観光産業にオープンイノベーションを起こす!「観光クロスオーバーMEET UP」イベントの様子を紹介

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日本の国際的な競争力を高めるうえで重要な観光産業。人口減少がすすむ日本において、観光は地方創生の切り札ともいえます。

自治体やDMOが主導し、各地で取り組みが進められる一方で、以下の課題が問題視されています。

  • 業界従事者の高齢化
  • DX化の遅れ
  • ビジネスモデルの硬直化

こうした課題を解決するため、“若者を中心に観光産業にオープンイノベーションを起こす”をミッションとして活動するのが、「一般社団法人 観光クロスオーバー協会(代表理事:西岡貴史)」です。

長年培われてきた観光業界の基盤と、新規参入者の斬新なアイデア──これらふたつが垣根をこえて交わる場所(コンソーシアム)をつくることで、持続可能な観光の実現をめざしています。

この記事では、観光クロスオーバー協会の主催で2023年7月8日に兵庫県神戸市で開催された「観光クロスオーバーMEET UP」の様子を紹介します。

本イベントには地域や観光関係の事業者、若手起業家、スタートアップ事業者などが参加。新たな価値やビジネスアイデアを生みだすきっかけをつくることを目的に開催されました。

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【第1部】観光庁による観光DXについての基調講演

本イベントは、大きく分けて以下の3部構成で開催(参加費無料)され、多くの参加者で賑わいました。

  • 第1部「観光庁による観光DXに関する基調講演 」
  • 第2部「ビジネスプランコンテストのファイナリストによる最終プレゼン 」
  • 第3部「クロスセッション」

まず観光庁 観光地域振興部 観光資源課 秋本氏から、「観光DXについての観光庁の取り組み」の報告がありました。

観光庁発表資料より抜粋

観光庁では、DXの推進をつうじて稼げる地域をつくり、他地域や事業者に横展開することで日本全体における収益の最大化、経済活性化につなげていくことを目標としています。観光庁が掲げる施策は次の4軸です。

  1. 旅行者の利便性向上、周遊促進
  2. 観光産業の生産性向上
  3. 観光地経営の高度化
  4. 観光デジタル人材の育成、活用

オンライン予約や顧客管理システムなどのデジタルツールの導入率は、大規模企業ほど高く、小規模になるほど低いのが現状。導入していても、データをつかって戦略立案、効果検証まで行えている企業は少ないそうです。

DX化を進めることで生産性を向上し、価値の高い観光サービスを提供することが急務といえます。現状、適切な情報発信ができておらず、旅行者は情報収集したくてもできていない状況です。

DX化により旅行者のニーズにあった情報発信が可能になれば、リピーターの促進や消費の拡大につながります。

これらの取り組みによって集めたデータをもとにマーケティング活動を実施すれば、観光地全体の経済が活性化されるだけでなく、持続可能な観光業を実現することにもつながるとのこと。

くわえて政府として、観光事業者に対する研修や補助金制度の整備をするのはもちろん、先進事例をつくってノウハウを共有し、観光デジタル人材の育成にも取り組んでいくそうです。

【第2部】 ビジネスプランコンテストのファイナリストによる最終プレゼン

つづいて、観光に特化したビジネスコンテスト「観光クロスオーバービジネスプランコンテスト」のファイナリストによる最終プレゼンテーションが実施されました。

本イベントの協賛で国家戦略特区にも指定されている、兵庫県養父市(やぶし)における観光特化のプラン提案が行われました。養父市は自然豊かな環境や歴史遺産、伝統文化が多くのこる場所。最優秀賞の受賞者には賞金が贈られるほか、現地でプレゼン内容の実証実験を行える権利が与えられます。

5名の審査員によって、下記5項目から総合的に審査されました。

  • ビジネスの新規性
  • ビジネスの実現性
  • ビジネスの継続性
  • 社会課題への貢献度
  • 発表者の熱意

最優秀賞:「推し活×観光」プラン

最優秀賞を受賞したのは、株式会社ラブレター代表 久保ひかり氏の「推し活×観光」プラン

最優秀賞を受賞した久保氏(右)

久保氏はアイドル市場が2022年時点で3,000億円の規模を誇るなど大きな市場であることに着目。養父市を“日本初の推し活ができる町”にすることで、養父市に観光客やインバウンドを継続的に呼びこみ、地域の活性化をめざすプランを提案しました。

養父市で毎年行われる「やぶふるさと祭」では、会場内に多くのちょうちんが飾られます。このちょうちんに推しの名前や推しへのメッセージを入れ、一定期間かざれることで、推し活をしたい観光客を呼びこむことができるとのこと。

また、日本の古きよきちょうちんとかけあわせることで、推し活をしたい外国人観光客の集客も見込めると見込んでいます。

人口減少でお祭りの活気がなくなりつつあるなか、アイデアの新しさを評価され、みごと最優秀賞の受賞となりました。伝統工芸品とかけあわせるなど横展開のしやすさも、今後の他地域への展開可能性が期待できそうです。

優秀賞:「恩送り旅行」プラン

優秀賞を受賞したのは、一般社団法人こども食堂支援機構 代表理事 秋山宏次郎氏の「恩送り旅行」プラン

秋山宏次郎はリモートで参加

秋山氏がこども食堂の活動をするなかで課題に感じたのは、将来世代(30年後の世界で主役となる世代)が貧困やコロナ禍を理由に「旅行」をする選択肢をもてないこと。

そこで寄付型のふるさと納税を活用し、旅行商品をつくることを提案。寄付者が旅行するのではなく、事情がある家庭の子どもたちの旅行機会につなげるとのこと。

また集めた寄付金をつかい、寄付者と子どもたちを現地での農業体験に招待するなどの機会をつくることも提案しました。若者への旅行経験を提供することで、将来的に養父市の関係人口の増加にもつながることが期待されます。

オーディエンス賞:「昆虫」を五感で感じる養父市の魅力再発見プラン

オーディエンス賞を獲得したのは、株式会社POI 清水和輝氏の「昆虫」を五感で感じる養父市の魅力再発見プランです。

オーディエンス賞を受賞した清水和輝氏(右)

養父市はほたるの里があったり養蚕(ようさん)が行われていたり、昆虫が多く生息する場所として知られています。

そこで清水氏は観光と昆虫をかけあわせたプランを提案。具体的には昆虫に関するワークショップや、採取から調理体験までを体験できるイベントを実施するとのこと。

また外国人観光客にとっては、畳など伝統的な建築様式が魅力的であることに着目。空き家をつかった宿泊体験などをあわせることで、さらなる付加価値を生みだすことを提案しました。

関西万博などをつうじて、海外からくる富裕層に五感で昆虫食を楽しんでもらうプランを考案する予定だそうです。

協賛企業賞1組目:「ヒーリングトリップ〜企業がお金を出す新しいビジネスモデル〜」プラン

協賛企業賞を獲得したのは2組。1組めは生川雄太郎氏の「ヒーリングトリップ〜企業がお金を出す新しいビジネスモデル〜」プランです。

協賛企業賞受賞を受賞した生川雄太郎氏(左)

生川氏がプレゼンしたのは、うつ病で退職した人々の社会復帰を支援するビジネスプランです。

うつ病を理由に退職すると、その後の社会復帰がむずかしいのが現状です。その課題解決として、養父市で農家民泊や空き家を活用したヒーリングトリップを提案。栄養、睡眠、運動、森林浴の力で総合的にメンタルをケアし、社会復帰をめざします。

生川氏によると、人材を必要とする企業が費用を負担するため、退職者の費用負担はゼロ。企業は人材を効率的に獲得できるしくみになっています。

「旅行=単なる遊び」の概念から「旅行=メンタルヘルスに良い」という新しい価値を提供することで、観光業界にとって未開拓の顧客獲得が期待できる点も評価の対象になりました。

協賛企業賞2組目:「旅行業界向けSaaSサービス」プラン

もう1組は、稲木圭祐氏、小幡翼氏、高田諒馬氏、竹原淳氏の4名が提案した「旅行業界向けSaaSサービス」プランです。

協賛企業賞を受賞した稲木圭祐氏(右)

今まで海外の富裕層が日本で旅行をする際にボトルネックだったのが、旅行エージェントとのコミュニケーションコスト。言語の違いによる時間のロスや手間をDX化によって解消しようというのが彼らのビジネスプランです。

旅行エージェントに集まるユーザーの需要データを分析すれば、養父市に対して新しい観光サービスやスポットの提案を行うことが可能です。コミュニケーションなどの効率化を行うことで富裕層のインバウンド需要に対応し、3年間で2億円の売り上げをめざしているそうです。

【第3部】クロスセッション

最後に、養父市の副市長や神戸電鉄の新規事業担当者らと、35歳未満の若者とのクロスセッションが行われました。

参加した大学生から、「養父市は、但馬エリアの中心に位置し、周辺の観光地へのアクセスがしやすい場所です。しかし養父市内の交通が不便なため、観光客が訪れにくい」と指摘がありました。

副市長によれば、人口減少に伴ってバスや電車の本数も減っているため、自動運転のバスを導入したり、現在は規制されているレンタカー事業への新規参入を可能にしたりなどの対策を検討しているそうです。

クロスセッションの様子

またインバウンド需要を取りこむための施策についても議論されました。ターゲットの絞りこみとターゲットにあわせた発信方法、そして日本がもつ価値を発揮するなど、日本ならではの観光資源を活かすことが大切だと語られました。

まとめ

地方創生のカギをにぎる観光について、政府、地域関係者、若手起業家、学生などさまざまな視点から意見が交わされた本イベント。ビジネスコンテストでは、第三者視点だからこそ気がつく、養父市のもつ資源を活かした提案がされました。

またクロスセッションは、世代をこえて新たなアイデアがうまれ、実現にむけて一歩すすむ貴重な瞬間でした。横のつながりをつくることは観光業を盛りあげるうえで非常に重要であり、本イベントはその役割を担う場といえるでしょう。

産業としての観光に、業界の垣根をこえてどうイノベーションが起こっていくのか、今後の動きに注目です。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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