福井県はインバウンド市場ではあまり存在感のない県ですが、観光資源に恵まれており、2018年には外国人宿泊者数の全国最下位を脱出しました。
日本を訪れる外国人の中には、東京や京都などの主要観光地ではなく、通しか訪れないようなローカルな場所を訪れてみたいと考える人も多くいます。
地方の持つ魅力は、日本らしい豊かな自然や、郷土料理、地元の人々との交流など、都市部では見られない景色や経験を味わえることにあると言えます。
こうしたニーズを持つ訪日外国人にとって良き選択肢となりうるのが、福井県です。福井県は中部・北陸地方に位置する県であり、外国人に人気の観光都市である京都と隣接しています。
この記事では、福井県の魅力やインバウンド対策、誘客の事例についてご紹介します。
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福井県のインバウンド事情
日本海に面した福井県では、そのデータだけを見ると、インバウンド事情は厳しいものであると言えます。
そこで、福井県では現状を打開すべく、様々な観光客誘致の取り組みが行われています。
福井県のインバウンドデータ
福井県は、2016年では全国における各県訪問者数最下位であり、福井県での宿泊者数は全国で下から二番目となっていました。
外国人向けの観光施設は県内に13施設のみで、2018年の一人当たりの旅行の際の消費額は42,262円でした。
Wi-Fiフリーの施設は913施設であり、免税店舗数は85店舗でした。
福井県を訪れている外国人の国(地域)別内訳は、台湾25.51%、香港14.26%、中国17.48%と、上位三か国が中華系でした。
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外国人観光客数ランキングふるわず、認知度の低い福井県
石川県や富山県は北陸新幹線の開通の影響も受け、全国の中でも訪れる外国人観光客数ランキングで25位以内に入っているにもかかわらず、福井県は最下位という結果でした。
福井県への外国人観光客誘致での最大の障害は、その認知度の低さにあります。
何度も日本を訪れている人でなければ福井県にまでは足を運ばない傾向にあります。
実際に福井県に足を運んだ外国人は、二回目以降の訪問であるという人が75%以上という結果になりました。
訪日経験の有無にかかわらず、福井県の認知度は6%で、近隣の金沢や富山の10%を下回っています。
訪日外国人宿泊者数は25%増加
福井県は、2018年の全国訪日宿泊客数ランキングで、対前年25.9%増の約8万人となり、全国最下位を脱しました。
外国人観光客数は6万8,430人で、4万9770人だった最下位の島根県に大きく差をつけました。
福井県広域誘客課によれば、「ZEN(禅)」ブランドの発信などが要因の一つとのことです。
福井県では、さらなる訪日観光客の誘致を目指し、台湾での営業活動窓口の設置などに取り組み始めました。
福井県の魅力は?
訪日外国人の観光客数増加を目指すためには、福井県の魅力を的確に把握し、それをアピールしていく必要があります。
福井県のもつ、恐竜をテーマにした博物館や、星空観光などといった観光資源についてご紹介します。
恐竜大国
福井県立恐竜博物館は、夏休みになると子ども連れの家族で溢れる人気の観光スポットです。
1988年に福井県勝山市北谷町で小型肉食恐竜の歯の化石が発見されて以降、数多くの恐竜化石が手取(てとり)層群から発見され、それをきっかけに福井県は恐竜を観光資源とした取り組みが行われてきました。
博物館館内では、地元で発見された化石を始めとした専門的な展示品を楽しめます。また、恐竜の化石発掘ツアーがあり、発掘したものは貴重なものでない限り自分で持ち帰れます。
この発掘ツアーは大変人気があり、事前に予約をしたり、朝から並んで待ったりする必要があるので、このツアー目的の人が前泊することで宿泊者数の増加につながっています。
星空観光
福井県の農村部では、街灯が少なく、夜が暗い場所が多くあります。
そのため、夜になると美しい星空が見られ、それらを観光資源に観光客を誘致しようという動きがあります。
福井県のいくつかの地域は、光害問題に取り組む世界最大のNPO「国際ダークスカイ協会」が認めるほどの星空が鑑賞できると言われています。
さらに、星空を鑑賞するためには夜間にその地域に留まる必要があるので、宿泊客の増加にもつながります。
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ジョブズが宿泊した永平寺
国内外からも注目される禅の里、曹洞宗大本山の永平寺(福井県永平寺町)は、若い頃にスティーブ・ジョブズ氏が修行しようとしていたことでも有名です。
この寺には、230枚日本画で構成される天井絵があり、観光客から人気を集めています。
また、2019年秋には個室対応した宿泊施設を門前に建設し、プライベートを気にする外国人観光客の受け入れを強化する方針です。
寺での禅体験や精進料理を提供し、英語対応スタッフを配置することで、外国人観光客も安心して訪れられる環境を整備しています。
寺内の長い回廊は特に美しく、観光客に人気のスポットとなっています。
福井県のインバウンド事例
これ以外にも、福井県では様々なインバウンド対策が行われています。YouTubeによる地域の魅力発信や、多言語対応の促進がその例に挙げられます。
また、前述したように、訪日外国人から人気のある「禅」も観光資源の一つとなっています。
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1. 動画で小浜市の魅力をPR
現在の広告宣伝において、動画でのPRは重要なトピックの一つとなっています。
福井県小浜市では、「京都から一番近い海」という謳い文句を掲げ、海鮮料理や地元の雰囲気が伝わる動画を訪日外国人向けに作成しています。
口頭での説明ではなく、観光資源でもある寺や料理の映像を展開し、簡単な英語の見出しを挿入することで外国人観光客にも現地の様子が伝わるような工夫がされています。
2. 多言語AIコンシェルジュの導入
福井県永平寺の曹洞宗大本山永平寺では、観光案内所に人工知能で観光案内情報を提供する「観光案内多言語AIコンシェルジュ」を国内で初めて導入しました。
「小梅ちゃん」と名付けられたこのAIコンシェルジュは、観光客からの問いかけに音声や画面で対応するものです。
それまで、外国人観光客の増加傾向にあった福井県では、外国語対応スタッフの人材不足に悩まされていましたが、観光客誘致計画の一環として、その他の宿泊施設の整備などと合わせてこの多言語AIコンシェルジュの導入に踏み切りました。
3. 訪日外国人から人気の「禅」
現在の世界的な「マインドフルネス」などへの関心の高まりに合わせ、「自己との対話」を重視する「禅(ZEN)」が海外から注目を集めています。
ZENのコンセプトに魅力を感じる人は欧米で90.2%、アジアで87.3%となっており、「人と自然・環境との調和」、「静寂、落ち着き」、「シンプルで持続可能なライフスタイル」などの印象が持たれています。
ZEN文化を知りたいと考える外国人の中には、福井県を訪れて実際に禅体験をしてみたいと考える人もいます。
[blogcard url="https://honichi.com/news/2017/10/02/zenfukui/"]
まとめ
福井県は、空港がないことや世界遺産を保有していないなどのマイナス要素がありながら、県の持つ特性を観光客に向けて発信することで、観光客が大幅に増えました。
特に、世界的な「禅(ZEN)」への関心の高まりも助けとなり、訪日外国人からの福井県の認知度は少しずつ上昇しています。
インバウンド対策においては、観光客にまず知ってもらうための情報発信はもとより、観光客が宿泊先に選択できるよう豊富な、円滑に観光できる多言語対応などの取り組みにより、さらなる観光客の増加につながると考えられます。
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2022年10月からついに入国者数の上限撤廃、短期滞在者のビザ免除等が実施され、訪日観光が本格的に再開されました。
未だ"完全回復"には至っていないものの、観光地によってはすでに多くの訪日外国人観光客が訪れているところもあり、「インバウンド対策」への関心が急速に高まっています。
では、今やるべきインバウンド対策とはなんでしょうか。そしてそれを国・地域別に見ると、どういった違いがあるのでしょうか。
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