【空港で2時間足止め】中国人の私が、コロナ禍で「日・中」の国境を超えるということ 後編

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今年1月〜3月に日本と中国を往復した訪日ラボの中国人スタッフ熊(くま)に、渡航時の状況や隔離生活、SNSでの情報収集の方法について詳しく話を聞きました。

本記事はその後編です。(前編はこちら。

※記事内の描写は全て2021年1月〜3月の渡航当時のものです。


家族と春節を過ごし、中国の学校の冬休みが終わる頃、私は3月4日杭州発の直行便に乗って日本に戻ることにしました。

その当時、在中国日本大使館のホームページを確認したところ、空港に行くまでに準備しなければいけないものは、72時間以内のPCR検査結果とその結果を自ら記入する検査申告書のみでした。

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中国から日本へ戻る準備をはじめる

日本に入国するためにはPCR検査の採取検体は鼻咽頭ぬぐい液か唾液で指定され、検査結果書にも個人情報や採取検体などの情報が求められています。

中国の病院から発行されたPCR検査報告書はほとんど中国語であるため、採取検体や検査法などの英語表記がなくても大丈夫かどうかが心配になり、大使館に電話で問い合わせしました。

その結果、「英語表記もあった方が良いかもしれないですね。」と言われ、英語表記のある検査結果書を発行してくれる病院を探すことにしました。

「英語表記」対応可能な病院を探して

私の地元は都市ではないため、PCR検査可能な病院に電話をかけ、「英語表記の検査結果」が出せる病院を探していました。

5つほどの病院に電話しましたが、全て英語表記の問題でひっかかり「杭州まで行くしかないのか…」と諦めかけたところ、最後に電話した病院でやっと見つかりました。

家族と一緒に過ごす貴重な時間にわざわざ杭州まで行かなくても良いことにほっとしたことを記憶しています。飛行機の出発日の2日前に朝一で地元の病院に行き、PCR検査を受け、その日の16時ぐらいに検査結果が出ました。

紙の検査結果を取りに行かなければいけないのかと思いましたが、その病院の医師に「全てWeChatミニプログラムで確認できますよ。結果が出たら自分でプリントアウトしたらどうですか?」と言われました。なるほど!

▲PCR検体採取、検査進捗、検査結果、検査結果レポートはすべてミニプログラムで確認可能
▲PCR検体採取、検査進捗、検査結果、検査結果レポートはすべてミニプログラムで確認可能

中国を出国 「4つの書類」の準備に追われる

いざ出発日です。日本を発つ時と同じく相変わらず3時間早めに着きました。日本を発つ時とは対照的に、空港のチェックインカウンター前にはほとんど誰もいませんでした...。

空港はガラガラ
▲空港はガラガラ

チェックインする際、空港のスタッフの方がPCR検査結果書を確認し、日本入国用の誓約書をくれました。また、カウンターには二つのQRコードが貼られており、それを読み取ると中国出国用の申告書日本入国のための質問票の入力画面が表示されます。

質問票はWEB回答のため、ネット環境があるうちに済ませる必要がある
▲質問票はWEB回答のため、ネット環境があるうちに済ませる必要がある

スタッフの方から「質問票は必ずネット環境のある時に入力してください」と言われたため、空港で記入を済ませます。空港のネットの環境のせいか、周囲の人も含めてページを表示するには結構な時間かかりました...。

出国にはこれだけの書類が必要
▲出国にはこれだけの書類が必要

誓約書、PCR検査結果報告書、出国申告、Web質問票とその結果のキャプチャー、こちらの4つを揃えて、無事に出国できました。

飛行機からの景色と、機内食
▲飛行機からの景色と、機内食

日本から中国への飛行機では周囲の乗客はほとんどマスクを外さず何も食べていませんでしたが、中国から日本への便はみんな普通に食事をしていたのが印象的でした。

日本への入国 空港を出るまで約2時間かかることに

第一ラウンド「中国からの出国」は成功しましたが、第二ラウンド「日本への入国」が待っています。

飛行機から降りたあとは、以下のような流れで入国しました。

  1. 誓約書などの書類チェック
  2. PCR検査
  3. LINEに電話番号を登録
  4. PCR検査の結果待ち
  5. 通常入国

飛行機から降りて、空港を出て予約した車に乗るまで約2時間ほどかかりました。

原稿を書いている4月9日現在、上記の流れ以外に3つの指定アプリのインストール義務も追加されたため、今後はさらに時間がかかるかもしれません。

関連記事:「中国からダウンロードできないアプリも...」厚労省 日本入国にCOCOAなど専用アプリ義務化へ様々な声

「予約した車」と書きましたが、日本に入国するには空港等からの移動も含め「公共交通機関の使用は不可」であるため、友人や家族に迎えに来てもらうか、タクシーに乗るか、自分で車を予約するか、どれかを選ぶしかありません。

タクシーは高いですし、成田空港に友達に来てもらうのも遠いですし、最終的にTaobaoで迎えに来る車を予約しました。コロナ前、訪日旅行でよく使われていたTaobaoの車サービスは今、空港への出迎えによく使われています。

車の手配をしているTaobao店舗(旅行会社の旗艦店が多いです。)を探し出し、口コミと金額を参考した上で店舗を決め、カスタマーセンターに到着時間や目的地についてご相談し、車の手配をしてもらいました。

Taobaoで配車サービスを検索し、申し込み、直接コミュニケーションをとって車を予約
▲Taobaoで配車サービスを検索し、申し込み、WeChatで直接コミュニケーションをとって車を手配

成田空港から横浜市内住所までの車を予約した結果、料金は15,000円でした。また、車は移動時間を予測して料金を設定しているため、時間をオーバーすると追加料金も発生します。

成田空港に着いたのは夜の20:30でしたが、家に着いたのは翌日の0:30頃。長い一日となりました。

その後は14日間の公共交通機関の不使用と自宅待機を経て、ようやく自由に行動できるようになりました。

自宅待機の14日間は毎日LINEで2問のアンケートを答えていました。それ以外は全て自己管理となります。
▲自宅待機の14日間は毎日LINEで2問のアンケートに回答。それ以外は全て自己管理。


ウィズコロナ時代におけるSNSの役割

中国に帰国する過程も日本に戻ってくる過程も、みなさんも既に気付いたかと思いますが、国の政策や医療検査、そしてそれ以外でもSNSプラットフォームは大きな役割を果たしていました。

私も中国人のSNS一般ユーザーとして、様々なSNSプラットホームに助けられ、また自分の経歴をSNSを通してさらに多くの人にシェアしました。

WeChatベースで行われる健康申告や各種手続き

中国人に最も使われているSNSプラットフォームは何かと聞かれると、もちろんコミュニケーションツールとして使われているWeChatになるかと思います。

「若い世代向け」や「女性向け」などの特定のターゲット層が存在する他のプラットフォームと比べ、WeChatは本当に中国人なら誰でも持っていて、誰でも使っているものといっても過言ではありません。

そのため、中国への入国や出国用の健康申告も、PCR検査の結果確認も、WeChatベースが多いです。

実際に操作する時もコードスキャンと内容入力だけになるので、ユーザーにとっても便利だといえます。

▲左:WeChat内にあるミニプログラム 右:在日本中国大使館情報告知用のWeChat公式アカウント
▲左:WeChat内にあるミニプログラム 右:在日本中国大使館情報告知用のWeChat公式アカウント

最新かつ正しい情報は微博(Weibo)をチェック

そして私たちは「インターネット依存世代」でもあり、私もいつもSNS情報をチェックし、なんでもSNSで検索する習慣があり、今回もSNSに助けられたことは少なくありません。

具体的には、中国に帰るには現地の隔離政策や地方の対応策などを確認しなければならないのですが、今のこのご時世では政策が突然変わる可能性もあります。

そこで私は、常に最新情報がいつも早く流れ、ユーザーの「シェア」で素早く拡散される微博Weiboプラットフォームをチェックしていました。

実体験ベースの口コミを知りたい時は小紅書(RED)が役に立つ

また、帰国するためのPCR検査を受けるにはどこも費用が高いため(一回3万円以上は普通です。)、実体験ベースの口コミがたくさん投稿されている小紅書REDでもっと安いところはないかを検索してみました。

その結果、表参道に27,000円で受けられる病院がよく投稿記事に出ていたため、HPを検索し、一般より少し安い費用で受けることができました。

その後は隔離準備物リストや帰国するときの流れ、日本に入国する際の注意事項など、あらゆる内容を小紅書RED)で「素人」の口コミ投稿を参考しました。

小紅書RED)で「帰国隔離」と検索すると、4万件以上の投稿があり、「日本入国」と検索すると1万件以上、「隔離物品」と検索すると8,600件余りの投稿もあり、その中に参考になる内容もとても多いです。

小紅書(RED)の検索結果 いかに情報共有が活発化がわかる
▲小紅書(RED)の検索結果 いかに情報共有が活発化がわかる

ちなみに今まで使ってきた経験でわかってきたことですが、小紅書RED)のAI検索・閲覧記録投稿位置情報に紐づいているようで、例えば帰国関連の内容を検索して読むと、次にアプリを開いたらトップページに似ているような内容がプッシュされます。

また、東京にいる人はよく東京の投稿をしていると、東京関連の他の人の投稿がトップページに表示されるようになります。小紅書RED)での訪日プロモーション方法もこの特徴に基づくので、具体的には別の記事でご説明します。

知らない人とつながり、知識を共有して助け合っていく

これからやりたいことや、やっていくことに関して、いくら他人の経験した記事を読んでも、自ら体験しないと分からないものです。

今回の帰国経験もそうですが、実際に体験するまでにいろいろと検索して準備して、実際に体験してみたら今まで参照したものに「ここは確かにそうだった!」「他の人は言っていないけど、これも大事でしょう!」という考えはやはり出てきました。

そこで、「私も自分の経験をシェアして、これから帰国する人に伝えよう」という思いで、実は私もSNSで自分の経験をシェアしてみました。

実際の投稿
▲実際の投稿

※記事リンク

小紅書RED)のアカウントで自分のPCR検査過程や杭州までの帰国過程をシェアしたところ、PCR検査の投稿に300件以上のエンゲージメントがあり、129件のコメントがつきました。

小紅書RED)はInstagramのように知らない人にもDMを送れるため、同じ時期に帰る人が、気になることについて質問を送ってくる人もいました。

自分も「これについて不安だったなー」と思いながら、コメント欄やDMのみなさんからの質問に対して、きちんと答えました。知らない人との繋がりはこうして生まれていきます。

また、今は「動画の時代」だともいわれています。今回の帰国と隔離生活を記録するためにvlogを2本作り、微博Weibo)プラットホームのアカウントにアップしました。

二つの動画のうち一つは2万再生以上を記録
▲二つの動画のうち一つは2万再生以上を記録

※動画リンク

このうち一本目の動画がKOLの方にリポストされ、記事は8万以上のPVとなり、動画も2万回以上再生されました。また、その動画の拡散によって、私のWeiboアカウントも100名以上のフォロワーが増えました(さすがKOLの力です!!)。

インターネットを通して他の人の投稿を参考し、自らも発信し、そして地理的な距離を超えて知らない世界と繋がっていくーーこれが今の時代にSNSが果たしている役割であり、SNSの魅力だと思います。

コロナ禍の帰国で得たもの

最後に、今回の帰国でかかった費用を計算してみます。

  • 日本→中国 航空券  170,000円
  • 日本→中国 PCR検査  27,000円
  • 杭州での隔離費用 4,870元(約82,000円)
  • 中国→日本 PCR検査 80元(約1,300円)
  • 中国→日本 航空券 52,000円

今回の帰国は、最終的に332,300円かかりました。ご覧の通り中国への航空券はまだ高く、そして14日間の隔離費用もそこそこします。(海外で仕事をして納税しているため、今回の帰国における隔離費用が全て自己負担です。)

集中隔離で外に出られないし、長期休みも取れない、中国からのテレワークができないなど、以前は年に何回も帰省していたのに今は帰れないという在日中国人もとても多いと思います。

では、今回の帰国で何を得られたでしょうか?

家族と一年ぶりに会えました。14日間ずっと同じ部屋で自分と向き合うことを体験しました。コロナ禍の中国の今の様子を見れました。そして一年ぶりに「マスクの付けない生活」ができました。これは地元が今まで感染者がゼロであり、政府から密集場所以外はマスク不要だと指示が出ているためです。

日中を実際に往復して気づいた課題

外国で働いている人はいつも自分の国と今いる国の様々な面を比べながら、理解しながら生活を送っていると思います。

私も今回の帰国で日本と中国の感染対策や社会の雰囲気など様々な角度から見て、考えて、そしてこの記事を書いています。

SNSで伝え聞く、他の地域の状況

もちろん「ここは良い」「ここは違う」と思うところもたくさん出てきます。

例えば私が隔離生活を送った杭州のホテルの対応や環境はとてもよかったのですが、SNS上の投稿をみると他の地域ではスタッフの態度が悪いとか、ホテルの環境がよくないなどの投稿も見受けられます。

帰国者の待遇は、地域の経済の発展状況や人の意識によって変わってくるのでしょう。

高齢者やデジタル慣れしていない中国人は、日本への入国に大いに戸惑うはず

また、日本への入国も、現在の最新政策によると、事前にOSSMA(位置情報確認アプリ)、Skype(ビデオ通話アプリ)、COCOA(接触確認アプリ)などのアプリインストールが必要ですが、こちらの情報は大使館のHPや中国の主流SNS上にオフィシャルで発表されておらず、そしてそもそも中国のアプリストアやアンドロイド端末から「Skype」「OSSMA」自体が見つからないなど、問題は多くあります。

若い世代にとってはSNSを通してなんとなく解決できそうなことでもありますが、高齢者やデジタルに慣れていない入国者はどうなることでしょう。入国するには一体どれほどの時間がかかるのでしょう。

試行錯誤を繰り返し、いつかは自由に渡航できることを信じて

中国の諺に「踏み石を探って川を渡る」という言葉があります。

コロナの影響で世界中の国と人々はみんな「踏み石」を探りながら、試みをしながら進んでいます。

その過程にもちろんうまくいったこともあれば、まだ不十分なところも出てくると思います。

探りながら、調整しながら、改善しながら、いつかは川を渡れることでしょう。コロナの「川」を渡り、世界往来の回復がいち早くできますよう、と祈っております。

(前編はこちら。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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