続いて台湾人(46人)、アメリカ人(40人)となりました。地域別では欧州が過半数の約220人と、アジアの100人弱を大きく上回っています。
"ZEN"という言葉がそのまま浸透しているフランス人にとって、まさに日本ならではのスピリチュアルな体験ができるとして、注目を集めているようです。
11月にパリで展示会開催へ
四国遍路への関心が高まっているフランス人の誘客を促進すべく、2019年11月にはパリで四国遍路の展示会が開催されました。また、知名度向上から「四国八十八箇所霊場と遍路道」の世界遺産登録の実現を目指すことも、目的の1つです。
四国経済連合会や4県知事、自治体や大学などが連携し、2010年に「『四国八十八箇所霊場と遍路道』世界遺産登録推進協議会」を立ち上げました。協議会はパリでの展示会をきっかけに、四国遍路のフランス・ヨーロッパでの認知を拡大させ、インバウンドの遍路客の誘客促進を狙います。
まとめ:四国遍路の活性化に向けインバウンド誘客を強化
全体的には遍路客の数は減少している一方で、インバウンドの遍路客は増加傾向にあるため、今後の四国遍路の活性化と世界遺産登録に向けたインバウンド対策は必須といえるでしょう。フランスでの展示会の開催やQRコード決済の導入など、四国遍路の認知拡大に向けた新たな取り組みから、今後も目が離せません。
<参照>
日経新聞:お遍路で四国をじっくり 増える訪日客、もてなし充実
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
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※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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