昨日9月11日、JNTO(日本政府観光局)は「第18回 JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を東京・品川プリンスホテルで開催しました。本フォーラムは、JNTOの賛助団体・会員が対象で、およそ半年ごとに1回、年2回開催されています。大阪でも開催され、日程は明日9月14日(木)。
18回目となる今回は「地方の魅力を発信し、さらなる地方誘客へ!」をテーマに掲げられており、各市場の最新動向に加え、更なるインバウンド地方誘致を実現するための取り組みやアプローチ方法・事例を紹介されました。今回はこの「第18回 JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」開催の模様についてご紹介します。
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『地方の魅力を発信し、さらなる地方分散化へ!』
JNTO理事長 松山良一氏の挨拶から始まった今回の「第18回 JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」。挨拶では、今年閣議決定された「観光立国推進基本計画(https://honichi.com/news/2017/03/30/inbaundotantoshanaras/)」で掲げられた、2020年・4000万人の政府目標は達成可能であると力強いコメントから始まり、
- JNTOとして特に「欧米豪」「富裕層」「MICE」の3分野の誘致に力を入れていくこと
- 昨今のインバウンドの団体→個人への移行から、口コミ・SNS・デジタルマーケティングに注力すること
- 本フォーラムのテーマ「地方の魅力を発信し、さらなる地方分散化へ!」のとおり、地方への誘客について情報発信をしていくこと
など、今年度のJNTO重点施策について言及。また、続くJNTO理事 山崎道徳氏によれば、地方創生の取り組みとして各地でワークショップ・セミナーを開催する他、地域窓口を設置するとのこと。地域窓口の設置については、「インバウンド誘致の相談をしたいが、どこに問い合わせれば良いのかわからない」という声があったことから、各地域ごとに専用窓口を開設し、地方創生のサポートを強化することが狙いです。
JNTO各国事務所による、インバウンド主要市場の最新動向解説
フォーラムはJNTOが世界各国に展開する全20事務所による、各インバウンド主要市場の最新動向に関する講演に移ります。その中から、インバウンド市場のなかでも重要市場である中国・香港・台湾の中華圏と、今後大きな伸びが予測されるインド市場についてピックアップしてご紹介します。
中国市場の最新動向
インバウンド市場最重要顧客である訪日中国人観光客ですが、近年では爆買いの衰退や訪日外客数の伸び率の鈍化が心配されています。これについては、中国経済が安定的に減速していることが大きく影響 していることについて解説。また、2017年5月までの中国人旅行者の各国旅行先の数値比較を紹介しており、韓国や台湾などは大きく減退しており、日本はまだ健闘している状態であることにも言及。
中国市場のプロモーションにおいて重要なのがスマートフォンの存在です。約7.5億人のネットユーザーがいると言われる中国ですが、例えばWeChatは、月間2,300億回使用されており、スマホ1台1日あたりに数値を落とし込むと7.7回/日、つまり 中国人は1人あたり平均8回弱WeChatを開く という驚異的な数値になるとのこと。
香港市場の最新動向
2017年になってからも1〜7月累計で対前年比25.2%増と好調な香港市場。2014年からわずか3年間で倍増した訪日外客数を支えているのが、日本〜香港間の航空座席数の増加です。また、LCCの座席数シェアも2014年冬の8.7%から2017年夏にかけて25.5%まで拡大 し、かつ提起直行便が多いことが香港市場の訪日需要喚起に寄与しているとのことです。
また、リピーターが多く旅慣れているという特徴を持つ訪日香港人観光客ですが、近年では更に深い訪日旅行へのニーズが高まっているとのことです。特に「自分も友人も行ったことがない場所、やったことがないコト」や「そこまで行かないとできないリアルな体験・ライブ感覚」「そこの風景やシーンを自撮りして共有したくなる場所・コト・モノ」へのニーズが高まってきているとのこと。
台湾市場の最新動向
台湾市場の特徴として、他の東アジア各国と比較すると団体旅行比率が高い傾向にあることについて言及。韓国や香港が約1割であることに対して、台湾市場は3割という水準になっています。また、訪日旅行の申込みも4割が店頭、5割がWEB(韓国・香港は7割WEB)となっており、これらの数値からも 現地旅行代理店と連携したプロモーションが有効 という特徴があります。
また、台湾人の旅行意思決定に関する調査についても紹介。調査によれば、旅行目的国の選択理由において、33.8%が「友人・親戚の誘い」と回答。また、未訪日層が日本に行かなかった理由として「誰にも誘ってもらえなかった」が28%であるなど、旅行動機において「知人・友人の誘い」が重要なファクター であることについて解説。この特徴を捉え、JNTOでは「大切な人と一緒に日本へ」というキャッチフレーズの本、東北誘致プロモーションを展開しました。
インド市場の最新動向
インバウンド市場においてはあまり注目を集めていない印象のあるインド市場ですが、UNWTO(国連世界観光機関)によれば、2020年のインド人海外旅行者は2015年の 約2.5倍の5,000万人を超える と予測されていることを紹介。日本では「 将来 有望な市場」と捉えられているが、世界では「 現在 最も重要な市場」として取り組みを進める国が多数あり、インド市場への注力すべきであることが説明されました。
また、インド人旅行者の特性として「VRF」という概念を説明。「VRF」とは「Visit Relatives and Friends」の略語で、つまり 知人・友人を訪ねるために海外へ旅行する ことを意味します。実際に数値的にも在留インド人数が多い国は、インド人旅行者数も多い傾向にあり、また、在留インド人が日本の情報を発信する、いわばインフルエンサーのような役割をすることから、インド市場では在留インド人の増加が訪日インド人観光客増加に寄与する とのこと。
まとめ:インバウンド全体の流れを知るためにも、トータルな情報を提供してくれるセミナー・フォーラムでキャッチアップしよう
フォーラムは観光庁 国際観光課長 伊地知英己氏によるインバウンドの現状と政策と題した講演で幕を閉めます。講演では、
- 現在訪日外国人観光客全体の8割強を占めるアジア圏市場だけでなく、国籍のバランスをとった誘致政策をしていくこと
- そのなかでも、今後インバウンド政策として欧米豪市場に重点を置くこと
- 「訪日無関心層」をターゲットして、ターゲットの属性にあわせたコンテンツの露出をすることで需要喚起していくこと
- 富裕層の誘致のため、富裕層向け現地旅行会社に対するBtoBプロモーションを強化していくこと
など、今後の国としてのインバウンドの取り組みについて触れられました。このような国としての施策や方向性、そしてインバウンド市場に置ける各国の動向などを横断的に知ることは非常に重要だと言えるでしょう。
例えば、断片的な情報として中国市場だけをウォッチしていた場合、国際関係の悪化などで急激に市場が減退してしまった場合に対策がとれません。そのような状況が有りうるのは、昨今の中韓関係を見ても明らかでしょう。
そのため、リスク回避 としても、他の市場やインバウンド市場全体の流れを知ることは重要ですし、また、今回インド市場をピックアップしたように、まだ注目されていないものの実は重要な市場を知り、先行投資をしていく ためのヒントともなるでしょう。だからこそ、今回のJNTOフォーラムのようなトータルな情報を提供してくれるセミナーやフォーラムは、積極的な活用をしてはいかがでしょうか。
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