「グリーンツーリズム」とは | 新型コロナが追い風に?コト消費ブーム・歴史と事例3選・地域活性化・メリットとデメリット

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地方に滞在し、現地の方々と交流しながら農業体験などを行う「グリーンツーリズム」が、ここ数年盛り上がりを見せています。

また、新型コロナウイルスの流行は、これまでのように人の集まる繁華街が見どころとなる都市型の観光だけでなく、自然の豊かな地方や、オープンエアーな観光コンテンツへの関心を高めることにつながっています。

先進国を中心に見られているコト消費ブームや、持続可能な社会を目指す意識も、グリーンツーリズムの商業的、社会的価値を高めているといえるでしょう。

グリーンツーリズムは、地方の資源を活かしながら魅力的な観光プランを継続していくために、効果的な取り組みです。グリーンツーリズムを活性化させるには、その特徴を理解して地域活性化や都市間での交流促進につなげていくことが大切です。

本記事では、「グリーンツーリズム」の定義やメリット・デメリット、取り組み例を紹介します。

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グリーンツーリズムとは?エコツーリズムとの違いや醍醐味は?

グリーンツーリズムは、名称に「グリーン」と入っていることから、自然や環境に配慮した観光分野であると想像できますが、そのような分野としては、「エコツーリズム」が既に存在します。両者の違いや、グリーンツーリズムの特色について解説します。

「グリーンツーリズム」とは

農林水産省のホームページでは以下のとおり解説されています。

農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動です。欧州では、農村に滞在しバカンスを過ごすという余暇の過ごし方が普及しています。英国ではルーラル・ツーリズム、グリーン・ツーリズム、フランスではツーリズム・ベール(緑の旅行)と呼ばれています。

グリーンツーリズムはただ地方に宿泊するだけでなく、その地方に残る自然・文化の体験を重要視している点が特徴です。

グリーンツーリズムに該当する旅行スタイルは、農業公園でフルーツ狩りを楽しむなどの比較的短時間の日帰り型から、農山漁村に宿泊し、数日にわたり田植えや地引網体験をする長時間の宿泊型まで多岐に渡ります。

もともとグリーンツーリズムは、長期バカンスを楽しむことの多いヨーロッパで普及した旅行スタイルです。日本では1994年に「農山漁村余暇法」が制定されたことにより、グリーンツーリズム推進が本格化します。

地方外からの観光客受け入れ体制を整えることは、都市住民と農山漁村の人々の交流の場が生まれ、地域の魅力を外部へ発信する良い機会となるため、地域活性化にもつながると期待されています。

このようにグリーンツーリズムが注目される背景には、近年の訪日外国人の消費傾向の一つであるコト消費も一因にあるようです。

コト消費とは、商品やサービスから得られる体験に価値を見出す消費行動であり、商品自体に価値を見出す「モノ消費」に代わって熱が高まっています。

訪日外国人観光客の増加に伴い、訪日外国人観光客を対象とした「国際グリーンツーリズム」も注目を集めています。国際グリーンツーリズムについては後で詳しく紹介します。

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通常の観光・エコツーリズムとの違い

まず通常の観光と大きく違う点は、地域の人々にとっての日常に溶け込むこと、つまり「生活の一部」を体験することです。具体的には、毎日行っている畑作業や和食の調理などがあげられます。したがって利用される宿泊施設も民泊が多く、通常の観光に比べ低予算で済むことが多いといえます。

エコツーリズムとの違いについてグリーンツーリズムは類似するところもありますが、その目的が異なります。

エコツーリズムの目的は、自然環境や歴史文化を保護し、広く魅力を発信することにありますが、グリーンツーリズムの目的は、農山漁村に自ら入りこみ、地域の人々との文化交流を起点に、地域活性化を図ることです。

グリーンツーリズムがもたらす地方へのメリット・デメリット

グリーンツーリズムは、地方にとって収入源増加や雇用創出など、さまざまなメリットがあります。

ただし取り組みを開始するにあたっては、グリーンツーリズムが抱える問題を把握しておくことも大切です。

グリーンツーリズムのメリット

どこまでも続く稲穂や、漁港にずらりと並んだ魚など、地元の人々にとっては当たり前の景色が、都市部に住む人や訪日外国人観光客にとって魅力的に映るケースは少なくありません。

グリーンツーリズムは、そうした地域がもともと持っている魅力を再発見する機会となります。

また、農家や漁師といった職業に従事されている方の経営安定化にもつながります。このような一次産業は自然災害や天候に左右されやすい側面がありますが、観光客を対象とした体験や宿泊サービスの提供は、その浮き沈みを補う働きが期待されています。

さらに、グリーンツーリズムで多くの観光客を呼び込むことは利益を生み出すだけでなく、グリーンツーリズムに関連したサービス従事者の雇用を生み出し、地域の経済拡大にも良い影響をもたらします。

グリーンツーリズムのデメリット

デメリットの1つ目は、軌道に乗るまで時間と費用がかかることです。

観光客を受け入れる施設やサービスを用意する必要がありますが、資金調達、施設の建設、人材の確保、そして広告といったプロセスが必要で、多くの時間と費用を要します。

デメリットの2つ目は、受け入れる農家や漁師の高齢化が進んでいることです。

地域自体が少子高齢化で若者がほとんどおらず、施設を作っても後継者がいないなどの問題があります。

民泊や農家民宿の数を維持することも課題です。就農支援を充実し、他の地域から移住者を迎えるなどの対策が考えられます。

訪日外国人観光客を対象にした、国際グリーンツーリズム

国内でのグリーンツーリズムを基本に、訪日外国人観光客とした新たな取り組みが「国際グリーンツーリズム」です。そのニーズを解説します。

国際グリーンツーリズムのニーズ

年々増加を続ける訪日外国人観光客の中には、グリーンツーリズムを求め地方への滞在を希望する人も少なくありません。

実際に2013年のJTB総合研究所の調査によれば、日本でのグリーンツーリズムを体験したいと考えている外国人が75%を超えています。

こうした回答の背景には、日本の有名な観光スポットだけでなく、歴史や伝統文化の体験、さらには日常生活体験に価値を見出す訪日外国人観光客の志向がうかがえます。

国際グリーンツーリズムに取り組む際のポイント

観光客を呼び込むためにはターゲットの設定が欠かせませんが、「ターゲット=訪日外国人観光客」では十分とは言えません。

これまでの訪日経験やどんな体験をしたいのか、訪日外国人観光客と一口で言っても旅行への興味の形はさまざまです。

例えば稲作体験においても、稲刈り体験をしたいのか、日本のお米を作るプロセスを知りたいのかなど、ニーズを読み取ってターゲットを明確に設定する必要性があります。

訪日外国人観光客は日本の地理に明るくない場合が多いため、作業内容だけでなく施設の場所や集合の方法などをわかりやすく提示することも必要です。

特に、クワでの稲刈りや包丁を使った料理など、刃物などを使用する危険が伴う体験については、安全管理を徹底しなくてはいけません。

多言語に対応したマニュアルを作成して、国籍を問わず注意が徹底できる準備を整えることが大切です。

国際グリーンツーリズムに取り組む地方自治体

国際グリーンツーリズムの取り組み例を3つ紹介します。

いずれも、農家の人々の意識改革や地域の人々の積極的な参加からスタートしています。

1. 青森県南部町の取り組み

南部町は、南部藩の名所や旧跡、さくらんぼや洋梨をはじめとした品質の良い果物など、観光資源が潤沢な地域です。

都市住民や修学旅行生の農業体験を受け入れるなどグリーンツーリズムの活動基盤を作り、都市農村交流活動を展開してきました。

特徴といえるのが「達者村」の開村です。通年の農業観光や農家生活体験などの実施、南部藩の歴史紹介、また小中学生が参加した達者村弁当づくりなどを通して、南部町の魅力を伝え「日本一おもしろい村」作りに取り組んでいます。

「達者」とは「健康」のことで、地元の自然や文化、人に触れる心健やかな活動によってファンを獲得し、長期滞在者や定住者を増やす狙いがあります。

2010年に国際グリーンツーリズムの取り組みを開始し、英字フリーペーパーの作成やインターネットによる情報発信を通して訪日外国人観光客が訪れやすい環境を整えています。

国際グリーンツーリズムの一環でのハロウィンイベント開催など、訪日外国人観光客をターゲットとしたイベント企画も実施しています。

2. 大分県安心院町の取り組み

安心院(あじむ)町では、農村民泊農泊)を中心に据えたグリーンツーリズムを積極的に推進してきました。

安心院町グリーンツーリズム研究会の発足は1996年で、その年の9月に実験的農泊の1回目を実施、2016年には「民泊」ではなく「農泊」への変更を提案し許可を受けています。

最大の目的は「農村の1軒1軒の足腰を強くする」ことで、環境保全や経済の活発など農村運営にプラスの働きが出ることを目指します。

さらに、「グリーンツーリズム実践大学」を設立し、グリーンツーリズムの実践や普及を目指す人が講師や地元の実践者からノウハウを学ぶ場所を整えています。

グリーンツーリズム視察研修も多く受け入れており、国内だけでなく韓国からも多くの人が研修に訪れています。「1回泊まれば遠い親戚、10回泊まれば本当の親戚」という安心院式グリーンツーリズムを実践し、訪日外国人観光客のファンを獲得しています。

3. 四国4県の取り組み

地域の枠組みを超え、広範囲で国際グリーンツーリズムに取り組んでいる例が、四国グリーンツーリズムです。

四国遍路八十八ヶ所霊場巡りが広く知られており、県をまたいでの観光客も多いことから、各地域の体験、交流プログラムを組み合わせた情報発信を実施しています。

「思いっきり四国!88癒しの旅。」キャンペーンは、対象施設で伝統文化や歴史を体験した感想・写真をインスタグラムに投稿し、キャンペーン応募をすると特産品が当たるというものです。

参加者を巻き込んでの集客や宣伝を狙う戦略は、SNSを介して口コミとして広まることでより多くの効果が期待できます。

日本語が並ぶ公式サイトはわかりにくく抵抗を感じる場合もある訪日外国人観光客でも、使い慣れているSNSであれば参加しやすいと推察されます。特に文字よりも画像を重視するインスタグラムは、インバウンドを取り込むのに適したツールといえます。

国際グリーンツーリズムに取り組み地方活性化

農山漁村に昔から存在してきた自然や伝統などを活用し、魅力を発信するだけでなく観光客が地域の人々と交流しながら体験をすることで、迎え入れる側の地方も個人の活動から経済まで活発化します。

新しい雇用の創出やインフラの整備に加え、観光客の増加によりコミュニティ全体が活発化し、地域の活力向上へと繋がります。

日本の都市部地域の住民をターゲットにしたグリーンツーリズムから、特に訪日外国人観光客をターゲットにした国際グリーンツーリズムへと取り組みを発展させるときには、戦略の見直しが必要です。

また、訪れる人が日本人か外国人かにかかわらず、その地域のどんな体験を求めてくるのか、ニーズをしっかりと分析し、観光施策に反映させていくことが大切です。

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【セミナーレポート】「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント


2023年は2,500万人の外国人旅行者が訪れた日本のインバウンド市場。コロナ前の2019年に迫る勢いの回復をみせており、2024年の訪日外国人数は3,000万人を上回るとの予想もあります。

日本を訪れる外国人旅行者の間で、特に人気が高いアクティビティが「桜の鑑賞」です。桜の開花時期に合わせて日本を訪れる外国人も多く、日本の重要な観光資源の一つとなっています。

そこで訪日ラボでは、「『桜シーズン』に向けたインバウンド施策のポイント」と題したセミナーを開催しました。
登壇者としては、インバウンドの動向に詳しい訪日ラボ インバウンド事業部長 川西哲平に加え、台湾に本社を置くビッグデータカンパニーVpon JAPAN株式会社営業本部 会田健介氏をお呼びし、「桜」に関するインバウンドデータをもとに、訪日外国人旅行者の最新動向と、「桜のシーズン」に集客を向上させるためのポイントを解説しました。

本セミナーは大好評につきアーカイブ配信を行っておりますので、ぜひご覧ください。

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「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント【セミナーレポート】


【インバウンド情報まとめ 2024年3月】2023年年間宿泊者数 1位は韓国 他

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この記事では、2024年3月版レポートから、2月〜3月のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。

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インバウンド情報まとめ 2024年3月

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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