SDGsが2015年9月の国連サミットで採択されて以来、「持続可能」という言葉や考え方は官民問わず広がっています。
観光業界においても、「サステイナブル・ツーリズム」として持続可能な観光の形が注目を集めています。
サステイナブル・ツーリズムの考え方は、世界観光機関(UNWTO)、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)、地球会議(Earth Council)が1995年に発表した「観光産業のためのアジェンダ21」(Agenda 21 for the Travel & Tourism Industry)のなかに盛り込まれています。
UNWTOは、サステイナブル・ツーリズムの定義として「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」を掲げています。
この記事では、サステイナブル・ツーリズムに則した新しいツーリズムの考え方や、具体的な取り組みを紹介します。
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SDGs浸透による消費者の行動の変容
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。17のゴールと169のターゲットが定められており、先進国と途上国がともに取り組む国際的な目標として位置づけられています。SDGsの取り組みが民間企業や自治体ではじめられている中、これらの取り組みが生活者に認知されると、その7割が行動に変化を起こすことも明らかになっています。
2020年6月末に全国1万500人を対象として、企業広報戦略研究所が実施した「2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査」によると、「企業のSDGsに関する取り組みを認知すると、生活者の約7割(71.1%)は、その企業のWebサイトを閲覧したりや商品・サービスを購入したりなどの行動を起こしており、さらに2019年より3.2ポイント上昇している」ということです。
観光産業にも影響大!21世紀の教養「持続可能性な開発目標」SDGsとは?世界が追う17のゴール
環境問題の重大性についての議論が増加している近年、SDGsの取り組みは世界中で注目されています。
SDGsを意識したツーリズムとは?
新型コロナウイルスの影響により、消費量を追い続ける観光のあり方は見直されてきています。観光地には新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことが求められるため、大勢の観光客を呼び込むことは、しばらくは難しい状況が続くでしょう。SDGsのゴールを達成するためには、どのような旅行スタイルを今後推進すべきでしょうか。いくつかの先行事例を紹介します。
レスポンシブル・ツーリズム
レスポンシブル・ツーリズムとは、日本語では「責任ある観光」と呼ばれる観光スタイルのことです。観光客や観光地を支える関係者など、すべての人が観光地に与える影響を考慮しながら責任ある行動をすることで、持続可能な観光を実現する考え方です。SDGsの目標である「12.つくる責任、つかう責任」の中にも、レスポンシブル・ツーリズムの考え方と同様にライフスタイルの変化が求められています。
このレスポンシブル・ツーリズムを推進する団体や活動を表彰する取り組みとして、「レスポンシブル・ツーリズム・アワード」が毎年開催されています。「レスポンシブル・ツーリズム・アワード」は、ロンドンで行われる世界旅行博、世界観光マーケット(WTM)で授賞式が行われています。
レスポンシブル・ツーリズム・アワード2020では、南アフリカの宿泊施設!Xaus Lodgeにおける活動が表彰されました。南アフリカの砂漠にある宿泊施設では、新型コロナウイルスのパンデミック後にゲストの受け入れを再開し、2つのコミュニティに対して収入と雇用を生み出しています。
この宿泊施設では限られた水資源や電気の滞在中での使い方を、旅行者にも協力を求める形で提案しています。例えば、水を使ったシャワーの代わりに「ドライバス」というジェルを使って体を洗うような案内をしていたり、特に水不足の場合やプールに水を満たすことを停止したりといった取り組みが挙げられます。
これらは観光客に我慢を強いるのではなく、環境に配慮することに「誇り」を持ってもらう形で協力を仰いでいる点が特徴的といえるでしょう。
居住者の3000倍の観光客殺到した「白川郷」、コロナ後を見据えた新たな観光スタイルとは?
1995年に世界文化遺産に登録され注目が高まった白川郷は、宿泊客の6〜8割が訪日外国人となるなど、インバウンド人気の高い観光地として知られています。一方で、地域の受け入れのキャパシティを超える観光客が押し寄せることで発生する「オーバーツーリズム」が近年問題となっています。オーバーツーリズムの問題を受け、これまで観光客の受け入れに対して受け身だった住民の間にも、地域が観光客を選ぶ「レスポンシブルツーリズム」という発想が広まっていきました。そこで白川郷では、2021年から楽しみながらより深く白...
エコツーリズム
エコツーリズムとは、自然や歴史文化など観光地特有の魅力を観光客に積極的に伝えることで、持続可能性を促そうとする観光スタイルのことです。SDGsの目標である「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」と同様の考え方としても注目されています。例えば、日本の小笠原諸島の南島と母島石門一帯は自然環境保全促進地域として、東京都により指定されており、観光客数の制限や訪れてよい時期、時間など明確なルールが定められています。
また、エコツーリズムを実践する地域や事業者の取り組みを表彰する「第16回エコツーリズム大賞」が、環境省により2021年2月25日に発表され、「鳥羽市エコツーリズム推進協議会」が大賞を受賞しました。
三重県鳥羽市では、鳥羽市の自然や海女などの伝統文化を守るエコツーリズム関連の活動が評価されています。
エコツーリズムとは|歴史や日本における事例・課題を解説
世界では第2次大戦後以降、そして日本では1970年代の高度経済成長期以降、パッケージツアーを中心としたマス・ツーリズムが盛んになりました。そして、マス・ツーリズムによる観光客の急激な増加は、地域の貴重な自然資源の破壊につながり、観光の発展と併せて環境保護の必要性が叫ばれ始めたことで、「エコツーリズム」が注目を集めるようになりました。本記事では、日本におけるエコツーリズムの歴史を振り返ると共に、実例を通じて今後の課題についても解説します。目次エコツーリズムとはエコツーリズムの定義エコツーリズ...
その他:食産業からみたSDGs
自らが口にするものを選ぶことで、地球環境や持続可能性に配慮するという考え方も存在します。ヴィーガンはその一つでしょう。
ヴィーガンとは「完全菜食主義者」とも訳され、卵や乳製品など動物性の食べ物を一切口にしないライフスタイルのことです。ヴィーガンが注目される理由として、地球環境への負担を軽減できることが挙げられます。動物性食品は、人間の総摂取カロリーのわずかな部分しか占めていないにもかかわらず、生産するための土地の利用面積が多く、莫大な負荷を地球にかけているといわれています。
そのため、ヴィーガンのように動物性の食品を口にしないことが環境を守る行動につながります。
このような理由から、ヴィーガンはSDGsの目標「13. 気候変動に具体的な取り組みを」に当てはまると考えられます。
ヴィーガンに対する具体的な取り組みとして、日本の観光業でもヴィーガンへの対応に注目が集まっています。
観光庁の「飲食事業等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」には、ヴィーガン向けレストランの取組事例がまとめられており、日本政府においても訪日外国人観光客獲得に向けての打ち手として有効であると考えられています。
これらのツールやガイドを参考にしながら、SDGs目標達成に向けて観光業界でもヴィーガンに対する取り組みを進めていくとよいでしょう。
飲食店のヴィーガン対応に必要なこと|完全菜食主義者・ベジタリアンとの違い・対応方法・対応事例紹介
海外ではベジタリアンやヴィーガンといった思想が広まりつつあり、訪日外国人においても、ベジタリアン等の割合は増えつつあります。ベジタリアン等に向けた対策をすることは、今後においてさらなる顧客の獲得が期待されます。この記事では、ベジタリアンとヴィーガンの違いから、具体的な例と共に飲食店におけるベジタリアン等の対応方法について紹介します。日本国内の飲食店における課題から、その対策まで知ることで、より効果的なヴィーガン対応ができるでしょう。Googleマップによる集客、うまく活用できていますか?口...
SDGsへの意識の高まりから旅行スタイルにも変化が
新型コロナウイルスの感染拡大を経て、以前のような地域へ過度な負荷をかけ、環境を破壊するような観光は見直されるようになっています。日本の観光業界においても、観光庁が「持続可能な観光ガイドライン」を制定するなど、サステイナブル・ツーリズムに関連した取り組みが注目されています。
さらに、SDGsを意識することは観光業のみならず、世界の持続的・安定的な発展につながっていくでしょう。
SDGsを意識したツーリズムの実施を検討していくことは、今後の観光業の発展において必要不可欠だといえます。
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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