日本の伝統文化への関心高まりを受け、昨今インバウンド需要取り込みが期待されている武道の一つが「少林寺拳法」です。
2014年時点で世界36カ国で行われていますが、発祥元が日本であることは実はあまり知られていません。
本記事では、少林寺拳法の認知度拡大にあたり鍵を握るインバウンド活用事例、2017年トリップアドバイザーで全国1位を獲得した京都町屋旅館の取り組み、および発祥元である香川県多度津町で催行されているユニークな日帰りツアーについて解説します。
訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)少林寺拳法とは
日本古来より伝わる武道と中国の武術を融合させた武道である「少林寺拳法」は、攻撃的な技を繰り出す「剛法」に加え、筋力の少ない人でも習得可能な「柔道」も同時に学べる点が特徴的です。少林寺拳法の概要、及び世界での広まりについて解説します。
実は日本発祥の武道
少林寺拳法は先述した通り、第二次世界大戦後に日本古来の武道と中国の武術を融合させて香川県で生まれた武道です。
少林寺拳法は、ただ肉体的に戦闘能力を高めることが目的ではありません。 修行や鍛錬を通じて、勇気や慈悲、正義感など、社会生活において必要な素養を身に付けていくことを目的としています。
香川県多度津で創始者の宗道臣(そう どうしん)氏が平和で豊かな社会を作ることを目的に、若者達に指導を開始したことが起源となっています。
「剛法」と「柔法」を同時に学べる
武道の中には「剛法」と「柔法」と呼ばれる2つの種類があり、剛法では「突く」「蹴る」などの主体的な攻撃が重視され、反対に柔法では「投げる」「固める」などが中心となります。
少林寺拳法は、「剛法」と「柔法」の両方が同時に習得できる武道です。 特に少林寺拳法の「柔法」は、少ない力で相手にダメージを与えられる技も多く、筋力の少ない人でも習得が可能な実践的武術であり、護身術としても注目されています。
世界における少林寺拳法
少林寺拳法の発祥は香川県でしたが、1960年代後半からは少しずつ国外へも広がっていき、2014年12月には36か国で競技が行われるまでに拡大しました。
とはいえ、未だオリンピック種目としては認められておらず、4年に一度開催される世界大会が中心の大会になっています。
2019年7月、フランスで開催された「Japan Expo」では少林寺拳法のデモンストレーションが行われるなど、「日本の武道」として世界に発信が続けられています。
「Japan Expo」とは?日本文化の総合博覧会・フランスで開催・あらゆるエンタメを展示・ビジネスのチャンスも・その魅力を一挙解説
2019年7月、フランスにてJapan Expoが開催されました。日本コンテンツのファンや関係者が多く集ったこの大規模なイベントについて紹介します。目次Japan ExpoとはJapan Expoの概要Japan expoの沿革日本魅力を多方面から発信多種多様な展示内容一般向けの文化発信にとどまらない企画:ビジネス専用エリアビジネス専用エリアとは?出展方法は?出展のメリット情報発信の場を活用して効果的な施策をJapan ExpoとはJapan Expoは、毎年フランスにて開催されている日本...
京都旅館でインバウンド向けに少林寺体験
少林寺拳法への国際的需要の増加を受けて、訪日外国人観光客の誘致を目指す動きが高まっています。
訪日外国人観光客に人気の京都で、2017年トリップアドバイザー1位を獲得した町屋旅館が取り組んでいるインバウンド施策について解説します。
トリップアドバイザー1位、京都の町屋旅館
2016年アジア・インタラクション・サポートは、新築ながらも昭和初期の古民家を忠実に再現した風情ある「京町家 楽遊 堀川五条」を開業しました。立地はあまり恵まれていないにもかかわらず、2017年トリップアドバイザーの「外国人に人気の旅館」調査で堂々全国1位に輝きました。
布団に慣れていない訪日外国人でも、自身で布団敷き体験が出来るように旅館オリジナルで解説イラストを作成したり、近隣の銭湯に足を運びローカルな体験を味わってもらえるよう竹かごを用意したりするなど、「体験」に重点をおいたサービスを充実させることで「日本らしさ」を求める外国人観光客から高く評価されました。
こうしたサービスの他にも、3点ユニットバスやドライヤー、エアコンが各部屋に完備されており、プライバシー・快適性を重視した施設環境も人気の理由です。
2号店は少林寺道場を併設、体験プログラム開設予定
訪日外国人観光客に高い評価を誇った「京町家 楽遊 堀川五条」の2号店として、「京町家 楽遊 仏光寺東町」が、京都一の繁華街である四条河原町に2018年開業しました。
地下鉄四条駅から徒歩5分という便利な立地に加え、京都の伝統的な美意識が感じられるような、こだわりのある外観やロビーのデザインが特徴です。
また、同旅館は少林寺道場が併設されていることから、訪れる人に日本文化を体験してもらえるように、今後さまざまな体験プログラムを導入していく予定としています。
少林寺の総本山・香川県多度津町日帰りツアー
今後の需要拡大が見込まれる少林寺拳法は、発祥の地である香川県においてもインバウンド需要の取り込みに向けた取り組みが行われています。
大手企業との連携によって実現した少林寺拳法の活用事例「香川県多度津町日帰りツアー」について解説します。
概要
少林寺拳法が誕生した香川県多度津町では、「なぜ、多度津で少林寺拳法が生まれ、今も愛されているのか?」をテーマとした日帰りツアーが催行されています。
同ツアーは、地域資源・文化資源を観光資源として活用する取り組みの「四国家のお宝」シリーズの一つとして、JR四国と百十四銀行によって開催されました。
ツアーの中では、金剛禅総本山少林寺を訪ねて少林寺拳法の教えを学ぶことができます。 単純に相手と戦う武道としての側面だけでなく、健康プログラムやストレス解消など、自身の心と体と向き合うことができる内容となっています。
「知られざる少林寺拳法の世界」ツアーの内容
ツアーは、2019年6月15日と16日の計2日間、それぞれ20名ずつ募集が行われました。
ツアー内容としては、少林寺拳法の総本山である金剛禅総本山少林寺の他、本通り商店街や桃陵公園、本部道院・前庭などへの訪問が含まれています。
金剛禅総本山少林寺では、座禅や少林寺拳法のエッセンスを活用した健康プログラムを実際に体験することができるため、少林寺拳法の教えを実際に経験し、その奥深さを知ることができるツアーとなっています。
日本発祥の少林寺拳法、コンテンツ観光への活用に期待
少林寺拳法は日本古来の武道と中国の武術が融合した、日本の香川県で発祥しました。競技人口はさほど多くないものの、競技者は世界36か国に存在しています。
日本の精神性が学べるということから、少林寺拳法はにわかに訪日外国人にも注目されつつあります。
発祥の地である香川県では少林寺拳法を実際に体験したり、総本山を訪ねたりといったツアーが企画され、インバウンド需要の取り込みに取り組んでいます。
日本では緊急事態宣言が解除され、段階的に経済活動が再開されるようになった現在、今後のインバウンドの戻りを見据えた上で受け入れ対策やPR施策を講じていくことが大切といえるでしょう。その際、少林寺拳法発祥の地という歴史を活かした香川県の事例のように、その地ならではの持ち味や魅力を観光資源として見出すこともまた重要です。
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