2020年6月3日に共同通信の伝えたところによれば、中国の個人が、「AINU」について商標出願中であることがわかりました。
アイヌといえば北海道に古くから住んでいる民族のことで、同地からは中国に対し批判の声もあがっているといいます。
この出願に対する審査が通過した場合には、今後「アイヌ」という単語を使うことに様々な制約を受ける可能性が出てきます。
ある文化を表象する名称や衣装、化粧などを異文化に属する人や組織が利用する場合の注意事項についても整理します。
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中国から「AINU」商標登録出願
今回、中国広東省の個人が、2020年3月に日本の特許庁に「AINU」を商標登録出願したことが、同庁の開示資料で判明しました。
資料によると、「AINU」はスマートフォンのケースやパソコンのマウスのなどの商品での商標を出願しており、6月2日の時点では、審査の結果を待っている状態であることが伝えられています。
「便乗商法」アイヌ民族からの反発も
アイヌといえば、日本では北海道の先住民として知られています。延期にはなったものの今年4月には北海道にアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開業される予定であったなど、アイヌ民族への関心が高まっているところでした。
今回の商標出願に関して「便乗商法でないか」というアイヌからの声も上がっているそうです。
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日本経済における中国資本の存在感の増大止まらず
今回の件は名称に関するものですが、土地に対する中国からの利権確保の動きが以前より報じられています。
2005年、国土交通省 北海道開発局が主導して開催した「夢未来懇談会」において提案された「北海道人口1,000万人」計画は、海外からの移民受け入れを促進し北海道の人口を1,000万人にまで増やそうというものです。人口増加による経済活性化がうたわれた計画ですが、提唱者は株式会社チャイナワークであり、中国資本の色濃く影響する計画だったと言われています。
さらには近年、中国資本による北海道の森林買収が相次いでおり、その総面積は静岡県の面積を超えるほどであることが指摘されています。
観光産業においても、宿泊施設や免税店など中国資本の流入が進んでおり、またメーカーでも同様の動きが見られています。日本経済への影響力は日々増しているといえるでしょう。
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新型コロナでも経済的打撃からいち早く回復を見せる中国
中国から世界へ広がっていった新型コロナウイルスですが、中国国内の感染拡大はすでに抑えられており、他の国と比べて早く日常を取り戻し始めています。
一方で、欧州やアメリカでは感染者数や志望者数は非常に大きくなっており、感染流行の抑えこみのために経済の弱体化が顕著です。このような状況を好機ととらえた中国企業は、欧州企業に対するM&A提案を積極的に行っているとの情報もあります。
欧州では自国の企業を守るため、海外企業からの買収を拒否できるようにするなど国を挙げて中国からの経済侵攻に対抗しています。
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商標登録に関して似たような話として「KIMONO」が文化の盗用として以前話題になりました。
これは、アメリカの女優・キム・カーダシアン氏が本来の着物とは全く関係のない自身の下着ブランドに「KIMONO」と名付け、さらに商標登録をしようとしたものです。
この件に関しては日本だけでなくアメリカ国内でも「文化の盗用」と非難され、結果的には商標申請を取下げ、ブランド名を変更することとなりました。
文化の盗用
日本ではあまり馴染みのない文化の盗用とは、多くの場合、文化の背景にある歴史や解釈を無視して、商業的な思惑のもとに表層的に文化を取り入れることを意味しています。
特にアメリカではマジョリティである白人が、マイノリティであるアジア系やネイティブアメリカン、インド系の文化を取り入れた物を商業利用する際はその文化に対してのリスペクトが求められています。
過去の支配や搾取、現在の差別問題などが存在する中で、その文化の一部を、配慮なく一時的に借りることに対する非難の意が込められています。
日本ではすでに名前が広く知られている「アイヌ」という単語を、本来の意味とは全く関係のない商品へ使用するための今回の商標の出願は、文化の盗用ととらえられる可能性もあるでしょう。
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特許庁の審査の見通しは?
商標登録は、登録査定を受け取ってから30日以内に登録料を支払うことで権利化することができます。
特許庁の公式サイトによれば、審査結果が得られるまでの想定期間は12か月ですが、すでに使用している場合や、出願時に既定の商品や役務を指定している場合には2か月や6か月の場合もあることが示されています。
登録できない理由が発見された場合には拒絶理由が通知されますが、出願人は意見を述べる等の手続きにより、拒絶理由を解消できることがあります。
特許庁は共同通信の取材に対し「商標法に基づいて判断する」と回答しており、それ以上の判断は明らかではありません。審査の結果拒絶される可能性もありますが、これまでの中国国内での商標に対する扱いや、国外での振る舞いを踏まえると、今後も類似した申請が出てくるかもしれません。
名称はブランドのイメージと密接にリンクします。国境を越えて消費が起こる現代だからこそ、様々なケースを考えて考案し取り扱う必要があるといえそうです。
<参照>
・東京新聞 TOKYO Web:中国から商標「アイヌ」を出願 特許庁で審査待ち、批判も
・日本経済新聞社:下着ブランド、キモノの名称撤回 米タレントが批判受け
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