訪日中国人観光客や訪日台湾人観光客などの中華圏は長年、日本のインバウンド市場において最大のターゲットとなっていました。しかし近年では、若年層が多い東南アジア市場や一人当たりのインバウンド消費額が大きい欧米豪圏市場も注目度が上昇しています。どの地域出身の訪日外国人観光客を狙うかは企業や自治体・観光協会ごとにまちまちであり、中には訪日シンガポール人観光客などニッチな市場を中心に狙うケースも出てきています。今後、新たにインバウンド市場において魅力的なターゲットになっていくのはどこの地域なのでしょうか。
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今後はブラジル人市場には大きな可能性?その理由とは?
今後、市場の成長が予測できる国として挙げられるのは ブラジル かもしれません。まずはこれまでの訪日ブラジル人市場を年別の観光客数を確認してみましょう。
年 | 訪日ブラジル人観光客数 | 前年比からの伸び率 |
---|---|---|
2010年 | 21,393人 | - |
2011年 | 18,470人 | -13.7% |
2012年 | 32,111人 | +73.9% |
2013年 | 27,105人 | -15.6% |
2014年 | 32,310人 | +19.2% |
2015年 | 34,017人 | +5.3% |
2016年 | 36,888人 | +8.4% |
2011年から2013年にかけては増減を繰り返していましたが、訪日ブラジル人観光客は ここ3年間、順調に増加 し続けています。2016年の訪日ブラジル観光客は、約3.7万人 を記録しており、市場規模から言えば、観光庁が選定したヨーロッパの訪日主要国の1つである訪日ロシア人観光客(5.4万人)より若干少なく、スイスやベルギー、ポーランドなどと同規模の市場となっています。外務省のデータによると、ブラジルの人口は2015年時点で2億784万人なので、人口と比較すると訪日率はまだまだ低いようですが、最近になって訪日ブラジル人観光客市場は注目を集めています。
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インバウンド集客・誘致を行うにあたって、どの国籍の訪日外国人観光客をターゲットにしていくのか を決めることは、重要なことです。中国や韓国、台湾など、訪日旅行をする人が多く、旅行支出額も多い国が頻繁にターゲットになっていますが、少し視点を変えて他の国出身の外国人観光客を新たなターゲットにしてみても良いかもしれません。今回は、日本からの旅行者も比較的多く世界有数の観光立国として知られる スイス人観光客のインバウンド市場 の特徴をJNTO(日本政府観光局)資料をもとにご紹介します。インバウンド市...
訪日ブラジル人市場が注目を集めている近年
①観光庁はブラジルと提携 観光交流人口の増加が目的&JNTOでもポルトガル語版訪日旅行サイトを開設
2018年1月22日、東京・北青山に位置するブラジル連邦共和国大使館において、ブラジル観光省と日本の観光庁が、観光分野に関して提携を組むことを発表 しました。日本とブラジルの観光交流人口は2016年の段階で約12万人であり、この数字を増加させることが今回の提携の目的です。
提携の一環として、ブラジルでは日本人旅行者を対象に 電子ビザを解禁 しています。これによって日本人旅行者は、面倒なビザの手続きなしでブラジルに観光できるようになります。電子ビザを導入することで 25%のインバウンド増加が見込める とのデータもあり、ブラジルでは日本人旅行者の誘致に注力していきます。また、今後は訪日ブラジル人観光客を増加させるために観光分野に関する情報交換なども積極的に行っていくとのこと。
現時点では、訪日旅行をブラジル人にPRできていないことや、直行便がなく交通の便が悪いことなど諸問題は存在しますが、観光庁ではブラジル観光省と提携したり、JNTO(日本政府観光局)ではブラジル人向けにポルトガル語版のウェブサイトを開設するなど 政府系の機関でも訪日ブラジル人市場に目をつけ、インバウンド誘致を狙っています。
②国内には多くのブラジル労働者が!VFR層の誘致も期待できる?
日本国内には多くのブラジル人労働者が生活しています。 厚生労働省の資料によると、2017年10月時点で 約12万人 のブラジル人が日本で働いています。これは中国、ベトナム、フィリピンに次ぐ 4番目に多い数字 であり、地理的に日本と離れているにもかかわらず、日本で働いているブラジル人は多いことがわかります。
ここで注目するべきが VFR の存在です。以前の訪日ラボの記事でもご紹介したように VFRとは、「Visiting Friends and Relatives」の略で、「友人・親族訪問を目的とした旅行」を意味します。 日本のインバウンド市場において訪日旅行の目的が友人・親族訪問(VFR)である訪日外国人観光客の割合は、2017年7月~9月で 14% となっています。この数字はインバウンド観光大国ではもっと大きなものになっており、イギリスやオーストラリアの場合、30% 近くまで上昇します。日本では外国人留学生・外国人労働者ともにここ5年連続で増加しているため、VFRは近年注目されている観光客層となっています。先述の通り、日本では多くのブラジル人が働いており、彼らを訪れるために訪日する友人や親族はインバウンド市場にとって魅力的なターゲットになってくるかも しれません。
まとめ:2018年は訪日ブラジル人市場にも注目!
今回は、新たに注目していくべき市場である訪日ブラジル人市場に関して解説してきました。2017年には前年比+8.4%にあたる3.7万人のブラジル人観光客が日本に訪れました。観光庁ではブラジル観光省と提携を始めたり、JNTO(日本政府観光局)では訪日ブラジル人を誘致するためにポルトガル語版の訪日旅行情報サイトを開設したりと公の観光機関からも訪日ブラジル人市場は注目されています。
また、日本には多くのブラジル人労働者が生活していることから、彼らの親族や友人への訪問(VFR)も日本のインバウンド市場にとって魅力的なターゲットとなってくるのでしょう。訪日ブラジル人市場には今後注視していくべきでしょう。
インバウンド市場や各国の訪日外国人に関する調査やもっと詳しいインバウンドデータ知るには?
<参照>
- JNTO:統計データ
- 観光庁:「日本とブラジルとの間の観光分野における協力に関する覚書」 への署名について
- トラベルWatch:観光庁とブラジル観光省が連携で調印。「電子ビザ導入と連携強化が観光客増加に」と田村長官
- JNTO:JNTOポルトガル語、ロシア語ウェブサイトの開設
- ニッケイ新聞:《ブラジル》訪日就労伯人が再び増加=08年以後初の18万人越え=昨年末の在留外国人統計で
- 厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在)~外国人労働者数は約128万人。届出義務化以来、過去最高を更新~
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