5月4日、安倍首相から緊急事態宣言の延長が発表されました。ただし、ゴールデンウィーク明けから国内の新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きを見せ始めており、地域によっては外出制限解除を早める動きもはじまりました。
日本国内において、今がまさに新型コロナウイルスの感染拡大のピークアウトとなるかどうかの正念場といえるでしょう。
海外旅行はもちろん、国内旅行もままならない現状は、インバウンド事業者にとっては試練の日々といえます。
しかし、今このタイミングをインバウンドの戻りに備えた「反転攻勢」への準備期間と位置付け、今後のインバウンド戦略を立てる上で参考となる情報をお届けできれば幸いです。
今回は、「アフターコロナの訪日観光スタイル」について考えてみたいと思います。変化する訪日旅行のあり方にアジャストするために、インバウンド事業者として何をすべきかについて解説します。
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「FIT化」が加速するアフターコロナの旅行スタイル
アフターコロナの旅行スタイルに起きる変化として、「個人旅行(FIT)」へのシフトの加速が挙げられるでしょう。
いずれ近い将来に、海外への渡航制限が解除される時が訪れます。しかし、団体旅行は「新型コロナウイルスが完全に終息した」という状況にならない限りは、企画する企業側に大きなリスクが発生してしまいます。そのため、団体旅行の企画や販売は難しい状況が続くことでしょう。
そうなると順当に考えれば、インバウンドの戻りが最も早い旅行形態はFITということになり、ある一定期間、訪日外国人のほぼ全てがFITという状況も考えられます。
旅行のあり方の変化
アフターコロナの旅行形態の変化によって、受け入れ側であるインバウンド事業者側も変わる必要があります。
かつての日本は団体旅行が主流であり、インバウンド黎明期ともいえる2003年から始まった「ビジットジャパンキャンペーン」の施策でも、中国の「団体旅行」から規制を緩和する動きが取られました。
結果として、日本人の「昭和型の観光スタイル」である団体旅行に合わせてきた国内の観光事業者のビジネスモデルは、そのまま中国人の団体旅行にうまく合わせることができました。
しかし、FITの旅行客には団体旅行客とは異なる特性が存在します。従来のやり方だけではアフターコロナのインバウンド需要に対応することは難しいでしょう。
それでは、具体的にどのような対応が必要になるのかを解説します。
1. 国籍・言語ではなく趣味嗜好からアプローチする必要性
FIT化が進むアフターコロナのインバウンド市場では、訪日関心層の旅マエの情報収集の仕方に変化が起こることが考えられます。
団体旅行では、個人の趣味嗜好やニーズを深く掘り下げることはせず、定番の観光スポットを巡るような「ハズさない観光」であることが求められました。
そのため、中国人なら中国人向けの、シニア層ならシニア層向けの、といった具合に国籍や年齢で一括りにした旅行商品の企画がなされてきました。
しかし、旅行客のFIT化が進み、旅のニーズが多様化するアフターコロナのインバウンド市場においてはそうはいきません。
今までのように「◯◯人」と国籍でひと括りにするのではなく、「〇〇に興味がある人」のようなターゲティングが必要になってきます。
日本のサブカルチャーが良い例でしょう。例えば、日本のアニメが好きな外国人は国籍や言語を問わず世界中に存在しています。
もし海外のアニメファンをターゲットにした訪日プロモーションを実施する場合、海外のアニメファンに対してリーチ力を持つメディア(例えば「Tokyo Otaku Mode」や台湾の「宅宅新聞」など)を使って、よりターゲットの趣味嗜好に合わせたメディアを選定することが必要となってきます。
2. エリアが本来持っている強みを活かした戦略をとる
前述の通り、FITのインバウンド需要をうまく取り込むためには、個人の趣向や琴線に触れるようなアプローチが不可欠です。
自治体を例に取ると、北海道であれば雪、別府なら温泉、秋葉原ならアニメのように、それぞれのエリアが持つ特性をしっかりと把握して、その特性やコンテンツが誰に対して刺さるかを深堀りして考える必要があります。
何もないところから訪日外国人を呼び込むためのコンテンツをゼロから立ち上げるより、エリアが持つ強みが刺さる層はどういった層で、その魅力に関する情報をどうやって届けるかを考える方が近道であり、かつ、継続性もあります。
具体的なソリューション
ここまで、観光スタイルのFIT化が進むアフターコロナではどのような変化が起きるのかについて考察しました。
それでは、FITの訪日外国人が持つ価値観や情報収集の方法を踏まえた上で、プロモーションを打つ際に外せない視点や、具体的にどのような準備をしておくべきかを解説します。
1. FITに向けたプロモーションの注意点:ターゲティングとフォロワー数
前述の通り旅行客のFIT化が進み、旅のニーズが多様化するアフターコロナのインバウンド市場では、プロモーションの実施についても今まで以上に施策の設計を入念に行う必要があります。
その際に考慮すべきが、「ターゲットに対してどれだけリーチできるか、ターゲティングの精度はどれくらい高いか」ということです。
例えばWeb系の施策の場合、特定の趣味や嗜好という切り口だけでプロモーション施策を選ぶと、結果としてターゲットが狭くなりすぎてリーチできる母数が少なくなってしまいます。
そのため、はじめは少し広めにターゲットの設定をしたり、複数媒体を使ってみたりしながら、どの施策が効果的だったか判断していきましょう。
もちろん、施策実施前にKPIの設定やPDCAを回すことを前提とした施策の設計も必要です。
それから、KOLをプロモーションに起用する際には、フォロワーの数で単純に判断しないようご注意ください。
というのも、KOLのフォロワーの内訳の半数が実は日本人であったり、悪質な場合はゾンビフォロワーと呼ばれるような水増しをしているケースも過去に多くみられていたからです。
2. オンライン上の窓口環境の整備について
FIT化が進んだアフターコロナにおけるインバウンド市場では、オンライン上の窓口の整備も重要となります。
FITは旅先の情報を個人で収集するため、WEB上で旅先の正しい情報と魅力をキャッチしてもらわなければ、当然訪れてくれることはありません。アフターコロナのインバウンド市場への備えとして、公式WEBサイトやSNSの充実は非常に重要です。
上記は準備の大前提ですが、さらに個人のニーズを取りこぼすことなくよりコンバージョンにつなげていくためには、WEB上の情報が「インタラクティブ」であることが望まれます。
双方向のサービスとして注目されているのが「AIチャットボット」です。AIチャットボットは旅行者の質問や困りごとを瞬時に回答できるだけでなく、災害時の情報発信にも役立ちます。
また、AIに寄せられる質問事項を蓄積することによって、訪日外国人が直面している課題や傾向を分析でき、今後の改善にも活かすことも可能です。
FITの旅行客の多種多様なニーズに応えるため、人的なリソースの確保が難しい場合は、このようなソリューションの活用も有効でしょう。
FIT化が進むアフターコロナのインバウンドに備えるために
新型コロナウイルスの影響で、日本の観光は変化の時期に差し迫っています。
今までは訪日中国人の購買傾向や欧米豪の趣味嗜好、などといった大枠的にカテゴライズしてプロモーションを展開しがちでした。
しかしアフターコロナの世界では、個人の趣味嗜好や価値観に届く情報を伝えていくことが求められます。
本記事で今回ご説明したように、多様化するニーズに対応できるように準備しなければならない必要はありつつも、実は旅行客の旅行に求める本質的な価値は変わらないとも思っています。人は海外旅行におけるワクワク感、現地の人や文化と触れ合う喜びを求めて旅行をすることは変わりません。
今後はその喜びをプロモーションするためには、より解像度の高い情報発信や、個人にフォーカスしたコミュニケーションが必要となることに留意しなければなりません。
具体的な情報発信の内容や受け入れ環境の整備には、個々の状況に合わせたソリューションが必要となります。お気軽に「訪日ラボ」までご相談ください。
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