2024年、日本のインバウンド需要は急速に成長し、訪日外国人数は過去最高を更新しました。
中国インバウンド市場も、コロナ禍からの回復が遅れたものの、2024年にはコロナ前2019年の7割程度まで回復。2025年4月には国別で1位となり、再び日本のインバウンド市場で存在感を放っています。
しかし、かつての“爆買い”ブームから訪日中国人の消費傾向は変わっており、集客のためには最新情報を把握しておくことが不可欠です。
本記事では、中国インバウンドの概況や最新トレンド、効果的な集客方法ついて解説します。
インバウンド対策サービスを探している方必見!無料で資料DLできる「訪日コム」を見てみる
日本のインバウンド市場、2024年は過去最高に
中国インバウンド市場について深掘りする前に、まずは日本のインバウンド市場全体の概況を見ていきましょう。
日本政府観光局(JNTO)が発表している訪日外客統計によると、2019年の訪日外客数は3,188万人に達し、統計を取り始めた1964年以降で最多を記録しました。
新型コロナウイルスが世界的に流行した2020年〜2021年は急減したものの、2022年10月に水際対策が緩和された後から右肩上がりに回復し、2023年には2,507万人と、2019年の8割程度にまで戻りました。
そして2024年には、2019年を約500万人上回り、過去最高となる3,687万人を記録しました。
2025年に入ると成長の勢いはさらに増し、3月までの累計は過去最速で1,000万人を突破しました。

また、訪日外国人の旅行消費額も回復を遂げています。観光庁の「インバウンド消費動向調査」によると、2024年の訪日旅行消費額は8兆1,257億円に達しました。
2019年比で68.8%増、2023年比で53.1%増といずれも大幅に増加し、過去最高を記録しています。
関連記事:

中国インバウンドも順調に回復
コロナ禍前の2019年、訪日中国人数は全ての国・地域のなかで最多の959万人に達し、日本のインバウンド全体をけん引する市場となりました。
しかし新型コロナウイルス感染拡大により、その数は激減。2023年の時点で、2019年比74.7%減の243万人と、他の国・地域と比較して回復に遅れが目立っていました。背景には、中国の「ゼロコロナ政策」や日本の水際対策、処理水問題や、航空便回復の遅れがあると考えられます。
その後、2024年には698万人に達し、2019年の7割程度にまで回復しました。そして直近、2025年4月には、2019年を4万人ほど上回る77万人を記録し、国・地域別で1位となりました。
航空便についても、2025年夏ダイヤの中国路線は、2019年冬ダイヤ比91.0%となっており、コロナ前の水準には届いていませんが、順調に回復しています。
このように訪日中国人数はコロナ禍から順調に回復を見せており、今後さらに増えることが予想できます。
関連記事:

続いて、旅行消費額を見ていきましょう。
訪日中国人による旅行消費額は、2019年に1兆7,704億円を記録。全体の36.8%と、圧倒的な割合を占めていました。
その後、コロナ禍の影響で消費額は急落したものの、2023年には7,604億円まで回復。2019年比で4割程度にとどまるものの、国・地域別では台湾(7,835億円)に次いで2位となりました。
そして2024年には1兆7,265億円に達し、2019年とほぼ同水準に。訪日人数に比べ消費額の回復は早く、国・地域別で年間1位に返り咲きました。
2025年1〜3月の訪日消費額においても、中国は全体の24.0%を占め、1位となっています。
関連記事:1〜3月の訪日消費額、2兆2,720億円 前年比1.3倍:インバウンド消費動向調査

中国人の最新トレンドを紹介
日本の製品を大量に買い求める、いわゆる “爆買い”に象徴されるように、訪日中国人の消費傾向は「モノ消費」が中心でした。現在も訪日消費において、買い物代は高い割合を占めているものの、近年では新たなトレンドが形成されています。
ここからは、中国の最新トレンドについて紹介します。
消費はコスパから価値重視へ
2015年頃をピークとした“爆買い”ブーム以降、訪日中国人観光客のニーズはだんだんと変化してきました。
しかし、モノ消費が終わったわけではなく、訪日中国人の購買意欲は依然として高い水準にあります。ただ、これまでお菓子類や日用品、家電に注目が集まっていたところが、日本ならではの商品が人気を集めたり、富裕層などからはハイブランドが好まれていたりするようです。
また、こうした流れに伴い、注目すべき消費トレンドのひとつが「質価比(しつかひ)」です。
これまで中国では「性価比」、いわゆるコスパが重視され、性能と価格のバランスを基準に「お得感」が評価されてきました。しかし最近では、「質価比」と呼ばれる新たな価値観が注目されるようになりました。
これは、価格以上の満足感や品質を重視する考え方で、単なる耐久性だけでなく、デザイン性やサービス品質、さらには製品の価値そのものを含む広い概念です。
こうした変化は、値段の安さよりも商品の価値の高さを求める、新しい消費者意識を反映しており、今後中国インバウンド市場において重要な要素となるでしょう。
関連記事:
旅行スタイルも多様化 「スローチャージ型旅行」「逆向旅行」に注目
Ctripのレポートによると、2024年の中国の国慶節では、旅行先やアクティビティの選択において、4つのポイントが重要とされていました。
- のんびり過ごせるかどうか
- 現地での体験を楽しめるかどうか
- リラックス時間を確保できるか
- 心を豊かにする旅かどうか
これも買い物と同様、そこでどんな体験ができるのか、どんな時間が過ごせるかに注目して旅先を選びたいという、旅行者の価値観の変化がうかがえます。
また旅行スタイルについても、従来の「短期間で多くの観光地を巡る旅」から、心身の休息とリフレッシュを重視する「スローチャージ型」へと移行しているようです。
具体的には、宿泊施設でゆったり過ごす「ホテルステイ」、地方の魅力を味わう「ミニ旅行」、リラックスを目的とした「癒やしの旅」など、観光だけでなく心の満足、充足感を重視した旅行が人気を集めています。
関連記事:中国の最新旅行トレンドを解説!訪日旅行における今後の課題や対策とは?
「逆向旅行」も、新たな旅行スタイルとして注目を集めています。
これは、混雑を避けて穴場の観光地を訪れる旅行スタイルで、訪日客の間では、高松や伊豆、東北エリアがSNS上で人気を集めています。人気観光地と同じような絶景を、よりゆったりと余裕を持って楽しめる場所が人気のようです。
こうした旅行スタイルの変化は、中国人観光客のニーズが多様化していることを示しており、集客のチャンスが日本各地に広がっていると言えるでしょう。
関連記事:中国人の間で流行中の「逆向旅行(反向旅游)」とは?混雑避ける”穴場”が人気
中国インバウンドを取り込むため施策を紹介
中国人観光客を効果的に集客するためには、口コミサイトやSNSの活用が欠かせません。
しかし中国にはインターネット検閲システムがあり、Googleをはじめとする、世界中で使われている多くのサービスが利用不可となっています。
そのため、中国国内で使われる代替サービスを理解し、それらを活用して適切にプロモーションを行うことが重要となります。
中国人の2人に1人が使う「大衆点評」で集客
「大衆点評」は、2003年にスタートした中国最大級の口コミ・ライフスタイルサイトで、“中国版食べログ”と呼ばれることもあります。
飲食店やレジャースポットなどの情報が豊富に掲載されており、訪日中国人の2人に1人が利用していると言われています。そのため、店舗情報をしっかりと整備し、口コミを集めることで認知度向上や売上アップが期待できます。
関連記事:訪日中国人の2人に1人が使う「大衆点評」プロモーション活用のポイントは
8億人が使う地図アプリ「高徳地図」で集客
Googleマップの代わりに多く使われているアプリの一つが、「高徳地図(ガオドゥマップ / amap)」です。高徳地図は、アリババグループが運営する中国国内シェアナンバーワンを誇る地図アプリで、2024年6月には、月間アクティブユーザー数が8億人を突破したと発表されました。
中国人はこうした地図アプリをルート案内として活用するほか、店舗や観光地の検索、口コミのチェック、ホテルの予約などにも利用します。そのため、単なるマップとしてだけでなく、旅行前の計画から旅行中の移動、行き先選びまで、さまざまな場面で活用されています。
関連記事:中国でGoogleマップが使えないのはなぜ?訪日中国人が使う地図アプリの活用方法を解説!
中国インバウンド対策、まず何から取り組む?
ここまで、中国インバウンド市場の現状や最新トレンド、集客のための効果的な施策について解説しました。
しかし、いざ訪日中国人向けの対策に取り組もうとしても、「どこから手を付ければよいのか分からない」と悩まれる方もいると思います。
そこで訪日ラボでは、「インバウンドマーケティングのいろは・中国編」を公開しています。インバウンド戦略の立て方の基本から、中国インバウンドの概況、さらに本記事では解説していない「対策の第一歩」についても紹介しています。
自社のマーケティングのヒントに、ぜひご活用ください!
ーーーーー
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計
日本政府観光局(JNTO):訪日旅行データハンドブック
外務省:今後の水際措置について(2023年4月29日以降順次適用)
観光庁 :インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)
Ctrip:携程“十一”旅游报告:出境短途航线价格重回2019年 携程出入境游订单创新高
【6/4開催】2026年、免税制度が変わる。インバウンド市場と制度改正について解説!
訪日外国人観光客の急回復により、インバウンド市場は再び活況を取り戻しつつあります。
一方で、2026年には日本の免税制度に大きな改正が予定されており、既に免税対応をしている小売事業者にとっても再対応が求められます。
本セミナーでは、前半でmovより最新のインバウンド市場の動向を解説し、後半では、グローバルな免税プラットフォームを展開するPie Systems社より、改正後の制度が目指すヨーロッパ式とも言われる「リファンド方式」とは何か? どのような準備が求められるのか?について詳しくお届けします。
2026年のインバウンド対策に向けて有益な内容となっておりますので、ぜひご参加ください。
<本セミナーのポイント>
- インバウンド市場の最新動向がわかる!
- 2026年の免税制度改正による現行制度との違いがわかる!
- 制度改正の対応に向けた準備と現場への影響がわかる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→2026年、免税制度が変わる。インバウンド市場と制度改正について解説!
【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に5月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? / 2025年訪米旅行者支出「125億ドルの損失」予想 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年5月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!