2018年7月、日本航空(以下、JAL)は、国際線ローコストキャリア(LCC)に特化した準備会社「ティー・ビー・エル(T.B.L.)」を設立しています。
JALはT.B.L.の名称で準備を進めていたこの航空会社について、2019年3月には正式な社名を「ジップエア トーキョー(ZIPAIR Tokyo)」とすることを発表しています。
JALの100%子会社として運営されるこの新会社は、拠点となる成田空港とアジア全域、北米や欧州を結ぶ路線の就航を視野に入れた日本初の中距離LCCです。7月には国土交通省航空局から航空運送事業の許可を取得し、1路線目となる成田ーバンコク線は2020年5月14日に開設を予定しています。
この記事では、今回JALが本格参入するLCCの事業概要やコンセプトに加えて、日本のその他のLCC事業展開について紹介していきます。
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JALがLCCに進出
JALはこれまで、ジェットスター・ジャパンの33.3%株主として国内線及び短距離国際線のLCC経営に携わってきましたが、2018年7月に100%出資の新会社を設立しLCC業界への本格進出を始めます。
日本初の中距離LCC就航を準備「ティー・ビー・エル(T.B.L.)」
日本では数多くの国内線および近距離間国際線のLCCが就航されています。
JALが立ちあげるLCCは、既存の国内線や近距離国際線と異なり、アジア全域及び北米や欧州地域まで距離を伸ばした日本初の中距離国際線LCCとなります。
2018年7月に設立された準備会社は「ティー・ビー・エル(T.B.L.)」と命名されました。この準備会社の名前は「To Be Launched」の略で、「正式な社名をつけて運航するが、準備段階の『気分の高揚感を込めた名前』」とJALの斉藤典和専務は説明していました。
準備会社の概要は以下の通りです。
会社概要
会社名: 株式会社ティー・ビー・エル
本店所在地: 千葉県成田市古込字古込1番地1(JAL成田オペレーションセンター内)
設立: 2018年7月31日
事業内容: 航空運送事業など
資本額: 9億8,000万円(うち、資本金:4億9,000万円)
株主構成: 日本航空株式会社(100%出資)
代表者: 代表取締役 西田 真吾 (第1回取締役会にて指名された後、社長に就任予定)
新会社はJALの連結子会社となり、JALは3年での黒字化を目指します。
航空・空港のインバウンド対策
島国である日本は、船を使わない限り空路でしか国内外に出入りすることができません。訪日外国人観光客も、その多くが飛行機を使って日本を訪れます。その意味では、航空・空港は日本のインバウンドにとって重要な拠点といえます。訪日外国人が最初に「日本」というものにふれる場である航空・空港は、インバウンド対策やインバウンド集客のためにどのような取り組みを行えばよいのでしょうか?このページでは、航空・空港の様々なインバウンド対策事例集について施策別に事例をまとめています。
連結子会社とは?
親会社の決算時に、連結決算の対象となる子会社を連結子会社といいます。
連結子会社になるにはいくつか条件があり、親会社が子会社の議決権を半数以上持っている場合でも、以下の企業は連結決算の対象外となります。
- 支配が一時的であると認められる企業
- 利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある企業
また、子会社の資産・売上等を親会社の財務諸表に含めなくとも、利害関係者が合理的な判断をできるほど、子会社の経営規模が小さく重要性に乏しい場合は、連結決算の対象から外せます。
ZIPAIR(ジップエア)とは?
2019年3月、T.B.L.はLCCのブランド名を「ZIPAIR(ジップエア)」に決定、それに伴い新会社の名前を株式会社ZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)とすることを発表しました。
ブランド名および社名は、矢などが早く飛ぶことを表す英語の擬態語である「ZIP」に由来し、「フライトの体感時間が短い」航空会社であることを表現しています。
ブランドコンセプト
「ZIPAIR」のブランドコンセプトは以下の通りです。
Z_ Safety
日本の高クオリティなオペレーションと最新機体ボーイング787を採用し、世界最高水準の安全・安心を提供していきます。
Z_ Human Centric
価値観の多様化。コネクテッド時代。時代とともにお客さまの求めることも変わっていきます。私たちはそんな新しい人たちの、新しいニーズに応えたサービスを提供していきます。
Z_ Value
十分に満足できる飛行機での移動を、お客さまに納得いただける価格で提供していきます。出典:ZIPAIR Tokyo
ブランドロゴ
ZIPAIRのブランドロゴは二種類あります。「ブランドロゴ1」は「ZIPAIR」とブランド名すべてを記したもの、「ブランドロゴ2」は「Z_」とのみ記されたものです。
ブランドロゴ2は、「ZIP」の頭文字で「究極」を意味する「Z」を用い、その後ろに「AIR」を意味する空白「_」をつなげました。
この空白である「_」を「Infinite Blank(インフィニット・ブランク=無限の空白)」と呼び「“究極”のその先を目指すエアラインであり続けるために、変わり続ける時代とお客さまの、真のニーズに応えるサービスを無限に追求し続ける」とJALは説明しています。
就航路線
2019年7月、ZIPAIR Tokyoは、国土交通省航空局から、以下内容に基づく航空運送事業許可を受けました。
運航ダイヤについては今後の申請に基づき、決定される予定です。1. 使用航空機:ボーイング787-8型機(座席数290席)
2. 運航路線・運航開始予定日
・【路線】東京(成田)=バンコク(スワンナプーム)【運航開始予定日】2020年5月14日
・【路線】東京(成田)=ソウル(仁川)【運航開始予定日】2020年7月 1日
機体にもZの文字
機体のデザインも発表されています。垂直尾翼は、グレーをベースに配色、シンボルマークである「Z_」の文字が大きく置かれています(左側面は、「_Z」と記載)。
機体側面に前後に伸びたグリーンのラインは、「矢が『ビュッ(=ZIP)』と飛ぶように、目的地へ向かって一直線に大空を飛び行く姿」を表しています。
機体に使われているグレーとグリーンは、ZIPAIR Tokyoのコーポレートカラーです。
メインカラーであるグレーは、「ハーモニー・グレー」と名付けられ「コストと満足度の調和」を示し、サブカラーであるグリーンは「トラスト・グリーン」と名付けられ「安全運航・定時運航などの高品質なオペレーション」を意味しています。
「着まわし」がコンセプトの制服
ZIPAIRの制服は、「着まわし」がコンセプトです。その日の天候や体調・気分に合わせて、複数の統一感のあるアイテムの中から組み合わせを変えられます。
デザイナーに「TARO HORIUCHI」や「th」など、世界的に注目されるブランドを立ち上げた堀内太郎氏を起用しています。
シューズにはスニーカーを採用、立ちっぱなしや走ることも頻繁にあるエアライン業務に則した機能性を重視しました。
「日常服のように制服も着る人の意思で自由に組み合わせられれば、スタッフはもっと自分らしく生き生きとした働き方で、集中して業務に邁進できる」という「機能美」のコンセプトを追求した制服です。
日本にもたくさんのLCCがある
これまで、JALの新LCC会社について説明してきましたが、日本で国内線・国際線を就航しているLCCは5社あります。
- ジェットスター・ジャパン
- ピーチ・アビエーション
- エアアジア・ジャパン
- バニラ・エア
- 春秋航空日本
今回は、以上5社のうち、代表的な3社を紹介します。
※編集部注(10/04編集)
上記6社に加えて「スカイマーク」や「エア・ドゥ」など「LCCには該当しないものの、フルサービスキャリアよりも安い価格設定にしている航空会社」をLCCとして紹介しておりました。お詫びして修正いたします。
1. ジェットスター・ジャパン
ジェットスター航空は、オーストラリアの大手航空会社カンタス航空の完全出資会社です。
ジェットスター・ジャパンは、その豪カンタスグループ、日本航空(JAL)、三菱商事、東京センチュリーの出資会社です。
2012年7月、日本国内線の就航を開始し、2015年2月には国際線にも路線を広げています。現在、国内16都市・24路線、国際4都市・7路線で就航しています。
2. ピーチ・アビエーション
ANAホールディングスが77.9%株主の会社であり、同社の連結子会社です。
2012年3月、大阪ー札幌、大阪ー福岡線間で就航をスタートし、2012年の5月には大阪ーソウル線で国際線就航も開始しました。
2019年8月1日現在、国内線17路線、国際線17路線が運航しています。2019年末までにバニラエアとの経営統合を進めており、統合の過程でバニラエアが運航していた路線を、ピーチ・アビエーションに移管しています。
3. エアアジア・ジャパン
エアアジアは、マレーシアを拠点としたアジア最大規模のLCCです。
エアアジア・ジャパンは、そのエアアジアと全日本空輸(ANA)が提携し、2012年8月から運航を開始しました。
しかし2013年に提携は解消され、エアアジア・ジャパンはANAホールディングス100%出資のバニラエアとなりました。2014年に改めてエアアジアは、楽天、ノエビアホールディングス、アルペンなどと合弁し、「エアアジア・ジャパン株式会社」を設立しました。
2017年10月に、名古屋ー札幌間の就航を開始し、2019年2月から初の国際線として名古屋ー台北線の運航を開始しました。
日本初の中距離LCCの誕生、新たなコンセプトは市場開拓を果たすか
業界再編の激しい日本のLCC業界で、日本初の中距離国際線LCCを目指すZIPAIRの今後の動向に、注目が集まります。
これまでのJALのFCL(フルコストキャリア)としての経験や、ジェットスター・ジャパンでの経験を活かし、JALが打ち出す新しいコンセプトが、いかに消費者の心を掴めるかが、ZIPAIRが飛躍する鍵となるでしょう。
<参照>
http://www.zipairtokyo.com/ja/press/article/2019/0308.html
http://www.zipairtokyo.com/ja/press/article/2019/0411_02.html
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