オリンピックを来年の7月に迎える日本では、年々外国人観光客が増加しています。政府目標では2020年に4,000万人を掲げている中、昨年2018年には3,000万人を超えることができました。
この記事では、近年外国人観光客が増加した理由と、国籍別のその傾向や、受け入れ現場で必要な対応について解説、整理します。
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2010年以降、訪日観光客が増えた3つの理由
2010年代に入り、訪日観光客数は激増しました。それまでは年間の訪日外国人観光客数は、1,000万人未満と低調に推移していました。2010年代の環境の変化には次の3つがあります。
1. 航空運賃の低価格化
一つ目に考えられるのが航空運賃の低価格化です。中でもLCC(ローコストキャリア)は運賃を引き下げるのに大きな役割を果たしています。
近年、LCCは運行路線や運行本数とともに充実しており、利用者数は増加傾向にあります。特に国際線の利用者数は急増しています。
LCCが利用者の支持を得たことで、大手航空会社の運賃引き下げにも取り組み、航空会社全体として航空運賃が引き下げられました。
航空運賃は旅行代の大部分を占めるため、航空運賃が下がることで旅費全体が下がることにもつながります。その結果、外国人にとって日本へ旅行するハードルが下がったと考えられます。
2. ビザの緩和
ビザの緩和も大きな要因として考えられます。近年、外務省は特定の国に対してビザの発給要件の緩和を行なっています。
日本への入国条件が容易になったことが訪日外国人観光客の増加に影響を与えています。
2017年10月には中国人観光客向けに大幅なビザの緩和を実施しており、他にも香港、マカオ、インドなどがビザ免除の対象になっています。この結果、アジアからの訪日観光客の増加につながりました。
以下の資料からも、ビザの発給要件緩和によって、アジア諸国を中心に訪日外国人観光客が増加していることがわかります。
![▲[外務省:ビザ発給数と訪日外国人数] ▲[外務省:ビザ発給数と訪日外国人数]](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/3346/main_image1.png?auto=format)
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3. 外国人からの日本の人気が上昇
日本が持つ豊富で独特なコンテンツに海外からの注目が集まっていることも外国人観光客増加の理由として考えられています。
南北に長い国土を持つ日本では、幅広い観光が楽しめることが魅力の一つです。歴史を感じられるスポットから大自然を満喫できるスポットまで、趣の異なる複数の観光地が存在し、何回訪れても飽きないと感じさせます。
外国人を魅了するのは観光スポットだけではありません。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食や質の高い日本製の電化製品など、日本独自の文化や製品を求める外国人も多くなっています。
訪日外国人観光客の行動パターンは?
続いては、近年日本を訪れる訪日外国人観光客の行動パターンを整理してみましょう。
人気のゴールデンルート
初めて日本を訪れる外国人には、ゴールデンルートと呼ばれる人気の観光地があります。東京、京都、大阪など定番の観光地から、箱根、富士山など東京近郊の観光地にも人気が集中しています。
リピーター数も増加
日本を気に入り、何度も日本を訪れる外国人観光客が増加しています。2017年の調査では、日本を訪れた観光客のうち、訪日回数が2回以上の旅行者は全体の61.7%を占めました。
リピーターが多い背景には日本旅行の高い満足度があります。上記と同じ調査での訪日旅行の満足度では、「大変満足」または「満足」と回答した人の割合は92.7%にものぼりました。
日本へ「必ず来たい」「来たい」と回答された数も93.9%と非常に高い割合になっています。
リピーターなどに求められるコト消費
リピーターが増えるにつれ、訪日観光客が求めるコンテンツも変化しています。ただ単に観光地を訪れるなどの「モノ消費」からより体験型のコンテンツ、「コト消費」を求めるようになっています。
「訪日回数別日本滞在中の行動と次回したいこと」について、韓国、台湾、香港からの訪日観光客数のうち、日本を訪れる回数が増えるほど、コト消費を求める傾向が強まっています。
コト消費の中でも人気なのが「日本酒を飲むこと」「温泉に入ること」「スキー・スノーボード」で、どれも日本をより深く楽しめるコンテンツとなっています。
6割超の「訪日リピーター」はどこへ行く?温泉・スキーなど「コト消費」が人気だった!
観光庁によれば、訪日回数が2回以上の訪日リピーター(訪日外国人観光客)の数は、1,761万人(61.4%)に達することがわかりました。2016年に比べて300万人近く増加しています。 さらに、日本を訪れている国籍ごとの割合を見てみると、韓国が最多の30%で、続いて台湾が25%、中国18%、香港13%です。韓国、台湾、中国、香港の4つの国や地域で、日本を繰り返し訪れているリピーターの数は86%を占めています。 また、日本を10回以上訪れているヘビーリピーターも13.1%いることがわかりま...
これだけは外せない!インバウンド事業者に求められること3点
ここまでインバウンドが増加している背景と最近の傾向をご紹介してきました。
では実際に訪日観光客を受け入れるには何が必要なのでしょうか。インバウンド事業者として必要な対応の代表例を3つご紹介します。
1. スムーズな免税対応
中国人の「爆買い」に代表されるように、日本での買い物は外国人にとって魅力的なコンテンツの一つです。
しかし、免税対応に時間がかかると観光客にとって不満の元になり、最悪の場合、購入の取り消しによって販売機会を失ってしまうことになりかねません。
パスポートの提示を求めたり、必要書類の説明や空港での手続きなどの対応をスムーズに行うには事前の準備が不可欠です。
爆買いとは
日本政府観光局(JNTO)によると、2019年、訪日中国人客数は全市場で初めて900万人を突破しました。東南アジアや欧米豪からの訪日客数の方が伸び率が高いとして注目され始めていますが、いまだ訪日客数・消費額ともに中国が首位を守り続けています。 2014年ごろから訪日中国人観光客の日本での「爆買い」がたびたびメディアを賑わせてきましたが、以前に比べると最近では目立たなくなってきた印象があります。 しかし、日本製品への高い信頼もあり、引き続き中国人観光客に日本製品は非常に人気です。特に、医...
2. 外国語の案内や通訳
インバウンド事業にとっては言語面での対応も重要です。「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート結果」によると、英語や母国語が通じないことでコミュニケーションに困った経験のある外国人観光客は32.9%にものぼっています。
同時に23.6%の人が地図や観光案内に「多言語表示が少ない」と感じています。これらのデータからもスムーズな観光のための言語環境の整備が不十分であることが如実に示されています。
実際の接客の場で外国語に苦手意識のある人は少なくありません。従業員への語学セミナーへの参加を進めたり、翻訳機などを必要に応じて導入したりする対応が必要になってくるでしょう。
3. 無料Wi-Fiの充実
最後にに紹介するのが無料Wi-Fiの整備です。日本のWi-Fi環境の脆弱性はかねてから指摘されており、外国人環境の不満の原因になっています。
「外国人が訪日旅行中に欲しかった情報」では約5割の人が無料Wi-Fiの未整備を訴えています。日本国内の無料Wi-Fiは絶対量が少なく、あったとしても登録のための手続きが煩雑で、訪日外国人のストレスになっています。
スマートフォンの普及により、スマホ片手に旅行するスタイルが普通になってきています。Wi-Fiが旅行の大前提になっているのです。
無料Wi-Fiを充実させることが他の事業者との差別化がされ、インバウンド旅行者に選ばれることにつながります。
外国人観光客のニーズにこたえた対応を
現在、訪日外国人数は右肩上がりとなっています。日本が持つ魅力が確実に世界に広がっており、来年に迫った東京オリンピックの開催は、こうした傾向をさらに強めることになるでしょう。
せっかく遠方から日本を訪れてくれる訪日外国人の滞在を充実したものにするため、小売店などでは免税対応、また多くの施設で多言語対応、Wi-Fiの整備は必須と言えるでしょう。環境の整備が完了するまでに、時間がかかる場合もあるので、今後インバウンド需要が見込まれる場合には早めに準備に取り掛かる方が良いでしょう。
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【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
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詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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