国慶節とは、中国の建国記念日にあたる10月1日の祝日です。また、その周辺の休日も含めた連休を指す言葉でもあります。
春節に並ぶ大型連休の一つで、2023年は中秋節と繋がり、9月29日から10月6日までの8日間でした。新型コロナウイルスのパンデミックを経て4年ぶりに制限が全くない連休となり、その経済効果に期待が高まりました。
結果として、中国国内を旅行する旅行者数と観光収入額は共にコロナ禍前の2019年を上回る水準に。さらに連休中の出入国者数は1,181万人で、2019年と比べて85.1%まで回復しました。
では、国慶節期間中の「訪日客数の動向」はどうだったのでしょうか。本記事では、中国OTA各社が発表した予約に基づく人気目的地データや、中国最大級の口コミサイト&アプリ「大衆点評」公式より入手したレポートなども踏まえ、2023年国慶節の旅行動向を振り返ります。
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国内旅行者数は8億2,600万人、コロナ禍前を上回る
中国の文化観光部データセンターによると、中秋節・国慶節の連休中に中国国内を旅行した人の数は8億2,600万人でした。新型コロナウイルスの影響で行動制限がかかっていた2022年と比較すると71.3%の増加。2019年と比較しても4.1%の増加と、コロナ禍前を上回る結果となりました。
連休に伴う国内の観光収入は7,534億3,000万元に達し、2022年比では129.5%と大幅に増加。2019年との比較でも1.5%増加しており、観光収入としてもコロナ禍前の状況に回復しました。
さらに中国外務省報道官の会見によると、連休期間中の国鉄の利用者数は合計1億9,500万人。1日あたりの旅客数は2,000万人を超え、過去最高を記録したとのことです。
中国発のアウトバウンド(海外旅行)動向は?
中国発の海外旅行需要についても見てみましょう。
中国国家出入国管理局の報告書によると、連休中の出入国者数の合計は1,181万8,000人。1日の平均は147万7,000人でした。1日あたりの出入国者数は国家移民管理局の当初の予想である158万人には及びませんでしたが、前年同月比で2.9倍を記録。コロナ禍前の2019年と比較すると85.1%まで回復しています。連休期間内の出入国者数のうち、インバウンド(入国した人)は587万人、アウトバウンド(出国した人)は594万8,000人でした。
出入国検査をした輸送車両の数は49万5,000台にのぼり、前年同期比では1.4倍。10月2日は連休期間中で最大の167万人を超える出入国者数を記録しました。
まとめると、中国発のアウトバウンドは堅実に回復し、コロナ禍前の水準に近づいてはいるものの、100%の回復とまでは言えないという状況です。
国慶節の訪日需要動向はどうだったのか?
当初は「(連休中の)日本と中国を結ぶ日系航空会社の便は基本的に満席で、そのほとんどが中国人乗客」という報道もありました(中国共同社)。実際はどうだったのでしょうか。
では、国慶節期間中の訪日需要がわかるデータを見てみましょう。中国最大級の口コミサイト&アプリ「大衆点評」より入手した国慶節レポートによると、国慶節の連休期間中、日本エリアでのサイトの利用者数が激増したとのこと。飲食、ショッピング、観光、娯楽体験系のカテゴリの閲覧いずれも爆発的に増加したといいます。各カテゴリの閲覧数を8月と比較すると、娯楽体験系は40.6倍、ショッピングは118.3倍、観光は48.6倍、飲食は103.1倍と、大幅な増加が見られます。
利用のピーク期は、国慶節期間と重なる9月30日から10月6日で、さらにその中でも10月3日が最高値を記録しました。
都市別に見ると、東京の利用ピーク期は9月27日から10月8日で、UV(ユニーク訪問者)をみると9月27日から10月4日に激増している状態です。その中で最高値を記録したのは10月3日。9月初旬と比較すると67.71%の増加となりました。大阪の利用ピーク期は9月22日から10月8日で、UVで見ると9月26日から10月5日に激増している状態でした。大阪も東京と同じく10月3日に最高値に達しており、9月初旬と比較すると65.54%の増加が見られました。
ここまでのデータから言えることとして、国慶節期間中、他の期間と比較して明らかに中国人観光客が増えたのは確かです。ただし、あくまで日本国内の8月や9月初旬と比較したデータであり、他国と比較したデータも見てみるべきでしょう。
中国OTA各社が発表した「人気の国外旅行先」日本は?
中国の大手OTA各社は、実際の予約数に基づき人気の目的地を算出し、データを公表しています。その中で、日本が人気の旅行先としてランクインしたのは「同程旅行(LY.COM)」のみ。「携程(Ctrip)」と「驴妈妈旅游(Lvmama)・奇创旅游集团(Kchance)」の人気目的地に日本は入りませんでした。9月に中国人観光客に対するビザ無料化措置を発表したタイをはじめ、アジアの国が特に人気だったようです。
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・携程(Ctrip)
同社のアウトバンド旅行の受注数は2022年の同期比較で8倍以上に増加。香港やマカオなど、アジア諸国に人気が集中しています。また、5月1日の労働節(メーデー)に伴う連休時期と比較すると、スイスやスペイン、トルコ、ロシア、イギリス、フランスなど大陸を横断する長距離路線の旅行者数が増加しています。
・同程旅行(LY.COM)
中秋節・国慶節の連休中に最も人気だったアウトバウンド先は、香港、タイ、韓国、日本、シンガポール、マレーシア、アラブ首長国連邦、インドネシア、エジプトなど。ヨーロッパや、アフリカ、南米、オーストラリアなどの長距離路線も人気が急上昇しました。
・驴妈妈旅游(Lvmama)・奇创旅游集团(Kchance)
驴妈妈旅游(Lvmama)と奇创旅游集团(Kchance)は、連休期間中に同社のプラットフォームを利用した海外旅行者の数は、コロナ禍前の2019年と比べて30%台まで回復したと発表。人気の高かった目的地は、香港、マカオ、タイ、シンガポール、マレーシア、ニュージーランド、インドネシア、スペイン、フランス、モルディブなどでした。
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つまり、国慶節期間中は他の期間と比較して訪日客数が増えてはいたものの、他国(タイや香港、シンガポールなどのアジア各国)と比較すると、そこまで多くなかったと言えるのではないでしょうか。
ここに関連してくるのが、航空便の状況です。訪日需要が大きく高まったとしても、実は中国=日本間の航空便が、まだ回復途上なのです。
2023年夏ダイヤの中国=日本間の航空便数は、コロナ前の2019年同期比で約13%にとどまっています(※国土交通省の航空便データをもとに訪日ラボ算出)。これは4月時点のデータであり、今は多少増えてはいるものの、未だコロナ前の便数には届いていないと思われます。
中国=日本間の航空便は少なく、かつ航空運賃も高い水準のままであることから、「日本に来たくても来られない」という人が多かったのではないかと考えられます。今後は中国からの訪日需要に対し、航空各社がどう動くかが、中国インバウンドの回復率に大きく影響してきます。
処理水放出の影響は「限定的」か
2023年10月5日に東京電力は福島第一原子力発電所の処理水について、第2回目の海洋放出を同日から開始。これに対し中国外務省は「一方的な放出に断固として反対する」との声明を発表した他、中国メディアでも取り上げられていたものの、1回目ほどの反発は起きなかったようです。中国のSNS「Weibo」でも、もっぱら中東関連の話題がトレンド入りしており、処理水放出に関してはそこまで話題になっていなかったことがわかっています。
また、10月18日に日本政府観光局(JNTO)が発表した9月の訪日外客統計によると、中国からの訪日客は32万5,600人。8月の36万4,100人と比較すると約4万人の減少でした。処理水問題による悪影響ととれなくもありませんが、例年9月は7、8月に比べて減少傾向にあるため、処理水問題の影響はそこまで大きくなかったと考えられます。
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以上、現時点で明らかになっている国慶節の訪日動向をまとめました。10月以降、中国からの訪日客数がどのように推移したかは、11月に発表される「10月の訪日外国人数」のデータなどをもとに続報をお届けします。
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<参照>
国家移民管理局:中秋国庆假期日均147.7万人次出入境
国家移民管理局:国家移民管理局部署全国边检机关全力做好中秋国庆假期口岸通关保障工作
中国旅游研究院(文化和旅游部数据中心):2023年中秋节、国庆节假期国内旅游出游8.26亿人次,国内旅游收入7534.3亿元
中华人民共和国外交部:2023年10月11日外交部发言人汪文斌主持例行记者会
中华人民共和国外交部:外交部发言人就日本启动第二批福岛核污染水排海答记者问
新华网上海:中秋国庆旅游总结:音乐节成消费新亮点
深圳新闻网:同程旅行中秋国庆数据出炉:“反向旅行”热度高,小众目的地受关注
手机搜狐网:奇创旅游集团联合驴妈妈发布中秋国庆出游报告:夜游等新业态火爆、三四五线市场人气高、定制游受青睐
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2023年9月推計値)
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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