日本のアニメやマンガは、日本国内のみならず、海外でも若者を中心に人気を呼んでいます。
そのアニメやマンガの舞台となった土地や建物を訪れる「アニメツーリズム(聖地巡礼)」は、多数のファンが訪れることで巨大な経済波及効果を生み出し、アニメ聖地を持つ地域にとって重要な観光資源といえます。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で観光産業が大きな打撃を受けており、アニメ聖地も例外ではありません。
この記事では、アニメツーリズムとは何か、代表的なアニメ聖地やその経済波及効果、アニメツーリズムを支える「アニメツーリズム協会」の活動、またコロナ禍における取り組みについて紹介します。
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アニメツーリズムとは
アニメツーリズムは、アニメやマンガの作品の舞台になった土地や建物、作品に関連する建造物や博物館などの施設、作家のゆかりの地などを訪れる旅行を指します。「聖地巡礼」とも呼ばれています。
クールジャパン・コンテンツとして、日本のアニメやマンガは日本国内のみならず世界的にも注目されており、海外には多くのファンが存在します。
このような海外のクールジャパン・コンテンツファンが訪日の際に、「アニメの聖地を訪問したい」というニーズは高まりを見せています。
観光庁「訪日外国人消費動向調査」によると、2019年に「映画・アニメ縁の地を訪問」した訪日外国人は4.6%でした。
訪日外国人数の全体から換算すると、約147万人もの外国人が映画やアニメの聖地に足を運んでいるということになります。
そして「次回したいこと」として、10.2%が「映画・アニメ縁の地を訪問」をあげていることから、今後アニメツーリズムのさらなる拡大が期待されています。
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アニメツーリズムがもたらす経済波及効果
アニメツーリズムは、巡礼者は単なる聖地を訪れるだけではなく、飲食や宿泊、グッズ購入などさまざまなシーンにおいて消費促進につながり、地域への経済波及効果も期待されています。
ここからは、いくつかの事例を紹介します。
岐阜県:『君の名は。』など
2016年8月に公開され、岐阜県飛騨市が舞台の1つになった新海誠監督作品の映画『君の名は。』は、世界135の国と地域で配給された大ヒット作です。
2016年は『君の名は。』のほか、岐阜城などが登場する『ルドルフとイッパイアッテナ』や大垣市がモデルとされる『聲(こえ)の形』など、岐阜県に関連する作品が立て続けに公開された年でした。
十六総合研究所が2016年11月に発表した調査によれば、この3作品で岐阜県を訪れる聖地巡礼者は約103万人、同県にもたらした経済波及効果は253億円に上ると推計されています。
そのほか、同県高山市は『氷菓』の舞台であり、市内に複数のモデル地があります。『氷菓』が岐⾩県内にもたらした経済波及効果は年間21億円と十六銀行が算出されています。
埼玉県:『らき☆すた』
埼⽟県が舞台になった『らき☆すた』には、「鷹宮神社」として久喜市にある鷲宮神社が登場します。
2008年アニメ放映後には初詣客が年々増加し、2014年の発表では4年連続で47万⼈が参拝したことが明らかになりました。
そして、日本政策投資銀行の試算によれば、『らき☆すた』放送以来の10年間での経済波及効果は約31億円となったことがわかりました。
茨城県:『ガールズ&パンツァー』
茨城県大洗町は、『ガールズ&パンツァー』の舞台の一つとして知られています。
野村総合研究所が2014年に発表した資料では、その経済波及効果は年間約7.21億円に及ぶとされています。
総務省の調査によれば、大洗町ではふるさと納税の返礼品として『ガールズ&パンツァー』とタイアップした食品などを加えたこともあり、2015年の納税額は2014年の26倍、2億円以上と急増しました。
アニメの経済効果とは?聖地巡礼で町おこし/らき☆すた・ガルパン・ラブライブなどコンテンツツーリズム成功事例に学ぶ
日本を代表する文化であるアニメは、メディアでのコンテンツ展開に加え、ライセンスの付与という形で市場を形成しています。 近年では作品ゆかりの地域への観光旅行もみられ、関連市場はさらに成長の余地があると見られています。 アニメ等の映像作品ゆかりの土地やスポットを訪れることは「
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アニメツーリズム協会の活動
上述したようにアニメ聖地巡礼は、いまや日本の大切な観光資源になっています。
そのアニメ聖地巡礼を観光資源として掘り起こしや官⺠連携などを推進することを目的に「アニメツーリズム協会」という組織があります。
ここからは、アニメツーリズム協会とは何か、活動の目的などを解説します。
2016年9月16日に設立された「アニメツーリズム協会」は、出版業や自治体など約50個の様々な企業や団体が正会員として参加しています。
アニメツーリズム協会の公式サイトでは協会の理念を以下のように掲げています。
私たちは、アニメに携わる全ての人に寄り添い、アニメ業界と地域の発展を願いつつ、“世界から選ばれる地元と日本”に貢献します。
そして、2020年は地域(アニメ聖地)に年間400万人の日本人観光客・訪日外国人観光客を呼び込むことを目標にし、以下の活動を展開しています。
ますは、日本全国に点在する「アニメ聖地」を88か所選定・組織化し、これらのアニメ聖地をつなぐ広域周遊観光ルートを造成します。
それと同時に、アニメ聖地のある地域と関連企業、コンテンツホルダーと連携し、アニメ聖地のコンテンツを活用したサービスや商品の提供を促進し、地域の受け入れ環境整備のサポートも行っています。
さらに、アニメ聖地を国内外のファンへ多様な手段で発信することでアニメ聖地と観光客をつなぎ、送客を促進させるための活動を展開しています。
訪日外国人の聖地巡礼を促進!「アニメツーリズム協会」が発足 アニメの聖地88カ所を選定へ
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コロナ禍におけるアニメツーリズムの現状
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年は訪日外国人観光客が激減しています。
日本政府観光局(JNTO)が発表した訪日外客数推計値によると、2020年8月の訪日外客数は8,700人と、前年同月の252万人から99.7%減少しました。
前月7月の3,800人と比べると微増しているものの、5か月連続で主要22市場からの訪日がほぼゼロの状態となっています。
そして、新型コロナウイルスの感染対策として、イベント開催制限も設けられており、地域で行われるアニメ・コミック関連のイベントも相次ぎ中止しました。
こうした状況のなかで、アニメツーリズムに関わる自治体や企業がどのような取り組みを行っているのか、2つの事例を紹介します。
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2020年9月18日、日本政府観光局(
茨城県大洗町:クラウドファンディングを実施
アニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台である茨城県大洗町は、新型コロナウイルスの影響で経済的打撃を受けた店舗を支援する「観光の町・大洗のお店を救え!『大洗「おかえり」ミッション』!」というプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングを実施しました。
飲食店や土産物屋、宿泊施設などの店舗で使えるチケットの事前購入によるものと、チケット購入なしで町全体へ支援することの2つの支援のパターンを用意しています。
支援者のリターンとしては、店舗チケットの購入金額の10%分増量や、特産品ボックスなどを設定しています。
約2か月間にわたるクラウドファンディングは、目標金額の2,000万円に対し、3,602人の支援により約4,700万円の資金を集めることに成功しました。
※クラウドファンディングは2020年6月30日に募集が終了しました。
長野県小諸市「薬師館」:ワーケーションに期待
京都大学による「“聖地巡礼”行動と作品への没入感:アニメ、ドラマ、映画、小説の比較調査」では、巡礼行動の様子を「旅行中にネットで発信する」「旅行後にネットで発信する」という旅行者の割合が、アニメにおいてはほかのコンテンツの2倍以上であることが判明しています。
こうしたアニメファンの需要を満たすために、アニメ聖地となった地域では、Wi-Fiの有無や充電用の電源の有無、パソコンやスマホを長時間使用できる施設といった高性能なネット環境整備が早くから進められてきました。
2012年にアニメ『あの夏で待ってる』の舞台になった長野県小諸市の菱野温泉「薬師館」は、こうした環境をワーケーションに応用できるとし、新型コロナウイルスの感染拡大以前より旅館の大広間を活用したコワーキングスペースの準備を進めてきました。
アニメツーリズムと、ニューノーマル時代の働き方として注目が集まる「ワーケーション」の融合に期待が寄せられています。
コロナで変わるアニメツーリズム
アニメやマンガの舞台や関連地を巡るアニメツーリズムは、海外のアニメ・マンガファンの訪日目的の一つとなっており、地域においてもアニメ聖地は重要な観光資源となっています。
地域がアニメツーリズムに取り組むにあたり大切なことは、アニメ聖地のみにスポットを当てることではなく、いかにその地域内外で連携し、消費を促せるか、リピーターになってもらえるかという点にあります。
そして、クラウドファンディングやワーケーションへの取り組みは、やがて戻ってくる訪日観光客や日本人観光客を迎えるうえで、アニメツーリズムの観光地を救う手段の一つとなります。
コロナ禍によりアニメツーリズムを取り巻く環境が一変しましたが、国内外へ多様な発信手段で観光客誘致が行えるアニメツーリズムは、今後ますます可能性が広がる分野といえるでしょう。
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