観光DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術により旅行者の利便性を上げ、観光地の収益性を上げる取り組みのことです。
観光庁は観光DXを推進するため、2021年からモデル実証事業を実施しています。公募の対象となるのは、全国の観光地域づくり法人(DMO)です。今回は「全国の観光地・観光産業における観光DX推進に関するマーケティング強化モデル実証事業」において、15団体が採択されました。
本記事では、採択された団体をいくつか取り上げて紹介するとともに、あらためて観光DXの重要性を考えます。
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- 「観光DX推進に関するマーケティング強化モデル実証事業」15団体が採択
- 1. 白馬村観光DXマーケティング推進協議会(白馬村観光局):CRMを活用した旅行者の利便性向上
- 2. 鳥取中部観光DX(鳥取中部観光推進機構):通過型の観光地からの脱却と周遊促進
- 3. おたる観光DX推進コンソーシアム(小樽観光協会):システムの導入とデジタル化で再来訪を促進
- 4. 南丹市美山観光まちづくり協会:観光データ分析AIナビを活用して誘客促進
- 5. 関門海峡港湾観光連絡協議会(海峡都市関門DMO):コンテンツとデータ統合による循環型観光
- インバウンドにおける観光DXの現状
- 観光DXの推進が地域観光の未来を左右する分かれ道に
目次
「観光DX推進に関するマーケティング強化モデル実証事業」15団体が採択
観光庁の実証事業は、旅行者の体験価値を抜本的に向上させる観光地の創出、マーケティング強化による「稼げる観光地」の創出などを目的としています。具体的には、
- 旅行者の利便性が低い
- 周遊促進が不足
- 再来訪促進が不足
- 誘客促進が不足
- OTA掲載されているコンテンツの不足
などをテーマに掲げ、これらの課題に応じた全国の観光地のDX事業を推進します。
以下では、今回採択された15団体から例として5団体を抜粋し、どのような団体が選ばれたのかを簡潔に解説します。
1. 白馬村観光DXマーケティング推進協議会(白馬村観光局):CRMを活用した旅行者の利便性向上
スキーリゾートとして国内外から人気の白馬村。先日「先駆的DMO」にも選出された白馬村観光局では、地域サイトのシームレス化を実施し、さらにリフト券の販売顧客、宿泊予約、レンタル、夏季アクティビティなどのデータを統合できるシステムを導入します。
旅行者の情報を集めて分析し、顧客関係管理(CRM)に取り組むことで旅行者の利便性向上を図ります。
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2. 鳥取中部観光DX(鳥取中部観光推進機構):通過型の観光地からの脱却と周遊促進
鳥取中部観光推進機構では、シームレスな地域サイトを構築し、チケットのデジタル化による地域内消費の促進、既存サイトの旅診断機能追加による旅行者の試行データの収集を実施予定です。
これらのデータを統合し、CRMを構築することで鳥取中部観光の周遊促進を図ります。
3. おたる観光DX推進コンソーシアム(小樽観光協会):システムの導入とデジタル化で再来訪を促進
北海道の小樽観光協会は「また来たくなる街・おたる」を掲げ、CRM導入で顧客データを可視化し、旅行者情報に基づいたマーケティング基盤を確立させます。
また、旅マエ、旅ナカで利用できる、予約や決済ができるシステムの導入と、チケットのデジタル化で旅行者の利便性を向上。さらにファンサイトを構築して、リピーター増加を図ります。
4. 南丹市美山観光まちづくり協会:観光データ分析AIナビを活用して誘客促進
京都府の南丹市美山観光まちづくり協会では、地域のホテル管理システム(PMS)導入を推進するとともに、宿泊データを収集する仕組みを取り入れ、「観光データ分析AIナビ」をカスタマイズしたデータ管理システム(DMP)を構築します。
さらにCRMをDMPに統合し、南丹市美山観光への誘客促進を図ります。
5. 関門海峡港湾観光連絡協議会(海峡都市関門DMO):コンテンツとデータ統合による循環型観光
北九州市と下関市をつなぐ関門海峡エリアの観光課題に取り組む海峡都市関門DMOは、行政区分が異なるため散乱するコンテンツとデータを統合し、地域一体の循環型観光を目指します。
具体的には、散乱する観光情報サイトの統廃合、着地型コンテンツの在庫管理と窓口の一元管理によるOTA販路拡大、マーケティングやデータの活用体制を構築します。
インバウンドにおける観光DXの現状
需要が拡大するインバウンド旅行者を誘致するには、デジタル技術を活用した情報発信やプロモーション、戦略的なマーケティングが求められます。しかし、実際にデジタル化などの観光DX対応ができているのは一部の地域に限られているのが現状です。
観光庁が公開している資料をもとに、インバウンド地方誘客を支えるDMOの観光DXの重要性と課題を解説します。
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「稼げる観光」の実現に向けて重要視される観光DX
観光DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術により、観光業の業務効率化やデータに基づく誘客を行い、観光地の収益性を上げる取り組みのことです。具体的には、顧客管理システム(CRM)や予約管理システム(PMS)の導入、ウェブサイトやOTAによる情報発信、CRMを活用した再来訪の促進などが挙げられます。旅行者の利便性を上げることにも寄与します。
観光庁は「稼げる観光」を目指し、需要が拡大するインバウンド旅行者をターゲットに「高付加価値旅行」などの施策を進めています。一方で、現状のインバウンド市場では、オーバーツーリズムや人手不足の課題も顕在化しています。観光産業のさらなる盛り上げのためにも、インバウンド誘致における課題解消のためにも、観光DXの推進が重要視されているといえます。
また、インバウンド旅行者に地方観光の魅力を伝え、実際に来訪してもらうことや、旅行先の検討から現地での体験に至るまでの一気通貫を便利にすることも重要です。デジタル技術によって、分散しがちな観光情報を集約したり、予約や支払いをオンラインで完結できるようにしたり、旅行者にパーソナライズした情報を届けられるようにするなど、満足度を向上させるためにできることはさまざまです。
デジタル化による効率化は、旅行者の利便性を高めるのみならず、人手不足の解消や労働環境の改善にも大きく貢献するでしょう。
登録DMOの約6割、「マーケティング・DX」について課題
観光庁が「令和5年登録DMO現状調査」でDMOの課題を聞いたところ、「マーケティング・DX」と「インバウンド関連」が上位に挙がり、約6割の登録DMOが課題と認識していることがわかりました。観光業の人材不足や賃金向上、地方観光への誘客のために、DXの導入は欠かせません。 しかし、情報収集から予約や決済までを一元で行える地域公式のサイト(観光庁は「シームレスな地域サイト」と呼んでいる)を設置しているDMOは、全体の42.9%にとどまるといいます。さらに、データを活用した戦略策定は17.3%、CRM(顧客関係管理)の実施は18.3%、DMP(データマネジメントプラットフォーム)の導入はわずか11.7%と、観光DXを推進できているDMOは非常に限定的です。必要性は感じながらも、なかなかデジタル化を推進できていない現状があるようです。
こうした課題に対し、観光庁は「DXのさらなる普及」として以下のような導入目標を掲げています。
- 地域全体を包括する情報発信、予約、決算機能をシームレスに提供するサイトの設置:全登録DMO
- デジタル化やDXを推進するための要素が盛り込まれた、データに基づいた経営戦略の策定:全登録DMO
- CRMやDMPなどを活用している登録DMOの数:90団体
観光庁は2027年度までに上記の導入目標を達成すべく、観光DXをさらに推進していく方針です。
観光DXの推進が地域観光の未来を左右する分かれ道に
地域の「稼げる観光」の実現には、観光業界のDXが不可欠です。とくに、需要が拡大するインバウンド旅行者を誘致するには、デジタル技術を活用した情報発信やプロモーション、戦略的なマーケティングが求められます。観光DXは単なる効率化の手段ではなく、旅行者の利便性や体験価値を高め、地域に持続可能な観光づくりの基盤にもなります。
人口減少が続く日本において、観光産業は地域活性化の切り札です。さまざまな地域にとって、DXは地域の観光産業の将来を左右する、今後取り組むべき課題となるでしょう。
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<参照>
観光庁:「全国の観光地・観光産業における観光DX推進に関するマーケティング強化モデル実証事業」の公募を開始します
観光庁:全国の観光地・観光産業における観光DX推進に関するマーケティング強化モデル実証事業 採択一覧
観光庁:観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
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