2020年に開催が決定していたものの、2021年に延期となった東京オリンピックは当初予算7,000億円とされていました。国民の負担を軽減するために、既存の施設を活用して「世界一コンパクトな五輪」「世界一カネのかからない五輪」であることがうたわれてきました。
ところがその後、数々な試算により、東京オリンピック・パラリンピックの関連経費は総額で3兆円を超えるのではないかとの指摘がなされる事態となります。延期が決定したことにより、必要な経費がさらに増えていくことも可能性として指摘されてきました。
さらに、2020年9月、大会組織委員会はIOCと合意した52項目で簡素化に取り組む方針を明らかにしました。これによる費用削減効果は300億円規模と報じられています。
今回は、オリンピックの予算や延期による影響、過去のオリンピック予算などを紹介します。
※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年の延期が決定しました。2021年7月23日(金) に開会式、2021年8月8日(日)に閉会式が予定されています。
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東京オリンピック2020競技大会の予算はどれくらい?
東京2020オリンピックの予算は、当初は7000億円といわれ、世界一コンパクトな大会にするということでした。
しかし現在では、3兆円を上回る予算額が必要ではないかといわれており、延期が決定したことで、必要な経費がさらに増えていくことが予想されています。
誘致時の予算は?「世界一コンパクトな五輪」「世界一カネのかからない五輪」
東京オリンピック招致時点の立候補ファイルでは、国民の負担を軽減する為に、既存の施設を活用して「世界一コンパクトな五輪」「世界一カネのかからない五輪」とされていました。確かに、2013年1月に国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルには、大会経費として8,299億円と予算提示されています。
当時と比べて建築関連費用に高騰等があったとはいうものの、実施前年の年末に計算された予算(V4、バージョン4)とは乖離した数字となっています。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会はまず招致ありきで、開催を勝ち取るためにでたらめな予算を見積もったのではとの声も聞かれるほどでした。
現在の予算は3兆円超との調査結果も
東京オリンピック・パラリンピック競技大会の現時点における予算は、会計検査院の調査結果から3兆円を超えると予想されています。
その内訳は、大会運営関係費、会場関係、大会関係行政経費、資産対象外等です。
一方で、組織委員会が公表している数字は1兆3,500億円で、その約半分程度となっています。いずれにせよ、当初の予算7,000億円と比べれば大きく差があると言えるでしょう。
会計検査院は各省庁における関連施設費も含めた額を総額としていますが、組織委員会は直接大会に関係のある経費のみを総額として発表しているため、両者の総額には大きな差があります。
また、会計検査院は組織委員会の予算には入れるべき費用が含まれていないと指摘しています。
例えば新国立競技場のセキュリティー対策費は、欠かすことのできない施策であるにも関わらず、予算計上されていません。この対策には高額な予算が必要と見られています。
こうした状況をかんがみ、会計検査院は国、組織委員会に再度大会との関連性を良く精査して大会経費総額の全体像を提示するよう求めています。
予算1兆3,500億は2019年の見直しでも変わらず
組織委員会による試算は、2018年12月に予算V3(バージョン3)を発表し、2019年9月の時点ではこれらに対し政府や都とともに予算の見直しを行っていく予定とされていました。
2019年12月、大会組織委員会が予算V4(バージョン4)を発表します。これでは収入は6,300億円、支出6,030億円が示されています。
その他の経費を合わせて、V3と同じく1兆3,500億円が経費として計上されています。
1964年(昭和39年)東京オリンピック大会
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新型コロナで2021年に延期、簡素化へ
新型コロナウイルスの流行により、当初開催が危ぶまれた東京オリンピックですが、2021年に開催を延期することが確定しました。
海外からの観光客受け入れに向け、専用の「発熱センター」の設置やアプリの提供が検討されています。
2020年9月、大会組織委員会は簡素化に取り組むことを発表しています。これによる費用削減は、300億円規模となると報じられています。
ただし、組織委が2019年12月に発表した大会経費は上述のように1兆3,500億円に上っています。この数字から考えると、300億円規模の費用削減効果は2%程度であり、今後も削減努力をはかる見通しです。
さらに関連経費を合わせれば3兆円は超えることが予想されています。
延期により競技会場の維持費や組織委員会スタッフの人件費をはじめ、多くの経費がかかることも考えられます。
新型コロナウイルス対策でも別途予算が組まれると考えられ、やはり大きな予算が必要であることは間違いないようです。
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オリンピック予算の収入源と使い道は?
組織委員会の予算において、収入の半分は国内のスポンサーからの収入となっており3,480億円です。また、IOC(国際オリンピック委員会)からの収入が850億円となります。
以下は、2019年12月に組織委員会より発表された最新の予算V4(バージョン4)です。
延期前の試算であるため、今後変更が加えられていきV5(バージョン5)が発表されると考えられます。
支出においては、見直し調整が行われた会場整備費が7,140億円となっています。
大会運営費ではエネルギーインフラ、輸送、セキュリティー、テクノロジー、オペレーション、管理・広報、マーケティング、その他の費用が支出項目となります。こちらは6,160億円です。
また、全体支出予算の1兆3,500億円を大会組織委員会で6,000億円、東京都が6,000億円、国が1,500億円の支出振分となっています。
しかし国の負担額において検査院が各省庁の関連施設費を集計したところ、2013~2017年度に8,011億9,000万円の支出をしていたことが分かりました。
その内訳で省庁別で最も多かったのは国土交通省の約2,605億円、その次に経済産業省の約1,993億円です。
施策別では「暑さ対策・環境問題への配慮」「アスリート、観客らの円滑な輸送および外国人受け入れのための対策」があります。
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過去のオリンピック大会、それぞれの予算
3兆円を超える予算になるのではないかといわれている東京オリンピック・パラリンピックですが、過去のオリンピックと比べると、その規模は大きいと言えるのでしょうか。過去のオリンピックの大会運営費の最高額は、2014年にロシアで行われたソチ冬季オリンピックの500億ドルです。ソチオリンピックでは交通インフラの整備に日本円にして約3兆円が支出され、総額では日本円で約5兆円が投入されたと言われています。
ソチ冬季オリンピックは、500憶ドルと他の大会と比べて予算がとても多いという印象を受けると思いますが、これは国を挙げてロシアを世界にアピールするという目的がありました。そのため国内のインフラの整備をオリンピック費用として大規模に織り込んだことにより、このような超高額な予算が計上されました。
オリンピックの予算は経費の内訳や考え方が国によって変わり、その額面だけで単純に比較するのは難しいと言えるでしょう。
以下の表には、直近10回のオリンピック・パラリンピック競技大会の予算を示しました。
2000年夏季 |
シドニー五輪 |
66億ドル |
2002年冬季 |
ソルトレイク五輪 |
12億ドル |
2004年夏季 |
アテネ五輪 |
150億ドル |
2006年冬季 |
トリノ五輪 |
36億ドル |
2008年夏季 |
北京五輪 |
430億ドル |
2010年冬季 |
バンクーバー五輪 |
17億ドル |
2012年夏季 |
ロンドン五輪 |
104億ドル |
2014年冬季 |
ソチ五輪 |
500億ドル |
2016年夏季 |
リオデジャネイロ五輪 |
108億ドル |
2018年冬季 |
平昌五輪 |
90億ドル |
平昌五輪は予算が比較的小さくなっていますが、最終的に必要となった金額は大幅に跳ね上がっています。必ずしも予算通りで運営できるわけではないというのが現状のようです。
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オリンピック予算はどう使われていくべきなのか
オリンピック・パラリンピック大会の開催による日本全体での経済波及効果は32兆円とも言われており、またこれを通じ194万人の雇用が生まれるとの試算もあります。
こうした経済効果には当然ながら、オリンピック・パラリンピックの選手の訪日や観戦目的の外国人観光客の来訪も含まれており、世界の旅行市場に対する日本の宣伝効果も期待されています。
一方で、大会運営そのものや、外国人観光客を含む大人数の移動を受け入れるインフラ整備のための経済的負担も少なくはありません。
こうした大きな負担にもかかわらず、大会開催により残された競技場がその後何の経済効果も生まないといった前例もあります。
オリンピック開催を通じて生み出される施設や環境が、こうした「負のレガシー」と呼ばれる無意義な存在にならないように、長期的な視野をもって予算の分配は計画されるべきでしょう。
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<参照>
毎日新聞:費用削減効果300億円規模 東京オリンピック簡素化 IOC理事会に7日報告
TOKYO2020:バージョン3(2018年12月発表時点)
TOKYO2020:組織委員会およびその他の経費
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