中国のIT大手企業、アリババの傘下にあるオンライン旅行サービスプラットフォームに「飞猪(飛猪/フリギー)」(以下:飛猪)というサービスがあります。
2019年3月には、訪日中国人観光客が旅行前に現地にある実店舗の商品をあらかじめ閲覧・購入できる新サービス「飞猪购(飛猪購・フリギーゴー)」(以下:フリギーゴー)もスタートし、訪日中国人観光客の誘致を目指す日本企業がサイト内に出店するケースも現れ始めています。
本記事では、飛猪のサービス内容を紹介すると共に、登録方法や活用方法を紹介します。
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飛猪の基本情報
飛猪は、日本のオンライン旅行サイトと同様、交通チケットの手配から宿泊施設やレストラン、レンタカーなどの事前予約、さらにはオリジナルを含むパッケージツアーの販売までを扱うオンライン旅行サービスプラットフォームです。
まずは、登録方法やサービス内容について詳しく紹介します。
飛猪の登録について
飛猪は、中国最大のEコマース「淘宝(タオバオ)」の旅行部門という位置づけになります。
そのため、ユーザーが飛猪に登録するためには事前に淘宝への登録が必要です。
※淘宝は日本国内からでも無料でアカウントの作成が可能です。登録に必要なものは「日本国内の携帯電話番号」と「メールアドレス」のみであり、中国国内の住所は必要ありません。
それでは飛猪の登録方法について説明します。まず、「飛猪旅行」というアプリをダウンロードします。画面下部の「开始」をタップし、利用を開始します。
▲[飛猪開始画面]:編集部キャプチャ
次に位置情報の利用と通知の許可を求める画面が出ます。同意する場合は「同意」をタップし進みます。
▲[位置情報利用確認画面]:編集部キャプチャ
すると、アプリのトップ画面が表示されます。会員登録をするには、「我的(マイページ)」を押します。
▲[飛猪トップ画面]:編集部キャプチャ
まず、電話番号を入力します。そして「获取验证码(認証コードを取得)」を押すと、登録した電話番号にSMSでコードが届くので、入力します。
▲[電話番号登録画面]:編集部キャプチャ
すると、登録に際してのサービスに関するプライバシーポリシーが表示されます。同意する場合は「同意协议并注册(同意して登録)」をタップし、登録を完了します。
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▲[プライバシーポリシー確認画面]:編集部キャプチャ
以上で登録は完了です。
飛猪はアリババ傘下のため支付宝(アリペイ)と連携しており、飛猪を利用して予約などを行ったサービスに対しては全てアリペイ決済が可能です。
▲[支払い方法登録画面]:編集部キャプチャ
ビザ申請の手続きも可能
中国人旅行客が海外旅行をする際に、ビザ取得の煩雑さは大きな悩みの一つです。そこで飛猪では、2017年より「オンラインビザ申請センター」を設置し、多数の国への入国ビザ申請手続きのオンライン化を実現しました。
「オンラインビザ申請センター」とは、スキャナで読み取った文字を解析し、文字データとして認識して入力するためのソフトOCRの識別機能を活用したもので、利用者はパスポートまたは身分証を携帯端末でスキャンするだけで必要な内容が申請書に自動的に転記され、あとは各国ごとに異なる必要事項だけを記入すれば誰でも簡単に申請書を完成できます。
このシステムでは、ユーザーはオンライン上で進行状況をリアルタイムにチェックできます。
さらにシェンゲン協定(加盟している国家間において出入国審査なしで国境を越えることを許可する協定)加盟国に行く際に必要な「シェンゲン・ビザ」取得の際も、オンライン上で指紋登録をすればわざわざビザセンターに出向く必要がなくなり、ビザ申請手続きの大幅な簡略化を実現させました。
昨年3月にはECサービスを実装
飛猪の新サービスとして現在日本企業から注目を集めているのが、2019年3月にサービスが開始されたフリギーゴーです。これは「中国人旅行者に最適な買い物体験を提供すること」をミッションに掲げるECサービスで、訪日中国人観光客が旅行前に旅行先の実店舗の商品をあらかじめ閲覧や購入できるサービスです。
ユーザーがフリギーゴーを利用するメリットには、次のような点があります。
- 旅行前に欲しい商品をチェック、購入できるため旅行時に買い物に時間をとられない
- 購入者レビューを閲覧して商品選びができる
- 店ごとの商品価格が比較できる
- サイト内に出店している免税店を利用すれば、旅行前に免税店の商品を免税価格で予約・購入できる
- アリペイ決済が使える
もちろん、ユーザーのみならず加盟店側にも、訪日中国人観光客の集客や事前決済システムによる店頭での煩雑なやり取りの省力化といったメリットがあります。
並びたくない中国人が大歓迎!アリババは「フリギー(飛猪:Fliggy)」で旅先買い物商機を狙う:日本企業は家電大手が先手を打つ
可処分所得の増える中国では「旅行」が人気で、豚のアイコンが目印の「飞猪(飛猪:Fliggy)」は英語名をFliggy(フリギー)というサービスが注目を集めています。フリギーは、ECプラットフォームのタオバオやTmall、またQRコード決済の「Alipay」で有名な中国を代表するIT企業の一つ「アリババグループ」が展開しているサービスです。2019年3月には、旅行前に「旅行中のお買い物」ができてしまう新サービス「Fliggy Buy(フリギーゴー)」がスタートしました。(現在のサービス名は「...
飛猪に登録するメリット
飛猪は、アリババ傘下のオンライン旅行サービスプラットフォームです。そのためアリババグループが抱える7億人以上のアクティブユーザーにアプローチできるチャンスが生まれるなど、訪日中国人観光客の誘致を目指す企業にとって飛猪への登録はさまざまなメリットがあります。
ここでは、具体的なメリットの内容について解説します。
訪日外国人数が最も多い中国に特化
日本政府観光局(JNTO)がまとめた国別の訪日外国人外客数によると、2019年の訪日外国人観光客の総数は約3,200万人で、その中で中国からの訪日観光客は約960万人と全体の3割を占めています。この数字はインバウンド需要を呼び込みたい企業にとっては無視できないものです。
各企業には訪日中国人観光客に対しての利便性の提供や旅行地を決めるための事前情報の提供など、1人でも多くの観光客を日本に誘致する姿勢が求められています。
飛猪は中国人向けに特化したプラットフォームであり、中国人旅行客向けのオリジナルツアーの企画・販売などを行っているため、飛猪の活用により新たな需要の喚起が期待できます。
旅マエの中国人への情報発信が可能
飛猪は交通チケットや宿泊先の予約だけではなく、「旅行の達人」と呼ばれるインフルエンサーや一般のユーザーが投稿する旅行に関するコンテンツが充実しています。
コンテンツの中身は世界各国の旅行攻略記事や現地情報だけではなく、スマートフォンを通じて現地からライブ配信をするなど、まさに「旅マエ」に欲しい情報が豊富に配信されています。
旅マエの中国人
中国人の間での海外旅行市場はどうなっているのでしょうか。UNWTO(国連世界観光機関)が発表した「World Tourism Barometer」によると、中国人観光客全体の2016年の海外旅行支出は総額で 26兆円 でした。2015年と比較すると 1兆円ほど増加 しており、世界全体の旅行支出額の 20% を占めるかたちになりました。中国人観光客は多くの国にとって重要視すべきターゲットとなっていることが把握できるでしょう。近年の中国人の海外旅行のスタイルを知るうえでExpedia Medi...
日本企業の飛猪への登録事例
近年、中国人観光客に特化したサービスを提供している飛猪を活用し、訪日中国人観光客の誘致につなげようとする日本の企業が増加傾向にあります。
そこで、いち早く飛猪と連携し、業績の向上につなげている3つの日本企業の事例を紹介します。
日本の航空業界でいち早く動き出したANA
国内の航空業界の中で、いち早く飛猪の活用を始めたのがANAです。
2016年、ANAは訪日中国人観光客の利便性向上を目的に、飛猪内にANAの旗艦店を開設しました。それまで中国におけるANAの航空券は、自社サイトや旅行代理店経由が主力の販売経路でした。
しかし、飛猪に旗艦店を開設したことにより、飛猪内でアリペイ決済を利用してスムーズにANA直営航空券を購入できるようになりました。
日本初の免税品予約販売店を開設したラオックス
ラオックス株式会社は、2019年から飛猪が取り組んだ新サービス・フリギーゴーサイトに、日本企業として初となる免税品予約販売店を開設しました。
このサービスを利用すると、訪日中国人観光客は旅行前にラオックス店舗で販売されている商品を免税価格で予約・購入できます。アリペイで事前に決済しておけば、予約日の3日後から30日以内に店舗に出向き、予約画面とパスポートの提示をすることでスムーズに商品が受け取れます。
さらに、ユーザーにとっては言語の壁に煩わされる心配がなく、貴重な旅行中の時間を商品選びに消費することがなくなるため、「旅の効率化」にもつながっています。
さらなる中国人誘致を目指すJR西日本
JR西日本は自社がサービスを提供するエリアにおいて、ゴールデンルートから外れたエリアに積極的に訪日外国人を誘致することを目的に、2019年9月に飛猪と連携しました。
飛猪内に開設されたJR西日本の旗艦店では、アリペイ決済の導入で訪日中国人観光客の利便性を向上させたほか、西日本の魅力的な観光地に関する情報を積極的に発信したり、飛猪限定の観光商品のを売り出したりすることで消費意欲の喚起を図っています。
モノ消費からコト消費へ|定義と最新傾向「トキ消費」「エモ消費」「イミ消費」
コト消費とは、経験・体験をその価値とする商品やサービスを購入する消費行動です。商品の機能や品質を重視し、購入する消費行動は、コト消費に対し「モノ消費」と呼ばれます。体験サービスはコト消費の代表的な商品ですが、商品やサービスが提供されるまでの過程に購買意欲をかき立てるような魅力のある商品の購入も、コト消費として定義されます。日本国内で、また世界的に消費トレンドは「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしつつあります。観光体験においても同様です。インバウンド市場を見据えた施策では「体験」を重視す...
旅マエの訪日中国人へのアプローチになりうる飛猪への登録
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、「アフターコロナ」を見据えたビジネスモデルの再構築が世界各地で起き始めています。
そして感染対策の観点から、団体旅行から個人旅行への旅行スタイルのシフトはより加速することが予想されます。こうした旅行スタイルの変化の中で、個人で旅行を手配できる飛猪が中国人観光客の中でより注目される可能性があります。
また、飛猪に備わっているフリギーゴーというオンラインショッピングの機能は、旅行中におけるショッピング体験をより快適にすることができ、モノ消費需要の喚起に一役買っています。
訪日中国人観光客のインバウンド対策として、「飛猪」を活用することは有効な手段の一つといえるでしょう。
<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数
JTB:JTB訪日旅行重点15カ国調査2019 インバウンド 市場動向 2019 訪日中国人旅行者の情報収集手段とは?中国インバウンド市場におけるデジタルプロモーションを考える
Alibaba Japan :中国トップクラスの旅行サービスプラットフォームFliggy(フリギー)
北京週報:中国の旅行サイトで「オンラインビザ申請センター」開設 ビザ申請が簡略化
ANA NEWS:中国・アリババグループ(阿里巴巴集団)が運営す旅行サイト「フリギー(Fliggy、飞猪)」にANA旗艦店を開設
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