大分県のインバウンド対策と別府市の観光データ/外国人に人気のスポット・PR動画施策

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別府温泉に代表される有名温泉観光地を抱える大分県は、アジアからの観光客を中心にインバウンド需要が高い県として知られています。

2019年にはラグビーW杯が大分で開催されたことを契機に、県全体として欧米からの観光客の誘致に取り組み始め、開催時には大きな成果をあげました。

2020年は新型コロナウイルスの影響で、他の観光地同様、インバウンド需要の落ち込みで県内の観光産業は厳しい状況に置かれています。

本記事では大分県の観光地としての魅力や、その中でも有名な別府市の最新の観光データと、インバウンド向けの取り組みについて紹介します。

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大分県のインバウンド事情

観光需要の伸び率の多くをインバウンド需要が支えてきた大分県では、訪日外国人観光客の呼び込みや、実際に県内を訪問した外国人観光客に対する便利なサービスの提供などを積極的に行っています。

そこでまずは、近年の大分県のインバウンド需要の状況とやトピックスについて紹介します。

九州で福岡に次ぐインバウンド需要

大分県は、九州において福岡県に次いで2番目に訪日外国人観光客が多い県です。全国的に見てもその数は多く、観光庁によると2018年の大分県の訪日外国人客数(推計値)は131万3,177人で、全国13位となっています。

また同統計では、大分県の「国籍別訪日者数」は韓国46.55%、台湾20.91%と、韓国からの来訪者が多いのが特徴です。

しかし2019年7月に半導体3品目の輸出管理規制が原因で日韓関係が悪化、その影響で韓国〜大分空港間の直行便の運休などが発生し、韓国から宿泊客数が同年8月には前年同月比67.8%減にまで落ち込んだ影響もあり、2019年の訪日外国人観光客数は前年比マイナスに転じました。 

その一方で2019年にはラグビーW杯が大分県で開催されたこともあり、大分県の県観光調査によると、2019年10月の欧米からの県内宿泊者数は過去最高の3万3,920人を記録し、前年同月の11.6倍に上るなど、明るい材料もありました。

大分県のインバウンド需要

大分県は訪日外国人の訪問率、訪日数では全国第14位、インバウンド宿泊人泊数も16位となっており、九州・沖縄エリアでは3番目のインバウンド需要を持つ県です。


留学生数が全国2位

さらに大分県では、一過性の観光客だけではなく、留学生の数が多いのも特徴です。2018年度、都道府県別の人口10万人当たりの留学生数において、大分県は京都府に次いで全国2位となっており、県内の留学生数の出身国は実に93か国におよび、全体の数は3,626人で、前年と比較すると122人増加しています。

留学生が多い主な要因となっているのが、県内にある立命館アジア太平洋大学(APU)の存在です。日本学生支援機構が2019年1月に公表した「平成30年度外国人留学生在籍状況調査結果」によると、同大学には2018年5月1日時点で2,867人の留学生が在籍しています。

留学生の出身国別の内訳上位5か国を見ると、中国(780人)・韓国(657人)・ベトナム(471人)・インドネシア(408人)・タイ(282人)となっています。大分県ではこうした人材を積極的に活用するために、県内の学校を卒業した留学生を架け橋として県内企業と海外を結ぶ支援策を充実させるなど、ネットワーク作りに積極的に乗り出しています。

アジア最大の旅行会社との協定を結ぶ

インバウンド需要のさらなる獲得を目指し、大分県では2019年9月に、上海を拠点とするアジア最大級のオンライン旅行会社「Ctrip」(シートリップ、現:トリップドットコム・グループ)と、中国からの観光客の誘致を促進するために協定を締結しました。連携協定に基づく主な取り組みには次のような点があります。

  1. 大分県の宿泊施設、観光地、商業施設などのプロモーション
  2. 大分県における旅行体験の向上
  3. 中国における訪日観光の市場分析の強化
  4. 大分県と中国各地の文化、旅行関係組織との交流、協力
  5. 上記以外に必要と認める観光振興に関すること

大分県では、同社との協定を通じてサステイナブルツーリズムについても連携していきたい考えで、「旅行者も住民もWin-Winな関係」を構築することで、インバウンド需要のさらなる促進につながることに期待を寄せています。

大分県で外国人に人気のスポット:別府

大分県のインバウンド需要を支えているのは、温泉観光地といっても過言ではありません。

大分県で外国人観光客に人気の観光スポットの中から、国内からの観光需要も高い由布院温泉と観光列車「ゆふいんの森」、韓国からの観光客に特に人気が高く、最近は欧米からの観光客の姿も目立つ「別府温泉」、年齢や性別を問わず人気があり、湯平(ゆのひら)温泉にある温泉旅館「山城屋」の3つのスポットについて、その魅力を紹介します。

由布院温泉・観光列車「ゆふいんの森」

別府の奥座敷と称される由布院温泉は、由布岳の麓に広がる人気の温泉地です。由布市が実施した「平成30年観光動態調査結果」によると、同年の由布院温泉の観光客数は日帰り客と宿泊客を合わせて442万1,672人と前年比114.55%増で、その中で外国人観光客は89万1,676人であり、前年比187.86%増となっています。

由布院温泉の人気を支える要因の1つに、1989年、博多・由布院・別府を結ぶJR九州初の観光列車として登場した「ゆふいんの森」の存在があります。JR九州によると、2019年5月末時点の累計利用者数は約636万人で、近年はアジア系外国人観光客にとってゆふいんの森に乗ることがステータスの一種のようになっており、同社は東洋経済オンラインの取材に対し「感覚的には多いときで7~8割を外国人が占める」と語っています。

車内は由布院の目指す「緑ゆたかな滞在型温泉保養都市」のコンセプトに沿った木の温もりを活かした内装が特徴で、客室の床が通常より高い位置に配置されたハイデッカー構造を取り入れ、車窓の豊かな田園風景を堪能できる工夫が凝らされています。

別府温泉

別府温泉は、大分県の東海岸沿いの別府市内にある数百の温泉の総称で、国内有数の温泉地の1つです。

別府温泉は世界第1位の源泉数、第2位の湧出量を誇り、浜脇温泉・亀川温泉・観海寺温泉・堀田温泉・明礬温泉・鉄輪温泉・柴石温泉の7つ温泉地と合わせて別府八湯と呼ばれています。

インバウンド人気を支えているのが、入るだけではなく見る温泉がある点で、地獄めぐりではコバルトブルーの温泉が湧く「海地獄」、鉄分を含みあたかも地獄の血の池を連想させる「血の池地獄」など、9つの温泉めぐりが楽しめます。

さらに「別府海浜砂湯」には、世界的にも珍しい砂湯があるほか、裸での入浴に抵抗感の強い外国人観光客のために、「北浜温泉(テルマス)」のように水着着用で混浴が楽しめる野外健康浴施設もあるなど、日本の温泉文化に不慣れな訪日外国人客に向けたサービスを徹底させている点も人気の秘密となっています。

温泉旅館「山城屋」

創業50年を超える旅館「山城屋」は、別府温泉の中心部から15キロほどの離れた湯平温泉にあり、宿泊客の8割を外国人観光客が占めることで知られる温泉旅館です。

山城屋は10年ほど前からインバウンド対策に取り組み、公式サイトの多言語化(英語・韓国語・中国語)に取り組んだほか、最寄りの港や空港から旅館までのアクセス案内を動画で提供したり、トラブルの原因となりやすい、温泉の入浴方法やタオルの使い方も動画で紹介して部屋のテレビで見られるようにしています。

こうしたきめの細かいサービスが評価を受け、2017年にはトリップアドバイザーの宿泊施設満足度ランキング「日本の旅館部門」で全国第3位に輝いています。

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別府市の観光データ

別府市では、「年間調査」と 「GW・お盆・年末年始」調査について毎年発表しています。

2018年の年間調査

2018年の別府市における総観光客数は、904万3,095人で、前年比 2.7%増(236,217 人増)でした。

内訳は、日帰り客数は652万441 人で前年比 4.1%増(257,893 人増) 。宿泊客数は252万2,654 人で前年比 0.9%減( 21,676 人減)となりました。

2020年のお盆調査(速報値)

また2020年度の「お盆 入込調査結果(速報値)」によれば、新型コロナウイルスで首都圏からの帰省を控える動きがあった影響で、お盆期間中の観光施設、宿泊施設ともに前年を大きく下回る結果となっています。

宿泊客数は1万5,264 人で前年同期比38.1%の減少でした。宿泊客数は、旅行代金の一部を補助する「湯ごもりエール泊 別府鬼割プラン」や「Go To トラベルキャンペーン」により施設によっては効果がみられたものの、前年同期比で約4割減となったことが報告されています。

調査期間は2020年8月13日~8月16日です。

大分県のインバウンド対策

大分県では、2017年に「大分市観光戦略プラン」を策定し、「地域資源を活用した観光振興の推進」などを柱に7つの基本方針を掲げ、県内の自治体と連携した広域的な観光施策や、インバウンド誘客に向けた情報発信、産業観光プログラムの開発などに取り組んでいます。

ここでは、その具体的な取り組みについて詳しく紹介します。

海外向けPR動画の作成

国境の壁を越えて広く世界にPRするためには、今やYouTubeなど動画を活用してのアピールは欠かせません。大分県でも、県内の食や自然、温泉、観光地などの魅力を伝えるために4Kの高画質で、ドローンなどを用いながら撮影した動画作成を行っています。

海外の有名ユーチューバーを起用して「⾼崎⼭⾃然動物園」の魅力を紹介しているものや、ご当地ゆるキャラが登場するもの、そして訪日外国人観光客にとっては難しいタクシーの乗り方などを解説したHOW TOビデオなど、多角的な視点から制作された30本近くの動画により、大分県の魅力をアピールしています。


おんせん県おおいた24時間多言語コールセンター

インバウンド対策に必要不可欠の言語施策として、大分県では「おんせん県おおいた24時間多言語コールセンター」を設置し、年中無休・24時間体勢で対応しています。

利用の対象となっているのは主に宿泊施設や観光案内所(大規模小売店舗は除く)で、現在通訳対応可能な言語は英語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、ロシア語、ドイツ語、イタリア語、タガログ語、ネパール語の全14言語となっています。

サービスでは、ユーザーとコールセンターの2地点対応だけではなく、ユーザーからコールセンター、そして外国人観光客につなげる3地点対応も導入することで、ユーザーや外国人観光客の多様なニーズに対応でき、利便性を高める工夫を行っています。

おんせん県おおいたホテルバンク事業

2019年に開催され、日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーW杯は、大分でも数試合が開催されました。大分県ではこのチャンスに1人あたりの消費額が高い欧米豪からの訪日外国人旅行者の誘致を強化するため、JTB九州と事業提携して「おんせん県おおいたホテルバンク事業」を実施しました。

これは、同大会の海外公式旅行代理店から予約リクエストを受けた国内旅行会社と宿泊施設のマッチングを、同事業の事務局が行ったものです。円滑なマッチングにより、W杯動機での訪日外国人の県内宿泊を、1人でも多く促進することを狙った事業でした。

ラグビーW杯の場合、海外において試合チケットと宿泊先をセット販売できる事業者は、大会の公式旅行会社のみという規定がありましたが、海外の公式旅行会社は大分のホテル事情に熟知しておらず、ホテル探しにあたり課題がありました。

しかし、海外に多く支店を有し、国際的なネットワークに優れたJTBと提携することで、大分県がホテルバンクとして県内宿泊施設の情報提供およびスムーズなマッチングが実現し、訪日外国人客の県内宿泊の誘導につながりました。

大分県のインバウンド事例を活かす

現在大分県では、2017年に5か年計画で立ち上げた「大分市観光戦略プラン」の最終年を翌年2021年に控え、これまでの取り組みを振り返り、総仕上げをする時期に差し掛かっています。

この期間ラグビーW杯という起爆剤はあったものの、日韓関係の悪化による同県のインバウンド需要の柱であった韓国人観光客の減少や、昨今の新型コロナウイルスの影響による観光業への大きな打撃など、先行きの見通せない状況が続いています。

しかし動画によりわかりやすく県内の魅力をPRしたり、24時間・年中無休体制で多言語対応をしたりと、徹底的に訪日外国人観光客の視点に立ったインバウンド対策は、アフターコロナ後のV字回復に向けた重要な布石になることが期待されています。

<参照>

別府市:観光統計

大分合同新聞:大分県内の韓国人客67%減 8月宿泊、1万人割る

大分合同新聞:10月の大分県内宿泊客、欧米・大洋州11・6倍 W杯効果で過去最高

大分県:平成30年度大分県外国人留学生受入れ状況

日本学生支援機構:平成30年度外国人留学生在籍状況調査結果

PR TIMES:~特急「ゆふいんの森」がまもなく30周年~『ゆふいんの森30周年キャンペーン』を実施します!!

由布市:平成30年観光動態調査結果

別府温泉地球博物館:別府の温泉地としての魅力


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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