訪日外国人観光客の地方誘致は地方創生の切り札として近年注目されています。国内の観光協会や自治体・DMOなどは観光地の知名度向上を目的とした海外PRやインバウンド対策を実施しています。インバウンド対策といっても外国語対応からインバウンド向け決済手段の拡充、インフルエンサーの活用、SNSの活用など多岐にわたりますが、インバウンド誘致に成功している地域ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。 スキー・スノーボードなどのウィンタースポーツを満喫できるリゾート地として有名な北海道ニセコ町の事例をもとに解説していきます。
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ニセコの訪日客は年間10万人を突破!豪州を中心に欧米豪圏と東アジア圏の訪問が目立つ
年度 | 訪日外国人観光客数 | 国籍別トップ5 |
---|---|---|
平成24年度 | 55,939人 | ①香港 ②オーストラリア ③韓国 ④台湾 ⑤シンガポール |
平成25年度 | 72,632人 | ①香港 ②オーストラリア ③台湾 ④中国 ⑤シンガポール |
平成26年度 | 85,516人 | ①香港 ②オーストラリア ③台湾 ④中国 ⑤韓国 |
平成27年度 | 92,564人 | ①香港 ②中国 ③台湾 ④オーストラリア ⑤韓国 |
平成28年度 | 107,532人 | ①中国 ②香港 ③台湾 ④オーストラリア ⑤韓国 |
北海道ニセコ町の「ニセコ町統計資料 訪日外国人宿泊客数」によると、2012年から2016年の5年間、北海道ニセコ町に宿泊した訪日外国人観光客数は増加し続けています。 2016年には 史上初となる10万人以上 の訪日外国人観光客が北海道ニセコ町に宿泊しました。
2016年に北海道ニセコ町に訪れた訪日外国人観光客を国籍別にみてみると、訪日中国人観光客が約20%、訪日香港人観光客が約16%、訪日台湾人観光客が約14%となっておりこの東アジア3か国で全体の50%を占めるかたちになります。特筆すべき点は、訪日オーストラリア人観光客が12%を占め4番目に多いという点。 欧米圏出身の訪日外国人観光客も全国平均と比較すると多い傾向にあります。
ニセコ町から学べるインバウンド誘致成功の秘訣とは?
多くの訪日外国人観光客が訪れる北海道ニセコ町。インバウンド誘致に成功した要因はどういったところにあるのでしょうか。北海道ニセコ町が実施したインバウンド対策に関して解説していきます。
「外国人目線」の観光地づくり:ニセコの成功にはロス・フィンドレー氏の存在が
北海道ニセコ町のインバウンド誘致における成功の背景には ロス・フィンドレー氏の存在 があります。ロス・フィンドレー氏は、オーストラリア人でスキーのインストラクターを経験した後、1990年に来日。北海道ニセコの良質なパウダースノーと自然景観に魅了され1992年に倶知安町に移住しました。ロス・フィンドレー氏は、1995年にNAC(ニセコ・アドベンチャー・センター)を設立し、以後、北海道ニセコ町の魅力を国外に発信していきます。
本来、北海道ニセコ町はウィンタースポーツの場所として知られ、夏のアクティビティーは限られたものでした。こうした背景からロス・フィンドレー氏は、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツに加え、夏に楽しめるアクティビティーとしてラフティングツアーを事業として始め、北海道ニセコ町を 一年中観光が楽しめる場所として整備 しました。ロス・フィンドレー氏が英語圏出身であることから、英語で情報を配信していたので欧米豪圏を中心に口コミが広まった結果、現在の国際観光都市ニセコが誕生 しました。
ロス・フィンドレー氏は、「通年型アウトドア体験観光のカリスマ」としても知られます。外国人であるロス・フィンドレー氏が訪日外国人観光客のニーズを汲み取り、ウィンタースポーツや夏に楽しめるアクティビティーなど体験型観光コンテンツを整備したことが、北海道ニセコ町のインバウンド誘致成功の秘訣の一つでしょう。「外国人目線」の観光地づくりには大きな可能性がありそうです。
東京五輪に向け、盛り上がりを見せるスポーツツーリズム:観光資源を組み合わせ、独自性のある地域づくり
2010年頃から、観光庁による取り組みがスタートし、近年、注目を集めているスポーツツーリズム。2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向け、さらに盛り上がっていくことが予想されます。今回は、日本におけるスポーツツーリズムの動向、対象となる訪日外国人観光客などをご紹介します。 目次スポーツツーリズムとは古代オリンピックから存在する歴史の長い旅行形態スポーツツーリズムに関する日本の動向日本が目指すスポーツツーリズムのあり方とは他の観光資源と組み合わせ、独自性の強い地域づくり主な対象は韓国...
ニセコリゾート観光協会を株式会社化:「収益性」を重視したスマートな組織構造へ
多くの訪日外国人観光客が訪れる北海道ニセコ町の観光産業を支えていた 「ニセコリゾート観光協会」は、2003年から株式会社として生まれ変わりました。 観光協会が町役場の一組織から株式会社化したのは 日本初 のことです。補助金ありきの組織運営ではなく、「収益性」を重視した組織構造に改革 することで以前よりもスピード感を持って北海道ニセコ町の観光開発にあたることができるようになったといいます。株式会社ニセコリゾート観光協会では、「ラジオニセコ」でFMラジオの放送を実施し、インターネットを通じて世界に北海道ニセコ町の観光情報を配信したり、道の駅の委託事業を実施したり、2017年には日本文化に触れることができるイベント「Niseko Japonica」を開催したりと多岐にわたる取り組みを行っています。
加えて、ニセコリゾート観光協会では 公式サイトを運営 しており、インバウンド向けにニセコの観光情報を日本語・英語・中国語(繁体字)・中国語(簡体字)・韓国語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語の10か国語で配信しています。「滞在」「食」「スポーツ」「アウトドア」「体験型観光」「温泉」「ショッピング」などカテゴリ別に情報がまとめられています。
まとめ:ポイントは「外国人目線」と「組織改革」:インバウンド誘致はニセコから学ぼう
今回は、北海道ニセコ町が多くの訪日外国人観光客の誘致に成功した要因について解説してきました。もともと良質な雪が楽しめるスキーリゾートであったという背景はありますが、①ロス・フィンドレー氏を中心として「外国人目線」のインバウンド対策を実施してきたこと②観光協会を株式会社化して収益性・ビジネス性を高めたこと がインバウンド誘致成功の要因として挙げることができそうです。近年の日本のインバウンド市場で成長が著しい東南アジア市場では、「雪」に対する関心度が高く、北海道ニセコ町を訪れる訪日タイ人観光客や訪日シンガポール人観光客は増加していることから、これからは東南アジアからも多くの訪日外国人観光客が訪れることが予測される北海道ニセコ町ですが、そのユニークなインバウンド対策には注目しておいて損はないでしょう。
「インバウンド×雪」を徹底調査 アジア圏と欧米豪で雪に感じる魅力が違うことが判明:ジャパンガイドのデータでみる雪の観光地トレンドとは
1996年に設立され、現在、月間約180万人のユーザー*が閲覧している「ジャパンガイド」は、英語圏からのアクセスが上位を占めている訪日観光客向けの情報ポータルサイトです。前回は神社をテーマに欧米豪の傾向についてご紹介しましたが、今回は「雪が見られる観光スポット」をテーマに、過去1年のジャパンガイドのアクセスデータを参照しながら、アジア圏と欧米豪それぞれにおいて人気のあるエリアとその理由について見ていきたいと思います。目次雪の観光地ページへのアクセスはアジア圏が中心欧米豪に人気の雪のコンテン...
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<参照>
- SPACE NIRA:インバウンド観光を視野に入れたDMOの構築、その方法と課題
- 北海道ニセコ町:ニセコ町統計資料 訪日外国人宿泊客数 ~数字で見るニセコ~
- 観光庁:ロス・フィンドレー
- 事業構想大学院大学:パウダースノーだけじゃない、ニセコの取り組み
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