2020年7月15日、日本政府観光局(JNTO)は訪日外客数の2020年6月推計値を発表しました。
6月の訪日外国人数は2,600人と、先月の1,700人よりは増加したものの、引き続き前年比では99.9%減と大幅な減少がみられます。全22市場において、3か月連続でほぼゼロに近い数値となりました。
アジアや欧州を中心に、新型コロナウイルスの感染流行のペースが緩やかになり、国内の移動制限の緩和や欧州域内の移動制限の解除が始まった一方で、依然として海外渡航の規制は続いていることが要因として考えられます。
本記事では、6月の訪日外客数のデータとともに、海外の新型コロナの感染流行状況や、今後のインバウンド市場の展望について解説します。
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3か月連続で全市場の訪日外客数がほぼゼロに
2020年6月の訪日外客数は、前年同月の288万人から99.9%減少の2,600人となりました。先月の1,700人と比べると微増していますが、引き続き3か月連続で、全22市場においてほぼゼロに近い数値がみられます。
韓国・中国・ベトナム・米国を除く国と地域は、二桁以下の数字が並びました。理由としては、世界的な新型コロナウイルスの感染流行により、各国における海外渡航制限が継続されていることが考えられます。
6月29日には、日本への入国拒否対象地域に18か国が新規で追加され、129か国と地域からの入国を制限しているのが現状です。
東アジア:中国と韓国は3桁に戻るも、海外渡航自粛により100%減
東アジア市場における6月の訪日外客数は、最も多い中国が300人、次いで韓国が100人、台湾が50人、香港が10人未満となりました。
韓国では7月1日から19日までを「2020特別旅行週間」とし、政府が国内旅行の需要喚起をしていますが、海外旅行は自粛するよう要請しています。
中国は日本への直行便が6月初旬の週9便から下旬には週10便へと増加しましたが、引き続き7月も大幅な減便や運休が目立ちます。
台湾では7月1日より台湾域内の観光が促進されていますが、海外団体旅行は取り扱いを中止するよう旅行業界に勧告を出しており、7月末まで延長される見込みです。
香港は10人未満と、他の東アジア市場に比べても特に低い数値が目立ちました。日本を含む全ての国と地域からの入境者は、14日間の強制検疫措置が適用されるといった徹底した水際対策が要因の1つとして考えられます。本措置は9月18日まで延長されるとし、しばらくは香港からの訪日客の大幅な減少が見込まれます。
東南アジア・インド・中東:出入国制限が緩和されたベトナムを除き、2桁以下に落ち込む
6月の東南アジアとインド・中東市場における訪日外客数は、最も多いベトナムが100人、次いでインドが70人、フィリピンが50人、中東が30人、インドネシアが20人、タイ・マレーシアが10人、シンガポールが10人未満と、先月に引き続き低い数値が並びます。
ベトナムは、世界的に新型コロナの感染対策の成功例として知られており、感染状況が落ち着いていることから、6月19日には日本とベトナム間の出入国制限をビジネス目的の渡航に限定し段階的に緩和していくことで合意しました。
マレーシアでは6月19日、日本との合意がまとまり次第、活動制限令が終了する8月31日を待たずに国境開放の見込みがあるとの意向を示しましたが、引き続き海外渡航は禁止されているのが現状です。
他の国と地域でも、国内での移動制限は緩和傾向にあるものの、海外渡航は自粛が要請されていることから、7月の日本への直行便は大幅な減便や運休となっているケースが多くみられます。
欧米豪:海外渡航が緩和傾向にある欧州/引き続き自粛傾向にある米豪
6月の欧米豪市場における訪日外客数は、最も多い米国が100人、次いで英国は30人、フランス・カナダは20人、豪州・ドイツ・スペインは10人、メキシコ・イタリア・ロシアは10人未満と、ほぼ2桁以下の低い数字が顕著となりました。
米国の訪日外客数は、他の欧米豪市場に比べると多いですが、6月下旬より西部や南部を中心に感染者数が増加しているため、多くの州で社会経済活動の再規制が始まるなど、7月も日本への直行便は大幅な減便・運休となっています。
カナダでは、東部で感染者数が増加傾向にあることから、海外旅行需要の回復には相当の時間がかかると見込んでおり、引き続き日本への直行便の大幅な減便・運休が続く予定です。
欧州では、英国において7月4日より海外旅行の制限が緩和されたほか、7月10日以降は日本を含む一部の国と地域からの入国者に対し、14日間の自己隔離を免除すると発表しました。
EUは7月1日、域内の移動制限を解除し、域内への渡航を許可する対象として日本を含む15か国を指定しました。しかしドイツは、日独の渡航受け入れに関する相互条件の合意に至っていないことから、7月以降も日本への直行便は大幅な減便・運休が続く見通しです。
海外渡航制限の緩和が進む海外と日本の受け入れ状況
EUは6月末、日本を含む15か国を入域可能にすると発表しました。フランスをはじめ、日本からの入国者に対し14日間の自主隔離措置を適用しない国がある一方で、イタリアは引き続き実施するなど、国によって対応は異なっています。
欧州は国境封鎖の解除が進む一方で、日本は欧州からの旅行者を受け入れる目処は立っていないことから、依然として欧州からの訪日旅行需要の回復は見通せない状況が続く見込みです。欧州では、まずEU域内や国内での旅行需要の回復がみられるでしょう。
日本政府は7月14日、米国や欧州の企業経営者に限り少人数での短期滞在を条件とし、入国制限緩和の検討を始めたと発表しました。
そのほかにも、ビジネス客の受け入れ再開に向け、タイやオーストラリア・ニュージーランドと交渉を進めており、さらに今後は中国・韓国・台湾・シンガポールなど10か国・地域とも協議を開始する見通しです。
このように、海外からビジネス目的で訪日する短期滞在者の受け入れは、徐々に進む見込みですが、日本における感染流行の状況を鑑みると、旅行者の受け入れ再開時期は不透明といえます。
アフターコロナに向けて、市場別のインバウンド対策と訪日旅行の安全性のPRを
日本は6月29日より、新たに18か国を追加し、現在129か国と地域からの入国を制限しています。
いまだ収束の目処が立たない新型コロナウイルスですが、欧州では域内の移動制限が解除されたり、各国で国内に限り移動の自由が戻ったり、世界的には短距離の旅行需要の回復が見込まれます。
日本はビジネス目的に限り、渡航制限を緩和させていく姿勢を見せており、今後は企業経営者などの往来が回復していくかもしれません。
日本と各国が相互入国の合意を旅行客の渡航再開の条件とする中で、長距離の海外旅行需要の回復までまだ時間がかかることも予想されます。
こうした中でも、Go To キャンペーンなどを通じ、国内旅行市場は回復の動きも見られています。ウィズコロナ・アフターコロナの訪日旅行では、3密を避ける目的から、地方への旅行に注目が集まることが考えられます。地方自治体は、コロナ禍のピンチを地方誘客のチャンスと捉えることもできます。
リピーターの多いアジア市場や地方をまわる予算がある欧米豪の富裕層など地方誘客のターゲット市場を明確にし、国内旅行の動きを海外市場の訪日需要喚起やそのイメージアップにつなげるような取り組みを進めていくべきでしょう。
<参照>
・JNTO:訪日外客数(2020年6月推計値)
・JNTO:訪日外客数(2019年6月推計値)
・外務省 海外安全ホームページ:日本における新型コロナウイルス感染症に関する水際対策強化(新たな措置)
・朝日新聞DIGITAL:日本→欧州、条件なしの入国OKは11カ国 拒否の例も
・日本経済新聞:米欧経営者の入国制限緩和、政府検討 少人数・短期間条件
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