こんにちは、クロスシー編集部です。
本日は中国の動画メディアについてとりあげます。前半はJETROのレポートから全体像をご紹介し、後半ではその中でもインバウンド市場において重要となる動画プラットフォームの「bilibili(ビリビリ動画 中国語:哔哩哔哩)」について詳しく見ていきます。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
JETRO「中国の動画配信市場調査」レポートからユーザー動向をさぐる
まずは5月末にJETROから発表された中国コンテンツ市場調査 2017年版(2018年3月)のうち、「中国の動画配信市場調査」のレポートより、動画配信市場における上位プレーヤーを見ていきましょう。
動画配信市場の総収入の半数を占めるのが広告です。市場占有率ではiQIYI(24.2%)、テンセントビデオ(23.72%)、YOUKU(23.04%)が圧倒的で、3社で7割を占める結果となっています。続くのは芒果TV(6.49%)と捜狐視頻(5.09%)であり、4位以下では桁が異なることがわかります。
ところが月間の利用時間TOP10は、この広告市場の占有率と一致しているわけではありません。広告費の上位にランクインしているプラットフォームを除くと、4位楽視、6位bilibili、7位快手といった3社が月間利用時間TOP10の上位に現れています。利用時間の昨年からの増加率の数字に着目してみると、風行視頻(318.77%)、快手(81.35%)、bilibili(67.10%)YOUKU(50.93%)の順に大きくなっています。
それでは、この増加率の大きな媒体=これから注目のプラットフォームということになるのでしょうか? 実はこれらは「中国の動画配信プラットフォーム」というくくりでまとめられているものの、それぞれのプラットフォームごとに人気を集めるコンテンツに特色がある場合も珍しくありません。さらにもう一つ下のカテゴリを理解することでより正確に中国動画市場が見えてきます。
人気の作品はオリジナルドラマなのか、海外映画なのか、PGCなのか、UGCなのか。動画の形式はショートムービーなのかそうではないのか。こういった特徴を正確に把握することは、動画配信プラットフォームをコミュニケーションチャネルとして活用する際にも有用です。
※PGCはProfessionally Generated Contents、UGCはUser Generated Contentsを指す。PGCはインターネット上のSNSのようなプラットフォームのユーザーであり、なおかつ専門知識を有したアカウントが投稿する、ある一定の水準を備えた映像等のコンテンツを意味する。投稿者の例としてKOLが挙げられる。一方、UGCは専門知識を有さない一般ユーザーが投稿するオリジナルコンテンツを意味する。
参考: https://www.jetro.go.jp/world/reports/2018/02/ab0ab7636de81fe2.html(中国コンテンツ市場調査 2017年版(2018年3月)JETRO)
bilibili(ビリビリ動画)の特徴 ~「二次元」愛するZ世代が圧倒的多数!~
前節でみてきた視聴時間の増加が大きなプラットフォームのうち、インバウンドという観点で特に注目する価値のある一つがbilibiliです。
年度末のナスダックへの上場で注目が集まり耳にしたことのある方も多いのではないかと思いますが、注目すべき理由は「アニメやゲームを愛する若者層を満足させる場となっている」という点にあります。
bilibili(ビリビリ動画)の主力ユーザー層 男女比は約半々、15~24歳が70%超
上場を果たした際の講演に用いられた資料では、2018年1-2月の月間アクティブユーザー数の7600万人という数字だけでなく、そのうちの82%が「Z世代」(1990年-2009年生まれ)であることが強調されました。
参考:http://36kr.com/p/5126278.html
ユーザーの構成比は、男:女=56.1:43.9、年代別では15~19歳が19.5%、20-24歳が53.6%であり、両者で7割を超えます。(95年生まれは2018年に23歳)
出典:http://www.199it.com/archives/642533.html(2017bilbiliデータ研究報告)
Z世代の特徴とは? 娯楽好き、購買力の大きさと二次元への愛
「Z世代」はインターネット世代とも呼ばれ、一般的に90年半ば生まれ以降の世代を指す概念です(上述のbilibiliの資料では研究機関QestoMobileの定義から90年代以降としています)。アリババグループの研究機関のレポートによると、Z世代はオンラインでの消費が非常に活発なだけでなく、アニメ・漫画やゲームに関連したコンテンツの消費にも積極的な姿勢が見て取れます。Z世代は消費力があり、日本が得意とする「二次元」コンテンツに関心の高い世代と言えます。
参考:
http://www.cnr.cn/chanjing/zhuanti/lt/bg/20171117/t20171117_524030325.shtml
http://www.sohu.com/a/207905270_394405
http://36kr.com/p/5135483.html
まとめ ~bilibiliのPUGC(Professional User Generated Content)が多様化する若者の心を満たす
実際のところ、Weiboや快手、抖音といったプラットフォームにも若者は集っています。そんな中、bilibiliがそれらと異なる独自の地位を確立している理由として、以下の2点が挙げられます。
- 全ての分野の娯楽にこたえられる全方位的なコンテンツを用意し、若者に帰属感や自分の存在理由を提供していること
- BilibiliにアップされるコンテンツはPUGC(Professional User Generated ContentあるいはPUGV(Professional User Generated Video)と呼ばれるものであり、製作にはこだわりと時間が必要であること
インターネットネイティブであるZ世代には価値の多様化が起こっており、その中で多様なニーズに応えることのできるbilibiliに自然と若者が集っていることが考えられます。また彼らの多くが好むアニメやゲームといったカテゴリでは、製品や作品に対するファンの尊敬の念やこだわりが強いという特徴もありますが、bilibiliではこういったファンの審美眼にも耐えうる作品が生み出されているのです。結果として、コミュニティの結束がますます高まっていく可能性もあります。
日本の強みである「二次元」コンテンツに関心の高い層が集っていると考えられるbilibili。ユーザーの圧倒的多数を占める若年層は、今後の旅行消費の担い手でもあります。このコミュニティめがけて日本情報を発信することは、インバウンド需要の顕在的ターゲットだけでなく、潜在的ターゲット層への有効なアプローチとなるのではないでしょうか。今後、WeiboやWeChatと合わせてインバウンドプロモーションの重要なチャネルとなることが予想されます。
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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