ICTやそれに伴う技術が大きく発達したことで、日常生活に関するあらゆるサービスがICTを利用してより便利に変わりつつあります。
中でも、公共交通機関のようなインフラや教育、医療にICTの技術を活用することで地域の抱える問題を解決するスマートシティを取り入れる地域が増加しています。
観光地においてもスマートシティ化は注目されており、ICTを用いて観光客だけでなく自治体や地域住民、観光地のスタッフなどにもメリットがあるのが特徴です。
本記事では、観光地で実際にICTがどのような場所で取り入れられているのかを、具体的な取り入れ方や実際にスマートシティ化に成功している都市を例示しながら解説します。
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スマートシティとは
スマートシティを取り入れる前には、そもそもスマートシティがどのようなものであるかを知っておく必要があります。
スマートシティの定義について触れながら、近年増加しているスマートシティ導入例について解説します。
国土交通省による定義
国土交通省ではスマートシティについて、地域が抱える問題について計画、整備、管理、運営などのマネジメントが、ICTを代表とした最新技術を活用して行われる地域を指すと定義しています。
スマートシティではマネジメントの結果として、全体最適化が図られる持続可能な地域となることが求められます。近年では交通や通信、教育、医療・健康などあらゆる分野に取り組む「分野横断型」のICTやデータ利活用型のスマートシティが増加しているのが特徴です。
観光地へのスマートシティの取り入れ方
観光地でもスマートシティを取り入れることで、地域の問題を解決し観光業に対しあらゆる効果が及ぶことが期待されています。
ここでは、観光地へのスマートシティ導入の具体的な方法として、観光型MaaS、外国語対応、混雑の緩和、マーケティングへの4つの活用法について解説します。
観光型MaaS:移動の効率化
MaaSとはMobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略で、交通手段のシームレス化による移動の効率化を図ることを指します。MaaSによって新たな移動方法を提供することにより、新たなサービスの提供が可能となります。
中でも宿泊施設や移動手段を一括で検索、予約できるサービスやオンデマンドモビリティを指し、観光地に対するMaaSである「観光型MaaS」はスマートシティ導入の有効的な方法です。
先に挙げた例以外にも乗り捨て可能なカーシェアや駐車場予約システムは、観光地周辺の周遊を促進したり、渋滞を緩和したりという効果が期待できます。
宿泊と移動を一括で検索、予約できることで、観光地を訪れる人は目的に合わせた情報収集がより容易になり、計画していた行程へのプロセスが簡単になったり、移動手段の自由度が向上することが大きなメリットです。
観光地にとっても、従来の公共交通手段でアクセスが困難で会った場所へ訪れられるようになり、新たな観光地の誕生や、経済効果の向上といったメリットがあります。
外国語対応:多言語表示を時間帯やエリアに応じて自動化
外国語への対応にもスマートシティを取り入れられます。
観光地において、観光客の利便性を高めるあまりに地域住民の利便性を損ねてしまっては本末転倒です。従来外国語対応というと、複数言語を同時に表示したり、言語ごとにパンフレットを作ったりといった対応が一般的でした。
しかしこの方法では、訪日外国人観光客への利便性を高める一方で、表示される文字量が増えてしまい、視認性の低下や、風情、情緒の低下が懸念されていました。
スマートシティを導入することで、地域に外国人の利用率が上がる時間帯やエリアをビックデータから分析し、時間帯やエリアによって表示する言語を増減させることが可能となります。
表示する言語についても得られたビックデータから導き出されるので、最適な言語の表示を自動化させられます。
混雑の緩和:混雑状況に応じた料金変動や他プランの案内
日本の観光地でも問題になっているオーバーツーリズムも、スマートシティを導入し位置情報や混雑情報を利用することで、混雑の緩和への施策を立てやすくなります。
実際に公共交通機関におけるダイナミックプライシング(価格変動制)の導入は具体的な策の一つです。
ダイナミックプライシングを利用すると、バスの乗車率が一定以上になるとバスの運賃が上がり、一方でタクシーの初乗りやシェア自転車の利用料金が下がるといった対策を立てられます。
混雑緩和への策だけでなく、混雑時に混雑が緩和するまでの時間を過ごせる飲食店や観光スポットのクーポン券を配布することで観光客の満足度を上げることも可能です。
公共交通機関とそれ以外の観光地との連動ができる点もスマートシティならではの施策です。
マーケティング:フリーWifi利用者のデータを活用
観光地の設備としては欠かせないフリーWifiにおいてもスマートシティを導入し、利用者の属性(地域、性別、年代、国籍)や利用時間帯のデータを取得することで、マーケティングに活用することができます。
利用が集中する時間帯や利用者に多い国籍などを把握することで、店舗や施設ではそれに適した品揃えや従業員の配置が可能になります。
また、フリーwifiのマーケティングへの活用法はデータ取得だけでなく、利用者が特定の地域を訪れた際に近隣店舗のクーポンを配信したり、利用者にアンケート調査を行い地域への来訪目的や満足度などの有益な情報を集めることもできます。
このようにマーケティングに多様な手法で活用できるフリーWifiですが、設備自体はすでに導入している店舗や施設が多いため、スマートシティの取り組みの中でも比較的始めやすい施策といえます。
スマートシティを取り入れた観光地の例
スマートシティは日本のみならず、世界でもあらゆる観光地で取り入れられています。
ここでは、実際にスマートシティを取り入れ成功した観光地の中でも、バルセロナ、敦煌、静岡市の3つの都市での導入について紹介します。
スペイン・バルセロナの例
世界的に有名な観光地であるスペインのバルセロナでは、テクノロジーを活用しビーチの混雑状況をリアルタイムで提供されています。
収集された情報は市役所のウェブサイトから、各ビーチにおける占拠度合いに関してリアルタイムの情報を確認可能です。
また、スペインの企業が世界観光機関(UNWTO)のサポートを受け開発した、デジタルヘルスサポートアプリである「Hi+Card」も話題となっています。
「Hi+Card」をツーリスト向けに実装するプリジェクトには、バレアレス諸島のイビサ島、フォルメンテラ島のホテル経営陣が参入することも報じられています。
医療情報や健康状態といったデジタルプロファイルを登録したパスポートを携帯することで、アプリで医療データにいつでもアクセスできるため、緊急事態に対応可能です。
また、アプリによって自身の健康状態を証明できるため、自身の健康のみならず周囲の安全を保障することもできます。
中国・敦煌の例
中国でも有数の観光地である敦煌では、2011年からスマートシティプロジェクトを推進しています。
同市のスマートシティプロジェクトを牽引する敦煌スマートトラベル社は、オンラインで入場券を購入できるサービスを提供しています。
このサービスを利用することで、観光客は事前にオンラインで入場券を購入でき、さらに入場時にはQRコードを提示しスムーズに入場ができます。
同社ではほかにもモバイルツアーガイドサービスも提供しており、スマートフォン上で観光地の情報や地図、オーディオガイドが利用可能です。
さらに観光客が事前に観光地の予習ができるように、観光地を360度パノラマ写真で再現する機能も実装されています。
また、ファーウェイと協業し、ファーウェイから提供されるビックデータをマーケティングに利用することで、オフシーズンの観光客を増やすなど持続的な観光地の発展につなげています。
静岡市の例
静岡県静岡市では、自動運転車を利用した観光客の移動支援を実施しています。
この取り組みでは、オープンデータ化した3次元点群データを用いてダイナミックマップを作成し、自動運転化したデマンドタクシーによって観光客の移動を支援しています。
また、伊豆観光型MaaSと連携し観光客の利便性の向上を目指しているのも静岡市の特徴です。
この連携により観光客の利便性向上のほかにも、公共交通機関の運行情報や緊急災害情報をデジタルサイネージやMaaSのアプリ上で発信しています。
スマートシティを取り入れ、持続可能な観光地づくりを
スマートシティとは、ICTなどの技術を用いて地域の抱える問題をマネジメントし、最適化を目指す持続可能な地域を指します。
近年は「分野横断型」のICTやデータ利活用型のスマートシティが増加している傾向にあります。
実際に世界には観光業界にスマートシティを取り入れ成功している事例も数多くあり、その中でも観光用MaaSや渋滞の緩和、外国語対応、マーケティングへの活用といったインバウンド対応での活躍も多くみられています。
混雑に関する情報を提供したり、健康管理を可能にするだけでなく、スマートシティにより入手した情報をマーケティングに利用したりと幅広い活用方法があるのが観光地におけるスマートシティの特徴です。
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