和歌山県のインバウンド事例、3つを紹介!インバウンドデータと現状・アジアからの訪日客に人気・市場別プロモーション・高野山や熊野古道・受け入れ環境整備も解説

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和歌山県には豊かで美しい自然と多くの観光地があり、代表的な場所では高野山や熊野古道などが挙げられます。

近年は訪日香港人が多く和歌山県を訪れているという傾向も見られ、明確な観光戦略に基づいたインバウンドに対する受け入れ環境の整備が進んでいます。

熊野古道は、オリンピック、パラリンピックの聖火リレーの経路にもなっています。和歌山県内では、4月10、11日に14市町で聖火がつながれます。

この記事では、和歌山県のインバウンド事例について紹介します。 


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和歌山県のインバウンドの現状

和歌山県には、訪日外国人観光客が海外から直接和歌山県に入れるような空港や港湾はありません。

大阪府の関西国際空港から鉄道や高速バス、レンタカーなどの陸路で和歌山県に入るルートがメインになります。

訪日外国人の訪問者数 23位

和歌山県のインバウンドに関するデータを見てみると、2019年の訪日外国人の都道府県別訪問率は1.07%、訪問者数は34万341人で全国第23位です。

和歌山県では2016年に延べ宿泊者数が50万人に達し、インバウンド需要の取り込みに成功しているといえます。大きな要因として、和歌山県が誇る観光地と豊かな自然を「コト消費」に結びつけられたことが挙げられます。

コト消費」とは商品そのものではなく、体験に価値を求める消費傾向のことで、観光産業などでは重要な目標になってきます。

和歌山県名産のみかん狩りツアー高野山、熊野古道など伝統文化と美しい自然を体感できるツアーなどが訪日観光客に好評を博し、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトチェンジに成功しています。

和歌山県は訪れる観光客のニーズをよくつかみ反映させる「マーケット・イン戦略」に成功したともいえるでしょう。

和歌山県に来ている訪日外国人の割合

和歌山県を訪れている訪日外国人を国別割合で見てみると、1位は中国で24.05%を占め、次いで香港が17.85%と続きます。

順位で見ると香港が2位、台湾が3位ですが、この2国からはほぼ同じくらいの観光客が和歌山県を訪れています。

また東アジア市場の他、タイ4.72%はじめ東南アジアからの訪日客もあり、和歌山県を訪れる訪日外国人観光客の4分の3はアジアの国々が占めています。

その他、アメリカ7.61%、イギリス5.68%、オーストラリア4.72%と、東南アジア以上に欧米豪市場から一定の評価をされているようです。

和歌山県に来ている訪日外国人の割合2019年 訪日ラボ 和歌山県のインバウンド需要

▲和歌山県に来ている訪日外国人の割合:訪日ラボ「和歌山県のインバウンド需要」より

和歌山県のインバウンド需要

和歌山県は紀伊半島の先端部に位置することから、大阪府と隣接しているもののインバウンドとしては不利な地理となっています。しかしながら、訪問率や訪問者数、宿泊人泊数は全国上位半分に入り込んでいます。


「世界の訪れるべき地域ベスト5」に紀伊半島がランクイン

2017年発表の世界的旅行オーストラリアの旅行専門誌・ロンリープラネットの「Best in Travel 2018」において、おすすめ旅行先に紀伊半島が第5位にランクインしました。

和歌山県内の熊野三山と高野山、それに奈良の吉野・大峯の3カ所の霊場が評価されたようです。これらの場所は2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されたこともあります。

それを受けて和歌山県はロンリープラネットWebサイト内で3回に分けてPR活動を実施しました。

また、県職員が実際に世界21の国と地域を訪れて広報活動を展開し、地道に知名度を挙げる取り組みを行っています。

和歌山県としてのインバウンド戦略

一口にインバウンド対策と言っても、何の方針や戦略もなしに行うことは、効率の面から考えても好ましいことではありません。

和歌山県はどのような戦略を打ち立ててインバウンドの需要を取り込もうとしているのか、その戦略について詳しく解説していきます。

市場別のプロモーション施策

和歌山県を訪れる外国人観光客の4分の3を占める東アジア・東南アジア市場では、桜などの四季の自然や白浜、勝浦の温泉、マグロなどのグルメが人気です。

対して、欧米豪市場では、高野山と熊野古道などの日本の歴史や精神、文化などの分野が人気です。それぞれの市場ごとのニーズに合わせて観光資源の魅力を発信し、観光客の誘致に取り組んでいます。

市場ごとにPR活動に用いる媒体を変えているのも特徴のある取り組みです。

欧米豪市場向けには世界的なニュースサイトでの広報やスポーツイベントでのキャンペーンを行う一方、アジア市場ではASEANやインドの国営放送へニュースを配信しています。

多言語観光Webサイト「Visit Wakayama」も開設しており、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、繁体/簡体中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語の9言語に対応しています。

体験型観光・教育旅行の推進

従来の団体旅行から個人旅行へのシフトに伴い、個人で旅行の計画を立てる人が増加しています。

その影響でテーマ性・趣味性の高い観光が人気になり、その需要を取り込むことがカギとなっています。

そのため和歌山県では、和歌山県でしかできない、和歌山県ならではの体験型観光・サイクリングなどを積極的に推進しています。

また、海外からの小中学校の教育旅行の誘致強化にも力を入れています。

教育旅行を通じて海外の若い世代に和歌山県の魅力を伝えることができれば、数年後にまた和歌山県を訪れてくれるリピート層になる可能性があり、きわめて重要な取り組みといえるでしょう。

広域観光の実現:二次交通問題を解消

各地の観光地が抱える問題の一つに、「二次交通問題」があります。大きなターミナル駅や新幹線の駅、空港などから観光地に向かう公共交通機関が不足している、もしくは不便であるという問題です。

この問題に対して、和歌山県は関西国際空港と連携を図り、高野山までの直通リムジンバスを運行しています。

県内でも人気の観光地である高野山と熊野古道を結ぶリムジンバスも2社で運行し、県内での広域観光の促進に努めています。

もちろん、乗降・乗り換えの利便性向上のため多言語で案内にも力を入れており、県内のバス事業者四社とJRで統一した方針を作り整備を進めています。

受け入れ環境整備

増加する外国人観光客に対応するために受け入れ環境の整備も進んでいます。

例えば、「フリーWi-Fi大作戦」という物があります。和歌山県では、およそ2年間の間に約1,600以上のアクセスポイントを県内の観光施設に整備しました。

そのほかにも、24時間の対応の多言語電話通訳・翻訳サービスを準備したり、おもてなしトイレ大作戦と銘打って観光関連公衆トイレを重点整備するなどの施策に取り組んでいます。

和歌山県のインバウンド偏差値、実はこんなに高かった!「空港無し」の観光地の戦い方:欧米人観光客3割を実現した3つの取り組み

和歌山県は、日本屈指の有名観光地である京都や大阪に隣接しながら、訪日外国人観光客の訪問率・訪問数ともに平均以上を記録しています。近年はアジアや欧米など、さまざまなインバウンド市場を取り込み、受け入れ体制の強化にも取り組んでいます。今回は、和歌山県の地域ならではの魅力を活かしたインバウンド誘客例をふまえ、和歌山県が訪日客を惹きつける理由について紹介します。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します...


和歌山県内のインバウンド事例

和歌山県全体として取り組んできた事例を紹介してきましたが、何よりも重要なのは個性や特色の異なるそれぞれの観光地でのインバウンド対策です。

ここでは県内の観光地ごとの事例に焦点を当ててご紹介します。

1. 外国人目線を活かしたプロモーション:田辺市の事例

田辺市では訪日外国人観光客を取り込むために、広域プロモーションを行う専門の組織を立ち上げ、そのメンバーに日本人だけでなく外国人も採用しました。

国や地域ごとにではなくテーマでターゲティングし、熊野古道での「巡礼」や「トレイル」というテーマに魅力を感じた層を取り込むことができました。

ネイティブの外国人が熊野古道の魅力を外国人の目線で一から書き下ろした情報を発信し、それに合わせて各種パンフレットや広報資料、看板などの英訳や表現を統一しました。

このことによって熊野古道に関して統一したイメージ戦略を持ち、一体的なブランディングを行いました。

団体旅行や目先の観光客数にとらわれることなく、旅慣れた個人客を対象に質にこだわって熊野古道の魅力を発信し、リピーターの獲得を目指した施策を実施しています。

2. 宿坊体験が人気:高野山 奥の院の事例

高野山は真言宗の総本山である金剛峯寺があり、仏教の聖地ともいえる場所です。

この高野山では、2004年の世界遺産登録以降、外国人観光客数が増加しており、インバウンド対策として多くの施策に取り組んでいます。

公式ウェブサイトおよび案内板の多言語対応はもちろんのこと、独自の景観条例を施行し、高野山の景観を維持し観光客の満足度を高めています。

また、外国人観光客の宿坊への受け入れも積極的に行われています。

宿坊とは、参拝者のための宿泊施設のことを指し、本来は僧侶のみが宿泊する場所、もしくは参拝者の心身を清めるための施設でした。

現在では、一観光客などの宿泊も受け入れる施設が増え、設備やサービスの充実、寺社文化の体験ができるなど、時代とともに神社・お寺に泊まる旅は広がりをみせています。

フリーWi-Fiの設置や英語表記の充実、オンラインでの予約受付に対応する宿坊もあり、訪日外国人観光客でも宿坊に泊まり、日本文化を体験できる機会が増えています。

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3. 高野山金剛峰寺境内の町の受入環境整備:高野町の事例

町全体が境内と勘違いしてしまうほど、高野山には多くのお寺が存在します。

高野町は歩くことを意識した道路整備を進め、歩くことを楽しめる街を実現しています。

多言語表記とピクトグラムを用いた案内表示、公衆トイレの洋式化や温水便座の設置、Wi-Fi環境などを整備し、海外から訪れた観光客にも対応できるような体制を構築しています。

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ターゲットを絞ったPRと適切な環境整備でインバウンド誘致に成功

和歌山県は県が主体となって二次交通の整備やターゲットとなる国や地域に合わせた広報活動を行っています。

観光地ごとでも、外国人の目線を取り入れたプロモーション活動や多言語表示、Wi-Fi環境の整備などに取り組んでいます。

県レベルのインバウンド対策と各観光地レベルのインバウンド対策で役割分担がなされており、効果的にインバウンド対策が行われていると言えそうです。

リピート客の定着に的を絞った施策も多く見られ、今後も和歌山県を訪れる訪日外国人観光客は増える傾向が続くとみられます。


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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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