手ぶら観光とは?身軽な旅で訪日旅行の利便性を向上/DXの一環としても注目

近年訪日外国人の旅行スタイルは、団体旅行よりも個人旅行が主流となっており、多くの訪日外国人が個人で旅行を計画し、観光を楽しむ傾向にあります。

個人旅行の訪日外国人が観光する際の課題のひとつとして、キャリーケースなどの大型の荷物が移動や観光の足かせになるということが挙げられます。

これを解決する手段として提唱されているのが「手ぶら観光」で、日本の国土交通省も積極的に推進しています。

手ぶら観光のためのサービスには、観光の始点となる空港や駅などのカウンターで大きな荷物を一時的に預かったり、そのままホテルなどへ配送したりするものがあります。

これにより、旅行客の利便性が向上するだけでなく、旅行客が荷物を理由に観光地の訪問を断念することが減り、購買需要や観光需要の上昇にもつながると期待されています。

本記事では手ぶら観光がもたらすメリット、国土交通省の支援状況、導入の実例、今後期待されるDXを活用した手ぶら観光について整理します。

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手ぶら観光とは?

手ぶら観光とは、旅行者の荷物を空港や駅、商業施設などで一時的に預かったり、そのまま滞在先のホテルや海外の自宅まで配送したりするサービスを用いることで、「手ぶら」で旅行や観光をすることです。

近年、訪日外国人観光客の多くは個人で旅行を計画する傾向にあり、その場合、旅行者自身で旅程や荷物の管理を行う必要があります。特に、公共交通機関や観光施設でのキャリーケースなどの大きな荷物の持ち運びが、訪日旅行の際の不便な点のひとつとなっていました。

大型の荷物を持ち運ぶことなく、スムーズに観光や移動ができるようにするのが、手ぶら観光のサービスです。

現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、訪日外国人が大幅に減少していますが、今年夏に開催が予定されている東京オリンピックに向けて、政府は、段階的に訪日外国人受け入れの再開を検討しています。

東京オリンピックや、それにともなう観光で外国人観光客が日本を訪れる場合、人によっては複数日程にわたって競技を観戦するために、比較的長く日本に滞在することが予測されます。一般的に、滞在が長くなればそれだけ荷物も多くなり、簡単に持って歩けないくらいの量になる場合もあるでしょう。

このように手荷物預かりや荷物配送サービスは、東京オリンピックに向けたインバウンド対応としても注目されています。

手ぶら観光がもたらす5つの効果

国土交通省は、手ぶら観光によって見込める効果として以下の5つをあげています。

  1. 世界最高水準の宅配サービスでのおもてなし
  2. コインロッカーや列車内荷物置き場不足の解消
  3. 国内旅行の快適性・利便性向上
  4. 訪日リピーターの増加
  5. 消費拡大

世界銀行が約2年に1度発表する世界各国の物流パフォーマンスを表す指標「LPI」ランキングによると、日本は2018年に160か国中5位と高い順位に位置しています。日本の物流は世界でも高水準であり、その一部を成す宅配サービスも例外ではないといえるでしょう。

そのほか、日本の観光地や公共交通機関では訪日外国人観光客が持ってくる大型の荷物に対応できるスペースが少ないことが課題となっていますが、手ぶら観光サービスが普及することで、荷物スペースを確保する必要が減ると考えられます。

また、手ぶら観光の推進により、訪日外国人観光客は大きな荷物を持たずに日本を観光できるようになり、旅行の快適性と利便性が向上し、全体的な訪日リピーターの増加にもつながることが期待されます。

さらに、荷物が少なくなったことで、お土産を買って持ち運んだり、より多くの観光地を訪れたりする余裕が生まれ、消費拡大や観光需要の増進にも寄与できるとされています。

国土交通省による手ぶら観光推進制度

国土交通省は、手ぶら観光共通ロゴマークの認定制度を開始しました。

このロゴマークの申請には、スーツケースや土産物の一時預かりや、当日または翌日に宿泊施設へ荷物を配送できること、英語による案内や料金体系の説明があること、サービスにあたっての補償内容を明記していることなどが求められます。

共通ロゴマークを有する施設の情報は、JNTOの訪日外国人向けのウェブサイトや、訪日外国人向けの観光情報アプリなどを通して発信されています。

情報を掲載して以降、JNTOのウェブサイト内の手ぶら観光のページには多くのアクセスがあり、2017年度には中国、台湾など東アジアの国を中心に約9万人がアクセスしたことがわかっています。

そのほか、国土交通省は手ぶら観光事業を始める事業者に対して受け入れ設備や多言語対応に関する費用の助成を行っています。

国内ですでに行われている「手ぶら観光」サービス

手ぶら観光サービスは国内各地にあり、実際に日本の物流網を利用して日本各地のホテルや空港間を結んで荷物が運ばれています。

観光地にある駅では荷物を一時的に預かるサービスを行っているところもあります。

JTB・パナソニック・ヤマト運輸:LUGGAGE-FREE TRAVEL

LUGGAGE-FREE TRAVEL(以下LFT)は、2018年よりJTBとパナソニック、ヤマトホールディングスの三社が共同で運営している訪日外国人向け手ぶら観光支援サービスです。

LFTは、英語、中国語をはじめとした9言語に対応しており、利用者は予約から決済までスマートフォンで行えます

利用者はスマートフォンで事前にサービスを予約し、日本の空港に着いたらQRコードまたは予約番号を取次カウンターに提示します。次にスタッフから荷物引換証を受け取り、荷物を預けたら完了です。

預けた荷物は指定のホテルや宿泊施設に配送され、利用者が観光を終えてホテルに到着した時に荷物引換証を提示すると、荷物を受け取れるシステムになっています。

拠点となる空港や宿泊施設は、タブレットやQRリーダーを無償で借りられます。送り状の記入や料金の精算も不要なため、スムーズに荷物の受け付けができます。

※現在は新型コロナウイルス感染症拡大と日本政府の入国制限にともない、2020年4月から全サービスを休止しています。(2021年1月時点)

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米子鬼太郎空港:荷物の当日宅配サービスを開始

鳥取県の米子鬼太郎空港の手ぶら観光カウンターは、国土交通省の手ぶら観光共通ロゴマークの認定をうけたサービスです。

空港周辺の宿泊施設と連携し、荷物の当日宅配サービスを開始し、国土交通省の補助事業を活用して手ぶら観光をPRする多言語デジタルサイネージを設置しました。

2017年に米子鬼太郎空港-ソウル間の増便があったことも相まって、特にデジタルサイネージ導入後には、手ぶら観光カウンターを利用した訪日外国人数は3.6倍と大幅に増え、サービス利用者の空港に対する満足度の向上にもつながりました。

※現在は新型コロナウイルス感染症拡大と日本政府の入国制限にともない、サービスを休止しています。(2021年1月時点)

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今後期待される手ぶら観光サービス

手ぶら観光の考え方は、荷物の持ち運びに関するサービスだけでなく、観光施設の入場や決済などにも及んでいます。

観光庁が発表した令和3年度観光庁予算概算では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、顔認証を利用した手ぶら観光の可能性に言及しています。

なお、DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義について、経済産業省は2018年発表の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0」で以下のように記載しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

現在、チケットや予約情報に旅行客の顔データをリンクさせ、顔認証するだけでサービスが利用できるようなシステムの推進が進んでいます。

コロナ禍を機に、さまざまな業界や企業でもDXの必要性に対する認識が高まっており、観光業界も例外ではありません。

観光庁は、今後デジタル技術と観光資源を融合させることで、オンラインツアーによる訪日意欲喚起や、デジタル技術を活用した新しい観光コンテンツの創出、観光地経営の改革などに取り組むことを発表しています。

観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の可能性|VRでのデジタル旅行など事例も紹介

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2021年度の観光庁予算要求、前年比33%減の460億に:DX推進、ワーケーションなど「新旅行スタイル」検討

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拡大する手ぶら観光サービス:顧客に新たな旅行体験を

手ぶら観光サービスは、日本各地を訪れる訪日外国人観光客の荷物を一時的に預かったり、次の訪問地や宿泊施設、空港、海外の自宅まで配送したりするものです。このサービスにより、快適かつスムーズな旅行体験を訪日外国人観光客に提供できます。

またそれだけではなく、手ぶら観光サービスは公共交通機関や観光施設において荷物の保管場所が足りない問題や、訪日外国人が荷物を理由に観光地の訪問を断念するといった問題を解決できる可能性があります。

国土交通省でもこの手ぶら観光を推進しており、事業費用の助成や統一マークの発行などで支援しています。

手ぶら観光の考え方は、顔認証を利用した決済や施設への入場にも広がっており、今後もデジタル技術を活用したさらなる観光の可能性の拡大が見込まれています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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