2020年の訪日外国人観光客4,000万人誘致を目指し、これまで官民一体となったインバウンド対策が進められてきました。以前の訪日ラボの記事でもご紹介したように、2016年に訪日した外国人観光客のうち約30%が「訪日旅行中に困ったことはなかった」と感じており、 インバウンド受け入れ環境は年々改善してきている ことが把握できます。2017年が終わろうとしているいま、直近の訪日外国人観光客は、日本のインバウンド対策の どのような点に改善を求めているのでしょうか。 また、訪日旅行のどこにがっかりしているのでしょうか。
「訪日客が旅行中に困ったこと」ここ3年でどう変わった?観光庁のアンケート調査をまとめてわかった意外な事実
クールジャパン戦略の甲斐もあってか、訪日外国人観光客数はここ数年順調に伸びており、昨年には史上最多となる2,400万人の外国人観光客が日本を訪れました。東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年までに年間4,000万人の訪日外国人観光客を誘致することを目標に、政府や自治体、企業などはインバウンド対策を着々と進めてきました。 こうした背景から、少なくとも年々、訪日外国人観光客にとって訪日旅行は快適なものになっているのではないかと予想はできますが、実際、訪日外国人観光客は現在の...
インバウンド対策なにから始めたら良いかわからない?
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
いま訪日外国人は何にがっかりしているのだろうか:交通機関の使いづらさや文化・常識の違いが多い傾向に
訪日外国人観光客が2017年に困ったことや不満に思ったことをTripAdvisorのQ&Aや動画サイトからピックアップしてみました。下記の項目が特に多く訪日外国人観光客から寄せられました。
- 地下鉄に女性専用車があって間違えて乗車してしまった(イギリス人・男性)
- 地下鉄の路線図が複雑過ぎる(フランス人・女性)
- 券売機のシステムがわかりづらい(フランス人・女性)
- お通しのシステムが理解できなくて店員ともめそうになった(イギリス人・男性)
- タバコを吸うスペースがわからない(香港人・男性)
- トイレの使い方がわからない(タイ人・女性)
- タトゥーを入れているために温泉に入浴できなかった(アメリカ人・男性)
交通機関の複雑さ は訪日外国人観光客にとって引き続き悩みの種となっているようです。また、海外でもたびたび話題になる 「日本のトイレ」 。他国のものと比較するとホスピタリティーと機能性を重視していることから便利ではあるのですが、TOTOが行ったアンケートによれば、25.7%の訪日外国人観光客が「さまざまな操作ボタンの役割がわからなかった」 としており、利用ハードルがなかなか高いものであったことがうかがい知れます。加えて、喫煙やタトゥーなど、自国と日本の常識の違い などに困惑する訪日外国人観光客も存在することがわかります。ネット上ではこのような声が多い結果になりましたが、こうした課題に対してどのような解決策が考えられるのでしょうか。
訪日客の1/4が困ってた!ウォシュレットのボタンアイコン統一でわかりやすさを追求:TOTOらトイレ操作パネルのピクトグラムを統一
昨今のインバウンド需要の拡大によって、あらゆるもののインバウンド対応が進んでいます。インバウンド対応といえば真っ先に考えられるのが多言語対応。しかしながら、多数の国の多数の言語を使う訪日外国人観光客向けに、快適な訪日旅行を提供するための言語対応としてはえ、英語への翻訳のみでは片手落ちです。そんな多言語対応について「言語に頼らない」インバウンド対応の例として、TOTOら日本トイレメーカーが行ったトイレ操作パネルのピクトグラム(絵記号)の統一化についてご紹介します。 目次TOTOら日本レストル...
2017年を総括して:「訪日外国人の困ったこと」にこれからどうアプローチするべき?
①外国語対応のさらなる強化を:小さなことでも「伝える努力」が大事
文化や常識の違いによる困惑は訪日外国人観光客に「伝わっていない」ために発生するものです。飲食店のお通しや券売機のシステム、日本の喫煙マナーなど、どんな小さなことでも伝えようとする努力が、これから4,000万人のインバウンド誘致を目指すうえで必要となってくるでしょう。
近年では、Google翻訳やili、各種翻訳サービスなどさまざまな外国語対応ツールが開発されています。中には比較的手軽に、低コストで利用できるものも存在するため、今までのように外国語表示や翻訳はハードルの高いものではありません。少しでも訪日外国人観光客に店舗や観光施設を利用してもらいと考えるのであれば、こうしたツールを利用するのが得策かもしれません。
接客時の外国語対応サービス、どれを使用すればいい?:これまで紹介してきたサービスをおさらい
観光庁の資料によると、訪日外国人観光客が旅行中に困ったこととして、「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない(英語が通じない等)」との回答が2番目に多い数値となっており、訪日外国人観光客は日本の外国語対応に不満を持っていることが把握できます。こうした問題を解決するべく、国内では多くのインバウンド向け外国語対応サービスが存在しています。今回は、これまで訪日ラボの記事で紹介してきた接客時に役立つ外国語対応サービスをおさらい。インバウンド誘致を検討している店舗や観光施設・自治体に役立つかも...
②インバウンド向け乗車券の販売拡充も検討すべき?情報発信が足りていない可能性も
先述の通り、2017年に訪日した外国人観光客の間でも東京や大阪など大都市圏の鉄道を乗りこなすのは至難の業となっています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによりリリースされた「外国人観光客の首都圏交通インフラ利用調査結果」によると、「速さ」「正確さ」「安全性」に対して日本の鉄道は高い評価を得ていますが、「快適さ」「わかりやすさ」に関しては満足度が相対的に低下しています。訪日外国人観光客にとって、日本の鉄道は「快適だがわかりにくい」ものであることが把握できます。また、観光庁により発表された「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート結果」によると約20%の訪日外国人観光客が公共交通機関の乗り方に関して「困惑した」と回答しています。
こうした状況を打破するためにJRグループ6社では以前からインバウンド向けフリーパス「Japan Rail Pass」を発売したり、東京メトロでは訪日外国人観光客向けに「すすメトロ!」キャンペーンを実施したり、東急電鉄ではインバウンド向け通訳サービス「SMILE CALL」を導入したりと、日本国内の鉄道会社はさまざまな取り組みを実施していますが、情報発信が不十分であることから訪日外国人観光客にとってこうしたサービスの利用は当たり前のものとはなっていない現状があるようです。
日本の交通インフラは快適だがわかりにくい?西日本鉄道 インバウンド向け鉄道パス発売開始:訪日客の利便性向上へ
訪日外国人観光客
まとめ:これからは大枠だけではなく小さなニーズに対応していくことも重要?
2020年の4,000万人のインバウンド誘致に向けて日本国内ではインバウンド対策が進められています。2016年には訪日外国人観光客全体の30%が困ったことはないと回答しているかたちにはなりますが、日本の文化・常識からくる戸惑いや交通機関の使いづらさなど、小さなニーズはまだまだ存在している ようです。こうした課題を解決するために上記で挙げたようなポイントは踏まえておくべきものでしょう。
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<参照>
- TripAdvisor:Q&A about travelling to Japan
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング:外国人観光客の首都圏交通インフラ利用調査結果
- 観光庁:訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート結果
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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