スノーリゾートへのインバウンド誘致で地域を活性化 | 国内の現状とこれからの課題

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国内のスキー・スノーボード人口は最盛期と比較すると大幅に減少しており、今後も少子化の影響などから、現状のままでは需要の拡大が厳しい状況にあります。

一方新型コロナウイルス感染拡大前までは、日本の上質な雪を求めて訪れるインバウンド需要は右肩上がりだったことから、今後のスノーリゾート地域の集客におけるインバウンド誘致対策の必要性が高まっています。

そこで本記事では、スノーリゾートへのインバウンド誘致の現状とこれからの課題、国内の成功事例について整理します。

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インバウンド市場におけるスノーリゾートを取り巻く状況

国内のスキー・スノーボード人口が減少傾向にあるなか、インバウンド需要はスノーリゾート地域活性化における重要なカギとして注目されています。

そこでなぜ日本のスノーリゾートが海外から注目を集めているのかを含め、スノーリゾートにおけるインバウンド市場の現状や未来について解説します。

海外からも注目される日本のスノーリーゾート:雪質にこだわる訪日外国人が注目

観光庁が2020年に発表した「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会報告書」によると、日本のスキー・スノーボード人口はピークであった1998年の約1,800万人と比較すると、2016年には約580万人となり、約7割減少しています。

こうした状況で、スキー・スノーボード業界の活性化策として注目を集めるようになったのがインバウンド需要です。

国土交通省が発表した「スノーリゾートエリアにおけるインバウンド拡大に向けて」によると、海外のスキーヤーたちの注目を集める大きな要因となったのが日本の雪質で、日本とパウダースノーを合わせて「JAPOW(Japan Powder Snow)」いう造語が作られるほど、広く海外に浸透しています。

また前述した観光庁の「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会報告書」によれば、スキー・スノーボードを実施した訪日外国人の一人あたり消費額は22.5万円で、平均の15.3万円を上回っています。

そこで近年では政府もスノーリゾートに対するインバウンド需要に着目し、観光庁を中心にインバウンドを取り込んだ形でのスノーリゾートと地域の活性化推進に向けた取り組みが行われています。

インバウンド業界におけるスノーリゾートの現状:来場者数が右肩上がり、満足度は90%超

スノーリゾートへ足を運ぶ訪日外国人は年々増加しており、その満足度も高いものとなっています。

1998年長野オリンピックの会場にもなった長野県北部のスノーリゾート「HAKUBA VALLEY」では、2018年から2019年の訪日外国人来場者数が36万7,000人となり、同年の全来場者数約154万3,000人のうち約24%訪日外国人が占める結果となっています。

同施設における訪日外国人来場者数は年々増加傾向にあり、2012年から2013年の外国人来場者数が96,000人であったことと比較すると、6年間で約3.8倍増加していることがわかります。

また、観光庁が2019年に発表した「訪日外国人の消費動向調査」 によると、日本を訪問してスキー・スノーボードを体験して満足したと回答した人の割合は92.5%と高く、再度訪日した際にスノーリゾートを訪れるリピーター訪日外国人も少なくありません。

特に訪日オーストラリア人は、訪日1回目でのスキー・スノーボードの実施率が16.3%であるのに対し、訪日2回目以降での実施率は23.9%と高くなっています。

コロナ後の市場拡大にも期待:2022年北京冬季五輪が契機となるか

観光庁の「訪日外国人の消費動向調査」 によると、2019年に日本を訪問した外国人観光客の中でスキー・スノーボードを経験した人の割合は2.8%でした。

しかし「次回の来日時に機会があればやってみたい」と回答した人の数は18.0%であり、スノーリゾートにおけるインバウンド需要にはまだまだ成長の余地があることがうかがえます。

そしてもう1つ追い風になると期待されているのが2022年に開催予定の「北京冬季五輪」で、その波及効果により、日本を含むアジア全体のウィンタースポーツ市場へさらに注目が集まることが期待されています。

スノーリゾートをインバウンド誘致へ活かすには

インバウンド業界におけるスノーリゾートの可能性を受け、国においてもスノーリゾートを目玉としてインバウンド誘致のさらなる拡大を目指す動きが活発となっています。

観光庁は「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」を2020年に立ち上げ、スノーリゾート形成にまつわる補助金の交付など本格的な支援に乗り出しています(補助金申請の募集期間は終了しました)。

ここでは、スノーリゾートをインバウンド誘致へ活かすための必要な取り組みについて整理します。

受け入れ環境の整備で国際競争力の高いスノーリゾートを形成

2020年11月に行われた第34回の観光戦略実行推進会議で、観光庁が提出した2020年訪日外国人客数4,000万人の実現に向けた観光施策では、インバウンド誘致における日本のスキーリゾートにおける課題が指摘されています。

例えば、多言語対応の遅れ、リフト・ゴンドラ等施設の老朽化、アフタースキーを楽しむためのナイトライフの不足などがあげられています。

そのため観光庁では、今後特に下記の項目に対して環境整備を推進し、国際競争力を高めていく予定としています。

  • リフト・ゴンドラの再編
  • 多言語での案内看板の整備
  • ラグジュアリーな観光拠点施設の建設
  • ゴンドラサウナやプールのある山上テラスの整備
  • 無料Wi-Fiの整備
  • 地元の「食」を味わう「かまくらレストラン」

和食や旅館などその他人気コンテンツとの組み合わせがポイントに

スキーリゾートの整備にあたっては、地域のもつ観光資源を活用することも重要なポイントとなります。

観光庁は、スキー場事業者と地方自治体の視点から見たスキーリゾートの現状と課題として、地域の観光活性化をあげており、スキーリゾート周辺の地域の宿泊施設や飲食施設における観光客数が増加することで、スキーリゾートのさらなる活性化が期待できるとしています。

地域の活性化には、地域の持つ自然や歴史などの資源を活用した観光客にささるコンテンツの造成、発信が求められます。

例えば訪日外国人をターゲットとして集客する場合、「温泉」「日本食」「街歩き」といったコンテンツは訪日外国人からの評価が高く、体験したいと考える人も少なくありません。

このような需要を取り込んだまちづくりを行うことで、スキーリゾート周辺地域への観光客の集客、そして観光客のスキーリゾート利用につながると考えられます。

グリーンシーズンの魅力を向上

スノーリゾート活性化で壁となる課題のひとつに、夏季のグリーンシーズンをいかに充実させて通年で観光客の誘致を図れるかがあります。

「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会報告書」 はグリーンシーズンの観光客誘致対策として、スキー場の立地条件を活かした山上テラスやアトラクション施設の整備などを提案しています。

また、観光庁はグリーンシーズンのインバウンド誘致策としてアドベンチャーツーリズムAT)」の実施をあげています。

アドベンチャーツーリズムとは、「アクティビティ」「自然」「文化体験」のうち2つ以上の要素によって構成される旅行です。欧米では富裕層を中心に人気を集めており、その市場規模は欧米で約30兆円とされています。

スノーリゾートは自然に囲まれた立地であることが多いことからも、場内の自然と地域の歴史や文化を組み合わせたアドベンチャーツーリズムを行うことで、グリーンシーズンの集客が期待できると考えられます。

アドベンチャーツーリズム(AT)とは

近年、国内外への旅行のハードルが下がったことにより、それぞれの旅行客が観光に求めるものも多様化している傾向にあります。アドベンチャーツーリズムは、そんな「旅の目的」の一つとして注目が集まっているアクティビティ要素を盛り込んだ旅行で、地方創生やオーバーツーリズムの改善など、観光地にとってもメリットの多い旅行形態としてその可能性が注目されつつあります。さらに、アメリカのアドベンチャーツーリズムの消費額は、来年には2019年比の93%の水準に戻るとAdventure Travel Trade A...

国内スノーリゾートにおけるインバウンド対策事例

すでに日本国内のスノーリゾートにおいて、魅力ある施設づくりや地域との連携でインバウンド誘致に取り組み、成功をおさめている事例があります。

ここでは北海道ニセコ町・新潟県妙高市・HAKUBA VALLEYの取り組み事例を紹介します。

北海道ニセコ町:リゾート間の連携で誘致に成功「Niseko United」

スノーリゾートのインバウンド誘致成功例として、全国的にその名が知られているのが北海道ニセコです。

その成功の要因のひとつとされているのが、地域にあるスキーリゾート同士の連携です。

ニセコ町のアンヌプリ山周辺にある複数のスキー場は1990年代初めまでは個々で運営されており、横の繋がりはありませんでした。

しかし1993年からスキー場間の連携を模索し、アンヌプリ山周辺にある4つのスキー場で全山共通のリフト券の販売を開始しました。

2001年からは「Niseko United」という名称で地域連携を強めており、また各リゾート間を結ぶ「Niseko United シャトルバス」なども導入してスキー場間の移動の利便性を向上させました。

こうした取り組みでニセコ町全体のブランディングに成功し、国内外の富裕層から高い人気を誇っています。

北海道ニセコが10万人以上の訪日客誘致に成功した2つの理由とは?ポイントは「外国人目線のおもてなし」と「観光協会の構造改革」:有名DMOから

訪日外国人観光客の地方誘致は地方創生の切り札として近年注目されています。国内の観光協会や自治体・DMOなどは観光地の知名度向上を目的とした海外PRやインバウンド対策を実施しています。インバウンド対策といっても外国語対応からインバウンド向け決済手段の拡充、インフルエンサーの活用、SNSの活用など多岐にわたりますが、インバウンド誘致に成功している地域ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。 スキー・スノーボードなどのウィンタースポーツを満喫できるリゾート地として有名な北海道ニセコ町の事...


新潟県妙高市:スキー場だけでなく温泉街も訪日外国人に人気

新潟県妙高市は特に訪日オーストラリア人から人気を集めるスキーリゾートです。上越地域振興局が2019年1月~2月に行った調査では、新潟県妙高市赤倉近辺のスキー場を訪れる外国人観光客の7割がオーストラリア人であったといわれています。

同市は2006年ごろ、北海道のニセコ地域が訪日外国人から人気を集め飽和状態になっていたことから、ニセコからあふれた外国人観光客を取り込むかたちでインバウンド対策を始めました。

そして、新潟県妙高市、白馬、志賀高原、野沢温泉では、JR東日本を加えて2006年に「長野新潟スノーリゾートアライアンス実行委員会」を発足し、インバウンド誘致に関するプロジェクトを立ち上げました。

プロジェクトの一環として、同市はスキー場にメディアを招いた情報発信や、オーストラリアのスノーエキスポに出展し国外に向けたプロモーション展開を行っています。

また上越地域振興局の調査では、オーストラリアの観光客はスキーを目的に1週間程度滞在することがわかったため、スキー場近くに赤倉温泉を抱える妙高市では、温泉や飲食といったスキー場周辺の観光地への誘致を狙い、観光協会が中心となって英語のレストランガイドマップの作成や、Wi-Fiの整備などにも取り組んでいます。

長野県白馬村:来場者の24%が外国人の「HAKUBA VALLEY」

「HAKUBA VALLEY」とは、長野県白馬エリアの10のスキー場から構成される国内最大のスキーリゾートの総称です。

ここでもニセコ町同様に参加するスキー場間の垣根を取り払い、スキー場間でのシャトルバスの運行、共通自動改札システムや共通ICチケットの導入を行いました。

さらに、グリーンシーズンのアクティビティを造成したり、「9mを超す降雪量を誇るパウダースノー」といったキャッチフレーズで雪質の良さをアピールしたりするなど、インバウンド誘致に向けての取り組みを展開しています。

その結果、HAKUBA VALLEYの外国人来場者数は年平均+25%で成長し続けており、2018〜2019年のウィンターシーズンには36万7,000人に達し、全体の約24%を占めています。

国籍では、オーストラリアが過半数を占めていますが、それ以外にも香港、シンガポール、中国、台湾、イギリス、アメリカなどアジアや欧米からの観光客数も確実に伸びており、国際的に有名なスキーリゾートとしてのブランディングに成功しています。

スノーリゾートへのインバウンド誘致が地域活性化のカギ

2021年のウィンンターシーズンは世界的に新型コロナウイルスの強い影響下にあり、これまで右肩上がりを続けてきたスノーリゾートにおけるインバウンド需要も冷え込まざるを得ない状況にあります。

そして減少傾向に歯止めがかからない国内のスキー需要の喚起、さらには老朽化した施設の改善といったハード面の整備など、日本のスノーリゾートはまだまだ多くの問題を抱えています。

しかし日本の雪は上質な雪として海外からすでに認知されており、さらに2022年に北京冬季五輪が開催されるなどアジアでのウィンタースポーツが注目される要素があることから、アフターコロナでは需要の回復が期待されています。

成功事例を見てもわかるように、スノーリゾートへのインバウンドの誘致は地域全体の活性化にもつながるため、施設や業種の枠を超えて、地域全体で連携して取り組むことが望まれます。

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<参考サイト>

新潟県上越地域振興局:妙高市における外国人観光客の動向調査結果について

国土交通省:スノーリゾートエリアにおける インバウンド拡大に向けて

観光庁:「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」 報告書

観光庁:訪日外国人消費動向調査(2019年)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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