世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界の航空会社は大きな影響を受けていますが、各国の入国制限などの規制緩和に伴い、航空便の再開や増便の動きが活発化しています。
国際航空運送協会(IATA)が6月7日に発表した、2022年4月の世界の航空貨物需要によれば、これまで航空貨物は旺盛な需要が見られてきた一方、コロナ禍とウクライナ情勢の影響により、4月は需要の落ち込みと搭載スペースの縮小傾向が見られました。
IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、シンガポールで開催されたチャンギ航空サミットで5月17日、アジア太平洋地域市場の回復が遅れていることを指摘しました。
ここ2年にわたり2019年比で10%を下回っていたアジア太平洋の国際線旅客数は、今年3月には17%まで回復したものの、依然として世界平均の60%を大きく下回っている状況です。
特に日本と中国の水際対策などの対応を批判し、水際対策緩和を要請しました。
なお日本の国土交通省は6月から、政府の水際対策方針に基づき航空会社に要請している搭乗者数制限を緩和し、国内の航空会社に対しては、これまでの1週間あたり17,500名以下から35,000名以下に上限を緩和します。
またJALやANAなど航空10社が発表したゴールデンウィークの利用実績によると、旅客数は国際線が前年同期比4.66倍となる14万1,156人、国内線は2倍近い98.2%増の266万6,281人となり、10社平均の座席利用率(L/F)は国際線が47.7ポイント上昇して66.7%、国内線は20.0ポイント上昇して67.1%となりました。
特に国際線は、ハワイ方面の一部便で満席になるなど需要回復の兆しが見られています。
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【東アジア】国際線の再開や増便相次ぐ
日本国内では、国際線の再開や増便が相次いでおり、韓国や香港、台湾でも増便など運航拡大の動きが活発化しています。
日本
ANA(全日本空輸)は、ロシア・ウクライナ情勢の影響により運休していた東京/羽田〜パリ線について、7月7日から運航を再開します。
また7月1日から東京/羽田〜ロンドン線をデイリー運航に増便するほか、北米とアジア路線を中心に増便し、国際線の運航率は6月と7月が28%、8月から10月が27%となります。
JAL(日本航空)は、東京/羽田〜モスクワ線と東京/成田〜ウラジオストク線のロシア2路線について、9月30日までの運休を決定しました。
7月から東京/羽田〜パリ線をデイリー運航、9月から東京/成田〜メルボルン線を週3便運航するほか、8月に東京/羽田・大阪/関西〜ホノルル線を増便し、名古屋/中部〜ホノルル線と東京/成田〜コナ・グアム線の運航も再開します。
減便率は7月が56%、8月が36%、9月が34%となっています。
ZIPAIR Tokyoは、6月1日から東京/成田〜ソウル/仁川線を週6便に増便します。
ジェットスター航空は、7月21日から東京/成田〜ケアンズ線、7月26日から大阪/関西〜ケアンズ線の運航を約2年3か月ぶりに再開します。
さらに8月2日からは、東京/成田〜ゴールドコースト線の運航も週3便で再開します。
なおピーチ・アビエーションは新型コロナウイルス感染拡大の影響や、為替や原油価格高騰の影響による運航コストの増加を反映し、6月7日午後10時以降販売分から運賃や料金、手数料を改定すると発表しました。
またソラシドエアが発表した2022年3月期決算は、純損益が29億3,900万円の赤字となりました。
韓国
アシアナ航空は、5月11日から福岡〜ソウル/仁川線を週3便に、5月12日から大阪/関西〜ソウル/仁川線をデイリー運航に、5月25日から名古屋/中部〜ソウル/仁川線を週2便に増便します。
また東京/成田〜ソウル/仁川線に、6月1日から機材を大型化しエアバスA330−300型機を投入します。
チェジュ航空は、7月1日から福岡〜ソウル/仁川線の運航を再開し、8月5日から名古屋/中部〜ソウル/仁川線の運航を週3便で再開します。
エアプサンも7月1日から大阪/関西〜釜山線を週2便で再開し、成田・関空〜ソウル線も6月27日から週2便に増便します。
またチャンギ国際空港は、9月からターミナル4、10月からターミナル2出発ホール南側の運用を再開します。
香港
キャセイパシフィック航空は、7月から週2便に大阪/関西〜香港線の運航を拡大し、東京/成田〜香港線の運航も大幅に拡大します。
また同社は、香港政府による78億香港ドルのつなぎ融資延長を歓迎する声明を発表しました。
台湾
台湾のチャイナエアラインは6月6日、台北(松山)~羽田線を7月から1日1往復のデイリーに増便すると発表しました。
さらに台北(桃園)~関西線も週3往復へ増便します。
また6月1日から7月31日発券分を対象として、国際線利用客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を引き上げます。
【東南アジア】タイやベトナムで日本路線の再開続々
タイ国際航空が7月から東京/羽田〜バンコク線の運航をデイリー運航で再開するほか、ベトナム航空も東京/羽田〜ハノイ線や東京/成田〜ダナン線を再開するなど、日本路線の再開が相次いでいます。
タイ
タイ・エアアジアXは、個人旅行客の出入国規制に伴い、6月5日に予定していた東京/成田〜バンコク/スワンナプーム線の開設を延期し、7月1日から週4便を運航します。
また5月17日にタイ中央破産裁判所に再生計画を申請し、翌18日に受理されたと発表しました。
さらに同社は、日本・ソウル路線のサブスクリプションサービス「KR/JP SUPER+」をタイ居住者向けに提供します。
タイ国際航空は、7月1日から東京/羽田〜バンコク線の運航をデイリー運航で再開します。
またタイ・ベトジェットエアは、7月16日に福岡〜バンコク/スワンナプーム線を開設します。
ベトナム
ベトナム航空は7月1日から、東京/羽田〜ハノイ線を週4便、東京/成田〜ダナン線を週3便で再開します。
さらに東京/成田〜ホーチミン線は週4便からデイリー運航に、名古屋/中部〜ハノイ線を週2便から週4便に、名古屋/中部・福岡〜ホーチミン線と福岡〜ハノイ線は週1便から週2便へと増便します。
またバンブー・エアウェイズが6月1日から東京/成田〜ハノイ線をデイリー運航に増便するほか、ベトジェットエアが7月に名古屋/中部・福岡〜ハノイ線を開設すると発表しました。
シンガポール
チャンギ・エアポート・グループは、5月29日からシンガポール・チャンギ国際空港第2ターミナルの運用を再開すると発表しました。
アップグレード工事のため2020年5月から閉鎖されていましたが、今後の乗客数の増加に対応するため再開するものです。
またシンガポール航空が発表した2022年3月期の連結業績は、純損益が9億6,200万シンガポールドルの赤字となりました。
マレーシア
マレーシア航空は、5月25日にクアラルンプール~ドーハ線を開設し、8月14日からは東京/羽田〜クアラルンプール線を週2便で開設します。
また日本発着マレーシア以遠への往復航空券の購入により、マレーシア国内線1区間が無料になる「Bonus Side Trip」の販売を開始しました。
さらに同社は、クアラルンプール~ドーハ線の開設を受けて、カタール航空との戦略的パートナーシップを強化し、共同運航(コードシェア)を大幅に拡大します。
フィリピン
フィリピン航空は7月2日から、第1・第3土曜の月2便のみ運航してきた東京/成田〜セブ線を、月6便に増便します。
また7月21日からは、大阪/関西〜セブ線の運航を再開します。
ブルネイ
ロイヤルブルネイ航空は8月3日から、バンダルスリブガワン~成田線の運航を再開します。
機材はエアバスA320neoを引き続き投入し、当初は週2往復、9月からは週4往復に増便する予定となっています。
【北・南米】グアム・ホノルル~日本線再開・増便へ、エア・カナダも成田〜モントリオール線再開
アメリカでユナイテッド航空が大阪/関西〜グアム線を再開し、東京/成田〜グアム線も増便するほか、カナダでも東京/成田〜モントリオール線が再開されるなど、日本路線の再開や増便が相次いでいます。
アメリカ
ユナイテッド航空は、週9便だった東京/成田〜グアム線を6月4日から週11便、7月1日から週14便にそれぞれ増便します。
また7月1日からは、大阪/関西〜グアム線の運航を週3便で再開します。
さらにアメリカ運輸省にワシントン/ダレス〜ケープタウン線の開設を申請しており、11月17日から週3便を運航するとしています。
ハワイアン航空は、6月1日から東京/成田〜ホノルル線を週4便に増便し、8月1日から東京/羽田〜ホノルル線をデイリー運航で再開します。
さらに東京/成田・大阪/関西〜ホノルル線も、8月から1日1便に増便します。
デルタ航空は、10月30日から名古屋/中部〜デトロイト線を週3便に増便します。
またノーザンパシフィック航空は2026年までの事業計画を発表し、11月にも日本と韓国に就航するとしています。
カナダ
エア・カナダは6月4日、東京/成田〜モントリオール線の運航を2年2か月ぶりに再開しました。
週2便で再開し、9月7日以降は週5便で運航します。
さらに冬ダイヤが始まる10月からはトロント~羽田線をデイリー運航で再開する予定で、既存のバンクーバー線を合わせ、同社の成田発着便は3路線となります。
【オセアニア】カンタス航空、羽田〜シドニー線をデイリー運航へ
オセアニアでも、カンタス航空が9月から東京/羽田〜シドニー線をデイリー運航で再開するなど、日本路線の再開や増便が活発化しています。
オーストラリア
カンタス航空は9月12日から、東京/羽田〜シドニー線をデイリー運航で再開します。
さらに10月末には、東京/羽田〜メルボルン・ブリスベン線を開設します。
機材は、いずれもエアバスA330-200型機を使用します。
ニュージーランド
ニュージーランド航空は、東京/成田〜オークランド線の増便計画を変更し、7月11日から週2便、8月1日から週3便で運航します。
ニュージーランド政府は、5月1日から新型コロナウイルスワクチン接種が完了し、陰性証明を有する人の入国後の隔離を免除すると発表しています。
フランス領ポリネシア
エア・タヒチ・ヌイは11月3日から、東京/成田〜パペーテ線の運航を週1便で再開します。
同社はすでに、10月29日までの日本路線の運休を決定しています。
【ヨーロッパ】エールフランス航空、羽田〜パリ線の運航再開へ
ヨーロッパでも、エールフランス航空が9月から羽田~パリ線の運航を再開するなど、日本路線の再開や増便が相次いでいます。
ドイツ
ルフトハンザ・ドイツ航空は、6月1日から東京/羽田〜ミュンヘン線の運航を週3便で再開し、7月2日からは週5便に増便します。
さらに9月1日から東京/羽田〜フランクフルト線を週6便に増便し、あわせて2路線週11便を運航することとなります。
また同社は6月2日から、東京/羽田〜フランクフルト線へのボーイング747-8型機の投入を再開しました。
オーストリア
オーストリア航空は、7月2日から東京/成田〜ウィーン線を週3便に増便します。
同路線は2021年冬スケジュール期間中は運休していましたが、5月4日から週1便で運航が再開されていました。
スイス
スイス・インターナショナル・エアラインズは、7月2日から東京/成田〜チューリッヒ線を週4便に増便します。
機材はボーイング777-300ER型機を使用し、東京/成田発は月・土曜、チューリッヒ発は木・金曜の週2便での運航を、東京/成田発は金・日曜、チューリッヒ発は火・土曜を追加します。
イタリア
ITAエアウェイズは、東京/羽田〜ローマ線の開設を8月2日に延期しました。
6月1日から週5便で開設し、8月には1日1便に増便する計画でしたが、夏スケジュール期間中の公式ウェブサイトでの販売は週3便のみとなっています。
ノルウェー
ノースアトランティック航空は、8月12日にロンドン/ガトウィック〜ニューヨーク/JFK線を開設すると発表しました。
同社は、2021年2月に設立された長距離路線に特化した格安航空会社で、ノルウェーのオスロが本社となっています。
3月にガトウィック空港の発着枠の獲得を発表していたものの、燃油価格の高騰などにより運航開始時期を調整していたもので、1日1便で運航します。
北欧3国(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー)
スカンジナビア航空は、スウェーデン政府が保有する債権を株式へ転換し、経営支援の意向を表明したことに謝意を表明しました。
同社は事業変革計画「SAS FORWARD」成功への重要な一歩になるとしており、政府は新たな資本注入は行いません。
フランス
エールフランス航空は、東京/羽田〜パリ線の運航を、9月7日から週3便で再開します。
日本路線は現在、東京/成田〜パリ線が週5便、大阪/関西〜パリ線は週3便運航しており、全3路線の運航再開により、あわせて週11便が運航されます。
【中東】カタール航空、アメリカン航空とのコードシェア拡大
中東では、エミレーツ・グループの業績が大幅に改善しているほか、カタール航空がアメリカン航空とのコードシェアを拡大します。
アラブ首長国連邦
エミレーツ・グループが発表した2022年3月期の業績は、長期化する新型コロナウイルスの影響により、38億UAEディルハム(約10億米ドル)の損失を計上しました。
グループ全体での業績は大幅に改善しており、エミレーツ航空は損失を前期から大幅縮小したほか、地上支援を行うdnataも黒字化しています。
世界的な運航拡大や旅客便の再開が影響し、エミレーツ航空の売上高は、前期比91%増となる592億UAEディルハム(約161億米ドル)となりました。
カタール
カタール航空とアメリカン航空は、コードシェア(共同運航)を拡大して戦略的提携を拡大します。
6月4日のアメリカン航空によるニューヨーク/ジョン・F・ケネディ〜ドーハ線の開設に伴い、カタール航空が運航するドーハとエチオピアやインドネシア、ヨルダン、ケニアなど16か国を結ぶ路線でコードシェアを実施します。
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