福島県のインバウンド事例から見る復興事業とデジタルマーケティングの活用法

公開日:2019年12月13日

福島県は広大な自然や果物などが豊富で、観光事業が県を支える産業の一つでした。

しかし2011年3月に発生した東日本大震災以降、国内外からの観光客の足が遠のいているという問題がありました。

福島県は災害後の復興に取り組みながら、インバウンド対策にも注力しています。

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デジタルマーケティングを活用し「ダイヤモンドルート・ジャパン」設立

福島県は栃木県・茨城県と連携しダイヤモンドルート・ジャパンを設立しました。

ダイヤモンドルート・ジャパンは、人気観光地「日光」を擁する栃木県、「ひたち海浜公園」がある茨城県が3県一丸となり、東京に一極集中している訪日外国人観光客を誘致するために行われたプロモーションです。

世界が感動した『Diamond Route Japan』とは

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ターゲットを絞り込みより効果的な施策を打ち出す

福島県では震災後、災害被害だけでなく風評被害にも悩まされました。

インターネットで「FUKUSHIMA」を検索すると「震災」「(セシウム濃度等)誇大数値情報」などネガティブな情報が多く、インバウンド誘致のためにはこれらの誤ったイメージを覆す必要がありました。

そこで福島県観光交流課は、インバウンド対策のためにGoogle やマーケティングのアドバイザーと連携し、様々な施策を打ち出しました。

アドバイザーからの助言により、まずは風評被害の影響が比較的少ないと思われる東南アジア、オセアニアを中心とした国をターゲットとして絞り込みました。

福島県がターゲットとしたのが、訪日外国人観光客が増加傾向にあった台湾とタイ、チャーター便が飛び始めていたベトナムとスキー客が見込めるオーストラリアの4か国です。

ターゲットとなる国々を明確化したことにより、各国の嗜好に合わせたプロモーションを実施することができました。

外国人目線を意識した質の高いプロモーション

福島県におけるデジタルマーケティングのポイントは、外国人目線を意識したプロモーションにあります。

ターゲット国の嗜好をリサーチした上でプロモーションに取り組むことはもちろん、ニーズをおさえた質の高いコンテンツの配信に注力しています。

具体的には「ヒストリー」、「アウトドア」、「ヘルス」、「ネイチャー」の4つをメインテーマとして、それぞれのテーマに特化したコンテンツを配信しています。

4テーマについてのコンテンツは、外国人目線で作成された動画をメインとしており、ダイヤモンドルートに属する栃木県の「あしかがフラワーパーク」、茨城県の「ひたち海浜公園」、「3県の祭り」などの映像を取り入れてプロモーションに役立てています。

SAMURAI spirits

ヒストリーとサムライ」についての動画コンテンツが特に視聴回数を伸ばしていることに注目した福島県では、2018年度から「サムライ・スピリット・ツーリズム」事業をスタートさせました。

弓道体験、剣術体験、サムライの精神についての理解など、より本格的なサムライ要素を取り入れたツアーを実施することで訪日外国人客の取り込みを目指しています

サムライ・スピリット・ツーリズムは、近年のコト消費に対するインバウンド需要増加に伴い、人気を博しています。

また、Facebookでサムライについての情報を発信する”Path of the Samurai”においても、福島県が主導する本格的なサムライ・スピリット体験は紹介されており、今後はさらに人気を呼ぶと予想されています。

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新しい観光事業「ホープツーリズム」の誕生

世界的に見ても東日本大震災で起こったような甚大な被害を受けた例はなく、福島県では被災後の復興へと進む姿をツーリズムに活かす施策を行いました。

以下では、福島県の地域観光を促進する福島県観光物産交流会、ホープツーリズムの概要、県レベルでの取り組みについて解説します。

ホープツーリズムとは

ホープツーリズムとは、福島県が観光促進の一環として打ち出したツーリズムの1つです。

福島県が受けた被害、被災地の現状、復興へと進む姿を観光客に伝えるという新たなツーリズムを生み出しており、ホープツーリズムには大地震や津波、放射線の被害に遭ったことがない人々に福島県の実例を通して「新しい学び」を提供する狙いもあります。

具体的には、福島県復興ツーリズムモニターツアーを実施しており、観光客は語り部によるガイドを受け、農家への民泊、農村生活体験ができます

福島県観光物産交流会の主な活動内容

福島県観光物産交流会では、福島県の地域観光を促進するために、福島県の新たな特産品の産出、販売ルートの拡大を進めています

また、物産や観光に関連する設備の管理、運営もサポートしており、観光客誘致のためのインバウンド対策にも取り組んでいます。

福島県観光物産交流会は観光や物産を中心とした地方経済の活性化を目指しており、復興を進める上で県や地方自治体の経済力はなくてはならない存在であるとしています。

福島県としての取り組み

福島県では、訪日外国人観光客の受入対応やおもてなし研修会の実施、宿泊施設向けコミュニケーションボードの作成をしています。

研修会では、外国語が話せない店舗スタッフ、ホテルスタッフ向けに外国人対応のポイントを学ぶ機会を提供しており、宿泊施設には食事制限、アレルギー有無などの繊細な問題に対して、コミュニケーションボードを使った意思伝達を勧めています。

また、通信環境の整備を進めるために公衆無線LAN設置のための補助金の交付もしており、多角的な視点からインバウンド対策に取り組んでいます。

福島県のインバウンド事情

福島県のインバウンド事情はどのようになっているのか、 2018年のデータをもとに福島県のインバウンド事情および福島県を取り巻く環境について解説します。

観光需要

年間を通しての訪問者数は105,491人訪問率は0.34%、延べ宿泊者数は176,360人となっており、順位に換算するといずれも全国第40位となります。

一方で、1回の旅行あたりの消費単価では49,798円/人となっており、全国第15位の結果を示しています。

消費額が高い結果となった要因は、平均宿泊日数が7.4泊と比較的長いためであると考えられ、福島県にとっての今後の課題は訪問者数、訪問率の増加、平均宿泊日数のさらなる増加であると言えます。

インバウンド対応状況

続いて外国人の受け入れ体制についてまとめます。

Japan Free Wi-Fiの設置施設は2,256箇所で全国第22位、外国人観光案内所設置数は16箇所で全国第30位、案内表示の英語対応率は50〜75%程度です。

いずれも訪日外国人からニーズとして挙げられることも多い点のため、さらなる受け入れ体制改善を図るべきであると言えます。

また、おもてなし事業者登録件数は381件で全国第20位、免税店舗数は245店舗で全国第34位となっています。

福島の訪問者数が多いのは台湾!

福島県を訪れる外国人観光客について内訳を見てみると、台湾からの訪日客が最も多く、その割合は29.98%にものぼります。

同様に消費金額においても台湾からの訪日客は31.26%を占めており、福島県を訪れる人数だけでなく1人あたりの消費額も比較的多いことがわかります。

台湾には親日思想が強い人々が多く、台湾からの訪日客の獲得がインバウンド市場の鍵となっている点は福島県に限った話ではありません。

イメージ改善と環境整備が課題

2011年の東日本大震災以降、一時は観光客が激減した福島県ですが、迅速かつ的確なインバウンド対策によって観光業は震災前の勢いを取り戻しつつあります。

しかし、未だに地震や津波、放射線の被害を受けた街というイメージを拭い去ったとは言えない状況です。

引き続き風評被害対策を行いつつ震災の歴史や記憶を風化させることなく、国内外からの観光客や次の世代へと伝えていくようなツーリズムを促進していく必要があるでしょう。

またJapan Free Wi-Fiの設置施設は2,256箇所で全国第22位、案内表示の英語対応率は50〜75%程度など、訪日外国人観光客が過ごしやすいようにインフラを整備することでさらなる訪日外国人観光客の誘致が見込めるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!