政府は、オリンピックが開催される2020年、訪日外国人客数の4,000万人突破を目標としています。
そして、インバウンド業界をさらに盛り上げ、個々の企業の利益を上げていくために、飲食店や販売店のインバウンド担当者による適切な対策が必要となります。
この記事では、グラフを用いた訪日外国人客数の動向解説だけでなく、適切なインバウンド対策についてわかりやすく解説します。
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訪日外国人客数の予測
オリンピックなどの国際的なイベントが開催され、訪日外国人客数の動向を気にするインバウンド担当者も多くいるでしょう。
近年、日本を訪れる外国人観光客は右肩上がりに増加しています。まずは、その具体的な数値や、今後日本が目標としている訪日外国人客数について解説していきます。
2018年は3,000万人突破
2014年当時と現在の訪日外国人客数を比較すると、5年前の1,341万人に対して、2018年の訪日外国人客数は3,119万人と、約2.3倍の伸び率で増加しています。日本政府観光局が統計を取り始めてから過去最高の数です。
とりわけ、ベトナムからの訪日外客数の伸び率が前年比26%増となりました。全体数で言えば中国や韓国といった東アジアより少ないものの、ASEAN諸国からの訪日観光客の動向は重要性を増していくと考えられます。
政府目標は2020年4,000万人、2030年6,000万人
日本政府は2018年までの訪日外国人客数の伸び率を加味したうえで、2020年の訪日外国人客数を2015年の約2倍の数値である4,000万人に目標設定しています。また、2030年には2018年の2倍にあたる6,000万人の訪日外国人客数を目標としています。
2020年の訪日外国人客数は、伸び率+15%を維持することで達成する水準となります。2020東京オリンピックの効果も鑑みれば、十分期待できる数値です。
2019年、訪日外国人客の消費動向
少し前までは訪日中国人による「爆買い」を始めとしたモノ消費が顕著でしたが、現在は落ち着きを見せています。
ここでは、現在、そして今後の消費動向について解説していきます。
旅行消費額は過去最高を更新中
2018年の観光庁の調査によれば、旅行消費額は推計4兆5,189億円となり、過去最高を更新したことが明らかになっています。
この数字は2012年の1兆1,000億円から7年連続で対前年増を継続しており、訪日外国人客数の増加とともに消費額も大きくなっています。
また、国籍・地域別の旅行消費額は、中国が1兆5,450億円(構成比34.2%)、韓国が5,881億円(同13.0%)、台湾が5,817億円(同12.9%)、香港が3,358億円(同7.4%)、アメリカが2,893億円(同6.4%)であり、アメリカを除いたすべての国がアジア圏であることが大きな特徴です。
進むコト消費
日本国内のサービス業に関しても「モノ消費からコト消費への移行」が大きく取り上げられていますが、インバウンド業界ではその傾向がかなり顕著になってきています。
前年と比べると、買い物代の構成比は2.4ポイント減少しており、宿泊費と飲食費の構成比が1%ポイント以上増加していることがわかっています。
中国をはじめ各国ではネット通販の普及が進んでいます。少し前には旅行中にここぞとばかり買われていた商品も、今ではスマホアプリやインターネットに接続したPCを通して手に入るようになっています。その代わりに「日本でしかできない体験」へと関心が移行しています。
コト消費にも、リゾートホテルや温泉旅館などを指す純粋体験型、バレンタインやクリスマスなど季節限定のイベント体験型などの種類がありますが、訪日外国人客には着物体験や酒造見学といった、日本ならではの体験に注目が集まっています。
コト消費に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
「モノ消費からコト消費」の意味や種類とは?変化の理由とインバウンド対策方法を解説
世界的な消費行動の変化として、商品を購入する「モノ消費」から体験型の「コト消費」へと変化しています。 この変化は国内消費だけでなく、訪日外国人観光客のために酒造見学や田舎暮らしの体験ツアーなどが提供されている事からも変化を感じ取ることができます。 この記事ではモノ消費からコト消費へシフトしている理由とインバウンド誘致における対策方法について解説します。 インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応...
中国ではより顕著にコト消費化
2015年の流行語でもあり、当時日本の旅行消費において大きな存在感を持っていたのが中国人による「爆買い」です。
現在もなお国別旅行消費額1位をキープしている中国ですが、2016年から日本を訪れる目的が少しずつ変化しています。
2016年は円高の影響により円での消費が相対的に高くなったうえに、中国政府の爆買い防止措置によって持ち込み商品にかかる関税が上げられました。この影響から爆買いは沈静化し、モノによる旅行消費のブームは過ぎ去りました。
しかし、今もなお中国人による旅行消費は好調を維持し、集団でスキーを楽しむ「爆滑り」や、中国ビジネスマンが日本の企業見学を行う「爆学」といったように形を変えて続いています。
「爆滑り」「爆学」に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
爆買いとは
「爆買い」とは、主に訪日中国人による一度に大量の商品を購入する行為をいう俗語です。2015年には流行語大賞を受賞するほどの社会現象となりましたが、昨今は以前と比べ下火になったとの論調もあり「爆買いは終わった」といわれることもあります。 一方で最近でも、ドラッグストアや小売店に足を運べば、そこにはやはり日用品や医薬品を購入する訪日中国人の姿があります。しかし、広く訪日外国人観光客の消費傾向が「モノ消費」から「コト消費」へと変化していることも事実です。 この記事では、果たして爆買いは本当に...
2019年に重視すべきインバウンド対策3つ
では、今後の訪日外国人の動向に対応するための、効果的なインバウンド対策にはどのようなものがあるのでしょうか?
東京オリンピックなどをきっかけとした訪日外国人客数の増加だけでなく、モノ消費からコト消費への関心の移行なども考慮に入れて考えていきましょう。
1. 多言語対応
インバウンド対策の代表ともいえるのが多言語対応です。特に観光目的で訪日した外国人は、日本語が全く分からないというのが普通でしょう。
モノ消費が全盛だったころは、買い物の際に利用するレジや案内などの機械が代用できる業務のみ多言語化すればよかったかもしれません。
アクティビティに注目が集まるこれからの時代は、英語や中国語などを話せるスタッフを常駐させるといった、より高度な多言語化が必要になると考えられます。
2. 海外からの予約対応
本国から日本までの移動に長い時間をかける訪日外国人観光客には、短い時間で多くの経験をしたいというニーズがあります。
そのため、日本を訪れる前に宿泊先や利用するサービスをおさえられる、予約対応もその必要性を増すと考えられます。
現在ホームページや予約画面を多言語化できていない宿泊施設も少なくありません。東京オリンピック開催期間におけるニーズなどから言っても、海外からの予約に対応することは重要な対策です。
3. 越境EC対応
中国で顕著になっている、越境ECでの売買もインバウンド担当者が着目しておきたいトピックスの1つです。
現在の中国では、年初の電子商取引法の施行により、SNS上で商品を宣伝、販売するソーシャルバイヤーが減少したと言います。こうした状況を受けて、海外製品を購入したい消費者が越境ECを利用するようになったとも言われています。
中国のEC市場では、アリババが運営する天猫(Tmall)や京東の京東商城(JD.com)の両サービスが圧倒的なシェアを獲得しています。一方で、越境ECの場合には海外製品に特化したサイトや、特定の国の商品に特化したサービスのファンも存在します。
また最近では、農村部の消費者に支持される「共同購入」に特化したECの拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)や、短時間の動画とEC機能を組み合わせた「ショートムービーコマース」といったジャンルの確立など、新たな動きも見られます。
今回は旅行消費額の大きい中国のECサイトを紹介しましたが、自社がターゲットとする国の実情に合わせたEC展開は、中国に限らず検討すべき項目でしょう。
また、中国のECサイトについては、下記の記事で詳しく解説しています。
【2019年最新/保存版】中国EC人気サイトランキング5選
日本の日常でもECの利用が増えてきています。海外でも同様の傾向があり、インバウンド市場でも自社商品の購買チャネルとしてECの利用価値はますます高まっています。海外のECサイトを正しく利用することは、市場を広げ、売り上げを上げていくために重要になってくると考えられます。この記事では訪日旅行に関連した市場の中でもひときわ大きな存在感を持つ「中国」のECサイトについて解説します。目次越境ECとは?「旅アト」との関係は?そもそもECとは?越境ECとは?そのメリットは?越境ECと深い関係にある「旅ア...
訪日外国人は今後も増加!「コト消費」に合わせたインバウンド対策を
2020年の目標数である4,000万人は、15%の伸び率を維持すれば達成する見通しとなっています。東京オリンピックやその後も続く政府の観光施策によって、日本のインバウンド業界はますます盛り上がっていくものと考えられます。
また、コト消費やネット通販が主流となってきている現在、多言語対応、海外からの予約対応、越境EC対応といったインバウンド対策が欠かせないものとなってくるでしょう。
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