新型コロナ流行の今、観光業が講じるべき対策とは|現状や課題・アフターコロナの展望

公開日:2020年05月27日

新型コロナウイルスの影響で、外出や対面の交流を控えることが求められている中、さまざまな業界が大きな経済的打撃を受けています。

なかでも訪日外国人を対象にした事業においては、国家間の移動が制限・禁止されるなどの措置がとられたことにより、深刻な影響を受けているのが現状です。

この記事では、新型コロナウイルス流行による観光業への影響と、今後の対策について紹介します。


観光業の現状

現在、世界的に国境を封鎖し人の移動を制限する動きが強まっていることから、これまでのように外国人が自由に日本を訪れることができない状況です。

渡航規制後の観光業全体の現状について紹介します。

旅行者数激減、訪日外国人数は9割減も

新型コロナウイルスによる自粛要請に伴い、休日でも外出せずに家で過ごす人が増えました。

2020年2月の国内外合わせた全体の宿泊者数としては、3,744万人で前年同月比-6.0%でした。3月の宿泊者は2,361万人のみで、前年同月比-49.6%、つまり全体の半分程度になりました。

日本国内での旅行の需要も大幅に落ち込みました。2020年2月は前年同月比+3.3%の3,259万人泊であったのに対し、3月は、前年同月比-41.8%でした。訪日外国人の数における新型コロナウイルスの影響はより顕著で、2020年2月は485万人泊で、前年同月比-41.3%と4割も減少しました。さらに、3月は前年同月比-85.9%と前年に対して大きな落ち込みとなりました。

宿泊業の倒産が相次ぐ

観光客が激減した影響で、直接的なダメージを受けたのが、宿泊業です。予約のキャンセルの影響を受け、経営が成り立たなくなり倒産する例が相次ぎました。

宿泊業の倒産の例としては、「WBFホテル&リゾーツ(株)」や「(株)冨士見荘」が挙げられます。

「WBFホテル&リゾーツ(株)」は、保有5施設(北海道:5施設)、賃借・運営受託22施設(北海道:4施設、関東:1施設、関西:17施設)の合計27施設(合計客室数:約3,900室)のホテルを展開する企業でした。

予約のキャンセルが相次ぎ、4月時点で収束の見通しが立たないことから、倒産措置となりました。負債額は約160億円にものぼり、新型コロナウイルス関連の倒産としては最大規模となります。

「(株)冨士見荘」は愛知県に旅館を経営している老舗でしたが、メインの顧客だった中国人ツアー客からのキャンセルが相次ぎ、倒産に至りました。

そのほか、タクシー業者や京都の着物レンタルなどでも倒産がありました。

日本観光協会は政府に支援申し入れも

訪日外国人観光客数激減を受けJATA(日本旅行業協会)は、政府に対し雇用調整助成金の助成率の引き上げ支給限度日数の延長を求めました。

雇用調整助成金とは、企業が従業員を計画的に休業させるなどの対応をとった際に、国が企業に対して補助を出すことです。休業の形態に応じて助成率は異なります。

また、観光業が特に打撃を受けているイベントに関しても、対策を講じながら開催することを条件に、自粛要請の解除を求めました。

そのほかにも、修学旅行などで生じた学校側のキャンセル料に対する助成金や、観光業界全体での需要消失を回復できるような政策を要望しました。

コロナで見えた観光業の課題

新型コロナウイルスの流行によって、政治、経済など様々な面での脆弱さが浮き彫りになりました。特に、観光客をインバウンドに依存していた観光業界では大きな影響が見られました。

旅行業界がここまで影響を受けてしまった原因と課題を紹介します。

インバウンドへの依存

今回の新型コロナウイルスの流行で減少が顕著にあらわれたのが、訪日外国人観光客でした。近年のインバウンド需要の増加に伴い、観光業界では「インバウンド対策」に偏重した施策が多く進められてきました。

有名観光地では観光公害なども問題として取り上げられ、地元の人の生活に悪影響を及ぼすこともありました。需要が急増するにつれて観光体験の質の低下につながることもあり、訪日外国人客が増える一方で、国内観光客の足が遠のいていく(=クラウディング・アウト)観光地もありました。

増加を続けてきたインバウンド消費額に対し、国内旅行の消費単価は年々下落しています。旅行の消費額の減少は、デフレや価格志向などにもよるので一概に原因を決めることはできません。それでも、国内需要の重要性を再認識し、時代に合った満足感のあるコンテンツを作っていく必要があります。

【インバウンド】クラウディングアウトとは?東京オリンピック2020開催で訪日外国人が減少するは本当か?

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手元資金の少なさ

日本政府が公表した2020年版「中小企業白書」によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げが計上できない場合、現金や預金などの手元資産で何ヶ月分の固定費を拠出できるかを試算した結果、宿泊業は平均6.6ヶ月にとどまることがわかりました。

金融保険業を除く全産業の平均は22.0ヶ月であることから、観光と密接な関わりのある宿泊業の資金繰りの厳しさがうかがえます。

この背景には、宿泊業では多くのスタッフを必要とすることで固定費の高止まりを招きやすいこと、価格競争になりやすい市況であることなど、構造的な問題があります。

観光業が講じるべき対策とは?

新型コロナウイルスの流行で打撃を受けている観光業では、今後同じ事態を引き起こさないための対策が必要になります。

浮き彫りになった観光業の問題点を解決するための対策についていくつか紹介します。

観光リスクの分散

今回の新型コロナウイルスの影響を受け、早期に倒産に至ってしまった企業に傾向として多く見られるのは、顧客層に中国人訪日観光客の比率が高かった点です。新型コロナウイルスが中国で発生したこともあり、早くからキャンセルが相次いだために、こうした事業者は経営を続けられなくなってしまいました。

また、2019年の韓国人観光客にターゲットを絞っていた九州の一部の宿泊施設においては、日韓関係の悪化による売上の大幅な減少なども見られました。

反対に、半数は外国人観光客、半数は日本人観光客に向けて経営していた宿泊施設は、ここまで急激な影響を受けることはありませんでした。

ターゲットの客層をひとつに絞るのではなく、より多くの層の呼び込みをしておくことが重要といえます。

「3密」対策を講じたツアー計画の策定

新型コロナウイルスの爆発的流行が去った後も、数年程度は感染のリスクが続くと言われています。観光業としては、新型コロナウイルスと上手く付き合っていく方法を見つける必要があります。

2020年4月27日にWEBセミナー「新型コロナウイルスと日本の観光業」が日本旅行業協会(JATA)によって開催されました。この中で、感染の心配なく安心して旅行を楽しむためには、「3密」を避けるツアーなどの企画が重要となると提言がなされました。

インバウンドに関しては、国家間移動が制限されている現状からまずは国内需要の回復を目指し、その上で徐々に規制が緩和されることを想定し、インバウンド需要の回復を目指す考えが示されました。

特に、東京オリンピックが開催される2021年には安全性を確保しながら全面的な再開ができるように環境整備を進めていく予定です。

これまでの観光業の課題を見直し、アフターコロナへの対策を

現状、新型コロナウイルスの影響で、観光業に従事する多くの企業が打撃を受けています。特に今回、中国人観光客のツアー受け入れに偏重した営業形態の企業は、全面的に影響を受けることになりました。

こうした事例からも、ターゲット層を一つだけに絞らず複数の客層へのアプローチを持つことが、急激な世相の変化に対応するポイントといえます。

また、新型コロナウイルスの完全な終息はまだまだ先のことといえます。外出自粛が解除された後も、感染対策を万全にし、旅行者にとって安心して旅先に選んでもらえるような環境づくりが今後の必須事項となり得るでしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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