10月9日、中国の大手IT企業であるアリババグループ(中国語:阿里巴巴集団)が運営するオンライン旅行サービスプラットフォーム「Fliggy(飛豬、以下フリギー)」は、西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)と連携し、京都の嵯峨嵐山の各観光スポットを堪能する様子を中国にライブ配信するバーチャルイベントを開催しました。
このイベントは、コロナ禍で渡航制限が続く中、訪日旅行が困難な中国人に対し、京都の嵯峨嵐山をはじめとする西日本の魅力を発信することを目的としています。
そして、こういったライブ配信の形で現地を中国人につなげることで、中国人の日本に対する好感度を醸成し、新型コロナウイルス収束後のインバウンド客のスムーズな回復につなげることも狙いとされています。
今回のイベントは、フリギーにおける「日本バーチャル旅行」シリーズの第1回目となり、配信開始後10万人を超えた中国人が視聴し、訪日旅行への関心の高さがうかがえました。
同イベントに参加した訪日ラボ編集部が内容の一部を紹介し、イベントの注目のポイントも合わせて整理します。
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2時間の京都バーチャル旅行で体験した内容を紹介
このバーチャル旅行では、日本在住の中国人旅行インフルエンサーの東京阿鶏がレポーターとして、嵯峨嵐山のトロッコ列車や竹林の小径、二尊院などを約2時間にわたり巡りながら、京都の魅力をアピールしました。
ここでは、バーチャル旅行の内容を紹介します。
トロッコ嵯峨駅で列車を鑑賞
最初の舞台はトロッコ嵯峨駅でした。東京阿鶏が簡単な自己紹介と今回のイベントの概要を視聴者に向けて説明しました。
その後、JR西日本・上海代表処の所長が登場し、嵯峨嵐山の魅力を語りつつ、「中国人観光客を待望する」旨のメッセージも発信しました。
所長の挨拶が終わったあと、東京阿鶏が駅構内の19世紀ホールに訪れ、そこで展示されている蒸気機関車やピアノを案内しました。
そして、嵯峨野観光鉄道職員と共に写真や動画を交えながら、トロッコ列車で感じられる四季折々の魅力を紹介しました。
さらに、駅のホームでトロッコ列車の到着を生中継し、停車時間を使い、外観と車両内の様子も届けました。
竹林の小径で人力車体験
トロッコ列車を鑑賞したあと、東京阿鶏が京都市観光協会の職員と共に人力車乗車体験を行いました。
今回招いた京都市観光協会の職員が中国出身で、彼女が中国語で嵯峨嵐山と京都全体のおすすめスポットを語りました。
街並みの風景を生中継しながら、竹林の小径に向かいました。
雨の日でもあるため、竹林の小径を散策する人が少なかったですが、壮大な竹林の風景に対し、「雰囲気が素晴らしい!」「絶景!」など視聴者から絶賛の声が相次いでいました。
そして、青々とした竹を背景に、東京阿鶏のタブレットで人力車夫が記念写真を撮影しました。
二尊院を散策
最後は二尊院で散策しました。
ここでは住職が登場し、二尊院の歴史を紹介した上で、参拝の仕方や御朱印づくりなどを説明しました。
住職と別れたあと、東京阿鶏が二尊院の境内を回り、視聴者と会話しながら、イベントは終了しました。
「美しすぎて夢みたい...」「いますぐ日本に行きたい!」との声が続出
ライブ配信の中に、視聴者から多くのコメントが寄せられており、それらのコメントから中国人の日本旅行に対する高い好感度と意欲がうかがえます。
以下、ライブ配信で流れている視聴者のコメントをいくつかピックアップしました。
- 哇,太梦幻了(訳:(桜満開の写真を見て)わあ、美しすぎて夢みたい....)
- 日本消费就是能感受到物超所值(訳:(人力車夫の無料撮影サービスを見て)日本での消費は値段以上の価値を感じられる)
- 這服务绝了(訳:(人力車夫の無料撮影サービスを見て)このサービス、凄すぎる)
- 二尊院之前沒去过,这次彻底种草了(訳:二尊院に行ったことはないけど、今回のライブ配信で旅行意欲が心の底まで植え付けられた!)
- 好想马上去日本(訳:いますぐ日本に行きたい!)
- 期待后面好起來 我们一起去日本旅行(訳:コロナが収まったら、みんなで一緒に日本に行こう!)
そして、今回は単なる日本の景色をライブ配信で楽しめるだけではなく、ライブ配信の「オンライン抽選」機能を利用し、視聴者向けにプレゼント抽選も行いました。
オンライン抽選では、ライブ配信を視聴している人のなかから、抽選で現地でしか買えないトロッコ列車のモデルカーや文房具セットがプレゼントされます。
フリギーとJR西日本連携記念のオリジナルデザインの「ICOCA」や大阪のミシュラン級レストランの予約券、大阪-神戸の日帰りパッケージなどをライブ配信と同時に販売していました。
ライブ配信途中、実際に上述した旅行商品を購入した人もいました。
注目のポイント
今回のバーチャル旅行体験の注目すべきポイントをピックアップして紹介します。
1. 京都全体への観光欲望喚起を狙う
今回のバーチャル旅行では、京都の嵯峨嵐山で巡った観光スポットだけではなく、自然景色、食、宿泊などの多種多様な側面から京都全体をアピールしました。さらに、「夏は貴船で川床料理を食べて涼しさを感じる」「秋は高雄の神護寺で紅葉狩りをする」「冬は温泉旅館で日本酒を楽しむ」など季節ごとの京都の見どころも紹介しました。
こうした各シーズンに合わせた観光訴求により、あらゆる観光需要を網羅し、インバウンド需要が復活した時、旅の候補地に選んでもらうことを狙いとしていると考えられます。
2. 「小衆遊」がキーワード
観光スポットを紹介する際に、「ここは中国人観光客が少ない穴場スポットだよ」など「小衆遊」といったキーワードで強調する場面が多く見受けられました。
「小衆遊」とは、従来大人数で画一的な観光コースを回ることではなく、同じ嗜好をもつ少人数が特定のテーマに沿って旅行することを指しています。
特徴としては、旅行の質に対しこだわりを持ち、個性のある観光地や人の少ない観光地をじっくり体験することが挙げられます。
中国では旅行ニーズの多様化により、近年「小衆遊」が台頭しつつあります。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で、誰も知る有名な観光スポットより、まだあまり知られていない穴場のスポットを選ぶ傾向が強まっており、「小衆遊」がより注目されています。
こうした旅行スタイルの変化を受け、アフターコロナを見据えたプロモーション戦略や旅行商品の磨き上げの際に、「小衆遊」のような最新トレンドを取り入れる必要があるでしょう。
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3. コロナ禍を意識した情報発信
ライブ配信中、「コロナ禍の今、日本に旅行していいの?」「日本のコロナの状況大丈夫?」など日本における新型コロナウイルスの流行状況に関する質問が多くありました。
現在、中国国内では新型コロナウイルスの感染状況は落ち着いており、早い段階で経済活動が再開することができたことにより、国民の間でも「コロナはもはや過去のもの」であるというムードが漂っています。
とはいえ、海外に対し、中国人は依然として新型コロナウイルスの収束が見えない土地として危険視しています。
こうした新型コロナウイルスを危惧した質問に対し、東京阿鶏や登場した現地の観光関係者は、「今は訪日できるタイミングではありませんが、日本も今頑張ってるのでコロナが収束したあとはぜひ来てくださいね!」といった声がけで対応しました。
こういった対応の仕方は、中国人の新型コロナウイルスへの考え方を配慮し、安心・安全に関するアピールを意識したものであると考えられるでしょう。
訪日旅行へ高い興味を示す中国人
今回の中国へ京都のバーチャル旅行イベントを通して、コロナ禍においても中国人の訪日旅行への意欲の高さが伺えました。
ライブ配信で紹介された観光スポットに対し、「美しい!」「現地に訪れてみたい!」など好意的かつ意欲的なコメントが多く寄せられました。
そして、イベントの中からも、インバウンド客を誘致するための工夫が見られました。
季節ごとの見どころの発信や「小衆遊」など中国最新トレンドを取り入れたアピールの仕方、また新型コロナウイルスの感染状況を意識した情報発信などの手法がありました。
現在海外旅行者の入国が制限されているなか、今回の記事で取り上げたイベントのような家でも海外旅行の気分を味わえるバーチャル旅行が、一つのプロモーション手段として定番化しつつあります。
バーチャル旅行における海外旅行者の会話やコメントから、訪日旅行に対する温度感や新たなトレンド、気づきも発見でき、コロナ禍における情報発信の仕方や観光資源の開発・磨き上げに活かせると考えられます。
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