ファストトラベルとは?空港の手続き・動線改善でストレスフリーな旅を実現、満足度向上を目指す

公開日:2020年07月09日

ファストトラベルとは、「旅客手続きの自動化プログラム」のことで、旅行者の空港での手続きを円滑にするものです。この施策によって、旅行者の満足度向上や、人件費の削減が期待されます。

本記事ではファストトラベルの概要やメリットについて触れながら、日本や海外での導入の実例について解説します。


ファストトラベルとは

ファストトラベルとは、IATA(国際航空運送協会)が促進している「旅客手続きの自動化プログラム」を指します。

自動化の対象となるのは、チェックイン、手荷物預入、ドキュメントチェック、搭乗ゲート、再予約とロストバッグの取り扱いの6項目です。

なおこの6項目のうちチェックインと手荷物預入、再予約は必須項目とされています。

IATAは、2020 年までにすべての旅客の80%がこの自動手続きを利用する状態を目指すとしています。

メリット:空港目線

ファストトラベルの空港側におけるメリットは、業務の効率化や高速化を図れることです。

また、最先端のシステムを導入することで、手続きの円滑化が進み、旅客への負担が軽減されるとともに、人件費の削減にもつながります。

手続きを機械で行えるため、台数を増やすだけで、並ばずにより多くの人のチェックイン手続きへ対応することが可能になります。

メリット:利用者目線

旅行者側のメリットとして、チェックインや荷物預入が自動化されることで、待ち時間が短縮されることが挙げられます。

利用者の待ち時間が短縮されれば、空港利用の満足度が向上し、結果として空港側の利益にもなり得るでしょう。

また、機械では対面カウンターよりも多くの言語に対応しやすくなるため、海外からの旅客にとってもスムーズに利用できるようになります。

現在も、全国の空港で多言語対応への取組として、翻訳サービスの活用やスタッフへの多言語対応タブレットの導入などが行われていますが、機械で自国の言語の案内に沿って自分で手続きが出来るようになれば、外国人利用者が感じる負担をより減らすことができるでしょう。

国内における現在・今後のファストトラベル

近年、日本国内の空港において、自動チェックイン機や自動手荷物預け機といったシステムが導入され始めています。

現在は一部の空港でのみ導入されていますが、地方の空港への導入も求められています。

ANAの羽田空港における取組事例

ANAは2015年より、搭乗するまでの流れをよりシンプルかつスムーズにするため、新搭乗スタイル「ANA FAST TRAVEL」の導入を羽田空港国内線第2旅客ターミナルで実施しています。

取り組みの第一弾として、2015年7月に、日本の航空会社では初となる自動手荷物預け機 「ANA Baggage Dropサービス」を導入しました。これは、表示される案内に従って、旅客が自分で手荷物預入を完了できるシステムです。

この自動手荷物預け機では、英語、中国語(繁体・簡体)、韓国語の4ヶ国語での案内にも対応しています。

つづく第二弾として、2015年10月、新自動チェックイン機の運用を開始しました。この新自動チェックイン機では、英語、韓国語、中国語(簡体字、繁体字)の4カ国5言語に対応し、元のチェックイン機よりも画面を大きくしたことで視認性を向上させました。

また、従来はカウンターで行っていた欠航や遅延時などの予約変更や払い戻しも、旅行者がチェックイン機で自分でできるようになりました。

そして第三弾として、子供連れや車いす利用者、介助が必要な人などの出発手続きをサポートする「Special Assistanceカウンター」を設置しました。

チェックイン手続きや手荷物預入の自動化に伴い、それらを自分たちだけで利用するのが難しい旅客へのサポートもきちんと充実させています。

成田空港の取組事例

成田国際空港では、2017年3月より国際線としては日本初となる自動手荷物預け機「CUBD」を導入し、第1旅客ターミナルビル北ウイングにて実証実験を実施しました。

実験の結果、自動手荷物預け機の導入が待ち時間の短縮や混雑緩和につながり、導入効果が大きいことがわかったため、全ターミナルで本格導入されることになりました。

そして、2019年の夏、実際にすべてのターミナルで自動手荷物預け機が導入されました。

これに合わせて、成田空港は、自動チェックイン機と自動手荷物預け機を利用したセルフサービス型の搭乗手続き「Smart Check-in」をスタートさせました。

成田国際空港では、東京オリンピックの開催を当初予定していた2020年の夏に向け、全ターミナルに計72台を設置する予定です。

地方空港への拡大

こうしたファストトラベルの取り組みについて、今後は地方の空港への拡大も期待されています。

前述のように、都市に近い主要空港ではファストトラベルの取り組みが進んでいますが、地方空港ではいまだ自動チェックイン機などが設置されておらず、旅客が長い列をつくり、有人カウンターで手続きを待たなけらばならない場合もあります。

このようなチェックインロビーや受託手荷物検査場にて発生する混雑は、チェックインカウンターの増設や自動チェックイン機・自動手荷物預け機の導入によって改善が見込めます。

来年2021年に開催を予定している東京オリンピックに向けて、地方の空港でもこうした効率化を図る手段について検討する必要があるでしょう。

海外の空港状況

日本では、全国的に見るとファストトラベルの導入が進んでいるとは言いがたい状況です。

一方海外では、チェックイン手続きや手荷物預入をはじめ、入国管理においても自動化が進んでいます。また導入の際にも、旅客や荷物の動線を予測した設置の工夫により、更なる混雑回避、業務効率化が図られているのが特徴です。

ここでは、海外の3つの空港におけるファストトラベル導入の事例を紹介します。

オーストラリア・メルボルン空港

メルボルン空港では、顧客の動線やスペースに応じた効率的な配置でシステムの導入が設計されています。

特に、既存のチェックインカウンターや手荷物搬送ラインをうまく利用し、自動チェックイン機を壁に沿って設置するのではなく、アイランド型に設置しているのが特徴的です。

手続きは自動チェックイン機での手荷物タグの発行と、手荷物預け機で手荷物を預けるとの2ステップです。自動チェックイン機で発行した手荷物タグのシールのゴミ対策として、アイランドの内側にゴミ箱を設置しています。

また、AIR CANADAのチェックインカウンターは、限られたスペース内で効率的に自動チェックイン機と手荷物預け機が設置されています。

オーストラリア・シドニー空港

同じくオーストラリアのシドニー空港でも手続きの自動化が進んでいます。

シドニー空港のターミナル3は、カンタス航空の専用ターミナルとなっているため、専有面積が広いことが特徴です。また、自動チェックイン機や手荷物預け機を導入するにあたって大幅なリニューアルを実施し、手荷物搬送ラインを再構築しています。

さらに、入国管理システムにもファストトラベルが導入されています。

飛行機の到着口から入国管理用のE-ゲートまでの間に、多数の顔認証登録用の機械を設置し、ここで事前にパスポート情報と写真情報、入国当日の顔写真を登録する仕組みです。これにより、E-ゲートでの運用を軽減させ、効率化を図っています。

この入国管理システムはオーストラリアの他の空港でも実施されています。

イギリス・ガトウィック空港

ロンドンにあるガトウィック空港は、LCCのEasy Jetが準拠点空港の一つとしている空港です。

Easy Jetでは乗客の95%がWebチェックインを利用し、自宅での搭乗券の印刷や、スマートフォンアプリでの電子搭乗券の取得をするため、その多くが空港に来る前に事前にチェックインを済ませています。そのため、自動チェックイン機の設置台数が極端に少ないのが特徴です。

旅客との空港でのファースト・タッチポイントが手荷物預け機になることから、十分な操作時間を取るために46台の手荷物預け機を導入し、混雑を緩和しています。

空港業務の簡略化によって空港利用の増加

「旅客手続きの自動化プログラム」を指すファストトラベルは、国内でも導入され始めていますが、海外ではさらに導入が進んでいます。

空港側にとっては業務の効率が高まるというメリットがあり、旅客にとっては混雑緩和による待ち時間の減少が期待できます。さらに、多言語対応策として、機械であればより多くの言語に対応できるというメリットもあります。

また、現在ファストトラベルの導入は、成田空港や羽田空港のような主要空港を中心に進んでいます。しかし、IATAが2020年までに旅客の80%が自動手続きを利用する状態を目指していることからも、今後は地方空港などでも導入がさらに進んでいくと見られています。

ファストトラベルの推進によって、飛行機の利用がより手軽で満足度の高いものとなることで、空港利用者が増加することが期待されます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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