観光庁は、コロナ禍明け初となる「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」を行いました。
旅行中に困ったこととして特に多かった項目は、「ごみ箱の少なさ」(30.1%)、「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」(22.5%)となり、この2項目の回答は、前回の令和元年度調査からそれぞれ5%ポイント以上増加しました。
本記事では、今回公表された調査結果の中から、注目すべきポイントを抜粋してまとめます。
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観光庁が「訪日外国人が旅行中に困ったこと」についてアンケートを実施
観光庁は、訪日外国人旅行者が快適に観光できる環境整備を進める上での現状と課題を明らかにするため、「訪日外国人が旅行中に困ったこと」を継続的に調査しています。また今回から新たに、「持続可能な観光」の関心についても調査を行いました。
本調査は、訪日外国人旅行者を対象に、5つの空港(成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、新千歳空港、福岡空港)で対面式アンケートを実施したもので、回答数は計4,012件でした。
回答者の6割以上は20代と30代で、5大市場(中国、韓国、台湾、香港、米国)で各400件以上、タイ・マレーシア・インドネシアで各100件以上、豪州で80件以上、欧州で320件程度の回答が集まりました。また約67%が2回以上訪日経験があるリピーターであり、滞在日数は4〜5日が最も多い結果となりました。
1人あたりの訪問都市数は約2.81都市となっています。
「ごみ箱の少なさ」「スタッフとのコミュニケーション」が困ったこと上位に
旅行中に困ったこととしては、「ごみ箱の少なさ」が30.1%で最も多く、次いで「施設スタッフとのコミュニケーション」が22.5%、「多言語表示の少なさ」が13.4%、「公共交通の利用」が12.8%でした。これらの困った割合は、令和元年度と比較して増加しています。
一方、 「無料公衆無線LAN(フリーWi-Fi)環境」や「クレジット/デビットカードの利用」について割合は同程度かやや減少しています。
また全体として、訪日旅行中に困ったことがあった人の割合は、都市部と地方部で大きな差は見られませんでした。
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困った施設は飲食店・小売店・百貨店など、地方部ではバスで困る人が多い
困った施設として挙げられたのは、いずれの項目でも、都市部・地方部を問わず「飲食店」「その他小売店(ドラッグストア、コンビニ、土産物店、量販店等)」「百貨店・ショッピングセンター」「鉄道駅構内」の割合が高くなりました。
公共交通については、都市部では「新幹線以外の鉄道」、地方部では「バス」で困った割合が突出して高くなっています。次にスタッフとのコミュニケーションで困った施設について、前回調査した令和元年度とも比較してみます。団体ツアー参加者において、都市部では「その他小売店」が大きく増加しています。個人旅行では、都市部・地方部どちらも上位に入っていた施設が引き続き増加する傾向にありました。
地方部は都市部より環境整備に遅れ
また都市部・地方部で比較してみると、都市部・地方部両方を訪問した人について、いずれの項目も便利に感じた割合は都市部が地方部を大きく上回っており、地方部では環境の整備が遅れていることが伺えます。
一方で地方部のみ訪問した旅行者の場合、いずれの項目も便利と感じた割合は都市部と変わりません。地方部のみ訪問者はリピーター客が多く訪日旅行に慣れているため、それほど不便さを感じていない可能性があります。
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また便利と感じた具体的な理由としては、「フリーWi-Fi」および「クレジット/デビットカード」では「利用可能な場所が多かった」が、「多言語表示」では「対応されている場所が全般的に多かった」が、突出して高くなっています。
また「コミュニケーション」では、「スタッフが英語(あるいは自分の言語)を話せた」「コミュニケーション機器を利用できた」の回答が、都市部・地方部ともに50%を超えています。
ごみ捨てで困ったことは「ごみ箱が近くにない」
ごみ捨てについて具体的に困った点は、「ごみ箱が近くにない」が91%と最も多くなりました。また困った場所としては、観光スポットやその道中が最も多くなりました。
鉄道会社ではセキュリティ対策としてごみ箱を撤去するところが多く、東京メトロでも2022年にごみ箱が全駅で撤去されており、そのような取り組みが影響している可能性もあります。
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コミュニケーションに困った際はICTツールを利用
コミュニケーションに困った場所としては、飲食店が61%と最も多くなりました。またその対応策としては、76%がICTツール(自動翻訳システムや翻訳アプリ)を利用しており、活用に当たっては、「十分スムーズであった」と答えた割合が64%でした。
しかし一方で、「スタッフが不慣れで対応に時間を要した」や「スムーズでない対応だった」と答えた割合も34%ありました。
多言語対応はインバウンド施策においてマストで対応しておきたい事項です。
具体的に対応すべき点については、関連記事をご確認ください。
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約7割がサステナブルツーリズムを重視
今回新たに「持続可能な観光」への関心についても調査を行ったところ、約7割の旅行者が、日本を旅行先に選ぶ際にサステナブルツーリズムを重視していました。特に台湾やタイ、インドネシアの旅行者が重視する傾向にあります。
日本がサステナブルツーリズムの旅行先として相応しい理由としては、「リサイクルや廃プラ削減などが適切に行われている」「自然環境の配慮など生態系の保全が適切に行われている」「歴史的な町並みや文化の継承ができている」などが挙げられました。
またサステナブルツーリズムに関する認証の認知度については、「Green Destinations」や「Japan Sustainable Tourism Standard for Destinations」などが高く、東南アジアでは他の地域と比べ認証の認知度が高い結果となりました。
このことから、東アジアや東南アジアからの旅行者はサステナブルツーリズムについて関心が高いことがわかります。
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多言語に対応したコミュニケーションが課題
訪日外国人が困っていることは、「ごみ箱の少なさ」が最も多い結果となりました。観光客が急増し観光地側の受け入れ可能なレベルを超えてしまう「オーバーツーリズム」でも、ゴミの不法投棄などが問題になっており、こうした事態を受けて改善に動いている地域もあります。
一方で、同様に困っている旅行者が多い「スタッフとのコミュニケーション」や「多言語表示の少なさ」は、事業者単体でも対応していくことが可能です。インバウンド需要が好調に伸びているこのタイミングで、改めて自分たちがきちんと対応できているかを確認し、改善していくことが重要になるでしょう。
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<参照>
観光庁:令和5年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果
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