親日国として知られるタイ。日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計によれば、2024年1〜9月の訪日タイ人数は75万2,000人で、2023年の63万1,070人から19.2%伸長しており、今後の拡大も期待されています。
そんなタイ人観光客は、4月に増加する傾向があることをご存知でしょうか。その要因として、4月にタイの伝統的な祝日「ソンクラーン」があることがあげられます。
本記事では、「ソンクラーン」の概要を説明するとともに、訪日タイ人の特徴や訪日タイ人観光客に向けたインバウンド対策もあわせて解説します。
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訪日タイ人が増加するソンクラーンとは
タイの伝統的なお正月「ソンクラーン」は、毎年4月13日から15日に行われる祝日で、タイ全土が活気づく一大イベントです。ソンクラーンは、サンスクリット語で「移る」を意味し、太陽の軌道が新たな周期に入ることを祝う行事として始まりました。
伝統的には、仏像や年長者に水をかけて敬意を表す風習があり、同時に猛暑を和らげる効果も兼ねています。近年では街中で通行人同士が水を掛け合う「水かけ祭り」として進化し、多くの観光客がタイを訪れる一大観光イベントへと発展しました。
2025年のソンクラーンはいつ?
2025年のソンクラーン休暇は4月13日(日)~16日(水)です。※16日は13日の振替休日
関連記事:タイ政府、2025年の祝日を追加【2025年の祝休日日程は?】
タイの人々はソンクラーンなどの長期休暇を利用して国内外を旅行することが一般的です。
なかでも、日本は人気旅行先の一つとなっており、この期間中に訪日するタイ人観光客が増加する傾向があります。タイの祝日であるソンクラーンに合わせたインバウンド対策を実施することで、増加するタイ人観光客を取り込むことが期待されます。
訪日タイ人の特徴 リピーターが約7割
訪日タイ人観光客は、リピーターの割合が非常に高いことに加え、一人当たりの旅行消費額が増加傾向にあるなど、その動向には興味深いポイントが多く見られます。ここでは、訪日タイ人の特徴などについて解説していきます。
タイ人の訪日客数 4月に増加傾向
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計によると、タイからの訪日観光客数は、コロナ前の2019年に約132万人を記録し、ピークを迎えました。その後、コロナ禍の影響で一時的に落ち込んだものの、2023年には約99万5,500人まで回復、コロナ前の7割までの水準に達しています。
月別のデータを見てみると、4月は特にタイからの訪日客が増加する傾向にあり、この背景には「ソンクラーン」があると考えられます。そのほか、10月から12月の晩秋から初冬にかけての時期も人気が高く、最も減少するのは6月から9月となっています。2023年もおおむね同じような傾向となりました。
タイ人の消費額
訪日タイ人観光客の旅行消費額は、近年増加しています。2019年には全体で1,732億円だった消費額が、2023年には1,902億円まで拡大しました。1人当たりの旅行消費額も増加しており、2019年の約13万円から2023年には約19万円へと大幅に伸びています。
この背景には、円安による「タイ・バーツ」の相対的な価値の上昇にあると考えられます。日本国内の宿泊費やショッピングに対する「お得感」が高まり、タイ人観光客の消費意欲が高まっているようです。
リピーターが多い
訪日タイ人観光客は、リピーターの割合が高いことも特徴です。リピーターが多い背景には、以下の3点が要因としてあげられます。
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タイにはない観光資源「雪」への人気
タイでは雪を見る機会がほとんどなく、日本の冬景色や雪を体験できる観光地は非常に人気があります。
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タイ人の親日度の高さ
日本の食文化、アニメ、ファッションなどはタイで広く浸透しており、タイ人にとって日本は親しみやすい国とされています。
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ビザ要件緩和やLCCの普及による旅行ハードルの低下
ビザ要件の緩和、また、LCC(格安航空会社)の普及によって航空券の価格が手頃になり、日本旅行がより身近なものとなっています。
こうした要因が相まって、タイ人観光客は一度訪れた日本に再び足を運び、新たな観光地や季節の魅力を探求していると考えられます。
親日国タイ
タイは世界でも屈指の親日国です。外務省が2024年3月に発表した「令和5年度海外対日世論調査」によると、タイと日本の関係について、タイ人回答者の98%が「とても有効関係にある」「どちらかというと友好関係にある」と回答しています。
また、訪日意欲も高く、日本政府観光局(JNTO)の調査では、2021年2月〜9月のGoogleにおけるタイ語の月間検索ボリュームで「ที่ยวญี่ปุ่น(日本旅行)」が、7地域(日本・台湾・韓国・中国・米国・ヨーロッパ)の中で1位を記録しており、コロナの規制緩和後においても訪日意欲の高さが示された結果といえます。
この背景には、日本の安全性や観光地の多様性、そして快適な旅行環境があげられます。さらに、1887年の国交樹立以来続く両国の良好な関係も、タイ人の日本に対する好感度を支えています。
親日度の高さは、タイ人観光客を取り込むための大きな強みといえるでしょう。
訪日タイ人観光客のインバウンド対策
訪日タイ人観光客を効果的に取り込むには、彼らの特徴や行動傾向に合わせた対策が重要です。以下では、タイ人観光客をターゲットにした具体的な施策をご紹介します。
SNSや掲示板サイト「Pantip」を活用したプロモーション
タイではSNSや掲示板サイトが旅行情報の主要な情報源となっています。特に、FacebookやTikTokなどのSNSと、タイ最大の掲示板サイト「Pantip」は効果的なプロモーションツールです。
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インフルエンサーとのタイアップ
タイ国内で影響力を持つインフルエンサーを起用し、観光地や日本の魅力を発信します。特に映える写真や短い動画を通じたプロモーションは、SNS上での拡散効果が期待できます。
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Pantipでの公式レビュー記事の掲載
日本の企業がPantipを活用してプロモーションを行いたい場合には、Pantip公式ライターにBR(ブランドレビュー)を依頼することが効果的です。
なお、SNSやPantipを活用したプロモーション施策については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:タイ向けの訪日プロモーション施策のキホン&2025年の情報発信タイミングまで徹底解説!
「映える」観光プランの提供
タイ人観光客はSNSを活用した情報共有を積極的に行うため、「映える」観光プランを提供することも効果的です。
- 桜や紅葉の名所を巡るツアー
- 着物を着て街歩きができるフォトジェニックなプラン
- 地元の特産品を使った料理作り体験
これらは、タイ人観光客が訪日中の体験をSNSで発信しやすくなるだけでなく、口コミを通じて自然に集客効果を生む施策といえます。
文化体験型プログラムの充実
タイ人観光客は日本文化への強い興味関心を示すことから、体験型プログラムを充実させることも検討すべき施策の一つです。
- 茶道や書道のワークショップ
- 和菓子作りやそば打ち体験
- 地元の祭りやイベントへの参加型プログラム
これらの文化体験は日本への親近感をさらに深めるきっかけとなり、リピーターの獲得が期待できます。
季節に合わせたプロモーション
タイ人観光客の訪日ピークである4月のソンクラーンや、11月から12月の冬シーズンに向けたタイムリーなプロモーションも重要です。
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4月のソンクラーン向け施策
ソンクラーンに合わせ、1月から3月にかけて春の日本の魅力を発信します。桜や季節限定の体験プランをアピールするのがポイントです。
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11月~12月の冬シーズン向け施策
雪景色やイルミネーションを魅力として訴求し、8月~9月の早い段階からプロモーションを開始することで、冬の旅行需要を喚起します。
キャッシュレス対応の充実
タイでは電子決済サービスが普及しており、タイ人観光客にとってキャッシュレス決済の利便性は非常に重要です。-
PayPay支払いへの対応
タイの電子決済アプリ「TrueMoney」は、Alipay+を通じてPayPayに対応しています。これにより、PayPayを利用可能な店舗であれば、タイ人観光客は「TrueMoney」を使ってスムーズに支払いができるようになります。タイ人観光客の決済における利便性を向上させるため、PayPay対応の店舗拡大を進めましょう。
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決済対応店舗の明確化
キャッシュレス対応店舗であることをSNSやウェブサイトで周知し、店頭にも分かりやすく表示することが利便性を向上させるうえで有効といえます。
ソンクラーンはタイ人を誘客するチャンス
ソンクラーン期間中は、長期休暇を利用して旅行する傾向のあるタイ人観光客を取り込む絶好の機会です。この期間に増加するタイ人観光客を取り込む上で、日本ならではの体験プランや「Pantip」などタイでの使用率が高いSNSを用いて情報発信を行うことが重要といえます。
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<参照>
外務省:
日本政府観光局(JNTO)バンコク事務所:オンラインデータからみるタイ人の訪日旅行マインド
タイ国政府観光庁:水かけ祭りとしても知られるタイ正月のお祭り「ソンクラーン」
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