トランプ次期米大統領は19日、自身のSNSにて「TikTokの禁止につながる新法の施行期限を延長する」と投稿しました。これによりTikTokは18日夜に停止した米国でのサービスを再開するなど、米国のTikTokをめぐる状況は刻々と変化しています。
また、TikTokが一時的に禁止されたことで、米国人ユーザーが別の中国SNSへ流入するという注目すべき現象も起こっています。
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揺れる米国TikTokの動きまとめ
米国におけるTikTokにおいて、この数日で状況が大きく変化しています。ここでは、米国におけるTikTokの状況をまとめていきます。1. 新法でTikTok禁止に
1月19日、米国でTikTokの禁止につながる新法が施行されました。この新法は、TikTokを運営する中国のバイトダンスに対して、19日までにTikTokの米国事業を売却しなければ同アプリの米国内でのサービスを禁止するというものでした。同社は19日の新法の施行を前に、18日夜より米国内でのサービスを停止しました。
2. トランプ次期米大統領、新法の措置期限延長について発表
トランプ次期米大統領は19日、自身のSNSで「20日(※現地時間)に大統領令を発表し、新法の施行期限を延期する」と投稿。併せて「米国人には就任式やその他イベントを見る権利がある」と記していることから、20日に開催される大統領就任式の様子をTikTokで配信する狙いがあると見られています。また各社報道によると、最終決定ではないものの、新法が定める措置期限が最大で90日間延長されると見込まれています。
※21日追記:トランプ米大統領は、新法の適用を75日猶予する大統領令に署名しました。
3. TikTokサービス再開
1月19日、当初から一転してTikTokの米国内におけるサービスが再開されました。同社はトランプ氏の声明を受けて、サービス再開に踏み切ったものと見られています。また複数のメディアによるとTikTokは19日、アプリ上で「トランプ氏の尽力によって米国内でのサービスが復旧した」と感謝の意を表明しました。
またトランプ氏は19日の投稿にて、米国が合弁事業にてTikTokの米国における事業の所有権の50%を保有することを望んでいると記しており、今後もTikTokのサービス存続に意欲を見せています。
米App Store1位に急上昇した中国SNS「RED(小紅書)」
TikTokのサービス停止を前に、多数の米国人ユーザーが中国のSNS「RED(小紅書)」に殺到するという現象が発生しました。REDとは
REDとは中国発のライフスタイル共有アプリで、化粧品やファッション、旅行、食べ物など多岐にわたる情報を検索・シェアできます。中国版Instagramとも呼ばれており、月間アクティブユーザーは3.1億人以上で20〜30代の女性がユーザーの多くを占め、今や中国人をターゲットとしたインバウンド対策には欠かせないSNSとなっています。
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米国でDL数が急上昇、その理由は?
TikTokのサービス停止を前に、今後を不安視した米国人ユーザーがREDに殺到した結果、App Storeの米国地域におけるダウンロード数でREDが1位を獲得しました。実際にREDの投稿を見てみると、米国人と中国人が積極的に交流する様子も見受けられます。またREDに多くの米国人ユーザーが流入した結果、わずか2日間で70万人以上の新規ユーザーが増加したという報道もあるなど、REDの知名度が一気に上昇する結果となりました。
米Forbesによると、米国人ユーザーの移行先としてREDが選ばれている理由には、米政府のTikTok禁止措置に対する反発などが考えられるといいます。
RED側も急遽対応へ:検閲担当者の募集や翻訳機能の実装など
短期間で急増した外国人ユーザーを前に、RED側も対応に追われているようです。外国人ユーザーが急速に増えるなかで、RED側は短期間にもかかわらず投稿やコメント文の翻訳機能をリリースしたり、英語対応可能な業務担当者を募集したりするなど、対応を急いでいる様子がうかがえます。
また、REDへの投稿数が急激に増加したことから、新規の投稿が制限される、投稿の審査に時間がかかるなどの問題も発生しています。
TikTok再開、今後はどうなる?
新法によるTikTok禁止から一転して、同社は米国内でのサービスを再開しました。そこで気になるのが、REDに移行した米国人ユーザーの今後の動向です。TikTokがサービス再開したとはいえ、米国人ユーザーはすぐにREDを去るわけではなさそうです。米国人ユーザーの移行後、ユーザーの多くはREDでの投稿や交流を楽しんでおり、新たなトレンドの一つとしてしばらくは利用が続くと考えても良いかもしれません。
また、新法適用までの猶予は75日となっているため、TikTokの今後が必ずしも安定しているというわけではありません。TikTokが引き続き使えるかどうかはトランプ氏の方針によるため、今後の先行きは不透明です。
今後のインバウンド対策への影響は?
さまざまな動きがあったTikTokやREDについて、今後のインバウンド対策に影響はあるのでしょうか。今後、米国人向けプロモーション施策としてREDが使える可能性はある?
多数の米国人ユーザーがREDに移行している状況で、日本のインバウンド事業者は米国人に向けてREDをプロモーション施策の一つとして利用できるのでしょうか。REDが今後の米国人向けインバウンド対策に有用な施策となるのか、現時点では不明です。一度REDに移ったユーザーの中である程度の人数は残るかもしれませんが、長期的なユーザーとして定着するかどうか、また訪日旅行の情報を調べるツールとして定着するかどうかはわかりません。
その理由としては、REDが中国アプリであるからこその課題が存在するためです。
・検閲(グレートファイアウォール)
中国では国家による検閲(グレートファイアウォール)が行われており、米国人ユーザーの多くはREDで初めて検閲を体験することになります。
CNNの報道によると、REDにおいて米国人ユーザーの多くは満足感を得ており大きなトラブルなどもないものの、検閲ルールに一部不満を抱いているユーザーもいるとのことです。
また中国のプラットフォームは中国当局が定めるルールに基づいて検閲を執行する必要があるとされており、REDにおいても、外国人ユーザーの快適性の担保と規則への準拠というバランスの取れた運営が課題となっているといいます。
・法的な課題
また独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトによると、昨年バイデン米大統領が署名した「敵対する外国勢力が管理するアプリケーションから米国民を保護する法律(PAFACA)」(いわゆる「TikTok禁止法」)について、REDも中国製アプリであることから、使用禁止となる可能性があると紹介されています。トランプ氏は新法の措置期限延長を表明したものの、引き続き注目する必要がありそうです。
まとめると、今後しばらくは引き続き中国人向けのプロモーション施策としてREDを使用しつつ、情報収集を続けるのがおすすめです。
まとめ
米国のTikTokを取り巻く状況は、この数日間で様変わりしました。TikTokは新法の施行によってサービス停止したものの、トランプ氏の声明を受けてサービスを再開。またその裏では、中国のSNSであるREDに米国人ユーザーが殺到する現象も起きていました。
日本のインバウンド事業者は今、冷静に最新情報を見極めつつ、各国への適切なプロモーション施策を実行することが求められています。
特に大統領就任式が行われる20日(※日本時間21日)の動向を注視していく必要があるでしょう。
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